2015年11月5日 「知の知の知の知 」第2705号

い~な
診療所
あまみ
中
中 央
事務局
研究所
しらさぎ
つなぐの
さくら
大阪+知的障害+地域+おもろい=創造
知の知の知の知
社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所情報誌通算 2705 号 2015.11.5 発行
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社説:子どもの幸福度 国際比較で見える日本は
西日本新聞 2015 年 11 月 04 日
日米欧など34カ国が加盟する経済協力開発機構(OECD)が比較可能な指標を使い、
各国の幸福度、暮らしよさを公表している。
雇用と収入、住宅、環境、健康、安全や生活満足度など11項目について各国の数値を
比較する。2015年版が先月出され、今回から子どもの幸福度が加わった。
国際比較で日本に問題ありとされたものは何か。
「子どもの貧困」「青少年の自殺率」
「1
5歳の学校への帰属意識」
「子どもと親が過ごす時間」などが挙げられる。
日本では、平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす子ども(18歳未満)が6人に1
人に上る。11年の日本の貧困率15・7%に対し、最小のデンマークは3・8%、韓国
まで上位11カ国が10%を切った。OECD平均は13・7%で、日本は34カ国中2
4位だ。15~19歳の青少年の自殺率をみると、日本は統計がある31カ国のうち高い
方から8番目になる。
学校への帰属意識は「友達をつくりやすいか」
「疎外感や孤独感を感じるか」などで測る。
日本の15歳は低い方から8番目にある。
親と過ごす時間はどうか。統計にばらつきがあり、単純比較はためらわれるが、日本は
少ない。
一方、15歳の読解能力などは高い。日本の子どもの生活満足度はどのくらいだろう。
27カ国の11歳、13歳と15歳に聞いたデータがあるが、日本はその中にはない。
この27カ国のうち満足度が高いのはトップがスペイン、次いでオランダで、逆に一番
低いのはトルコで、次いでポーランドだった。
いじめを受けている子どもの統計でも日本のデータはなかった。
欧米と比較できる日本の統計は少ないようだ。それでも国際比較をすることで日本が抱
える問題を意識し、考えるきっかけになる。
日本の子どもたちは総じて勉強はできるが、学校生活に楽しさを感じていないようだ。
何が原因なのか。どうすれば改善するか。まずは実態を把握する必要がある。
子どもの貧困対策はどうか。政府は広く寄付を募って支援を強めるというが、それで足
りるのか。
障がい者が地域の担い手に
公明新聞 2015 年 11 月 4 日
農福連携、雇用を拡大
障がい者らが農作業の担い手となる「農福連携」が広がりを見せている。障がい者や高
齢者の就労拡大と賃金アップ、健康増進をめざす福祉分野と、高齢化による労働力不足や
耕作放棄地の増加が深刻な農業分野が手を携え、互いの課題を解決しようという取り組み
だ。2014 年度にハローワークを通じて農林漁業に障がい者が就職した件数は、09 年度の 2.6
倍超の 2870 人に上った。
愛媛県の障がい福祉サービス事業所では、耕作放棄地を借りて自然農法でコメや野菜な
どを栽培。作業に当たる障がい者の工賃は同様の作業所の 4 倍を超える。農産物の生産、
加工、流通を一体的に手掛ける「6 次産業化」の分野でも、障がい者を積極雇用する動きが
各地で始まっている。
国や地方自治体も支援に乗り出し、農林水産、厚生労働両省は、障がい者などを対象と
した福祉農園の整備などを進める「
『農』と福祉の連携プロジェクト」を展開。香川県や鳥
取県は、農業者と福祉作業所などを橋渡しするマッチング支援を行う。公明党は、今年 3
月の参院予算委員会で山本博司氏が農福連携の推進を訴えるなど積極的に後押ししている。
