第 82 回 愛媛県内企業動向アンケート調査結果

第 82 回 愛媛県内企業動向アンケート調査結果
−2013 年度上期実績及び 2013 年度下期見通し−
【調査要領】
1 調査目的:愛媛県における企業の経営実態と景気動向の把握
2 調査対象:愛媛県内に事務所を置く企業
3 調査方法:郵送によるアンケート調査
4 調査時期:2013 年 10 月中旬
5 調査期間:前期実績 2013 年度上期(2013 年 4 月∼2013 年 9 月)
当期見通 2013 年度下期(2013 年 10 月∼2014 年 3 月)
6 調査項目:業況についての総合判断、売上高、収益、雇用の動向、
設備投資の動向、経営上の問題点等
【回答状況】
調査企業数
回答企業数
回答率
構成比
(社)
(社)
(%)
(%)
業種
1,084
361
33.3%
100.0%
製造業
234
83
35.5%
23.0%
建設業
107
42
39.3%
11.6%
農林水産業
87
15
17.2%
4.2%
卸売業
97
43
44.3%
11.9%
小売業
154
49
31.8%
13.6%
不動産業
23
11
47.8%
3.0%
運輸・通信業
87
44
50.6%
12.2%
295
74
25.8%
20.5%
全産業
製造部門
非製造部門
サービス業
1
2013 年度上期の業況判断 DI は改善
2013 年度下期も改善予想、景気回復のリスクは財政問題
・ 2013 年度上期の日本経済は、
「アベノミクス」効果により、昨年末からの円高修正と株価回
復が一段と進み、景気回復への期待感が高まった。
・ 2013 年度上期の業況判断 DI は、全産業ベースで 12 となり、2012 年度下期の 0 と比べ大幅
に改善(対前期比+12 ポイント)した。2013 年度下期の業況判断 DI は 15(対前期比+3 ポ
イント)で、さらに改善の予想となった。
【特別質問】
① [景気の現状]−「上昇」
、
「緩やかに上昇」と答えた割合が 36%で、前回(32%)と比べ上昇
傾向にあると答えた割合が増加している。
② [景気回復の心配材料]−上半期中に日本の債務残高が 1,000 兆円を超え、尚増加している
こと等が影響し、
「財政問題」が 28%を占めている。次いで「金利上昇」が 21%、
「為替の影
響」が 20%と続いている。
③ [景気の回復時期]−「既に回復期」が 15%と、前回(9%)を上回った。さらに、3 か月先が
5%、半年先が 19%、1 年先が 25%と、1 年程度で回復すると考えている割合は 49%で約半
数に上る結果となった。
④ [賃上げについて]−「給与を上げる予定」が 15%、
「賞与を上げる予定」が 22%、
「給与・
賞与を両方上げる予定」が 15%となり、半数以上(52%)の企業が賃上げをしていく意向であ
ることが明らかとなった。
2
◇業況判断 ∼2013 年度上期は大幅に改善、2013 年度下期も引き続き改善予想∼
2013 年度上期は、2012 年度下期と比べ、業況は大幅に改善した。
業種別に見ると、製造部門では売上数量、売上金額が増加したことにより「建設業」
、
「水産業」
が、売上単価の改善と商品仕入価格の改善により「一般機械」が、非製造部門では売上金額が増
加したことにより「海運業」
、売上数量、売上金額が増加したことにより「飲食業」が改善した。
2013 年度下期はさらに改善が予想されている。製造部門では売上数量の増加見込みから「金属
製品」
、
「食料品」
、非製造部門では売上数量、売上金額の増加予想から「小売業」
、
「陸運業」が改
善予想。
<図表 1
業況判断 DI>
※DI は、業況判断が「好転」企業の割合 −「悪化」企業の割合
<図表 2
業況判断
3
予想実績対比表>
◇売上高∼2013 年度上期は DI がプラスに改善、2013 年度下期はさらに改善
予想∼
2013 年度上期は DI がプラスに改善。製造部門では売上数量の増加により「建設業」、
「水
産業」が、非製造部門では売上数量の増加により「不動産業」、「飲食業」、「陸運業」が改
善した。
2013 年度下期は DI がさらに改善する予想。製造部門では売上数量の増加見込みから「一
般機械」、「輸送機械」、「水産業」、非製造部門では売上数量の増加見込みから「陸運業」、
「宿泊業」が改善予想。
<図表 3
売上高 DI>
※DI は、売上高が「増加」企業の割合 −「減少」企業の割合
◇収益
∼2013 年度上期は DI がプラスに、2013 年度下期もほぼ横ばい∼
2013 年度上期は DI がプラスに改善。製造部門では売上数量の増加から「水産業」、
「建
設業」、非製造部門では売上金額の増加から「不動産業」、「海運業」が改善した。
2013 年度下期は、上期から若干減少するものの、DI は引き続きプラスになる予想。製
