>> 愛媛大学 - Ehime University Title Author(s) Citation Issue Date URL ヒトグリオーマ幹細胞の腫瘍形成を抑制する microRNA340 およびその標的分子PLATの同定と機能解析( 学位論 文要旨 ) 山下, 大介 . vol., no., p.- 2015-02-27 http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/handle/iyokan/4476 Rights Note 受理:2013-11-28,審査終了:2014-02-27 This document is downloaded at: 2016-03-22 05:25:20 IYOKAN - Institutional Repository : the EHIME area http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/ (第3号様式) 学 氏 論 文 位 論 文 要 旨 名 山下 大介 名 ヒトグリオーマ幹細胞の腫瘍形成を抑制する microRNA-340 および その標的分子 PLAT の同定と機能解析 学位論文要旨 【目的】 神経膠腫(グリオーマ)は、頭蓋内原発性腫瘍の約30%で、最悪性度に分類されている膠芽 腫(グリオブラストーマ)がそのうちの約1/3を占める。現在、外科的切除、放射線照射、化学 療法を組み合わせた集約的治療が行われているが、有効な治療法は確立しておらず、膠芽腫の 平均生存期間は約14ヵ月と極めて予後不良である。近年、放射線や化学療法に抵抗性を示すが ん幹細胞の存在が腫瘍再発や難治性の大きな原因となっていることが様々な悪性腫瘍で示され てきた。また、がん細胞の腫瘍形成や増殖・浸潤において発現異常をきたしたmicroRNA (miRNA)がpromotor或いはsuppressorとして深く関与していることが最近明らかになった。 そこで、本研究では、グリオーマ幹細胞に対する新たな治療法を確立するため、グリオーマ 幹細胞に着目し、本幹細胞で発現異常を示すmiRNAをマイクロアレイを用いた網羅的解析によ り同定し、グリオーマ幹細胞に特徴的な腫瘍形成能、増殖・浸潤能への影響について検討する こと、さらに、同定されたmiRNAについて、その標的分子の探索及び機能解析を行うことを目 的とした。 【方法】 ① グリオーマ幹細胞の樹立:グリオーマ患者の手術摘出組織の初代培養からグリオーマ幹細 胞株を樹立した。また、PCR及び免疫染色にて幹細胞マーカーの発現を評価した。 ② 新規miRNAの同定:グリオーマ幹細胞株(8株)、グリオーマ細胞株(2株)、正常神経幹 細胞よりRNAを抽出し、マイクロアレイにて網羅的にmiRNAの発現を解析し、全てのグリオ ーマ細胞株において過剰発現或いは発現低下をきたしているmiRNAを検索した。 ③ 新規同定したmiRNAの導入および性状解析:レンチウイスル粒子を用いて、グリオーマ幹 細胞株に対照miRNAと新規miRNAを導入し、新規miRNAの増殖能、浸潤能、遊走能への 氏名 山下 大介 影響を調べた。また、105個の腫瘍細胞をNOD/SCIDマウスの脳内に移植し、腫瘍形成能及び マウス生存期間について解析した。 ④ 標的遺伝子の探索:対照と新規miRNA強制発現株よりRNAを抽出し、マイクロアレイで網 羅的にmRNAの発現を解析し、新規miRNAの標的遺伝子の探索を行った。 ⑤ 標的分子の発現および性状解析:リアルタイムPCR及び免疫染色を用いて、細胞や腫瘍組 織内の標的分子の発現を評価した。また、標的分子に対するshRNAを作製し、グリオーマ幹細 胞に導入して、標的分子の増殖能、浸潤能、遊走能への影響について評価した。 【結果】 ① 3つの組織型で計7種のグリオーマ幹細胞株を樹立し、それらの細胞は幹細胞マーカー (Nestin、Sox2、CD15)を発現していた。 ② 正常神経幹細胞と比較して全てのグリオーマ細胞株(10株)で有意(log値2以上)な発現 異常を認めたmiRNAは7種であった。その中で、グリオーマにおいて新規のmiRNAは全細胞株 で発現低下が見られたmiR-340のみであった。ヒトグリオーマ組織においてもmiR-340の発現 が正常脳組織に比べて有意に抑制されていた。 ③ miR-340のグリオーマ幹細胞への導入により、増殖能は有意に低下し、SA-β-gal染色が陽性 であり、細胞老化が誘導されていた。また、浸潤能と遊走能も有意に抑制され、NOD/SCIDマ ウスへの脳内移植モデルにおいてmiR-340強制発現株では腫瘍形成が見られず、観察している 限り全てのマウスは生存した。 ④ miR-340の導入により、グリオーマ幹細胞でのPLATの発現が有意に抑制されることが明ら かとなった。また、miR-340は腫瘍形成に関連する重要な遺伝子であるCD44、c-Met、Sox2の 発現も抑制していた。miR-340はPLATに対する相補領域を有しており、ルシフェラーゼアッ セイでもmiR-340はPLATの発現を有意に抑制することが確認された。⑤PLAT-shRNAのグリ オーマ幹細胞への導入により、増殖能、浸潤能、遊走能はmiR-340強制発現時と同様に有意に 抑制された。しかし、SA-β-gal染色が陰性であり、細胞老化は誘導されなかった。 【考察】 正常細胞(神経幹細胞を含む)で発現が見られる miR-340 は、グリオーマ幹細胞で有意に 抑制されていること、miR-340 の強制発現によりグリオーマ幹細胞の細胞増殖および運動能 が抑制され、細胞老化形質が誘導されることを明らかにした。miR-340 の標的遺伝子として plasminogen activator, tissue(PLAT)を同定した。miR-340 は、腫瘍形成および悪性化に 関わる重要な遺伝子の発現を抑制しており、新たな核酸医薬として臨床応用への可能性が示唆 された。 【結論】 ① グリオーマ幹細胞において、miR-340 の発現が有意に低下していることを明らかにした。 ② miR-340 の過剰発現は、グリオーマ幹細胞の増殖能、浸潤能、遊走能、腫瘍形成能を有 意に抑制するだけでなく、細胞老化を誘導した。 ③ PLAT は miR-340 の標的遺伝子であり、PLAT の発現低下は miR-340 過剰発現と同様に グリオーマ幹細胞の増殖能、浸潤能、遊走能を有意に抑制した。 キーワード(3~5) glioblastoma, microRNA, tumorigenesis PLAT(plasminogen activator, tissue)
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