「はじめに」 「方法」 「結果」 「考察」などのタイトルはMSPゴシック14 P

子宮頸がん検診啓発活動報告~臨床検査技師としての役割~
渡邊 浩子
矢野 りか
寺田 一弥
加藤 誠
田永 哲士
宮崎市郡医師会病院 臨床検査科
「はじめに」
出し出産ができなくなることもある。しかし、検診などで
近年、臨床検査技師としての役割は職場での業務拡大に加
前がん病変までに発見し治療を行えば治癒可能な病気であ
え職場外での活動の場も広がってきている。病理部門では
る。子宮頸がんは 20~30 歳代に急増しており、この時期
日本臨床細胞学会細胞検査士会が LOVE49 プロジェクト
と出産のピークが重なっているため特に若い世代の検診受
に参加しており、各都道府県で子宮頸がん検診啓発活動を
診は必須と考える。
行っている。宮崎県においても「子宮の日」
「みやざき健康
「子宮頸がん検診について」
ふくしまつり」
「全国検査と健康展」で一般市民の方々に子
子宮頸がん検診受診率(欧米諸国との比較)や厚生労働省・
宮頸がん検診の受診を呼びかけている。今回はこの活動内
宮崎県の検診事業について報告する。
容と子宮頸がんについてのアンケートの集計結果を報告す
「子宮頸がん検診啓発活動報告」
る。
啓発活動の中で一般市民向けアンケートを実施している。
「子宮頸がんについて」
また、今年度同じアンケートを宮崎市郡医師会職員・看護
子宮頸がんは主に HPV(ヒトパピローマウィルス)が原
学生に対しても行ったので報告する。
因と言われている。HPV は性行為によって感染するが、
「まとめ」
ほとんどの人が感染するありふれたウィルスである。多く
アンケート調査、パンフレット配布だけで終わらないため
は一過性で自然消滅するが、持続感染する事で細胞は変化
にさらに踏み込んだ活動、また若い世代に子宮頸がんや検
し 5 年から 10 年以上かけて前がん病変を経て、一部がが
診の重要性についてどのように伝えていくかということが
んへと移行する。かなり進行するまで自覚症状がなく発見
今後の課題となる。
そのためには多くの方々の参加や行政、
が遅れ死に至り、また命を落とすことがなくても子宮を摘
他団体との協力が必要であると考える。
胸水中に出現した肺小細胞癌の一例
若松亜弥1)、長友明彦1)、谷口慎一郎1)、内山恵美子1)、石原明2)、熊部智章3)
県立延岡病院 臨床検査科1) 、同 病理診断科2) 、同 内科3)
【はじめに】肺小細胞癌は、原発性肺癌の約10-20%を占める
【考察】今回の症例では小細胞癌を第一に考えたが、孤立散
癌である。進行は早いが、化学療法や放射線治療に感受性
在性の細胞も多かったため、悪性リンパ腫を否定する目的で
が高く、早期発見・診断が重要とされている。今回、肺小細胞
免疫染色を実施した。液状検体において、血液疾患との鑑別
癌が胸水中に出現し、悪性リンパ腫との鑑別に注意を要した
または、原発推定が必要な腫瘍細胞が見られた場合には、セ
一例を経験したので報告する。
ルブロックや LBC 標本を作製し、免疫染色や特殊染色を行う
【症例】 80 代女性
ことで診断の補助となり得る。これまで、過去に小細胞癌、ま
【既往歴】 なし
【現病歴】平成 27 年 9 月に下腹部の違和感を感じ近医受診し
たは悪性リンパ腫細胞が胸水中に出現した症例を review した。
た際、胸部Xpで右胸水貯留を指摘され、他院へ紹介された。
一部の症例では、標本中に今回同様、両者の鑑別に注意を
胸腹部 CT で右胸水、右肺門部腫瘍、多数のリンパ節腫大を
要する部分が見られたが、標本の大部分は典型的な細胞像
指摘され、悪性リンパ腫疑いで同日、当院血液内科を受診し
を呈していたため、診断可能であったとみられる。
た。
【結語】今回、我々は胸水中に出現した肺小細胞癌の一例を
【細胞所見】一般検査ではMay-Giemsa染色でリンパ系腫瘍を
経験した。細胞形態や出現様式が典型的でない場合、注意
疑った。細胞診検査では、Papanicolaou 染色において緩い結
深く観察したうえで免疫染色を併用し、より確実な診断へ繋げ