造部門では売上数量の増加見込みから「一般機械」、
「金属製品」
、「食料品」、「農業」で改
善が予想され、
非製造部門では全般的に収益環境は今期からやや悪化する見通しとなった。
<図表 4
収益 DI>
※DI は、収益が「増加」企業の割合 −「減少」企業の割合
4
◇雇用
∼2013 年度上期は不足状態、2013 年度下期もさらに不足状態が続く
見込み∼
2013 年度上期は前期から不足状態が続いている。製造部門では「建設業」、非製造部門
では「飲食業」
、「宿泊業」、
「陸運業」で不足の度合いが強まった。
2013 年度下期はさらに不足する予想。製造部門では「木材・木製品」、
「建設業」、
「食料
品」
、
「一般機械」、非製造部門では「福祉」
、
「その他サービス」で不足度合いが強まる予想。
<図表 5
雇用 DI>
※DI は、雇用が「過剰」企業の割合 −「不足」企業の割合
◇設備投資
∼2013 年度上期では 41%の企業が実施、2013 年度下期計画は製
造部門で減少、非製造部門で微増∼
2013 年度上期の設備
<図表 6
設備投資の実施状況>
投資については、全産業
2010
2011
2011
2012
2012
2013
2013
で 41%(対前期比+0%)
下期
上期
下期
上期
下期
上期
下期
の企業が実施した。
実績
実績
実績
実績
実績
実績
見通し
2013 年度下期の全産
全産業
37%
32%
36%
35%
41%
41%
40%
業の設備投資計画につい
製造部門
38%
32%
37%
36%
36%
45%
38%
ては、40%(対前期比▲
非製造部門
36%
32%
36%
35%
43%
38%
41%
1%)の企業が予定してお
り、製造部門で 38%(対前期比▲7%)、非製造部門で 41%(対前期比+3%)となっている。
2013 年度上期の設備投資の内訳を見ると、“効率化”や古くなった“既存設備の補修”
など合理化のための投資が多い。
(1) 製造部門
製造部門では、前期に比べて増産に対する設備投資を行っている割合が上がった。
設備投資を「実施した」と答えた割合が 50%以上であった業種は、食料品、紙・パル
プ、印刷、木材・木製品、化学工業、窯業・土石、金属製品、一般機械、農業、水産業
であったのに対し、30%未満であったのは、タオル、電気機械、輸送機械、建設業とな
っている。
(2) 非製造部門
非製造部門では、医療関係を除く全ての業種において、前期よりも設備投資を行った
5
割合が減少した。効率化を図る為の設備投資割合は前期よりも上がっている。
設備投資を「実施した」と答えた割合が 50%以上であった業種は、陸運業、宿泊業、
医療関係であった。30%未満の業種は、卸売業、小売業、不動産業となっている。
【内訳】
1.業況判断
(1)製造部門
(2)非製造部門
[上期 DI]16(「好転」35、
「悪化」19)となっており、
①
[上期 DI]11(「好転」31、
「悪化」20)となっており、
①
前期から 16 ポイント改善した。
②
前期から 10 ポイント改善した。
[業種別]
②
好転超⇒印刷、窯業・土石、建設業、農業、水産業、一般
[業種別]
好転超⇒不動産業、海運業、宿泊業、福祉、その他サービ
機械
ス、飲食業、卸売業、医療関係
悪化超⇒電気機械、輸送機械、化学工業、金属製品
悪化超⇒小売業、陸運業
[下期見通 DI]27(
「好転」36、
「悪化」9)となってお
③
[下期見通 DI]9(
「好転」27、「悪化」18)となってお
③
り、上期から 11 ポイント改善の予想。
り、上期から 2 ポイント悪化の予想。
2.売上高
(1)製造部門
(2)非製造部門
[上期 DI]13(「増加」38、
「減少」25)となっており、
①
[上期 DI]3(
「増加」28、
「減少」25)となっており、
①
前期から 13 ポイント改善した。
②
前期から 9 ポイント改善した。
[業種別]
②
[業種別]
増加超⇒飲食業、不動産業、海運業、福祉、その他サービス
減少超⇒食料品、金属製品、一般機械
減少超⇒卸売業、小売業、医療関係
③
増加超⇒タオル、木材・木製品、農業、水産業、建設業
[下期見通 DI]32(
「増加」43、
「減少」11)となってお
③
り、上期から 19 ポイント大幅に改善の予想。
[下期見通 DI]7(
「増加」24、
「減少」17)となってお
り、上期から 4 ポイント改善の予想。
6
3.収益
(1)製造部門
(2)非製造部門
[上期 DI]10(「増加」35、
「減少」25)となっており、
①
[上期 DI]5(
「増加」32、
「減少」27)となっており、
①
前期から 20 ポイント大幅に改善。
②
前期から 9 ポイント改善。
[業種別]
②
増加超⇒食料品、窯業・土石、水産業、建設業
[業種別]
増加超⇒飲食業、不動産業、海運業、宿泊業、福祉、その
