BioJapan 2015 Report

Report
BioJapan 組織委員会/株式会社 ICSコンベンションデザイン
CONTENTS
1
総 括
1
総 括
1
2
開 会 式
2
3
基調講演
2
特別講演
BioJapan2015−World Business Forum が 2015 年
4
4
10 月14 日(水)から10 月16 日(金)の 3 日間、パシフィコ横浜
5
ネットワーキング
5
を舞台に盛大に開催された。BioJapan は、1986 年以来
レセプション
パートナリングパーティー
6
開催されている我が国で最も歴史のある国際バイオ総合イベ
ントであり、今回は 17 回目にあたる。主催はバイオ関連 9 団
主催者セミナー
6
6
6
iPS 細胞研究アップデート
新法適用から 1 年で「再生医療」はどう
変わったか ~産官学から俯瞰~
融合科学が貢献する認知症対策
7
ベンチャー企業育成・支援の課題と今後
8
グリーンバイオ分野の新たな
9
イノベーション創出に向けて
9
ライフイノベーションフォーラム
グローバルファーマが見据える将来戦略 10
11
バイオクラスターサミット
7
パートナリング
12
8
展示会
13
体から構成される BioJapan 組織委員会と、㈱ ICS コンベ
ンションデザインである。地元の横浜市・神奈川県・川崎市
からそれぞれ特別協賛・特別後援をいただき、さらに政府関
係機関、各国大使館など合わせて 32 組織の後援を得て盛大
に催された。
国内外の多くの地域から、産業界、アカデミア、行政関係
機関、バイオ団体・クラスターなどが多数参加して最終的に
過去最大規模となった。出展・パートナリング参加企業数は
714 社、来場者数は 14,153 名と、
それぞれ前回を上回った。
パートナリングの参加者数は 1,222 名(前回 1,127 名)
、商
談成立数が約 6,000 件 ( 前回 5,801 件)と拡大し、アジア
最大のマッチングイベントとして順調に拡大し、産業基盤と
しての存在感を示した。参加国数は国内外 31 カ国と、前回の
29 カ国から拡大し国際化が進んだ。
BioJapan2015 開催実績
● 出展・パートナリング参加企業数
714 社
出展者
内訳
来場者
551 社
(前回 678 社)
163 社
● 上記のうち、海外参加企業数
● パートナリング参加者数
● 商談件数
● 来場者数
©2015
240 社
(前回 208 社)
1,222 名
(前回 1,127 名)
約 6,000 件
(前回 5,801 件)
14,153 名
(前回 12,734 名)
2
開会式
主催者を代表して清水 昌 BioJapan 組
ジネスが発展することへの期待を述べた。
賞を受賞されたことへのお祝い、バイオ
織委員会会長((一財)バイオインダストリー
来賓の星野剛士経済産業大臣政務官、
産業振興の重要性と取り組み事例、そし
協会会長)が挨拶に立ち、BioJapan にお
林 文子横浜市長、黒岩祐治神奈川県知事
て BioJapan2015 が盛大に開催される
いて未病や再生医療関連のセミナー・展
からは、大村 智博士(北里大学特別栄誉
ことへのお祝いの言葉をいただいた。
示が拡大していることに触れ、多くのビ
教授)が 2015 年ノーベル生理学・医学
星野剛士経済産業大臣政務官
清水 昌会長
3
基 調 講 演
林 文子横浜市長
黒岩祐治神奈川県知事
基調講演
1
日本医療研究開発機構のミッションと展望
末松 誠 (国研)日本医療研究開発機構(AMED)理事長
健康医療戦略室の下でゲノム医療実現
て IRUD 診断連携の全国整備を進め、
推進協議会が開かれ、ゲノム医療をまず
IRUD データネットワーク、IRUD 解
「難病」と「がん」の領域から推進するこ
析コンソーシアムと組み合わせて診
とが国の方針として決まった。希少・未診
断できるようにする。
断疾患患者を体系的に診療し、患者情報を
製薬企業とアカデミアとの協力関
収集蓄積し、開示するシステムを確立する
係を促進するために、産学共同創薬
ために未診断疾患イニシアチブ(IRUD)
プロジェクト(マッチングスキーム)
を最初の事業として立ち上げた。3 年かけ
を始めた。8 月に案内を開始し製薬
会社から検討希望
書を受け付け、そ
のプロトコールを
実現できるアカデ
ミ ア を AMED が
探 し て い く。現 在
基調講演風景
はこの仲介をアレンジ