合を示す極めて N/C 比の高い細胞に、相互圧排像を認めた
ることが求められる。
ことから小細胞癌を考えた。LBC 標本を用いた免疫染色では、
AE1/AE3(一部陽性)、LCA(-)、Synaptophysin(+)であり、
小細胞癌と診断した。その後の気管支鏡検査での細胞診標
本、気管支生検でも同じ診断であった。
連絡先:0982-32-6181 (内線 2261)
糞便中 GDH 陽性 toxin 陰性検体における培養コロニーを用いた toxin 検出の重要性
加来恵 岩﨑早耶 山田明輝 武田展幸 佐伯裕二 梅木一美 山本成郎 岡山昭彦
宮崎大学医学部附属病院検査部
【はじめに】Clostridium difficile は偽膜性腸炎や抗菌薬関連下
用いた toxinA/B 検出が陽性であったのは 55 件であった。45
痢症の起炎菌であり、院内感染対策上重要な菌である。当院
件は toxinA/B 陰性であり、10 件は C.difficile の発育が認めら
では 2012 年 9 月より C.difficile 抗原 Glutamate dehydrogenase
れなかった。
(GDH)及び toxinA/B を同時に検出できるキット C.DIFF
【考察】糞便中 GDH 陽性 toxinA/B 陰性となる要因として、産
QUIK CHEK コンプリート(アリーアメディカル)(以下、コンプ
生毒素量が少なく検出感度が満たない場合や毒素非産生性
リート)を使用している。今回コンプリート導入後の検査結果状
C.difficile の存在が知られている。今回の解析において、糞便
況を解析したので報告する。
中 toxinA/B の陽性率は 5.5%(1026 件中 56 件)であったが、
【方法】2012 年9 月から 2015 年8 月に C.difficile 感染症(CDI)
培養コロニーを用いて toxinA/B 検出をすることにより 10.8%
検査目的に提出された糞便検体 1026 件を対象とした。コンプ
(1026 件中 111 件)となった。米国感染症学会は 2010 年に米
リートを用いて糞便中 GDH 及び toxinA/B の検出を行った。
国医療疫学学会と合同で CDI に対するガイドラインを発表し
糞便中 GDH 陽性 toxinA/B 陰性の 検体に つ い て は
ており、この中で一次スクリーニングとして GDH 検出を用い、
CCMA-EX 培地(日水製薬)または“KBM”CCMA 寒天培地
陽性例について確認検査として毒素検出検査を実施する方
(コージンバイオ)にて 2~4 日間嫌気培養を行い、発育した
法が勧告されている。今回の解析においても、培養を併用す
C.difficile コロニーについてコンプリートを用い再度 toxinA/B
ることで糞便中toxinA/B 検出のみでは見逃される恐れのある
検出を行った。
CDI をより感度よく診断できたと考えられ、糞便中 GDH 陽性
【結果】糞便中GDH 陽性検体は 1026 件中166 件であり、同時
toxinA/B 陰性の場合、培養コロニーを用いた toxin 検出は必
に toxinA/B 陽性となったのは 56 件であった。糞便中 GDH
須であると考えられた。
陽性toxinA/B 陰性検体110 件を培養し、C.difficile コロニーを
連絡先 宮崎大学医学部附属病院検査部 0985-85-9401
『強溶血を呈した劇症型 Clostridium perfringens 敗血症の1症例』
大久保收二1)、田中裕子1)、柏田早希1)、野﨑裕史1)、矢野広樹1)、牧野貴洋1)、山本久美子1)、内田真由美1)
川本理一朗2)
社会医療法人 泉和会 千代田病院 検査部1) 救急部 医師2)
【はじめに】
ンボトルへ接種し培養検査を行い,C.perfringens が検出
Clostridium perfringens ( ウ ェ ル シ ュ 菌 , 以 下
された.宮崎県衛生環境研究所による毒素検査で,
C.perfringens)はヒトの腸管内に常在し,土壌中などの自
