児童が意欲的に活動する生活科の授業づくりと評価の工夫

<生活>
児童が意欲的に活動する生活科の授業づくりと評価の工夫
―2年「野草のへんしん」の活動を通して―
名護市立大宮小学校教諭
Ⅰ
テーマ設定の理由
岸
本
麻
子
感的に見取る必要がある。そうすることによって,
生活科は,児童の生活圏である学校や家庭,地域
が学習の場となる。それらが自分自身にとってどの
児童の活動をさらに促したり,活発にしたり,自信
や意欲をもたせることにつながる。そこで,単元の
ような意味をもっているかに気付かせ,身の回りに
あるものをもう一度見直し,自分なりの問題意識を
評価規準・基準を設定し,児童の自己評価や相互評
持って調べたり,考えたり,表現したりすることが
いきたい。
以上のような理由から本テーマを設定した。
重要である。それらは児童の具体的体験を通して行
っていく必要がある。
これまでの自分の授業を振り返ってみると,自然
素材が地域のどこにあるか,どんな種類の物がある
価も取り入れ,長期的・継続的な評価の工夫をして
<研究仮説>
1 身近な素材を教材化した体験学習を行うことに
より,身の回りの自然に関心を持ち,意欲的に活動
か,いつ頃活用できるかが生活科マップに示されて
いなかったため,具体的に把握できず,いざ校外で
する児童が育つであろう。
学習しようとしても深まりのある授業展開ができな
より,意欲的に活動する児童が育つであろう。
2
一人一人に応じた支援や評価を工夫することに
かった。
生活科の内容(4)には「身の回りにある自然の材
料などを用いて遊びや生活に使うものを作り,みん
Ⅱ
なで遊びなどを工夫することができるようにする」
(1) 低学年の児童の特性
とあるが,校外学習や休み時間での児童の様子を見
ると,既存の遊具で遊ぶことが多く,自然物と関わ
意欲的とは「積極的に何かをしようと思う気持ち。
種々の動機の中からある一つを選択し,これを目標
っての遊びはあまり見られない。草花や木の実を集
とする能動的意志活動」(広辞苑)である。
1
研究内容
意欲的に活動するとは
めたりするぐらいで,それを使って遊んだり自分の
児童が意欲的に活動するためには,具体的な活動
生活に必要な物を作ったりする経験があまりない。
そこで,身近な野草を使って紙を作る体験活動を
や体験を積極的に取り入れていく必要 がある。それ
は低学年の児童が活動と思考が未分化で,行動する
試みたい。紙がもともと植物からできているという
ことによって思考するという特性をもっているから
ことを直接体験を通して児童に気付かせ,日頃よく
である。単に静的な受け身の学習では思考が働かず,
目にしている野草を使っての紙作りを通して,自然
への興味関心を高め,児童が意欲的に活動する生活
物に触れてみる,物を製作する,絵で表現する,文
を書くなど身体を通した能動的な活動をすることに
科の授業作りを進めていきたい。
よって思考し物事に意欲的に取り組もうとする。
つぎに,これまでの評価活動を振り返ってみると,
子供一人一人の行動や気付きを記録していないこと
(2) 意欲的に活動するための教師の手だて
① 生活課題による動機づけ
があった。また,単元の評価規準や評価基準が作成
意欲的に活動するためには,児童一人一人が抱え
されていないため,個々の児童の活動への支援が十
ている興味・関心を教師が的確に捉え,課題を具体
分にできなかった。
生活科においては,具体的な活動や体験の広がり
的に把握させ,学習のねらいを持って取り組ませる
ことである。その際,課題が児童の生活に直結し,
や深まりを一人一人に即して,実践的な態度を評価
興味・関心を持てるもの,知的好奇心の抱けるもの
する。それは,生活科の学習が「活動や体験を重視
であることが大切である。
し,自立への基礎を養う」ことを目標としているか
らである。
②
具体的活動による動機づけ
児童は,直接対象に働きかけ,その反応を確かめ
そのためには教師が児童一人一人についての理解
ながら,さらにかかわりを深めていく楽しさやおも
を深め,活動や体験において適切な支援を行い,共
しろさを好むという特徴がある。学習意欲はこのよ
- 109 -
うな体験の過程でわき上がる感動や意欲を土台にし
