於 グランドアーク半蔵⾨、2015.11.12 研究助成報告会 愛媛⼤学 中畑和之 3次元CADデータと多点計測技術を活⽤した 中⼩構造物の動態監視に関する研究 研究背景 社会インフラの経年劣化が社会問題となっており, 特に我が国に70万以上あるといわれている橋梁の安全性をどのように 担保するのかが喫緊の課題である 中⼩の橋梁は近接⽬視検査が義務化.しかし,それで⼗分か︖ 膨⼤な数の中⼩橋梁に対する効率的なメンテナンス技術とは︖ 必要となる要素 ・定量的な検査 ・健全度のオンサイト判断 (即時検査) ・ポータブル性と操作性 動的挙動から評価 (振動・波動) 研究⽬的 振動・波動データを効率よく収集・制御する無線計測システムと 動態挙動の3次元可視化技術の構築. 可視化結果から,損傷を同定する技術の開発. H25年度 (1) 計測ノードの作成 (2) 3D-CADデータ上への 計測データのマッピング (3) 実橋における計測 H26年度 (4) マルチフィジックス センサの搭載 (5) 様々なフィールドにおける 3次元可視化の有効性の検証 (1) 計測ノードの作成 無線計測ノード MEMS 3軸 加速度センサ センサノード 無線センサノード センサノード 加速度を電圧信号へ 無線計測ノード A/D変換を⾏う 無線通信でデータ転送する モバイルPC (基地局) 加速度から変位を算出 計測データの記録 基地局PC 16基の無線センサノード を対象橋梁の床版に設置 データを無線通信で計測 圧電型⾼感度センサを併⽤する場合 基本は安価な MEMSセンサを⽤いるが 感度が⾜りない場合等は 圧電型センサで補⾜ JACIC殿の研究助成⾦で 8個購⼊. (定電流電源装置も8個) 基地局PC データを無線通信で計測 (2) 3D-CADデータ上への計測データのマッピング 1 3 5 7 9 11 13 15 2 4 6 8 10 12 14 16 圧電型⾼感度センサ MEMSセンサ ※16基のセンサモジュール各3軸⽅向の加速度48波形を同時計測 サンプリング周波数︓1000Hz デジタルフィルター︓2-400Hz 計測時間︓60sec 計測加速度 ・中央で跳躍(曲げ1, 3次モード) ・中央からずれて跳躍3/4の位置(曲げ2次モード) ・⾼欄を1Hzで揺らす(ねじりモード) 実験結果(藤原町歩道橋) 雄郡横断歩道橋(松⼭市藤原町) 昭和51年完成 上部構造︓I型の桁橋 下部構造︓鋼製円柱橋脚 基礎︓直接基礎 z y x ⊿L=3.62 [m] 1 3 5 7 9 11 13 15 2 4 6 8 10 12 14 16 H=1.21 L=25.3 16点で得られた変形データをCAD上にマッピング. 衝撃による橋梁床版の挙動を3次元にリアルタイム可視化 ⾼覧の⽚側を揺する ノードの波形例 5 1 3 5 7 9 11 13 15 14 16 中央での跳躍 4 6 8 10 12 変位[mm] 2 跳躍位置に近いノードでは 変位が⼤きく,着地時に最⼤振幅となり, その後減衰していく様⼦が確認できる. 時間[sec] 7 z⽅向の加速度のパワースペクトル 1 3 5 7 9 11 13 15 2 4 6 8 10 12 14 16 卓越する振動数に対して狭帯域のバンドパスフィルタを作⽤させ3次元可視化 3.49 ‐ 3.51 ‐ 3.56[Hz] 4.80 – 4.90 – 5.30[Hz] 曲げ1次モード 11.20 – 11.26 – 11.36[Hz] 曲げ2次モード ねじり1次モード 13.96 – 14.35 – 14.67[Hz] ねじり2次モード 21.84 – 21.87 – 21.93[Hz] 曲げ3次モード (3) 実橋における計測 松⼭市で計測した歩道橋⼀覧 0 9 10 1 2 5 3 4 6 7 8 対象歩道橋の選定 ・松⼭市中⼼部に位置する国道・市道 ・構造が似ている(階段の設置状況) ・ただし,スパンに違いがある 対象とする歩道橋⼀覧 H25年度のまとめ 無線センサネットワークを構築し,橋梁の振動計測を⾏う システムを開発した.基本はMEMSセンサだが,圧電型⾼ 感度センサを部分的に取り⼊れるようにした. 加速度データから変位データに変換し,3D‐CADにマッピン グすることで,橋梁の振動を3次元可視化する技術を開発 した. 実橋(歩道橋)によってフィージビリティチェックを⾏った. 1橋梁あたり1時間程度の計測時間であった. (4) マルチフィジックスセンサの搭載 定常ノイズ ・加速度センサの種類 MEMS加速度センサ ICP加速度センサ アンプ内蔵型 ⾼感度加速度センサ 定常ノイズでは精度に差があるように⾒えるが 変位に変換するとMEMSセンサも⼗分な精度を 有していることがわかる. 