創薬シーズライブラリーの整備、
産学協
しているところであり、
働スクリーニングコンソーシアム(DISC)
10 月末にはいくつか
支援ネットワークや新たに希少疾病用医
のマッチングができる
薬品指定を受ける可能性のある品目の研
と見込んでいる。
究助成事業などにより、アカデミアと産
この他にも、次世代
業界の協力関係促進を推し進めている。
2
3
基調講演
基 調 講 演
2
新しい時代の製薬産業
多田正世 日本製薬工業協会 会長
これまでバイオテクノロジー分野に
この課題を単独企業で解決すること
起こった数々のイノベーションが医薬
は極めて困難である。そこで製薬協で
品開発を大きく進化させてきた。研究
は産学官の連携強化やオープンイノ
開発型製薬産業の使命はこのイノベー
ベーションの推進により創薬シーズの
ションの創出により新たな医療を提供
探索、実用化あるいはイノベーション
することだと考えている。
創出に取り組んでいく。4 月に設立さ
事業環境をみると、急速な高齢化に
れた日本医療研究開発機構(AMED)
伴う医療費の高騰を抑えるために政府
は、優れた日本のアカデミアの基礎研
は後発医薬品の使用促進等の医療費抑
究成果を最大限に生かして産業化につ
制施策を進めているが、
これは新薬メー
なげる流れを大いに促進してくれると
カーの新薬開発原資を著しく圧迫して
期待している。また、製薬協は個別化
いる。一方、世界的にみると日本の製
医療の実現や iPS 細胞を利用した創
薬企業の研究開発費はまだ不十分であ
薬研究および再生医療製品の早期実現
り、グローバルな競争の中で、各社に
にも積極的に挑戦し、新たなイノベー
とって研究開発原資の確保とその効果
ションを起こしていく。
的使用が最重要の課題となっている。
基 調 講 演
3
Successful Management of Innovation
William M. Burns Independent Company Director and former CEO of the Pharmaceutical Division
of Roche
医療におけるアンメットニーズは多
めることが重要である。新しいことに
数存在している。例えば、先進国では
挑戦する時は必ず個々の固定観念から
高齢化が進み、医療を必要とする人が
反対する者が現れるが、熱情を持った
増加しており、アジアでは都市化が進
研究者を常に支援していくことが経営
み、都市特有の統合失調症や喘息患者
者には重要である。価値を生み出す戦
が増加している。
略では、競合者と同じ道を歩んではな
医薬品の開発にはイノベーションは
らない。常に新しいスキルを持って、
必須である。しかし医薬品のイノベー
挑戦し続けることが重要である。「健
ションは、特定の疾患領域の中ではな
康とは、完全な肉体的、精神的及び社
く、他の領域との境界で生まれる。も
会的福祉の状態であり、単に疾病また
ちろんイノベーションを起こすのは、
は病弱の存在しないことではない」と
研究者である。研究者は特殊な人達
いう WHO 憲章に立ち戻り、イノベー
で、何度実験を失敗しても成功を信じ
ションの創生を社会とともに目指して
て、常に情熱を研究に傾ける。そのよ
いく。
うな研究者の姿勢を、経営者は常に認
3
4
特 別 講 演
特別講演
1
The Story of Avermectin
大村 智 北里大学 特別栄誉教授
特 別 講 演
私の研究の原点は、土から微生物を
生虫の増殖を抑える物質を作ってい
分離し、バイオアッセイとメタボリッ
た。 こ の Avermectin は、 線 形 動 物
ク解析から新しい微生物や化合物を見
だけでなく、節足動物にも効果があり、
つけだすことである。これまで 13 属
多くの感染症にその有効性が期待でき
53 種類の新規微生物と約 5,000 の
る。ゲノムマイニングを始めたのも私
新規化合物を発見し、そのうち 26 の
で、先ほどの放線菌のゲノム解析を
化合物が現在市販されている。
自費で 9 億円かけて決定した。その
その中で今回受賞の対象となった
Avermectin の生合成経路の解明で、
Avermectin は、 米 国 メ ル ク 社 と の
北里大学の池田治生先生がバイオイン
共同研究から生まれたものである。研
ダストリー協会賞をもらっているのが
究当初は、当時の研究者が手をつけて
感慨深い。
いない動物薬の探索を研究テーマに選