減少超⇒木材・木製品、金属製品、化学工業、輸送機械、
他サービス
農業
③
減少超⇒卸売業、小売業、陸運業、医療関係
[下期見通 DI]15(「増加」33、「減少」18)となって
③
おり、上期から 5 ポイント改善する予想。
[下期見通 DI]▲1(
「増加」24、
「減少」25)となって
おり、上期から 6 ポイント悪化する予想。
4.雇用
(1)製造部門
①
(2)非製造部門
[上期 DI]▲13(「過剰」13、「不足」26)となってお
[下期 DI]▲19(
「過剰」9、
「不足」28)となっており、
①
り、前期から 7 ポイント拡大した。
②
前期と同じ値となった。
[業種別]
②
過剰超⇒紙・パルプ、金属製品、電気機械、輸送機械
[業種別]
過剰超⇒なし
※不足超⇒タオル、印刷、窯業・土石、一般機械、農業、建
※不足超⇒全業種
設業、食料品
③
③
[下期見通 DI]▲22(
「過剰」8、
「不足」30)となって
[下期見通 DI]▲27(
「過剰」7、
「不足」34)となって
おり、上期から 8 ポイント拡大する予想。
おり、上期から 9 ポイント拡大する予想。
7
5.経営上の問題点
<図表 7 経営上の問題点>
2009
年度
2010
年度
2011
年度
2012
年度
上期
下期
上期
下期
上期
下期
上期
下期
2013
上期
年度
売
上
不
振
製
品
・
商
品
安
①
21
①
17
①
18
①
14
②
15
②
12
②
15
②
12
③
10
③
7
③
9
③
8
6
④
8
⑤
7
③
7
6
5
原
材
料
高
人
手
不
足
人
手
過
剰
5
⑤
8
⑤
6
②
14
③
9
③
11
4
3
4
2
5
2
4
1
7
1
7
⑤
7
⑤
8
④
10
1
6
③
9
②
11
1
1
1
人
件
費
高
人
件
費
を
除
く
経
費
の
増
加
在
庫
過
剰
③
7
4
1
3
6
4
2
1
3
6
5
1
3
0
3
5
6
1
4
0
3
5
5
1
6
④
7
3
1
2
4
5
1
2
0
3
5
6
1
8
⑤
9
3
1
2
5
5
1
3
0
2
4
6
1
③
7
④
9
④
7
⑤
7
⑤
7
設
備
不
足
設
備
過
剰
金
利
負
担
の
増
加
2
1
4
2
1
2
資
金
繰
り
難
受
注
・
販
売
競
争
の
激
化
②
17
②
15
②
17
③
13
①
15
①
15
①
17
①
14
①
14
環
境
対
策
円
相
場
原
油
価
格
後
継
者
海
外
品
と
の
競
合
品
質
管
理
そ
の
他
2
3
4
3
1
3
2
3
3
4
4
1
3
1
2
4
3
2
3
2
2
4
3
④
10
4
1
2
2
2
4
4
2
3
1
2
5
5
④
11
3
1
4
1
2
5
4
2
3
1
2
6
6
④
8
4
1
3
1
1
5
8
4
1
3
1
全産業ベースでの経営上の問題点は、第 1 位「受注・販売競争の激化」
、第 2 位「原材料高」
、第 3 位「売
上不振」
、第 4 位「人手不足」
、第 5 位「人件費高」であった。
上位 5 つの問題点の構成比が高い業種(上位 5 業種)は以下の通りである。
① 「受注・販売競争の激化」13.8%・・・窯業・土石製品(26.3%)、金属製品(25.0%)、不動産業(23.5%)、建設
業(21.9%)、小売業(21.1%)
② 「原材料高」10.7%・・・飲食業(32.3%)、タオル(22.2%)、木材・木製品(22.2%)、宿泊業(22.2%)、水産業(18.8%)
③ 「売上不振」10.4%・・・電気機械(28.6%)、輸送機械(16.7%)、卸売業(15.5%)、小売業(14.7%)、金属製品
(14.3%)
④ 「人手不足」10.2%・・・福祉(29.4%)、飲食業(22.6%)、海運業(19.0%)、医療関係(18.6%)、建設業(15.2%)
⑤ 「人件費高」8.8%・・・医療関係(30.2%)、海運業(19.0%)、福祉(17.6%)、電気機械(14.3%)、その他サービ
ス(14.3%)
6.おわりに
2013 年度上期の業況判断 DI は 12 ポイント改善し 12 となった。背景には、
「アベノミクス」効果による円
高修正・株価回復と、2020 年のオリンピック開催決定による、日本経済の本格的な回復への期待の高まりが
ある。
ただし、円高修正は一部の業種では原材料価格・燃料価格の高騰につながってきており、さらに来年 4 月か
らの消費税増税に伴い、収益の確保のためには、厳しさを増している。
景気のさらなる継続的な本格回復には 5 兆円規模の経済対策の確実な実行と「アベノミクス」第三の矢であ
る「成長戦略」の具体的な実現が不可欠となる。
今後も業種毎に情報収集に努め、愛媛県内景気の動向を注視していく。
以 上
8