C.perfringens の A 型菌であることが判明した.
然界に広く分布し,ガス壊疽や食中毒の原因となる嫌気性
【臨床経過】
グラム陽性桿菌である.今回,C.perfringens による敗血
来院時は 39 度台の発熱と低酸素血症を示すのみで,意識
症で急激な経過をたどり短時間で死亡に至った症例を経験
レベル及びバイタルは安定していたが,諸検査を行ってい
したので,文献的考察を加えて報告する.
る最中に急激にショック状態となった.昇圧剤等の緊急処
【症例】
置を施行するも,搬入後約 2 時間という短い時間で死亡さ
71 歳,男性 主訴:発熱,下腹部痛,嘔吐 既往歴:誤嚥
れた.
性肺炎
【結語】
【現病歴】
本症例は強溶血があり,感染症関連項目高値であったこと
認知症のため他院精神科に入院中であったが,当院紹介前
から,細菌性毒素が関与した病態が推測されたため,末梢
日より発熱と下腹部痛を認め,その後,茶褐色の嘔吐と黄
血グラム染色を実施した.本症例のように極めて特徴的な
疸所見を示したため,当院に救急搬送となった.
所見を呈する感染症は,その特徴を知っていることが迅速
【細菌学的検査】
な病態把握につながる.発熱があり,強溶血を示す症例で
buffy coat を用いグラム染色を実施したところ,グラム陽
は,C.perfringens などによる敗血症の病態を念頭に置い
性桿菌を認めた.救命処置を優先した結果,検査材料が限
て検査を進めていかなければならない.
られていたため,凝固検査検体(クエン酸 Na 加)をレズ
検査説明・相談ができる臨床検査技師育成講習会の開催報告
那須 一生1)、佐野 亜由美1)、城 信俊1)、竹ノ内 博之2)、守田 政宣3)
県立日南病院 臨床検査科1)、宮崎大学医学部付属病院 輸血・細胞治療部2)、検査部3)
【はじめに】
県内 21 施設 36 名が参加し、模擬演習の際につけた評価
現在、検査説明は医師等の指示の下に看護師及び臨床検
シートでは検査説明はわかりやすかったという意見が多く
査技師が行うことができるとされているが、十分に行われ
得られた。事後アンケートの集計では参加者全員が「この
ていないのが現状である。
今回、
宮崎県で初めて「検査説明・
講習を受講してよかった」という意見であった。また、医
相談ができる臨床検査技師育成講習会」(以下、講習会と省
師との連携をどうするべきか、臨床検査技師の立場からど
略する)が行われたので、その内容とアンケート結果、今後
の程度まで説明してよいのかなど課題が示された。
の課題について報告する。
【考察】
【対象及び方法】
臨床検査技師は、医師や看護師の負担軽減や患者支援の
臨床検査技師を対象に、10 月 10 日、11 日の二日間、日本
ため、チーム医療の一員として積極的に検査説明・相談に関
臨床衛生検査技師会及び宮崎県臨床検査技師会の共同主
わっていくべきと考える。そのためにも今回講習会を開催して
催で講習会を行った。講習会内容は、日本臨床衛生検査技
得られた課題を解決していくために講習会の企画の見直しや
師会のカリキュラムに準じて行い「検査説明・相談ができる臨
日頃の技術向上に取り組んでいくことが重要と考えた。患者と
床検査技師育成企画担当者講習会」を受講した臨床検査技
接し、説明することは知識向上やコミュニケーションスキルの
師が指導して行った。研修内容は、講義、reversed-CPC やグ
向上にもつながる。チーム医療の一員としてさらに貢献して
ループワークによる模擬演習等を行った。模擬演習ではグ
いけるよう業務の幅を広げていく努力をしていかねばならな
ループごとに評価シートを用いて説明者の評価を参加者ど
い。
うしで行った。
【結果】
連絡先;0987-23-3111(内線 2322)
「地域ニューリーダー育成研修会」に参加して
神谷 英輝
小林市立病院 検査室
「はじめに」
日臨技及び都道府県技師会の組織活性化及び組織強化
道府県技師会の会長が推薦する 1 名
「研修内容」
事業の一環として、次世代の人材育成を目的とした「地域ニュ