Avermectin は、メ ル ク 社 か ら
んだ。マウスにネマトスピロイデス・
Mectizan という薬剤名で、今アフリ
ドゥビウスという寄生虫を感染させ
カの河川盲目症治療薬として19 カ国
て、小腸にいる虫や卵を数える実験で、
1億 200 万人に無償供与されている。
数万サンプルのうち Streptomyces
今後はさらなる新しい疾患への応用も
avermectinius という放線菌が、寄
期待されている。
2
Creating Sustainable Solutions for Life through Biotechnology
Jerry L. Flint Pioneer Vice President, Biotech Affairs and Regulatory, DuPont Agricultural
Biotechnology
DuPont 社 が 19 世 紀 の 黒 色 火 薬
ス、自動車、モバイルデバイス/ディス
から 20 世紀のレーヨンなどの化成
プレイ、太陽光、防護を顧客向けのキー
品、21 世紀には穀物種子など事業の
ワードとして、商品開発が行われてい
範囲を拡大しながら、食料、エネルギー
る。環境負荷低減を狙った酵素洗剤、
などへ事業の中心を変化させてきた歴
再生可能な繊維素材「ソロナ」
、高オレ
史を紹介した。現在では総合化学企業
イン酸含有ダイズ、セルロース由来の
として、科学者 1 万人、2013 年の研
燃料用エタノールの事例を紹介した。
究開発費 22 億ドル、世界中に研究開
持続可能な成長を目指し、明確な数値
発拠点 150 カ所以上を持つまでに成
化された企業戦略は注目すべきである。
長し、地球規模での持続的成長社会の
質疑では、世界企業として、TPP 大
構築に重要な役を担っている。近年、
筋合意や米国が CBD/ABS 協定に署
「Agriculture & Nutrition」
、
「Biobased
名していないこと、閉鎖的運用が見え
Industries」
、
「Advanced Materials」
隠れする NBT 技術特許が事業に影響
を戦略的コア事業として位置付け、バ
はないのかという問い掛けに対して、
イオインダストリーへの傾斜を強めて
いずれも大きな影響はないとのことで
きている。農業、食品、バイオサイエン
あった。
4
5 ネットワーキング
■レセプション(1 日目)
主催者を代表して(一財)バイオインダスト
初日 17:30 から 大さん橋ホールで、
ンドン市長 Boris Johnson 氏が代表して
組織委員会メンバー・来賓・出展者、マッ
挨拶をされ、来賓(基調講演者 Burns 氏、
チングメンバーを対象として開催した。
BIO 理事長、リトアニア外務副大臣、神奈
リー協会理事長 永山 治が、来賓からはロ
川 県 副 知 事、川
崎市副市長)の紹
永山理事長
Johnson 市長
介の後、戸田雄三
会場ではアナウンス、挨拶、乾杯をす
氏((一社)再生医療
べて英語で進行し、海外からの参加者に
イノベーション
国際イベントであることを印象付けた。
フォーラム 会長)
今年度はビートルズのカバーバンドの演
が乾杯の発声を
奏があり、ロンドン市長の来日にはタイ
された。
ムリーな企画であった。
戸田雄三氏
レセプションパーティー
■ パートナリングパーティー(2 日目)
会期 2 日目 17:00 ~ 19:30 に 2 年
マッチング促進の機会として設定したこ
ぶりに 横浜美術館でマッチングメンバー
のパーティーで熱心に自己紹介、情報交
対象のネットワーキングパーティーを開
換する姿が見られた。
催した。パーティー前には、現代美術家
「蔡國強展:帰去来」が無料で鑑賞できる
ようにした。会場の正面には天井に届く
ほどの大きな作
品が展示されて
おり、その前で
ボサノババンド
が演奏した。会
場を埋め尽くし
た約 440 名の
参加者は心地よ
い演奏を楽し
み、昼間以外の
5
パートナリングパーティー(横浜美術館)
6 主催者セミナー
アネックスホールにて、基調講演を含め 21 の主催者セミナー、21 のスポンサーセミナーを開催した。事前
聴講登録にて満員札止めのセミナーが続出したのみならず、立ち見のセッションが多数あったなど、BioJapan
参加者の関心の高い情報を提供できたといえる。以下に、主催者セミナーから8つのセッションを紹介する。
主催者セミナー
1
iPS 細胞研究アップデート
コーディネーター
