5 キノロン低感受性 S.Paratyphi A によるパラチフスの一症例 ◎松元 優太 1) 鹿児島市立病院 1) はじめに 更された。抗菌薬開始から 4 日後の血液培養 パラチフスはパラチフス A 菌(S.Paratyphi A) で陰性を確認。その後症状は軽快するも弛張 が敗血症を引き起こして発症する全身性疾患 熱が続いたが、およそ 1 ヶ月の入院加療で軽 であり、3 類感染症に指定されている。長い潜 快退院となった。 伏期を経て発症するため、海外で感染し帰国 後の不明熱という形で見つかることが多い。 おわりに これまでフルオロキノロン系抗菌薬が第一選 チフス・パラチフスに対してはフルオロキノ 択薬として用いられていたが、アジアを中心 ロン系抗菌薬が第一選択薬とされてきたが耐 に耐性菌の増加が懸念されている。今回キノ 性菌の増加が問題となっており、近年サルモ ロン低感受性株によるパラチフスを経験した ネラ属のフルオロキノロン系抗菌薬に対する ので報告する。 判定基準の変更が行われている。今回の症例 を通して、耐性菌が国際的に問題になってい 患者 る現在における感染症治療での細菌検査の重 40 代女性。発熱(最高 40.5 度)、頭痛、悪寒、 要性を改めて感じた。今後も臨床と連携を密 戦慄を主訴に近医にて対症治療されていたが にとりながら治療に貢献できるよう努めたい。 改善がなかったため当院内科を紹介受診。発 症のおよそ 20 日前にミャンマー、ラオスへの 渡航歴あり。旅行中に嘔吐下痢症になったが 連絡先 帰国後改善していた。症状より髄膜炎が疑わ 鹿児島市立病院 臨床検査技術科 松元 れ髄液検査がおこなわれたが異常を認めず患 099-230-7000(内線 2249) 者の帰宅希望があったため経過観察となり一 時帰宅となった。2 日後、頭痛、発熱が続き食 事もままならなくなったため入院目的で来院。 経過 入院時採取された血液培養 2 セットからグラ ム陰性桿菌が検出されたためグラム陰性桿菌 敗血症と診断され MPM が開始された。 Salmonella Paratyphi A が同定されパラチフスの 診断に至り抗菌薬が CPFX へと変更された。 薬剤感受性試験では CPFX の感受性は良好で あったが、NA 耐性であり、キノロン低感受性 株であることが判明。抗菌薬が CTRX へと変
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