【76】播種性糞線虫症の1例 鹿児島県 原口 政臣,中屋 優,松元 優太

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播種性糞線虫症の1例
◎原口 政臣 1)、中屋 優 1)、松元 優太 1)
鹿児島市立病院 1)
【はじめに】
て観察したところ、多数の糞線虫を確認。確認のために平
今回、劇症化した播種性糞線虫症の 1 例を経験したため報
板寒天培地(ミュラーヒントン培地使用)にて糞線虫の這
告する。
い後の観察を行った。髄液、喀痰からは、糞線虫の確認は
糞線虫症は糞線虫による寄生虫感染症であり、鹿児島県奄
できなかった。17 日目の糞便からも糞線虫が確認できた。
美地方以南の地域に分布しているとされており、経皮感染
【考察】
にて侵入し腸内自家感染の状態で何十年もの間、無症候性
塗抹検査による糞線虫の確認後に家族からの情報で、患者
であることもある。自家感染の患者の免疫能の低下がみら
は高校まで鹿児島県与論島に住んでおり以降鹿児島市に住
れたときに感染虫体の異常な増加がみられ過剰感染となり
んでおり、30 年前に好酸球が増えていたため他施設を受診
播種性糞線虫症を発症することがある。
している。そこで膠原病が疑われたが、特に治療は受けて
【症例】
はいなかった。鹿児島県は分布地域を持っており本症例は
80 歳代、男性。既往歴:アレルギー性鼻炎、急性胆嚢炎に
約 60 年前に自家感染を起こしていたと考えられる。また、
て胆嚢摘出、心筋梗塞、好酸球増多症、癒着性イレウス、
好酸球増多症もあり発熱ためステロイド治療を以前より行
脳梗塞など。発熱と意識障害にて月末に入院。入院時の血
っていた。そのことにより播種性糞線虫症を発症したと思
液培養から 3 日後に Enterococcus avium を検出。入院 7 日
われる。
目に糞便の塗抹検査にて糞線虫を確認。同日よりイベルメ
クチン内服を開始したが、17 日目に心肺停止となった。
【細菌学的検査】
糞便の塗抹検査にて寄生虫様形態の観察より、直接塗抹に
鹿児島市立病院 臨床検査部 099-230-7000