●
宮田 満 ㈱日経 BP 社 特命編集委員
た。その中で iPS 細胞の創薬ツールとし
ての実用化が最重要であることが述べら
れた。患者由来の iPS 細胞で構築された
京都大学 iPS 細胞研究所 山中伸弥氏から、昨年度に引き続き、iPS 細胞研究の最新研
究成果について紹介された後、富士フイルム㈱ 戸田雄三氏(専務執行役員)を交えて、
パネルディスカッションが行われた。
疾患モデルにて病態解析、疾患要因、バ
イオマーカー探索が可能となり、治験で
の対象患者の絞り込みなど、医薬品開発
のコスト削減、効率化のみならず個別化
……………………………………………………………
培養系での病態モデル作製を主眼とし、ア
医療への多大な貢献が期待される。戸田
iPS 細胞研究の現状と医療応用に
向けた取り組み
ルツハイマー病ではニューロンに、軟骨無
氏は、富士フイルム㈱が買収した Cellular
形性症では軟骨細胞に、各々分化させた培
Dynamics International 社を事例として
山中伸弥
養系にて、疾患特有の異常な細胞形態が再
取り上げた。実用化のためには、iPS 細胞
京都大学 iPS 細胞研究所 所長・教授
現できており、後者では、既存薬のリポジ
作製技術のみならず、安定供給のためのセ
iPS 細胞研究は、再生医療と創薬研究へ
ショニング創薬の可能性が示されている。
ルバンク設立、細胞品質に係るガイドライ
の応用を目的として研究が進んでいる。今
●
ン整備等が必須であり、日本発の iPS 細胞
回、 再 生 医 療 に つ い て は、HLA ホ モ ド
後半の戸田氏を交えたパネルディスカッ
研究、医療への応用面での優位性を保持す
ナー由来の他家移植用 iPS バンクの作製、
シ ョ ン で は、我 が 国 に お け る iPS 細 胞
るためにも、さらなる産学連携、支援体制
供給体制が確立され、また新規 miRNA
研究の方向性、実用化について議論され
の強化が望まれるとまとめられた。
Switch 法を用いた分化細胞の高純度分離・
作製技術が開発されている。また(国研)理
化学研究所 高橋正代氏らによる加齢黄班
変性患者への網膜色素細胞移植臨床試験
は 2 例目実施を断念したが、当該クローン
のゲノム解析にて遺伝子欠失が認められた
ことから、リスクを最優先して判断された。
創薬研究については、患者由来 iPS 細胞
主催者セミナー
山中伸弥氏
2
戸田雄三氏
新法適用から1年で「再生医療」は
どう変わったか ~産官学から俯瞰~
コーディネーター
●
吉岡康弘 富士フイルム㈱ フェロー
……………………………………………………………
法施行を踏まえた再生医療の
産業化に向けた取組
黒岩拓実
コーディネーター・吉岡康弘氏
黒岩拓実氏
経済産業省商務情報政策局 生物化学産業課 課長補佐
行され、まさに急成長の入口に立ってい
「再生医療」分野は経済発展、成長ポテン
る。日本は、グローバルなコラボレーショ
シャルの高い分野である。本省としては、
ンのハブとしてのポテンシャルを有して
実用化/産業育成の視点で取り組んでい
おり、R&D の支援、ビジネス環境の整備、
る。2014 年に世界に先駆けて新法が施
国際連携を推進していく。
6
6
主催者セミナー
……………………………………………………………
胞加工施設が稼働している。再生医療製
iPS 細胞ストックを作る構想に取り組んで
AMED における再生医療研究開発
支援プログラム
品に関する相談が飛躍的に増えてきてい
おり、2015 年 8 月より出荷している。製
る。この分野はともに考えていくことが
薬会社と連携して世界的な展開を推進する
重要。多いに活用していただきたい。
体制を確立していく時代に来ている。
宅間裕子
(国研)日本医療研究開発機構(AMED)戦略推進部
再生医療研究課長
……………………………………………………………
新法への期待と展望
AMED の役割は再生医療の実現化に向け
木村 徹
てワンストップでシームレスに基礎研究か
大日本住友製薬㈱ 執行役員
再生・細胞医薬事業推進室長
ら臨床利用・実用化の研究開発を支援する
ことにある。文科、厚生、経産の三省連携
製薬企業にとって、新しいサイエンス/テ
および AMED 内での連携を強化し、実現
クノロジー、新しい産業への期待がある。
化を加速していきたい。
一企業だけではなく、関連企業グループ全
佐藤大作氏
体のパワーが発揮できなければ成功は難し