価ではなく,長期間にわたってその変容を評価する。
て発展していくのである。
(2) 評価方法
③
環境構成による動機づけ
生活科の評価方法として,児童の態度や行動,状
生活科では,学習意欲を喚起し,児童が進んで活
動を展開するための学習の目標や,児童の実態に応
態などを観察やチェックリスト(表1)を用いて捉
える。そのとき捉えた児童の記録を,繰り返し集積
じた様々な環境づくりを工夫することが必要である。
していく必要がある。これらの方法はその場の思い
そのために,教師は日頃から児童の遊びや生活の様
子,何に興味や関心を示すのか 観察し,どのような
つきで評価するのではなく,単元ごとに具体的な評
価規準や評価基準(表3)を設定して計画的に評価
もの(こと)に知的好奇心を示すかなど児童の側に
していく必要がある。
また,低学年の児童にも可能な自己評価や相互評
立った理解を深めることが大切である。
児童にとって興味や関心のあるものは,未知のも
の,新しいもの,初めて体験することなどであるが,
価(表2)の方法を取り入れることも大切である。
身近なもので既に知っていること,日常体験してい
ることでも,素材に新鮮なイメージをもたせる工夫
によって,魅力的なものに高めることができる。
このように,環境を設定することにより,そこか
ら刺激を受けて児童の意欲が高まり,活動が展開で
きると考える。
2 評価について
(1) 生活科の評価の特色
①
活動や体験の広がり,深まりを評価する
生活科は具体的な活動や体験を通して,総合的に
学習活動を展開する。そのため児童の主体的な活動
表2
自己評価,相互評価(ワークシート)
が重視されなければならない。そして,児童の考え
方や行動がどのように広がり,深まっていったか,
その中で児童がどんなことに気付いたり疑問を持っ
たりしたかなどを評価する。
②
一人一人に即した評価をする
生活科では,一人一人の児童が身近な環境とかか
わりながら,自分なりの見方・考え方を大切にし,
自分の良さや取り柄に気付き,やる気と自信を持つ
ようになることを目指している。すなわち,その子
なりの関心,意欲,態度や気付きなどがどのように
発揮され,表れているかを評価する。
③
実践的な態度を評価する
児童が日常生活でどのように考え,工夫し,行動す
るようになったかということを重視する。短時間の評
表3 評価規準及び評価基準
活動名 時
評価規準 (観点)
評価基準 ◎
野
・友だちと一緒に紙すきを 友だちと協力して紙すき
草
することができる
をすることができる
紙
(思考・表現)
を
作
・自分のがんばったことや 自分のがんばったことや
ろ
12
友達の良いところを見つ 友達の良いところを見つ
・
う
けることができる
け,発表することができ
13
(気付き) る
- 110 -
評価基準 ○
評価基準 △
友だちに助けてもら 教師の手を借りて紙すき
いながら紙すきをす をすることができる
ることができる
自分のがんばったこ 自分のがんばったことを
とや友達の良いとこ 見つけることができる
ろを見つけることが
できる
3
地域にある野草について
4
野草を使った紙作りについて
(1) 野草の教材的価値
生活科は児童の生活圏である学校,家庭,地域が
(1) 材料
和紙はもともとコウゾ,ミツマタ,ガンピなどの
学習の場となる。生活科の学習を進めていく上でま
植物からできており,工場などで作られる紙は木材
ず,地域の生活環境を具体的に知り,そこにある学
の中でも特に松や杉などから質のよいセルロース繊
習素材を把握することが大切である。それらの中か
ら学習素材として有効なものを教材化していくこと
維を取り出しパルプとして利用している。
セルロース繊維は樹木類にだけ含まれているので
が大切になる。そのため次の視点から素材を選択す
はなく,草花,庭に生えている雑草や野菜などすべ
ることにした。
ての植物に含まれている。従ってそれらをうまく利
①
②
児童が興味・関心を持ち意欲的に取り組める
児童の身近にある
用すればどんな植物からでも紙を作ることができる。
雑草(草本類)の場合は,ほとんど1年ごとに生
③
取り扱いが安全である
え変わるのでそれほど頑丈な組織を必要としない。
④
