デイケアにおけるメタ認知トレーニングの実践

【抄録】
日本デイケア学会 第 18 回年次大会
「デイケアにおけるメタ認知トレーニングの実践とその意義」
○細野正人1) 石垣琢麿2)
1)青山会関内クリニック 2)東京大学大学院
【はじめに】
メタ認知トレーニング(MCT)は 2007 年にドイツ、ハンブルク大学の Moritz 教授らが
考案した統合失調症患者向けの認知療法的プログラムである。ヨーロッパ圏を中心に海外
では有効性がすでに認められている。プログラムの内容は、幻覚や妄想にかかわる心理学
的メカニズムに焦点をあてた講義(ノーマライゼーションも強調される)と、楽しみなが
ら学ぶことができる課題とディスカッションから構成されている。
メタ認知トレーニング日本語版(MCT-J)は、Moritz 教授の指導のもと石垣が作成し
た(石垣,2012)。MCT-J は楽しみながら、偏りゆがみがちな認知的インフラを整えるこ
とのできる有用性の高いプログラムと言える。
青山会関内クリニックデイケアでは、MCT-J プログラムはマンネリ化することなく、
多くのメンバーが参加する人気のプログラムになっている。本発表では、MCT の臨床ツー
ルとしての魅力とともに、参加者にとっての MCT-J プログラムの意義と、実践する支援
者にとっての意義について検討する。
【対象と方法】
青山会関内クリニックデイケアでは、2011 年 12 月より、毎週 1 回~隔週 1 回で MCT-
J を実施している。参加者は統合失調症に限らず、うつ病、双極性障害、神経症、適応障害
などのデイケアメンバーである。前大会では、Moritz 教授と同じ項目のアンケートを参加
者に実施し、先行研究とほぼ同じ結果が得られたことを報告した。本大会では、MCT-J
の参加者にインタビューを実施し、得られた意見をもとに MCT-J 実践の意義について検
討する。
また、我々は、支援者を対象に MCT-J の研修を全国で実施し、2013 年 4 月現在で研修
参加者の延べ人数は 700 人を超える。この研修参加者に実施したアンケート結果について
も検討を行う。
【結果及び考察】
MCT-J 参加者を対象としたインタビューでは、
「面白い」
「グループワークが楽しい」
「内
容が難しい」などの意見を得た。また、支援者を対象とした研修会アンケートでは、
「楽し
く学べる」「少し難しく感じる」などの意見を得た。
大会当日は、これらの意見をもとに、デイケアメンバーにとって MCT-J プログラムに
参加する意義と、支援者にとって MCT-J を実践する意義の 2 点を考察した内容を報告す
る予定である。