京都で「マルシェ」
(販売会)開催 新鮮な農産物ずらり 竹内副大臣、佐藤政務官が参加
「いらっしゃいませ!」
「取れたての新鮮な野菜はいかが
ですか」―。京都府庁(京都市上京区)で 3 日、府内の障
がい者就労支援事業所などによる農産物や加工品の販売会
「農福連携マルシェ in 京都」
(主催=農林水産、厚生労働
両省、共催=京都府)が開催され、多くの来場者でにぎわ
いを見せた。これには竹内譲厚労副大臣、佐藤英道農水大
臣政務官(ともに公明党)がそろって参加した。
イベントは、国が進める「農福連携」の取り組みの一環
として実施。会場内には、丹波の黒豆や田辺ナス、特 A 米の丹後のコシヒカリなど地元産
の新鮮な農産物のほか、宇治抹茶を使った大福や規格外の果物を使ったジャムなどの加工
品がずらりと並んだ。
オープニングセレモニーであいさつに立った竹内氏は、農福連携の意義について「障が
い者の方が地域を支える担い手となり、地方創生にもつながる」と強調。また佐藤氏は「今
後も農業と福祉の連携に取り組む人たちを支援し、全国に広げていきたい」と述べた。
その後、竹内、佐藤の両氏は、会場内の販売ブースを見て回り、出店者らと交流。社会
福祉法人「よさのうみ福祉会」の藤原さゆりさんは、「過疎化や高齢化が進む中で、少しで
も地域の活性化につなげたい」と意気込みを語っていた。
<集団移転>志津川に「福祉モール」構想
河北新報
2015 年 11 月 05 日
志津川東地区に整備する「福祉モール」の完成予想図
南三陸町社会福祉協議会は、志津川東地区に
高齢者生活支援施設「福祉モール」を整備する。
2017年4月開設予定で、高齢者のデイサー
ビスに加え、障害者や子どもが集える場にもす
る。東日本大震災で被災した町で新しい福祉サ
ービスの形を目指す。
モールは、病院や町役場庁舎がある志津川東
地区のうち、高齢者の入居者が半数を占める災害公営住宅の隣接地に建設する。木造平屋、
延べ床面積約900平方メートルで、総事業費は約4億7000万円。外壁をガラスで覆
うデザインを採用し、災害公営住宅の集会所と歩道でつなぐ。
定員17人のデイサービス、居宅介護支援事業に加え総合相談コーナーを設けて地域包
括ケアの中核を担う。住民ボランティア組織「ほっとバンク」による高齢者見守りの拠点
としても活用し、ショートステイ事業も行う。
世代間の支え合いが大きな特徴で、子どもの一時預かりや障害者の就労訓練の場として
カフェレストランを併設。高齢者自ら1人暮らし世帯に食事を配る有償サービスの展開も
計画する。
町社協の猪又隆弘事務局長は「施設を中心に地域力を復活させ、元気な高齢者を増やし
たい。町を被災地から福祉の先進地に押し上げる」と意気込む。
町は高齢化の加速が予想される志津川東地区で介護予防や生活支援のための拠点施設の
建設を計画。公募型プロポーザルの結果、町社協の提案を選定した。町が国の復興交付金
で施設整備を補助する。
安倍首相、発達障害児の支援拡充検討を要請
日テレニュース 24 2015 年 11 月 4 日
政府は4日、第3次安倍改造内閣発足後初の教育再生実行会議を開き、安倍首相は発達
障害児や、不登校児らへの支援の拡充を検討するよう要請した。今後、子どもへの学習支
援のあり方や、関係団体との連携の方法などを検討し、来春をめどに提言をまとめる。
政府は4日、第3次安倍改造内閣発足後初めてとなる教育再生実行会議を開き、安倍首
相は、発達障害児や不登校児らへの支援の拡充を検討するよう要請した。
安倍首相はあいさつで、
「不登校や発達障害など、子どもたち1人1人の状況にきめ細か
く対応した教育についてさらに議論を深めることが必要だ」と述べ、発達障害児や不登校
児らへの支援を拡充するよう訴えた。
これに対し、会議に参加したメンバーからは、「発達障害児はできるだけ早期に発見し、
状況に応じた支援が必要で、早期発見のためには専任の指導者を置く必要がある」という
意見や、