⑤
容易に利用できる
必要な量を確保できる(物の場合)
従って比較的単純な構成になっている雑草のほうが,
簡単な方法でパルプを作ることが可能である。
⑥
社会と自然が一体的,総合的に取り扱える
⑦
季節感がある
い紙を作る必要がある。しかし野草だけで紙を作る
⑧
⑨
直接体験や具体的な活動が多く取り入れられる
準備や後かたづけが容易である
と,木材から作るパルプより柔らかい物になる。牛
乳パックを溶かして作ったパルプは,良質のパルプ
上記の視点をふまえたとき学校周辺にある野草は
からできているため,それを野草のパルプと混ぜて
今回は,はがきやカードを作るため,少し腰の強
作ることにより,丈夫な紙を作ることができる。
教材として十分適していると考える。
(表4)
表4
野草名
ススキ
学校周辺にある野草の種類と活用方法の例
野 草 に つ い て
活用方法の例
道 端 や 草 地 な ど の 日 当 た り の よ い 所 に 生 え る 。 葉 の 縁 は手 が 切 矢 飛 ば し , 親 子 船 , 水 車 , コースター,
れるほどざらついている。
すもう,紙作りに適している
タ チ ア ワ 暖地に広く分布して,1年中花を咲かせている。果実は下向き 実のくっつけ遊び
ユ キ セ ン の刺のある芒があり,動物や衣服に付着して散布される。方言 紙作りに適している
ダングサ
名 は 「サ シ グ サ 」
オオバコ
道端や空き地など至る所に見られ,茎は穂をつけるときだけ伸 すもう,目はじき,うらない
び る 。 花 は 春 か ら 夏 に か け て 咲 く 。 方 言 で は 「フ ィ ラ フ ァ グ サ 」 紙 作 り に 適 し て い る
と呼ばれている。
ゲットウ
民 家 周 辺 な ど に 見 か け る 多 年 生 草 本 。 葉 は 大 型 で 40 ∼ 7 0㎝ 花 は ム ー チ ー を 包 む 皮 , ゲ ッ ト ウ 紙
白 色 で 長 さ 2 5∼ 3 0㎜ 。 葉 に 芳 香 が あ る の で , 食 物 の 包 装 に 使 用
される。
イ カ ガ ヤ 草地などに生える1年生草本。上部に葉状のほうがあり。とが 繊維が多く紙作りに適している
ツリ
って,赤褐色を帯びている。
ム ラ サ キ 道端でよく見られ,長い柄の先に三枚の葉をつける。まれに4 葉を使ってのすもう,三味線,指輪
カタバミ
枚 の も の も あ る 。 方 言 名 は 「ヤ ハ タ 」と い う 。 公 園 や 野 原 で 大 き
十円玉を葉で擦るときれいになる,
な集団になって生えているのが見られる。
かんむり,イヤリング
シ ロ ツ メ 柄 の 先 に 小 さ な 葉 が 3枚 つ い て い る 。 ま れ に 4枚 つ い て い る も の 風 車 , 葉 ぼ う ず , 腕 輪
クサ
も あ る 。 花 は 2月 ∼ 4月 頃 に 満 開 に な る 。
セイヨウ
外国の荷物に種がくっついてきてそれが根付いたもの。他の種 ネックレス,笛,ブレスレット,
タンポポ
類 の タ ン ポ ポ と 違 っ て , が く が 反 り 返 っ て い る の が 特 徴 で あ 風車,髪飾り,フーフー玉遊び,
る 。 花 は 3月 ∼ 4月 に よ く 見 ら れ る 。
コ ー ヒ ー の 粉 ( 根 ), 腕 時 計
テ リ ミ ノ や ぶ 地 な ど に 生 え る 1 年 生 草 本 。 高 さ 3 0 ∼ 60 ㎝ に 達 す る 。 花 の 色 水 遊 び
イ ヌ ホ オ 先 端 に 集 ま っ て 4∼ 7つ の 花 が つ く 。 果 実 は 6 ∼ 8 ㎜ 。
ズキ
- 111 -
(2) 野草を使った紙の作り方
①
野草パルプの作り方
1,紙作りのどうぐを たし
かめる
3,かたいものをやわらか
くする
2,くきや葉を みじかく
はさみで きる。
• かたいくきは
6,やそうを あらう
• 水につけ
てさました
ら,やそう
を やさし
く あらい
ます。
• やそうを入れ
たら,しっかり
たら,しっかり
ふたをしめて,
手でおさえて
スイッチを入
れます。
②
8,やそうパルプの でき
あがり
7,し ぼ る
• ふくろに
入れたまま,
やさしくし
