少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明 公職選挙法の選挙年齢の改正に伴い,自由民主党は,少年法の適用対象年齢等に関し て,「成年年齢に関する特命委員会」を設置し,その検討を始めた。 しかしながら,現行の少年法制の下では,少年事件は全件家庭裁判所に送致され,少 年鑑別所での資質鑑別や家庭裁判所調査官による社会調査などが行われ,少年の未成熟 さを踏まえた教育的な働きかけにより,更生・成長発達を図っている。また,少年院に おいては,24時間態勢での矯正教育を行い,人格の内面に踏み込んだ指導が行われて いる。このような現行少年法制下の矯正教育の結果,多くの非行少年が早期に立ち直っ ているのである。 仮に,少年法の適用年齢が引き下げられるとなると,18歳・19歳の少年は,刑事 手続によって処罰されるところ,刑事手続の約7割が起訴猶予処分であり,多くの少年 が犯罪の背景・要因等に関する調査や立ち直りのための方策が実施されることなく刑事 手続は終了してしまうことになる。このような結果は,少年の更生や立ち直りにつなが らず,むしろ,少年の再犯が増加する懸念さえ生じさせるものである。 そもそも,少年法と公職選挙法とでは,その目的・趣旨が異なる以上,選挙権を付与 する年齢と少年法が適用される年齢を同一年齢にしなければならないという論理的必然 性はない。むしろ,各法律の目的や趣旨が異なる以上,少年法や公職選挙法のそれぞれ の目的・趣旨に応じて,適用年齢を異なるものとすることにも合理性が認められるとい うべきである。 なお,少年法の適用年齢を引き下げるべきとの意見の中には, 「少年非行の増加」や「少 年犯罪の凶悪化」を根拠とするものもあるが,刑法犯少年の検挙者数は,平成16年を ピークに年々減少しているし,少年による凶悪犯罪の検挙者数もピーク時(昭和30年 代)の12%以下にまで減少していることなどからも,「少年非行の増加」や「少年犯罪 の凶悪化」という指摘が客観的事実に基づかない論調であることは明らかである。 したがって,当会は,少年の更生と自立のためには,少年法の「成人年齢」は現行の まま維持されるべきであると考えることから,少年法の適用年齢の引下げに強く反対す る。 2015年(平成27年)6月25日 大分県弁護士会 会 -1- 長 西 畑 修 司
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