「脳科学の専門家や、現場の先生の意見も反映させて議論を進めるべき」といった
意見がでた。
会議は今後、こうした子どもへの学習支援のあり方や関係団体との連携の方法などにつ
いて検討し、来年春をめどに提言をまとめることになっている。
中3の進学希望率は98.1% 県教委調査
東京新聞 2015 年 11 月 5 日 栃木
県教育委員会は四日、中学三年生を対象にした第一回進路希望調査(十月一日現在)の
結果を公表した。高校などへの進学希望率は98・1%で、前年同期より0・2ポイント
減少した。
今回から国、県立の特別支援学校の生徒を調査対象に加えたため、来年三月の卒業予定
者は、前年より四百四十五人多い一万九千四十三人。
県立高校の全日制課程で倍率が二倍以上は五校十科(系)あり、最も高かったのは宇都
宮工の建築デザイン系で四・一〇倍。定員に満たなかったのは、二十六校四十科(系)だ
った。軽度の知的障害者の職業教育のため、二〇一六年度に県が新設する高等特別支援学
校「宇都宮青葉高等学園」
(仮称)は定員八十人に対し、八十九人が希望し、倍率は一・一
一倍だった。 (藤原哲也)
理想の医師像 志す弟へ
心臓病の山田倫太郎君、患者の立場で本出版
東京新聞
2015 年 11 月 5 日
「医者をめざす君へ」を出版した山田倫太郎君(左)と弟の
恵次郎君=長野県箕輪町で
心臓に障害がある長野県箕輪町の箕輪中学校二年、
山田倫太郎君(14)が「医者をめざす君へ」
(東洋
経済新報社・九百七十二円)を出版し、反響を呼ん
でいる。自らの治療体験をもとに、患者の立場から
「理想の医師像」をまとめた本で、医師を志す幼い
弟のために書いた。 (編集委員 安藤明夫)
倫太郎君は生まれた時、左右の心室を隔てる壁が
なく、手術を繰り返して生命の危機を乗り越えた。
現在も、酸素吸入器を手放せず、不整脈やチアノー
ゼ(酸素不足)
、腸からタンパクが漏れるなどの症状がある。水分制限など、日常生活や行
動面の制約も多い。学校の授業は午前中だけ受けている。
昨年夏の入院中、弟の恵次郎君(5つ)が「将来は医者になってお兄ちゃんの病気を治
したい」と言ったのを母こづえさん(41)から聞き、恵次郎君に医療に対する自分の思
いを知ってもらおうと執筆した。幼いころから作家を目指し、病院で検査を受ける子を安
心させる手製の絵本を書いたこともある。その話題が新聞などで紹介され、今回の出版に
つながった。
本では「医師は患者さんの病気だけを診ていればよいのではない。患者さんの生活全体
を見て接しよう」
(第一条から)
、
「入院している患者さんにも自分の生活がある。だから検
査や治療はできる限り患者さんの生活に合わせてやるべきだと思う」(第四条から)など、
「患者が望む理想の医師八カ条」を紹介。それぞれを倫太郎君の体験に基づいて解説して
いる。
家族旅行の予定に合わせて主治医が退院を早めてくれたことや、長時間に及ぶ手術の途
中で両親に「大丈夫です」と伝えてくれたこと、朝食時に検査に呼ばれ、大好きな親子丼
を食べられなかったことなどのエピソードを交え、患者や家族の気持ちを医療者側が酌み
取ることの大切さを呼び掛けている。命や差別問題に関するエッセーや詩も載せた。
八月に出版された当初は、インターネットのサイトで注文を受けて印刷する形式だった
が、注文が相次ぎ、九月から書店販売に切り替えた。初版五千部に加え、十月に二千部を
増刷し、
「子どもに読んでほしい」と漢字に仮名をふった。テレビのチャリティー番組に倫
太郎君が出演し、明るく前向きな人柄が共感を呼んで反響の輪が広がった。
読者からの感想も十数通が中学校や病院に届いた。難病の子を世話する親や、子を病気
で亡くして間もない親から「感動した」「励まされた」と、感謝の言葉がつづられていた。
「一生懸命考えて書きました。学校の図書館などにも置いてもらえたらうれしい」と倫太
郎君。
現在は、別の出版社からも執筆依頼が入り、自宅にある愛用のパソコンで、自伝的な読
