論文要旨

様式 3
学 位 論 文 要 旨
研究題目
Impact of Post-Procedural Intravascular Ultrasound Findings on Long-Term
Results Following Self-Expanding Nitinol Stenting in Superficial Femoral
Artery Lesions
(浅大腿動脈病変へ自己拡張型ナイチノールステント留置後の
長期成績における血管内超音波検査所見の影響)
兵庫医科大学大学院医学研究科
医科学 専攻
器官・代謝制御 系
循環器病 学(指導教授
増山 理
)
氏 名 三木 孝次郎
冠動脈における血管内超音波検査(IVUS)に関する研究では、小さな血管へのステント留
置やステントの拡張不全、ステントの非対称性拡張、ステントエッジの解離などが経皮
的冠動脈ステント留置術後の再狭窄の危険因子として報告されている。しかし、下肢動
脈において血管内治療(EVT)後の再狭窄に関連する IVUS 所見についての報告はない。
ナイチノール製の自己拡張型ステントを浅大腿動脈(SFA)へ留置後に IVUS が施行された
連続 236 病変を解析し、
標的病変への再血行再建術(TLR)施行に寄与した因子を検討した。
最小/最大ステント面積、近位部/遠位部の対照血管面積が測定された。ステント拡張率
は最小ステント面積/対照血管内腔面積、長軸方向のステント対照性は最小ステント面積
/最大ステント面積、短軸方向のステント対照性は最小ステント径/最大ステント径とし
て算出した。また定性的な IVUS 所見としてはステントエッジにおける解離の有無が評価
された。TLR は血管造影上 75%以上の狭窄を伴う、臨床的に導かれた再 EVT の施行もしく
は外科的再血行再建術の施行と定義した。
平均観察期間は 34±15 ヶ月であった。この期間に合計 42 病変(17.8%)において TLR が施
行された。
ステント全長が TLR 施行群において TLR 非施行群と比べ有意に長かった(213.1
±75.4mm vs. 169.8±90.0mm, p=0.04)。最小ステント面積は TLR 施行群にておいて有意
に小さかった(13.4±4.0mm2 vs. 14.9±4.3mm2, p=0.04)。ステント拡張率やステント対
照性、近位部の対照血管面積において両群間に有意な差はみられなかった。遠位部の対
照血管面積は TLR 非施行群と比べて TLR 施行群では小さかった(25.1±7.6mm2 vs. 32.3
±10.7mm2, p<0.01)。ステントエッジの解離は TLR 施行群において高頻度に認められた
(45.2% vs. 19.1%, p<0.001)。多変量解析の結果、ステント全長(オッズ比[OR]:1.004、
P<0.05)、遠位部の対照血管面積(OR:0.91、P<0.01)、ステントエッジの解離(OR:3.51、
P<0.01) は、TLR の独立した予測因子であった。
SFA 病変において、小さな血管へのステント留置とステントエッジの解離の発生は TLR の
高い危険因子である。ただし、術後のステント拡張不全やステント非対称性拡張は TLR
に関連していなかった。