い。世界に例のない現システムを成功させ
……………………………………………………………
て世界に拡げていかなければならない。進
アカデミアの取り組み
歩が急速な世界、残された課題は多々ある。
中畑龍俊
京都大学 iPS 細胞研究所 副所長・教授
基礎から応用まで取り組んでいる。患者か
ら iPS 細胞を作るには、時間とお金がか
かるため、多くの人に使っていただける
宅間裕子氏
……………………………………………………………
規制の活用状況
佐藤大作
木村 徹氏
(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)
再生医療製品等審査部 部長
●
再生医療等製品はその特性から、条件付き
総合討論のまとめとして、
「新法施行以来
期限付き承認の制度であり、この12 カ月
各分野において大きなうねりが来ている」
で2件が承認を受けた。また、約 20 の細
主催者セミナー
中畑龍俊氏
(吉岡氏)としめくくられた。
3
融合科学が貢献する認知症対策
コーディネーター ● 黒川 清 世界認知症諮問委員会(諮問委員)
NPO 法人日本医療政策機構(代表理事)
政策研究大学院大学(客員教授)
鳥羽研二 (国研)国立長寿医療研究センター 理事長
モデレーター ● 小野崎耕平 NPO 法人日本医療政策機構 理事
7
7
平均寿命の延長と高齢者人口比率の増加
認知症に対する国家的な取り組
により、認知症は世界的な課題となって
みの一つとして、認知症をビッ
おり、G7 認知症サミットが継続して開
クデータとしてデジタルで解析
催されてきた。科学的・医療的な問題に
する試みを実施している。認知
留まらず、社会問題化している。中でも
症はリスクファクター(高血圧、糖尿病、
らの取り組みとして、新規バイオマーカー
日本は高齢化や認知症の課題に関して最
肥満、鬱など)の複合的な慢性疾患であ
探索、病態モデル作製、創薬候補分子の
先端であり、認知症ケアの取り組みやリ
るとの理解から、「認知症患者・症例レジ
抽出を目指す。
ソースが進んでいるとの評価を得ている。
ストリー」を行い、経時的に疾患ステー
認知症施策推進総合戦略(新オレンジプ
認知症対策は、世界規模、学際的、融合
ジの進行を見るコホート試験や、臨床治
ラン)は、当事者治療参加、偏見をなくし、
科学で行うべきである。
験に活用していく。また、ゲノム解析か
生活機能に応じた適切な医療ケア、理解
鳥羽研二氏(左)とコーディネーター・黒川 清氏
のある町づくり、介護負担への配慮、予防・
ロボット技術は、パロ、Pepper、PALRO
な対応だけでは不十分である、2)認知症
創薬・リハビリ・ケア研究の推進、およ
などに適応されているが、認知症患者の
は老化の最後の砦で、不具合な面もあるが、
び若年認知症施策の強化からなる。認知
医療機器や介護機器としての役割だけで
敗北ではなく皆で支え合うことが必要であ
症患者自身の意思が尊重され、住み慣れ
なく、介護者のサポートツールとしても
る、3)薬剤だけでなく、生活習慣の改善
た地域の良い環境で、自分らしく暮らし
有用である。
からボケない人を増やす必要がある、と
続ける社会を目指すものである。
今後は 1)人はアナログであり、デジタル
いったことを認識することも重要となる。
主催者セミナー
4
ベンチャー企業育成・支援の課題と今後
コーディネーター ● 山 崎 達 美 (一財)バイオインダストリー協会 運営会議議長
パ ネ リ ス ト ● 西 村 秀 隆 経済産業省商務情報政策局生物化学産業課 課長
田 所 創 (独)中小企業基盤整備機構 理事
金 子 博 之 (国研)科学技術振興機構 産学共同開発部長
久木田正次 (国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構 イノベーション推進部長
芦 田 耕 一 ㈱産業革新機構 執行役員 マネージングディレクター
片田江舞子 ㈱東京大学エッジキャピタル パートナー
中 富 一 郎 ナノキャリア㈱ 代表取締役社長
ベンチャー企業の育成、発展は経済成長を実
向けられるようなものであるべきで、アカデ
現する上での喫緊の課題である。本セッショ
ミアを含む第三者によるピアレビューのよう
ンでは7名のパネリストにより、どのように
な評価システムの構築、大手企業の出資を後
すればこれを実現できるかについて活発な議
押しするような税制優遇策の設定、法人版エ
論が交された。