ぼります。
• できたやそう
できたやそう
パルプは自
パルプは自
分のせんめ
んきに入れ
ておきます。
紙すきの仕方
1,どうぐを たしかめる
たらいに水を入れておく
• 休み時間に 水
を 入れておき
ましょう。
• はんぶんぐらい
の水を入れましょ
う。
5,パルプをながしこむ
6,すきわくを水から上げる
• 1人は,わくをこまか
くゆらしましょう。
• わくを水の中から出
したすぎたり,しずめ
すぎないように気を
つけましょう。
• もう1人は,コップに
入ったパルプを,○
をかくようにながしこ
みましょう。
Ⅲ
• パルプがきれいに
ひろがったら,し
ずかに,すきわく
をもち上げます。
• このときにななめ
にしてもち上げる
と きれいにしあ
がりますよ。
2,コップにパルプを入れて
じゅんびをする
単元名
2
単元について
7,上のすきわくをしずかに
はずす
(省略)
とができる。
(1) 身の回りにある野草で遊んだり,野草を集めた
りする活動を通して進んで自然と関わろうとしてい
る。
(関心・意欲・態度)
きることに気付く。
を通して,自分の良さや友達の良さに気付く。
(気付き)
4
この単元を通して育てたい子供像(省略)
5
6
児童の実態調査(アンケート結果)(省略)
単元の活動計画(表5)
単元の活動と評価計画(生活・・13時間,国語・・1時間,学級活動・・1時間)
ら
い
予想される活動や体験
教 師 の 支
見つけた野草
1 自分のめあてを決める
し
を使っておし
2 電子レンジで野草を乾燥させる
花
花図鑑を作る
3 乾燥させた押し花を自分の図鑑には
図
ことができる
援
・友達の良いところを見つけ
る
4 野草の名前を調べたり,見つけた場
を 6
所やみんなに知らせたいことを書く
作 ・
5 自分のがんばったこと,友達の良い
ろ 7
(気付き)
(4) 身の回りにある野草で遊んだり,物を作る活動
う お
鑑
• こんどはお
友だちの紙
作りをてつ
だってね!!
だってね!
• もう1人が,ねんど
ばんを できた紙の
上にかぶせましょう。
• かぶせたら,りょう
てではさむようにし
てやさしく水けをと
ります。
ります
作ることができる。
(思考・表現)
(3) 身の回りの野草から,紙など生活に使う物がで
全15時間)
る活動を通して自然に親しみ,自然を大切にするこ
ね
9,いたをななめにしてかわかし
たらでき上がり
8,上に ねんどばんをかぶせる
(2) 身の回りにある野草で工夫して遊んだり,物を
野草のへんしん(6月
表5
• ななめにわくをか
たむけて,しずか
に水につけましょ
う。
• 下までぜんぶつけ
ないで,わくの中
に水が入るぐらい
つけましょう。
• 一番下に,すきわく
をひとつ。
• つぎにすだれをおく
• その上にあみをおく
• 一番上にすきわくを
おく
• サンドイッチのように
はさみましょう
• わくのまわりに
くっついている
パルプをすこし
おさえて,わくを
りょう手で,しず
かにはずしましょ
う。
単元の目標
身の回りにある野草で遊んだり,野草から物を作
活動名 時
4,わくを水につけておく
3,わくのじゅんびをする
• コップいっぱ
いに パルプ
を こぼさな
いように 入
れましょう。
指導の実際
1
3
• ふくろに や
そうを入れ
て,30分~
て, 分~
1時間グツ
グツ にま
す。
• 木づちで
やわらかくな
るまでたたき
ます。
できるだけ,こ
まかく きって
ふくろに入れ
ます。
5,ミキサー に入れる
4,やそうを なべで にる
ところを発表する
ておくことも知らせる
準
◎自分のおし花図鑑を
作ることができる
・草花をティッシュで包んで
(思考・表現)
陶器のタイルに挟み,電子
○作品分析
レンジで乾燥させる
◎自分のがんばったこ
・待っている間は図鑑や本で
野草の名前を調べさせる
・できるだけ自分で調べさせる
- 112 -
◎評 価 規
○方 法
とや友達の良いとこ
ろを見つけることが
できる
(気付き)
7
本時の展開
単
元
名
野
活
動
名
野草紙を作ろう
ね
ら
い
友達と協力して野草紙を作ることができる
指導要領の内容
内容選択の視点
草 の へ
(4)製作活動・遊び
.
