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潮流解析結果の可視化
E96002
1.
芦澤
正浩
指導教員
藤田
吾郎
は じ め に
START
電力系統は発電機, 送電線, 変圧器, 開閉器,
負荷などが複雑に組み合わされたシステムであ
る。発電機で発電された有効電力, 無効電力がど
の送電線, 配電線を通って負荷に流れていくか,
またこの際, 送電系統内の各点における電圧や電
流はどのような分布をしているかを知ることは,
電力系統を運用したり新たに設備を追加したり
する場合に非常に重要である。本研究では汎用
性に優れた潮流計算プログラムの作成を行い, そ
の計算結果を視覚的に把握するための手法につ
いて検討を行った。
2. 基
礎
理
のように非線形なので, Newton-Raphson 法を用い
て解を求める。Newton-Raphson 法とは, 非線形
方程式において, 適当な収束条件を満たすように
反復計算をするものである。n 母線系統では, (2n2)本の方程式を解くことになる。このときのアル
ゴリズムを図 1 に示す。
発電機母線
負荷母線
送電系統
潮流計算における既知量と未知量
既知量
有効電力
母線電圧
有効電力
無効電力
n=0
ΔPk(n) ,ΔQk(n) , ΔVe2(n)
を計算
修正方程式の係数
(Jacobi 行列)を計算
ΔJk(n)Δek(n)=ΔPk(n)
(n)
(n)
のときΔek , Δƒk を求める
n=n+1
0 = F (P , Q,V ) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (2)
表1
初期値設定
ek(0)=1.0 ƒk(0)=0
修正方程式
論
<2-1> 潮 流 計 算[1][2]
この方法は, 電力系統内の潮流状態を把握する
ための計算方法である。
電力系統において, 発電機母線・負荷母線それ
ぞれの既知量は表 1 に示した通りである。これ
らをもとに電力系統のいろいろな電気量を求め
ることが潮流計算の目的である。
電力系統は
I = YV ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1)
I:ノード電流
V:ノード電圧
Y:アドミタンス行列
と表現することができるので, この方程式をベー
スにして, 既知量 P, V, Q をもとに残りの未知量
を算出する。その際の方程式は
位置
入力データ
P
V
P
Q
送電線路および
機器の接続状態
と定数
未知量
無効電力
Q
位相角
θ
母線電圧
V
位相角
θ
送電系統内の母線電圧と位
相角(V, θ)および線路, 機
器を流れる有効・無効電力
潮流
Yes
| Δek(n)|<ε?
| Δƒk(n)|<ε?
STOP
No
e k(n)→eh(n)+Δe k(n)
ƒk(n)→ƒh(n)+Δƒk(n)
図 1 Newton-Raphson 法の流れ図
<2-2> ヤコビアン行列の作成法[2]
潮流計算における修正方程式の係数は例えば
ノード 1 が基準ノード, ノード 2, 3 が P‐Q 指定
ノード, ノード 4 が P‐V 指定ノードの時, 次の
ような行列となる。
 ∂P2
 ∂e
 2
 ∂Q 2
 ∂e
 2
 ∂P3
 ∂e 2
 ∂Q
3

 ∂e 2
 ∂P4

 ∂e 2
 ∂V 4 2

 ∂e 2
∂P2
∂f 2
∂Q 2
∂f 2
∂P3
∂f 2
∂Q 3
∂f 2
∂P4
∂f 2
2
∂V 4
∂f 2
∂P2
∂e 3
∂Q 2
∂e 3
∂P3
∂e 3
∂Q 3
∂e 3
∂P4
∂e 3
2
∂V 4
∂e 3
∂P2
∂f 3
∂Q 2
∂f 3
∂P3
∂f 3
∂Q 3
∂f 3
∂P4
∂f 3
2
∂V 4
∂f 3
∂P2
∂e 4
∂Q 2
∂e 4
∂P3
∂e 4
∂Q 3
∂e 4
∂P4
∂e 4
2
∂V 4
∂e 4
∂P2
∂f 4
∂Q 2
∂f 4
∂P3
∂f 4
∂Q 3
∂f 4
∂P4
∂f 4
2
∂V 4
∂f 4







