VDT 作業時の画面表示色の違いが作業効率及び疲労度に与える影響

卒業研究区分:論文
VDT 作業時の画面表示色の違いが作業効率及び疲労度に与える影響
キーワード:VDT 作業、フリッカー値、近点距離、疲労
人間生活工学教育研究分野 05T0147Y 砂坂 合氣
■背景
あらゆる情報をコンピュータで管理する情報化社会の
中、パソコンと長時間向き合いながら、仕事や生活を行う
被験者:
色覚に異常のない、パソコンの操作に慣れた健康な大学生
10 名(年齢 23±2 歳)
人々が増えてきている。また、システムの複雑化に伴い画
面に関する人間工学的検討が必要である。
画面例.
パとセ
■目的
をクリックして下さい。
VDT 作業時の画面表示色及び文字含有率が作業者に与
サブ画面
える影響(心理的負担、生理的負担、作業効率)を検討し、ア
プリケーション画面作成における設計ガイドラインの参考資料
とする。
メイン画面(文字高密度)
メイン画面
サブ画面
被験者
■方法
病院、銀行、旅行代理店等、対面者から情報を受信し、そ
の情報をパソコンの画面上で処理するという作業を想定したタ
スクを行った。
(1)メイン画面、(2)サブ画面の 2 つを用意し、サブ画面で指定
メイン画面(色調グレー)
■結果と考察
第一実験
高密度画面がブルー、グリーン、ピンクの画面に対して有意に
された条件文字をメイン画面上の文字列から選んでクリックす
中枢神経系に与える負担が大きかった。また、ホワイト、グレー
る。条件文字はカタカナ 2 文字であった。
の画面がブルーの画面に対して有意に中枢神経系に与える
(1)メイン画面、(2)サブ画面はそれぞれ、{1}電子カルテや作
業コンピュータ、{2}患者や客を想定している。
サブ画面に提示される条件文字は 1 分ごとに変更し、被験
者がメイン画面からサブ画面に視線を一度移すことを促す。
負担が大きかった。全体として、色みのある画面がそうでない
画面よりも中枢神経系に与える負担が軽いということが推測さ
れた。
第二実験
ピンクの画面がブルー、グリーンの画面に対して有意に近
第一実験においては、画面を、ホワイト、グレー、ピンク、ブ
点距離の変化量が大きくなる結果が得られた。また、クリック数
ルー、グリーンの 5 種類と、さらに文字高密度画面(一画面上
もグリーン、ブルーの画面が有意に多く、エラー率に有意な差
に含まれる情報文字数が多い画面)条件を加えて、計6種類
についてそれぞれ 1 分×5 回の 5 分間ずつタスクを行った。
が得られなかったことから、グリーン、ブルーの画面が作業効
率が良いことが示された。
主観評価において、画面に対しての「違和感」が「ストレス」
第二実験においては、ピンク、グリーン、ブルーの 3 色につい
と捉えられることも分かった。
て、同様のタスクを 20 分間行った。
■まとめ
分析項目
フリッカー値.
.
.中枢神経系の疲労を測る
近点距離.
.
.眼の焦点調節系の疲労を測る
タスクパフォーマンス(クリック数、エラー数、見落と
し数)
主観評価(ちらつき、ストレス、違和感)
今回の実験ではフリッカー値、近点距離ともに被験者の状
態にされやすい測定項目のみで行ったため、他の測定方法
で実験を行うことでさらに有効なデータが得られると考えられ
る。また、今回の画面条件だけでなく、多くの種類の画面条件、
もしくは作業者の年齢なども検討余地がある。
しかし、今回の実験を行ったことで、疲労度、作業効率、主
観評価から、アプリケーション画面作成時の参考となる資料を
数多く得ることができた。