ん
指導段階 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 ⑫ ⑬ 14 15
(5)自然の観察・動植物の飼育・栽培
⑧物の製作
予想される
活動や体験
1 活動の手順を知る
ん し
⑩基本的な生活習慣・技能
自分とのかかわり
思いや願い
気付き
・今日は紙すきをするんだ
教
師
の
支
援
評 価
〔方法〕
・カードを使って作業の手順を説明
ね
する。
2 紙すきのやり方を ・こんなふうにするんだね ・ 紙 す き の ・児童を集めて,実際に紙すきの方
を知る
・早くしてみたいな
3 各自が活動のめあ ・紙すきをがんばるぞ
てを持つ
4 道具の確認をする
・友達と仲良く作るよ
・紙すきの準備をしよう
・ちゃんと揃っているか確
方法
法をしてみせる。
・ 活 動 の め ・活動のめあてを決めて発表する。
あて
・ 準 備 す る ・教師の準備:すき枠,網,たらい
もの
説明用のパルプ,掲示資料など
・児童の準備:前時で作ったパルプ,
かめよう
・準備ができたよ
粘土板,ペットボトル,ぞうきん
など
5 紙すきをする
・すき枠に流してみよう
(2∼3人のグループで ・少し揺らしてみるといい
作る)
・ 紙 す き の ・それぞれの作業を見て回る
仕方
ね
・必要に応じてアドバイスを与えた
り,手を貸したりする。
・枠を斜めにしたらきれい
友達と紙す
きをするこ
とができる
に広がるね
・そっと押さえよう
思考表現
〔行動観察〕
・押さえ方
写真1
・やっとできた
・お友達を手伝ってあげる
よ
6 紙を乾かす
・板にくっつけて乾かそう
・はがれないようにゆっく
り置こう
7 後片づけをする
・紙を乾かす場所を確認する。
・使ったところをきちんと ・後片づけ
片づけよう
8 がんばったことを ・友達と仲良く作ったよ
発表する
・自分のがんばった
こと
・友達のがんばった
こと
9 まとめをする
・難しかったけど一生懸命
・たらい,すき枠などをきれいに洗
・自分のよ
いところ
がんばったよ
・○○さんが手伝ってくれ ・ 友 達 の よ
たよ
(乾かす場所,板の置き方など)
って片づけさせる。
自分のが
んばったこ
・一人一人の良いところを認める。
とや ,友達の
・友達の良さを見つけたことを賞賛
良いところ
する。
いところ
・はがきにして送りたいな
・しおりを作りたいな
気付き
を見つける
ことができ
る
・ 活 動 の 発 ・作品をどうするか相談する
展
〔発言分析〕
〔自己評価〕
〔相互評価〕
- 113 -
8
授業の考察
を聞いたりすることにより「野草をにるときにかて
(1) 研究仮説1の検証
授業前の実態調査では,身の回りにある草花の名
いかしつでふざけない」
「ていねいにおし花を作る」
など自分なりのめあてを立て,意識して活動する児
前を知っている児童は多かったが,実際に野草と名
童が徐々に増えてきた。
「○○さんがミキサーをあら
前を一致させて知っている児童はほとんどいなかっ
ってきちんとかたづけていました 。」「○○くんが手
た。
しかし,この単元に入り,外に出て自分たちで実
つだってくれました。
」など,児童が互いに友だちの
良いところを認め合うようになってきた。表6のグ
際に野草を集め,絵本や植物図鑑などと照らし合わ
ラフからも徐々に自己評価の結果が良くなってきた
せて名前を見つける活動をしていく中で,今まであ
ことが分かる。
まり野草に興味を示していない児童も「先生,むこ