 ・・・(3)









今回は, この行列を作成するにあたり n 母線電
力系統にも対応させるため, この行列の行の数と
列の数を, 奇数と偶数に分けて考えることにした。
また, 初めはヤコビアン行列を 2n 行 2n 列とし
て作成し, 最終的に基準ノードを取り除いて 2n-2
行 2n-2 列の行列にするという方法にした。
その方法を以下に示す。
(1) 奇数(2k-1)行, 奇数(2m-1)列
∂Pk
= g ⋅ a k + G km e k + B km f k ・・・・・・・・・・・・ (4)
∂e m
k=m なら g=1, それ以外の時は g=0
(2) 奇数(2k-1)行, 偶数(2m)列
∂Pk
= g ⋅ bk − Bkm ek + G km f k ・・・・・・・・・・・・・ (5)
∂f m
k=m なら g=1, それ以外の時は g=0
(3) 偶数(2k)行, 奇数(2m-1)列
①ノード k が P‐Q 指定なら
∂Q k
= − g ⋅ bk − Bkm ek + G km f k ・・・・・・・・・・・ (6)
∂em
k=m なら g=1, それ以外の時は g=0
②ノード k が P‐V 指定なら
∂Vk2
= 2 ⋅ g ⋅ ek ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (7)
∂em
k=m なら g=1, それ以外の時は g=0
(4) 偶数(2k)行, 偶数(2m)列
①ノード k が P‐Q 指定なら
∂Q k
= g ⋅ a k − G km ek − B km f k ・・・・・・・・・・・・ (8)
∂f m
k=m なら g=1, それ以外の時は g=0
②ノード k が P‐V 指定なら
∂Vk2
= 2 ⋅ g ⋅ f k ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (9)
∂f m
k=m なら g=1, それ以外の時は g=0
3. 可視化の工夫
1
0.08+0.4i
0.12+0.5i
0.1+0.4i
3
0+0.3i
図3
2
4
潮流計算結果の可視化
4. ま と め
[3][4][5]
図 2 において, 潮流計算結果の可視化を試みた。
その際, 用いたデータを次の通りである。
∼
2
1
∼
3
4
図2
表2
branch の太さ
矢印の向き
円の半径
branch の数字
表 2 を順を追って詳しく説明すると, branch の
太さは, 有効電力の値が送電端と受電端で異なる
ため, それらの平均値の絶対値をとった。
矢印は branch の中央に書き, 長さは branch の
1
長さの , 向きは有効電力の平均値の符号で定め,
6
太さは有効電力の平均値の絶対値(branch 太さ
と同じ)とした。
円は, 半径をノード電圧の絶対値, branch の中
央の数字はインピーダンスを表している。
また, データのとり方は n 母線に対応するため
リスト形式にし, 座標は適当に定めた。これによ
り, 大規模電力系統にも応用できるようになった。
その結果を図 3 に示す。
対象システム
図のプロパティ
有効電力の平均値の絶対値
有効電力の流れる方向
ノード電圧の絶対値
インピーダンス
まず, n 母線に対応可能な潮流計算プログラム
を作成し, 潮流計算結果の簡単な可視化をするこ
とができた。
今後の課題として, 現在研究中である過渡安定
度, 可視化手法との協調, 計算時間の高速化, 浮
遊ノード除去の自動化, などについて取り組みた
いと考えている。
文
献
[1] 関根泰次, 『電力系統解析理論』, 電気書院,
(1971)
[2] 関根泰次, 『電力系統過渡解析論』, オーム
社, (1984)
[3] 島田規人, 横山明彦, 『電力系統の動揺現象
の画像表現』, 平成 9 年度電気学会全国大
会論文集, No.1480, (1997)
[4] 島田規人, 横山明彦, 『電力系統の動揺現象
の画像表現に関する基礎的検討』, 平成 8
年 度 電 気 学 会 全 国 大 会 論 文 集 , No.304,
(1996)
[5] 高橋一弘, 満田章道, 『電力系統ダイナミッ
クスの可視化』, 平成 8 年度電気学会全国
大会論文集, No.303, (1996)