み物を書いている。小さいころから関心があった歴史上の人物、妖怪の話も盛り込むとい
う。
倫太郎君の担当医で長野県立こども病院循環器小児科の滝聞浄宏(たきぎくきよひろ)
医師(48)は「念願の出版が実現して本当に良かった。闘病する子どもたちの励みにな
る本だ。小児科を志す若い医師たちにも読んでもらいたい」と話す。
子どもにも広がるロコモ
中日新聞 2015 年 11 月 4 日
遊び変化、省力社会も影響
ロコモ予防のニュースポーツ「スポーツテンカ」を楽しむ親子
=愛知県一宮市で
日常生活に必要な運動機能が低下した「ロコモティ
ブシンドローム(運動器症候群、ロコモ)
」が子どもに
も広がっている。外遊びなど日常生活で体を使わなく
なったのが原因。単一の競技をやり続けていて、機能
が低下した子どもも。将来、要介護状態になる危険が
高まっている。 (寺西雅広)
ロコモは、足腰など筋肉が弱まって日常生活に支障
をきたした状態を指し、もともとは高齢者が対象だった。ところが、「子どもにも同様の異
変が起きている。このまま高齢になると、要介護状態になる人が続出する恐れがある」。さ
いたま市の整形外科医林承弘(しょうひろ)さん(66)は懸念する。
林さんが子どもの変化を感じたのは2013年6月。体育の授業の跳び箱で、両手を骨
折した男子中学生を診察したのがきっかけだった。
「彼は卓球部だったが、手首が反り返ら
ず、体を支えられなかった」
。調べてみると、
「しゃがめない」「片足で立てない」などの子
どもが増えていた。
大きな要因は外遊びの減少と、日常生活で機械がやってくれることが増えたこと。ゲー
ム機やパソコンで遊ぶことが増え、
「蛇口をひねる」「ドアノブを回す」など生活上の細か
い作業も減った。関節や筋肉をいろんな方向に動かす機会がないことが影響している。
野球やサッカー、水泳などに通わせているからといっても、大丈夫なわけ
ではないらしい。
「定期的に運動していても、体をうまく使えない子は多い。
ロコモのまま、本格的な運動を始めてはけがをする」と指摘する。日本スポ
ーツ振興センターによると、中学生の学校での骨折発生率は1970年から
の40年間で約2.5倍に増加している。
子どものロコモを防止するため、全国ストップ・ザ・ロコモ協議会の副理
事長も務める林さん。自分の子どもがロコモ予備軍かどうかを調べるために、(1)片足で
5秒以上立つ(2)かかとをつけてしゃがむ(3)手を真っすぐ上げる(4)膝を曲げず
に指先を床に着ける(体前屈)−の四つをチェックすることを勧める。
防止するためのお勧めのトレーニングは、相撲の四股とてっぽう。「四股は股関節など下
半身、てっぽうは肩甲骨など上半身を大きく動かすのに最適です」と呼び掛ける。
予防のための新球技も
「投げるよ」
。父がパスする軟らかいボールを、小学6年の男児は何度も捕り損ねた。投
げるスピードは緩いが、わざと捕りにくい所に投げるのがルール。男児は「難しい」と何
度も首をひねった。
10月中旬、愛知県一宮市で開かれたイベント。一対一でボールを投げ合い、捕球技術
を競う球技「スポーツテンカ」に地元の親子が参加した。
男児は週1回以上、学校のクラブ活動でバスケットボールに参加しており、体を動かす
のは好きな方だ。
「運動していないわけではないと思うけど…。動きが鈍いなと感じる時は
ありますね」と父は苦笑した。
この球技は、ロコモ解消にバランス良く体を動かしてもらおうと、日本レクリエーショ
ン協会と吉本興業が協力して13年に考案した。昭和40年代、全国の小学生の間で流行
していた「テンカボール」をもとに各地のルールを統一した。
4〜6メートルの距離で向き合ってボールを投げ、難しい体勢で捕球を成功させたり、
相手が捕球できなかったりすると得点が入る。背面キャッチなど大技が決まれば即勝利が
決まる。投げる、捕る、しゃがむ、踏ん張る、などさまざまな動きが取り入れられており、
考案メンバーの1人、タレントのワッキーさんも普及活動を展開している。