ンジェル税制の活用促進などが提案された。
ベンチャー側から見て必要な支援として、エ
このほかに、経営チームを形成するための人
ンジェル、知財戦略サポート、経営人材、上
材確保やファンド側人材の育成、IPO 以外の
場後の投資や大手企業からのサポートなどが
出口戦略の必要性やベンチャー支援組織の横
挙げられた。また、ベンチャー先進国である
連携の必要性等についても意見が出された。
米国の経営陣に比べ日本の経営陣には M&A
このような議論はフォローアップされるべき
やベンチャー投資に対する強い抵抗感がある
であり、次回の BioJapan では、もっと幅広
ことも、解決すべき課題として指摘された。
く政策論議ができるような場の設定を検討す
大手企業からのサポートを増やすための対策
るとまとめられた。
は、大企業経営陣の意識をベンチャー投資に
会場風景
西村秀隆氏
田所 創氏
金子博之氏
片田江舞子氏
久木田正次氏
中富一郎氏
芦田耕一氏
8
6
主催者セミナー
主催者セミナー
5
グリーンバイオ分野の
新たなイノベーション創出に向けて
コーディネーター ● 米倉 誠 一 郎 一橋大学 イノベーション研究センター 教授
田 口 精 一 北海道大学大学院工学研究院 教授
下 村 政 嗣 千歳科学技術大学 教授
関 山 和 秀 Spiber ㈱ 取締役兼代表執行役
出 雲 充 ㈱ユーグレナ 代表取締役社長
グリーンバイオ(環境・エネルギー・モノ
とが重要だと語った。
作りバイオ)の各分野からそれぞれ講演が
最後に、㈱ユーグレナの出雲氏が“グリー
あった。田口氏は、世界に先駆けて既存の
ンイノベーションを成功させるためには
その後、パネルディスカッションがあり、
方法では作り出せない物性を持った乳酸ポ
何をすべきか”という課題に対して、これ
グリーンバイオでイノベーションを興す
リマーを微生物によって作り出すことに成
まで進めてきた“ミドリムシで世界を救う”
には、質の良い情報の獲得と大学や企業と
功したと報告した。21 世紀型モノ作りで
という事業を通した経験談を話した。結論
のコラボレーションによるスピードアッ
は、バイオの力を利用して原料を糖や油に
としては、イノベーションを興すために必
プが重要で、最終的にはパラダイムシフト
変換し、そこから新規のモノマーを合成す
要なものは、スピードと勇気(強いモチ
による新しい用途の発想がこの世界を大
る持続可能なシステムを構築することが重
ベーション)であり、思想を共有する企業
きく変革していくであろうといった議論
要だと述べた。Spiber ㈱ の関山氏は、ク
等とのパートナリングが重要だと語った。
が交わされた。
コーディネーター・米倉誠一郎氏
モの糸が持つ軽量性と靭性を併せ持ったタ
ンパク質(フィブロイン系ポリペプチド繊
維)に魅了され、長年の研究から人工的に
紡糸されたポリペプチド繊維を多段階延伸
する技術を開発した。関山氏はこうして作
られた人工繊維は、軽量かつ耐久性に優れ
た新たな機能を持つ繊維として、幅広い産
業分野での活用が期待されると語った。
日本のバイオミメティクス研究の第一人者
田口精一氏
関山和秀氏
下村政嗣氏
出雲 充氏
である下村氏は、バイオミメティクス研究
は日本においては終わったと言われている
が、国際的には技術のパラダイム変換の可
能性を持つこの世界への期待はますます大
きくなっていると述べた。この分野では、
異業種や異分野の専門家が互いに知恵を出
し合うことでイノベーションを創出するこ
主催者セミナー
6
ライフイノベーションフォーラム
ライフサイエンス分野の新展開からみた
イノベーション戦略
コーディネーター ● 山 崎 達 美 (一財)バイオインダストリー協会 運営会議議長
豊 (国研)日本医療研究開発機構 執行役
パ ネ リ ス ト ●菱 山
磯部総一郎 厚生労働省 参事官 医療機器・再生医療等製品審査管理担当
関
篤 史 バークレイズ証券㈱ 株式調査部 ヴァイスプレジデント
大 津 敦 (国研)国立がん研究センター 先端医療開発センター長
宮 田 満 ㈱日経 BP 特命編集委員
9
コーディネーター・山崎達美氏
るのが、日本医療研究開発機構(AMED)
冒頭、パネリストの 5 氏から、創薬にお
プレゼンテーションが行われた。その中
の役割である」
(菱山氏)、
「新たな発想に
けるイノベーションに向けてのそれぞれ
で各氏からは、「基礎研究から臨床応用ま
基づく医薬品、医療機器、医療の開発に対