うの公園に○○の草があったよ」
「この草はお家の近
これらのことから支援や評価を工夫することによ
り,意欲的に活動する児童が育ってきたと考える。
くにもあるよ」と次第に野草に興味を持つようにな
表6 児童の自己評価の結果
100
ってきた。
また,授業後の感想では,
「野草って,あそんだり,
76
80
60
おし花になったり,色水になったり,紙になったり
51
81
84
(%)
54
良くできた
40
いろいろなものにへんしんできるんだなあと,びっ
20
くりした 。」「はじめて紙を作って,野草から紙がで
きることをはじめて知った。
」など,遊んだり,紙を
0
第4・5時, 第6・7時,第8・9時,第10・11時,第12・13時,
作ったりする体験活動を通して新たな発見や感動を
Ⅳ
持ったようである。
このように,身近な素材を教材化した体験学習を
行うことにより,児童は身の回りの自然に関心を持
ち,意欲的に活動することができた。
まとめと今後の課題
児童の授業後の感想にもあるように,「野草ってと
てもいいにおいでした」
「パルプをさわったらふわふ
わしてとても気もちよかったです」など五感を通し
(2) 研究仮説2の検証
授業を進める中で一人一人の児童の様子を意図的
て様々な気付きがあった。また,
「紙を二つも作りま
に見るようにした。例えば,Mさんは普段から授業
ってとてもうれしかったです」という感想もあった。
これらは,児童が身近な自然と直接かかわっていく
中に立ち歩きが多く,友だちとのトラブルもあり,
した。とてもじょうとうに作りました。はじめて作
授業に集中できないことが多かった。
そこで今回,押し花図鑑を作るとき,電子レンジ
活動を行うことにより,児童が様々なことに気付き,
で野草を乾燥させる係りを意図的に割り当てた。そ
また,評価規準や基準を作成したことにより,活
動の際,適切な支援ができた。
の際,友だちから「Mさんはわたしのおし花を電子
レンジでかんそうさせてくれました」とほめられ,
自信を持ったMさんは,「野草紙を作ろう」の授業で
は,紙すきの手順を自分から友だちに教えたり,手
意欲的に活動した結果だと考える。
さらに,授業の始めに児童一人一人にめあてを決
めさせ,終わりに自己評価や相互評価を取り入れる
ことにより,自分のがんばったことや友だちの良さ
伝ったりするなど意欲的に活動するようになった。
今回,児童一人一人に1時間のめあてを決めさせ
などに気付き,意欲的に活動する児童が増え,次へ
てから授業に入り,授業の終わりには自分のがんば
今後の課題として,次の点が挙げられる。
・地域にある学習素材の開発と教材化
ったこと,友だちの良いところを見つけさせ,ワー
の活動につながる評価にもなったと考える。
クシートに書き込ませるようにした。はじめのうち
はどんなめあてを立てていいのか戸惑っている児童
・児童の意欲を高めさせるための場の工夫
が多かったが,教師の支援や友だちが自分の良いと
これらを中心に今後さらに研究を進めていきたい。
・全単元の評価規準及び評価基準の作成
ころを見つけて発表してくれたり,友だちのめあて
<主な参考文献>
佐々木昭著
『生活科教育の研究と実践』
教育開発研究所
1992
文部省
『新しい学力観に立つ生活科の学習指導の創造』
東洋館出版社
1993
木村光雄編著
『雑草からカード作り
いかだ社
1996
ワンダーランド』
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