表情読む力は3歳から、京大解明 赤ちゃんと差異
共同通信 2015 年 11 月 5 日
人は3歳ごろになると、相手の表情から心の状態を読み取ろうとするようになるとみら
れることを京都大の明和政子教授(発達科学)のチームが実験で明らかにし、4日付の米
オンライン科学誌プロスワンに発表した。
赤ちゃんも人の顔をよく見るが、明和教授は、関心を引き生存の可能性を高めようとす
るためで、目的が違うと推測。
「表情を読む力が育つには時間がかかることが分かった。人
の知性がどのように獲得されるのかを解明するのに重要な成果」と説明した。
チームは、人がジュースをテーブルのコップに注ぐ動画と、テーブルにわざとこぼす動
画を用意した。
発達障害やアレルギーなど小児専門外来施設開設 西真岡こどもクリニック
下野新聞 2015 年 11 月 5 日
【真岡】高勢町3丁目の「西真岡こどもクリニック」敷地内に4日、発達障害やアレル
ギーなど、小児専門外来の受診者を対象とする「専門外来棟」がオープンした。同クリニ
ックの仲島大輔(なかじまだいすけ)理事長(44)は「県内でも珍しい小児専門クリニッ
クとして、さらに地域内医療に貢献したい」話している。
同クリニックは2011年開院。風邪や発熱などの一
般的な小児科診療のほか、発達障害やアレルギー、海外
渡航アドバイスなどの小児専門外来を受け付けている。
これまでは小児科診療と専門外来を同一病棟で行って
いたが、院内感染リスクの低減と、専門外来の診療内容
の充実を目的に、同クリニックの仲島理事長が専門外来
専用の病棟建設を発案。同クリニック敷地内に約1億円
をかけて新病棟を建設した。
専門外来病棟はこれまでの外来棟に隣接。専用の出入り口と待合室を設け、風邪などの
患者と会うことなく受診できる構造になっている。三つの診察室に加え、心理検査室、処
置室を備えている。
総務省と内閣官房、マイナンバーで合同会議
首相指示受け
日本経済新聞 2015 年 11 月 4 日
総務省と内閣官房は4日、税と社会保障の共通番号(マイナンバー)制度に関する合同
会議「マイナンバー制度実施本部」の初会合を開いた。自治体の事務処理ミスや通知カー
ドの誤配達、マイナンバーに関連した詐欺などが相次いでいるのを受け、円滑な交付や詐
欺対策の周知啓発などに力を入れる。10 月 30 日の安倍晋三首相の高市早苗総務相への指示
を受けた。
特集ワイド:流行語大賞を大予想
本命「火花」? 「SEALDs」
「五郎丸」が続き…
毎日新聞 2015 年 11 月 04 日
中森、鈴木、夏野の3人全員が流行語大賞に予想した又吉直樹さん
の「火花」
。すでに239万部売れているという=大阪市の書店で、
三浦博之撮影
「戦後70年」の節目となった2015年も残り2カ月。
「現代用語の基礎知識」(自由国民社)が選ぶ「ユーキャ
ン新語・流行語大賞」の候補発表を目前に、新語に敏感な
3人の識者と一足先に今年の流行語大賞の行方を予想し
てみた。さて、あなたのイチオシは?【小国綾子】
「今年は不作だねえ」。コラムニスト、中森明夫さんは嘆息した。「めぼしいのは、お笑
いコンビ『ピース』の又吉直樹さんの芥川賞受賞作『火花』、ラグビーのワールドカップ(W
杯)日本代表選手で『ルーティン』が話題になった『五郎丸』歩選手、安全保障関連法案
に反対した若者団体『SEALDs(シールズ)』。でも、どれも固有名詞で、流行語らし
くない」
実際、流行語が「固有名詞化」する傾向があると中森さんは指摘する。
「雑誌の特集タイ
トルでは『30代女子がハマる○○』など文脈で読ませるより『宮崎駿』
『ガンダム』など
ネット検索しやすい固有名詞を前面に出す方が売れる。受け手が固有名詞を目にした時、
深く考えず“脊髄(せきずい)反射”しているからではないか」
中森さんに昨年の大賞「ダメよ〜ダメダメ」みたいなのは?と問われ、お笑いコンビ「ク
マムシ」の「あったかいんだからぁ」や「8・6秒バズーカー」の「ラッスンゴレライ」、