の役割、課題、展望等について、ショート・
でをシームレスにマネジメントし支援す
し、適切なアドバイスができ、世界から選
ばれる規制当局でなければならない」(磯
模索すべき方向性や次の時代を目指した
代を創成するためのイノベーションは、
部氏)、
「日本の製薬企業の現状を外から
土台作りに何が必要か等について総合討
私たち一人一人が引き起こさなければな
見ると、R&D 戦略が正しかったのか問い
論が行われ、最後に山崎氏が「新しい時
らない」と取りまとめた。
たださざるを得ない」
(関氏)、
「がん新薬
を世界に先駆けて提供できるよう、異分
野との交流や研究のスピードアップ等に
向けた体制整備を進めている」
(大津氏)
、
「1,000 ドルゲノムの達成により、創薬に
おけるパラダイムシフトが起きており、そ
れに各方面から対応していかなければな
らない」
(宮田氏)等の話題提供がなされた。
その後、日本発の新薬を生み出すために
菱山 豊氏
主催者セミナー
磯部総一郎氏
大津 敦氏
関 篤史氏
宮田 満氏
7
グローバルファーマが見据える
将来戦略
コーディネーター ● 池 浦 義 典 日本製薬工業協会 研究開発委員会 委員長
武田薬品工業㈱ 医薬研究本部 SRC(湘南)サイトヘッド兼本部長室長
Jason Coloma Roche Partnering, Vice President, Global Head of Oncology & Cancer
Immunology
Dong Wu Johnson & Johnson Innovation, Head of Asia Pacific Innovation Center
辻 下 英 樹 塩野義製薬 ㈱ グローバルイノベーションオフィス オフィス長
古 賀 淳 一 第一三共 ㈱ 執行役員 研究開発本部バイオ統括部長
コーディネーター・池浦義典氏
前 半 は、各 社 よ り External Innovation
の取り組みについて講演があり、それぞ
れが、企業特性・得意領域・豊富な開発
経験といった自社の強みを基盤とした、
社外ネットワーク構築、協業プログラム
活動の展開について紹介した。
後半のパネルディスカッションでは、各
社とも共通して、大学研究者との早期段
Jason Coloma 氏
Dong Wu 氏
辻下英樹氏
古賀淳一氏
階からの交流や相互補完の重要性につい
て語った。一方で、協業先を適切に見極
めるポイントは、高度な目利き人材、企
業文化や相性、社内外問わず客観データ
での判断等、各社様々であった。企業は、
大 学 側 か ら 選 ば れ る こ と を 意 識 し、 長
期的な関係を維持するためオープンなコ
ミュニケーションが求められている。
10
6
主催者セミナー
主催者セミナー
8
バイオクラスターサミット
Biocluster Summit
−International
partnership and mutual collaboration
モデレーター ● 坂田恒昭 全国バイオ関係者会議 副会長
NPO 法人近畿バイオインダストリー振興会議 副理事長
塩野義製薬㈱ シニアフェロー
田中裕教 全国バイオ関係者会議 事務局/(一財)バイオインダストリー協会
モデレーターの坂田恒昭氏(左)と田中裕教(右)
国内バイオ関連団体のグローバル・ネットワークの強化が要望
されており、国際協働による新たな産業イノベーションの実
現のために共通の協議の場が求められている。今年度のセッ
ションでは企業家精神(entrepreneurship)
・中核人材確保、
企業間ネットワーク・企業家ネットワーク同時形成の重要性を
要素に、日米欧亜にわたる世界各地から 10 の活動著しいバイ
オ団体の代表者による活動内容の特徴と強み、および連携策
の発表が行われた。また新たな企画として会場参加型で「日
本のバイオクラスターとの海外連携の課題」をテーマに意見
交換を行い、総括として今後年間を通じて BIO International
Convention(米国)、BioJapan、Bio Europe(欧州)での3
-
極会議を定期化することを参加者一同で確認した。
ベルギー
Belgium, a vibrant life
sciences community at
the heart of Europe
FlandersBio
Henk Joos 氏
ドイツ(ベルリン)
be Berlin! be Health Capital!