加速度 3Hz100gal 変位 MEMSセンサは安価で低電⼒であるから,できれば多点で使⽤したい. しかし,MEMSのノイズは道路橋の振動を測るのには無視できないレベル. マルチフィジックスセンサ(様々な種類のセンサ)を⽤いた MEMS加速度計測の⾼度化を考える. (1) MEMSセンサのデータ校正 相補フィルタ(カルマンフィルタ)を 導⼊したノイズ除去 (2)ジャイロセンサを利⽤したデータ結合 異種センサからのデータも加法的に結合す ることによって多点間のデータを補間 (現在,研究中です) センサ・ フュージョンの 構築 カルマンフィルタによる状態量推定 測定値 ノイズ 状態=本当の加速度 計測値 計測値 状態 推定値 推定値 カルマンフィルタ 尤度上昇 次の状態の予測 状態空間モデル 現在の状態 相補フィルタ 圧電型⾼感度センサを校正⽤として⽤いる 新しいノイズ除去法 x + - カルマン フィルタ になるような フィルタ設計 渡り廊下の振動実験 y 275 275 x 5150 2 5150 5150 4 6 手摺 8 1150 3 5 手摺 7 1150 650 650 1 8000 工学部 1 号館 工学部本館 16000 無線センサノード設置点 加振点 概要 センサモジュール8セット(圧電+MEMS) 各3軸⽅向の加速度48波形を同時取得 • サンプリング周波数︓1kHz • ローパスフィルタ︓100Hz • 約12kgのおもりを渡り廊下中央で落下 加振位置付近 (ノード6,z⽅向) 1.0×10 0 1.0×10 -2 1.0×10 -4 パワースペクトル 1.0×10 -6 1.0×10 -8 1.0×10 -10 0 10 20 7.5Hz 30 40 50 渡り廊下端 (ノード7,z⽅向) 1.0×10 0 1.0×10 -2 ノイズが取り除かれ卓越する 振動成分がはっきり表れる 特にノード7においては,ノ イズに埋もれていた卓越周波 数が読み取ることができる 卓越周波数を確認 1.0×10 -4 1.0×10 -6 1.0×10 -8 1.0×10 -10 0 10 20 30 周波数(Hz) 40 50 原波形 相補フィルタ (5)様々なフィールドにおける3次元可視化の有効性の検証 振動による損傷の検出は,難しそう. ⼩さな損傷では,固有振動数の低次モードに変化が現れない. 波動の可視化はできないか︖ 桁を伝搬する B A 波動計測時の注意点 ・サンプリングレート ・各ノードの時刻同期の精度 たとえば6m離れた位置A,Bで計測すると B 250 250 200 200 150 150 100 100 [gal] [gal] A 50 0 初動部を拡⼤ 50 0 ‐50 ‐50 ‐100 ‐100 ‐150 ‐150 ‐200 ‐200 A ‐250 0 0.002 0.004 0.006 [s] 0.008 0.01 B ‐250 0 0.002 0.004 0.006 [s] 確かに到達時間が遅れている.波動として計測可能︕ 0.008 0.01 I型⾦属部材の計測実験 ⾼感度センサ 材質(Aluminum) cL=6.3km/s cT=3.1km/s ρ=2700kg/m3 AD変換ボード ナショナルインスツルメンツ NI-9234 ハンマー加振 センサ出⼒を記録する. ノートPCで計測制御. インターフェースはLabVIEWを使⽤. ワイヤレス通信 加振点A 加振点B 加振点 A 加振点 B 250 受信センサ 128 点(10mm おき) y 10 x 130 y 加振点C 加振点 C 57 z 57 x z 10 10 2000 [mm] 振動に⽐べると2桁⾼い 20 1.2 15 1.0 正規化スペクトル 振幅 (mm) 10 5 0 -5 -10 0.6 0.4 0.2 -15 -20 0.0000 0.8 0.0005 0.0010 0.0015 時間 (sec) 0.0020 0.0025 0.0030 0.0 0 1250 2500 3750 5000 周波数 (Hz) 6250 7500 8750 10000 250 計測列 3 計測列 2 計測列 1 計測列 1,2,3 受信センサ 128 点(10mm おき) y y x 計測列 8 計測列 7 計測列 4 計測列 4 z 計測列 5 x z 計測列 6 可視化領域 計測列 5,6,7,8 2000 0.5msec 1.0msec 1.5msec 2.0msec 2.5msec 3.0msec 3.5msec 4.0msec H26年度のまとめ • センサフュージョンの検討を⾏った. 通常のMEMSではノイズに埋もれて確認することができない 固有振動数を,相補フィルタによって読み取ることができた. • 3次元可視化を“波動”に応⽤した. 振動よりも周波数が2桁⼤きいので,サンプリング数や 時刻同期に注意する必要がある.波動の⽅が周波数が⾼く, ⽋陥や損傷に対して検出感度が期待できる. 損傷箇所のスクリーニング検査には振動を,損傷同定には波動 というふうに2段階(あるいはマルチステップ)の検査法を検討中. 全体を振り返って H25年度 ⾃⼰評価 (1) 計測ノードの作成 (2) 3D-CADデータ上への計測デー タのマッピング (3) 実橋における計測 H26年度 (5) マルチフィジックスセンサ の搭載 (6) 様々なフィールドにおける 3次元可視化の有効性の検証 今後の展望 ジャイロセンサ等を活⽤したより⾼度なセンサフュージョンの実施. 振動・波動の可視化を応⽤した⽋陥同定法の開発 道路橋でフィージビリティチェック
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