「とにかく明るい安村」の「安心してください、はいてますよ」を挙げたが、「いまひとつ
だね。お笑いやバラエティー番組から圧倒的な流行語が次々出ないのは、テレビが弱って
いるからかも」と中森さん。
それでもあえて「流行語大賞」を三つ予想してもらった。「『火花』『五郎丸』『1億総活
躍』
。安倍晋三首相が打ち出した1億総活躍は、時代錯誤も甚だしいけどその分インパクト
はありました」
AV女優や日経新聞記者の経歴を持つ作家、鈴木涼美(すずみ)さんは「昨年の候補の
『こじらせ女子』や09年トップテンの『草食男子』などの男子女子モノが一つもない」
と残念がる。大賞予想は「火花」
「マイナンバー」「SEALDs」だ。
「
『火花』は本離れの時代に純文学が200万部以上売れることを教えてくれた。『マイ
ナンバー』は新聞記者時代に取材した制度ですが、社会のカタチを変えると思う。
『SEA
LDs』は過去の話だった学生運動がメジャーになり、流行語を取る勢いってこと自体が
面白い。今時の若者も政治に熱くなるんだ、と」
もう一人、
「iモード」の生みの親で、ドワンゴ取締役、慶応大特別招聘(しょうへい)
教授の夏野剛(たけし)さんは「火花」「ドローン(小型無人機)」「SEALDs」と予想
する。
「火花」について「動画投稿サイトでは素人とプロの差が縮まっている。文学界でも
プロの作家と恐ろしく本を読んでいる読書オタクとが実は近い存在だと証明してくれた」。
逆に「ドローン」と「SEALDs」は夏野さんにとって「残念な流行語」だ。
「ドローンが登場した途端、
『落ちたら危ない』と議論になり、規制法が成立した。新技
術に実際触ったことのない古い世代が規制に走る、日本社会の体質が浮き彫りになった」
と指摘する。
「SEALDs」についても「学生運動を体験した団塊世代のノスタルジーを
喚起した」
。二つとも「古い世代による後ろ向きの流行語」というのである。
今年は他にどんな流行語があったっけ。食べ物では「熟成肉」「ペヤング復活」。映画は
「レリゴー」が一世を風靡(ふうび)した昨年の「アナと雪の女王」みたいなヒット作品
は思いつかない。日本人受賞者が相次いだノーベル賞だが名セリフは記憶にない。社会現
象では中国人観光客の「爆買い」か。
昨年、ワイドショーの話題をさらったのは「STAP細胞はあります」
「ゴーストライタ
ー」
「地方議員の号泣会見」だが、今年は何だろう?
「東京五輪! エンブレムの“パクり”問題」と中森さん。夏野さんも「『パクる』、で
すかね」と悩みつつ、
「むしろ今年は安保関連法では。新国立競技場の白紙撤回も安保法制
をめぐるゴタゴタで落ちた政権支持率の回復を狙った決断だろうから」。ちなみに昨年は
「集団的自衛権」が大賞を勝ち取っている。
夏野さんは安保関連では「法的安定性」を推す。首相補佐官(当時)が、法案と憲法に
ついて「法的安定性は関係ない」と述べ、野党の反発を招いた言葉だ。「なじみのない法律
用語が流行し、
『自衛隊は軍隊じゃね?』という“そもそも論”にまで火がついた。国会論
戦の混乱ぶりを象徴した言葉」と振り返る。
一方、中森さんは「戦争法案」を推す。「賛否両論あるだろうが、法案に呼び名が与えら
れた結果、世論を喚起し、議論が活発化した。これこそが流行語の役目です」
◇留保つきだけど「戦後70年」
個人的に応援したい流行語も尋ねた=表。夏野さんはラグビーW杯の「エディー・ジャ
パン」
。「日本代表は『日本人』や『外国人』の概念を揺るがした。外国人に見えて日本国
籍、日本人だけど外国生まれ、母語が英語……。現実のダイバーシティー(多様性)の方
が理想より先に進んでいることを鮮やかに示し、しかも勝ってみせた」
また産業界の最大の話題、
「AI(人工知能)
」と「IoT(Internet of T
hings、モノのインターネット)
」も挙げた。IoTは、体温、血圧、心拍数などを記
録するウエアラブル(着用型)端末や自動車の自動運転システムなどの事例で知られ、多