How effective networks can
contribute to your company's
success in Germany
Berlin Partner for Business
and Technology
Benjamin Thiering 氏
フランス
MEDICEN PARIS REGION:
A key partner to access
Paris Region innovation in
Life Sciences and Healthcare
MEDICEN Paris Region
Olivier Fontaine 氏
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アメリカ
Innovation and Growth
through BIO“Strengthening
Global Relationships”
Biotechnology Industry
Organization
Peter G. McHugh 氏
フィンランド
Finnish Eco-system for
Pharma and MedTech
フィンランド大使館 商務部
木村正裕氏
ドイツ(ミュンヘン)
The Munich Biotech Cluster
ー accelerating biomedical
innovation
BioM Biotech Cluster
Development GmbH
Stephanie Wehnelt 氏
日本(神戸)
Kobe Biomedical
Innovation Cluster
(公財)先端医療振興財団
クラスター推進センター
大杉 武氏
リトアニア
Life Sciences Baltics
Ministry of Foreign Affairs
of the Republic of Lithuania
Raimundas Karoblis 氏
チェコ
LIFE SCIENCES
IN THE CZECH REPUBLIC
ー Impressive history,
promissing future
CzechInvest
Hana Chlebna 氏
日本(沖縄)
The Formation of R&D
Cluster Toward the
Accumulation of Bioindustries in Okinawa
(公財)沖縄県産業振興公社
古堅勝也氏
7 パートナリング
パートナリング会場
パートナリング参加者数は 1,222 名(前回は 1,127 名)
となり、アジア最大のパートナリングイベントとしてさらに
規模を拡大した。参加企業数は 714 社(前回は 678 社)、
商談件数は約 6,000 件(前回は 5,801 件)であった。国内
外の大手中堅製薬が軒並み参加し、ベンチャーキャピタル等
金融関係者も多数参加した。BioJapan では、技術移転、共
同研究形成、事業提携などの面談を支える仕組みとして、国
内の他のイベントに先駆けて web マッチングシステムを提
供してきた。web マッチングシステムおよび円滑な会場運
用によって、利便性の高いパートナリングを実現している。
パートナリングラウンジ
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8
展示会
出展者は 551 社(前回は 538 社)
、うち海外出展者は 156 社(前回は 146 社)
、出展小間数は 430 小間
(前回は 388 小間)と、いずれも前回を上回った。初出展の ME-BYO Japan は幅広い分野の企業を擁し、
ヘルスケア分野への期待と勢いを示した。来場者数は前回に比べて約11%増加し、
活気のある展示会となった。
■
オープンイノベーションゾーン
2015 年は、㈱三菱ケミカルホールディ
イオ研究会、グリーンバイオ 3 研究会か
展団体から有意義だったという声が数多
ングス、JSR ㈱/JSR ライフサイエンス
ら 18 団体が共同出展した。プレゼンテー
く聞かれ、展示、発表、マッチングの組
㈱の商談ブースに加え、JBA 機能性食品
ション会場では 3 日間で 69 の発表が行
み合わせは有効だったと考えられる。
研究会、SIP、ヘルスケア研究会、植物バ
われ、約 1,340 名の聴講者を集めた。出
プレゼンテーション
13
ポスターブース
■ ME-BYO
Japan
神奈川県では、超高齢社会
オープニングセレモニー
を乗り越えるため、「最先端
医療・最新技術の追求」と「未
病を治す」という2つのアプ
ロ ー チ を 融 合 し、 健 康 長 寿
の実現と新たな産業・市場の
創出を目指す「ヘルスケア・
ニューフロンティア」の取り
組 み を 進 め て い る。2014
年発足の未病産業研究会の活
動 を 軸 に、2015 年10 月 を
「未病月間」と名付け、様々な
催しを開催した。その中で特
に「未病産業」の創出活動と
して BioJapan2015 におい
て 展 示 会「ME-BYO Japan
2015」を開催し、30 社・機
関の未病に関する商品・サー
ビスを紹介した。
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<同時開催>再生医療
JAPAN 2016(初開催)
会 期 : 2016.10.12(水)~ 14(金)
会 場 : パシフィコ横浜
出展者募集中
BioJapan : www.ics-expo.jp/biojapan/
再生医療 JAPAN : http://saiseiexpo.jp/
■お問合わせ先
BioJapan 事務局(㈱ ICS コンベンションデザイン)
〒 101-8449 東京都千代田区猿楽町 1-5-18 千代田ビル
Tel 03-3219-3565 Fax 03-3219-3628
E-mail [email protected]
BioJapan2015
日 時:2015 年 10 月 14 日(水)~ 16 日(金)
会 場:パシフィコ横浜
BioJapan
組織委員会
〒 220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい 1-1-1
主 催:BioJapan 組織委員会
株式会社 ICS コンベンションデザイン
特別協賛:横浜市
特別後援:神奈川県、川崎市
一般財団法人 バイオインダストリー協会
公益財団法人 ヒューマンサイエンス振興財団
公益社団法人 農林水産・食品産業技術振興協会
一般社団法人 バイオ産業情報化コンソーシアム
日本バイオ産業人会議
日本製薬工業協会
NPO 法人 近畿バイオインダストリー振興会議
公益財団法人 地球環境産業技術研究機構
一般社団法人 再生医療イノベーションフォーラム
[問い合わせ先]
BioJapan 組織委員会事務局 (一財)バイオインダストリー協会内
〒 104–0032 東京都中央区八丁堀 2–26–9 グランデビルディング 8F
TEL(03)5541–2731 FAX(03)5541–2737