<総 説> Review 急性放射線性消化管症候群

放射線生物研究 Radiation Biology Research Communications
50(1), 84-97, 2015
<総 説>
Review
急性放射線性消化管症候群における Toll 様受容体の役割
千葉大学大学院医学研究院・医学部 粘膜免疫学 1、
東京大学医科学研究所 国際粘膜ワクチン開発研究センター 自然免疫制御分野 2
武村直紀 1、2、植松智 1、2*
(2015 年 2 月 20 日掲載決定)
Role of Toll-like receptors in acute gastrointestinal radiation syndrome
1
Department of Mucosal Immunology, Graduate School of Medicine, Chiba University,
2
Division of Innate Immune Regulation, International Research and Development Center for
Mucosal Vaccine, Institute of Medical Science, The University of Tokyo
Naoki Takemura1,2, Satoshi Uematsu1,2*
(Accepted for publication 20 February 2015)
電離放射線は被曝臓器の感受性に応じて様々な障害を引き起こす。急性放射線性消化管症候群は
放射線事故あるいは癌の放射線治療において、消化管が高線量の放射線に被曝した場合に引き起こ
される重篤な障害である。その病態機構について、ヒトや動物で数多くの研究がなされているにも
かかわらず、有効な治療手段は未だに確立されていない。Toll 様受容体(TLR)は最も代表的な自
然免疫受容体の一つであり、病原体の感染防御に対して重要な免疫応答を惹起することで知られて
いる。ところが近年の報告によると、本来の防御機能とは対照的に、TLR によって誘導された応答
が特定の炎症性疾患や自己免疫疾患において組織傷害を増悪させていることが明らかとなりつつあ
る。今回の総説では、急性放射線性消化管症候群に関する理解についての最近の進歩とともに、そ
の病態形成機構への TLR の寄与について概括する。
キーワード:Toll 様受容体、急性放射線性消化管症候群、クリプト、細胞死
*
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