種多様なモノがネットにつながることで新たな技術やサービスが生まれている。
鈴木さんが挙げるのは「枕営業訴訟判決」「モラハラ離婚」「1万2000人校長」。特に
クラブママが「枕営業」で性交渉をしても、客の妻への不法行為にならない、とした判決
ニュースに「正妻と遊び相手とを分ける古臭い感覚を踏襲した判決で、男の人って変わっ
てないなあ」と鈴木さんはあきれる。
「くい打ち不正マンション」に心を残しつつも、中森さんが挙げたのは「かぶり婚」。9
月、俳優の福山雅治さんと同じ日に結婚を発表したお笑いタレントの千原ジュニアさんの
言葉だ。
「今は若い女性アイドルより、いい年をした中年男性タレントの結婚の方が“ロス
現象”を引き起こす。
『福山ロス』が話題になったが『かぶり婚』の方を推したい。『かぶ
り婚って“りこん”って入ってもうてるやん』というネタも面白い」とほめる。
が、中森さんのイチオシ流行語は実は「戦後70年」という。「ただし留保つきで」。そ
のココロは?
「戦後70年の今年、安倍首相が談話を出すなど話題になったけど、議論の中身はすご
く空疎だった。戦後70年の節目に『ずっと豊かで平和で良かった』と言えればよかった
けど、実際には平和の行方すら危うい。僕らの『戦後70年』は手放しで歓迎できるもの
じゃなかった、という留保付きで、やっぱり今年はコレじゃないかな」
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中森明夫さん
鈴木涼美さん
夏野剛さん
大賞予想
火花
火花
火花
五郎丸
マイナンバー
ドローン
1億総活躍
SEALDs
SEALDs
応援する流行語 戦後70年
枕営業訴訟判決
エディー・ジャパン
かぶり婚
モラハラ離婚
AI(人工知能)
戦争法案
1万2000人校長 IoT(モノのインターネット)
社説:一律の診療報酬改定は限界だ
日本経済新聞 2015 年 11 月 5 日
厚生労働省が医療機関の経営状況を見るために実施した 2014 年度の医療経済実態調査の
結果がまとまった。前年度に比べて病院の経営が悪化する一方、診療所は病院に比べて収
支面で余裕がある実態が明らかになった。
16 年度には医療機関の収入源である診療報酬の改定が予定されている。その財源は国民
の税金や健康保険料だ。国の苦しい財政状況を踏まえ、この調査結果を参考に医療機関の
経営実態に応じた見直しを実施し、全体的には報酬を抑制すべきだ。
調査結果によると、一般病院の損益率は平均でマイナス 3.1%となった。前年度はマイナ
ス 1.7%だったので、赤字幅が拡大したことになる。
診療所はプラス 15.5%だった。前年度の 16.1%から利益率は少し鈍化しているものの、
黒字を維持した。このほか、保険薬局も前年度より下がってはいるが、プラス 7.2%だった。
チェーン薬局など店舗数の多い薬局ほど利益率が高い傾向もわかった。
このように医療機関の形態や規模などによって経営状況は大きく異なる。診療報酬はす
べての医療機関向けに一律、あるいは大まかな区分けで決まることが多いが、このままで
は経営格差がさらに広がりかねない。できる限りきめ細かく報酬を設定し、余裕があると
ころから厳しいところにお金が回るようにしてもらいたい。
病院の経営悪化の原因のひとつには、消費税負担の問題もある。医療機関は医療機器な
どを購入する際に消費税を負担するが、医療は非課税であるため、患者から消費税を受け
取れない。消費税分が医療機関の持ち出しとなる。
国は診療報酬を引き上げて医療機関の損失を防ごうとしたが、このと
きも広く薄く一律に引き上げる傾向となった。結局、設備投資額が大き
な病院ほど、報酬引き上げ分よりも消費税負担の方が大きくなってしま
った。この問題の是正も求められる。一律対応には限界があることを肝
に銘じたい。
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