社会情勢と次世代のリーダーに求めるもの
ーリーダ―育成研修会」が開催された。医療情勢が大きく変

日臨技の組織について
化する中で、保健・医療・介護分野における臨床検査技師の

日臨技の重点課題と方針
果たす役割はますます重要なものになっている。本研修会は

医療業界の現状について
社会情勢や国の重点政策を学ぶとともに、医療情勢や環境分

問題解決手法 TB(Task Breakdown)を学ぶ
析、課題解決力、計画立案方法などを身に付けた技師活動の

「プロジェクトマネジメント能力」実践研修
要となる求心力ある次世代リーダーの育成を行い、臨床検査
「所感」
技師の進むべき未来や日臨技活動のあり方について共有を
日臨技会長の次世代のリーダーに求めるものとして、明確
図る事を目的としている。今回この研修会に参加したのでそ
なビジョンをもち、自ら行動し新しい仕事を探し続けるという言
の内容について報告する。
葉が印象的であった。日臨技の組織体制、重点課題と方針の
「日時・場所」
説明があり、組織のあり方や抱えている課題の共有化ができ
平成 27 年 10 月 24 日(土)〜25 日(日)
たと思われる。プロジェクトマネジメント能力の実践研修により
晴海グランドホテル
問題を解決する手法を学ぶことができた。チーム別ケースス
「対象者」
日臨技及び都道府県技師会に所属する正会員の中から、
30 代後半から 40 代の都道府県技師会の役員経験者とし、都
タディにおいて各チームの問題解決の手法、発案が大変参
考となった。
連絡先:0984-23-4711 小林市立病院 検査室
初発の心不全入院にて診断された心アミロイドーシスの 1 例
濱松香純
1)
岡山昭彦
1)
武田恵美子
1)
尾方美幸
1)
鈴木千代子
1)
山本成郎
1)
児玉成邦
2)
井手口武史
2)
盛口淸香
3)
山下篤
3)
1) 宮崎大学医学部附属病院 検査部 2) 同 第一内科 3) 同 病理学講座構造機能病態学分野
はじめにアミロイドーシスとはアミロイドと呼ばれる異常
(granular sparkling様)、心房中隔肥厚、びまん性の運動低下
な線維性蛋白が全身の様々な臓器に沈着し、機能障害を起
(左室駆出率42%)及び左室拡張障害を認め、心アミロイドー
こす疾患である。心アミロイドーシスは心臓へのアミロイ
シスが疑われた。99mTC標識ピロリン酸心筋シンチグラムで強
ド沈着に起因する心機能障害を来たした病態で、難治性心
度集積を呈した。確定診断のため心筋生検を施行し、病理に
不全や種々の不整脈、伝導障害をきたし、病型によっては
おいて心筋にトランスサイレチン沈着が証明され、遺伝子検
急速に症状が進行する例もあり、予後不良な疾患である。
査には変異はなく、老人性全身性アミロイドーシスと診断され
今回、我々は初発の心不全にて心アミロイドーシスを診断
た。房室ブロック、伝導障害を考慮し、両心室ペースメーカ植
できた症例を経験したので報告する。
え込みを行い、心不全に対して薬物治療を強化した。
症例 71 歳、男性。
考察アミロイドーシスは多臓器に及ぶ障害が存在し、病型に
既往歴両手手根管症候群、頚椎症
よっては予後不良の疾患であると報告されている為、早期診
現病歴 2006 年より発作性心房細動による慢性心不全及び
断が重要である。刺激伝導系へのアミロイド沈着は伝導障害
慢性腎臓病で近医にて加療されていた。近年、徐々に心機
をきたす可能性がある。そのため、心電図において伝導障害
能低下と労作時の呼吸苦が出現し、当院第一内科第1回入
を認め、心エコー上心肥大、低左心機能を合併した場合は心
院となった。
アミロイドーシスを考慮し、検査を進める必要がある。
経過入院時血液検査においてBNP452.8pg/mlと高値で心不
全傾向であり、腎機能、肝機能低下も認めた。胸部レント
ゲンにて心拡大、心電図にて徐脈、Ⅰ度房室ブロック、心
室内伝導障害を呈し、心エコー図では、著明な心肥大
急性心筋梗塞発症 5 日後、急速に乳頭筋不全断裂が進行し救命できた 1 症例
上坂 浩司1)
西野 峻2) 渡邉 望2)
宮崎市郡医師会病院 臨床検査科1 )同循環器内科2)
【はじめに】乳頭筋とは、心臓の心室にあり、心筋→乳頭筋→
不全断裂の進行と判断し、緊急開心術を施行した。
腱索→弁とつながっていて弁の開け閉めに関与している筋
術中所見は僧帽弁前尖後交連部側の腱索が付着する乳頭筋
肉である。乳頭筋付近に心筋梗塞が起きれば乳頭筋領域が
一部に小さな断裂があり、残存する乳頭筋は壊死して伸展し
壊死を起こし腱索断裂する場合がある。これを乳頭筋不全断
一部に亀裂を生じ不全断裂の状態であった。
裂という。
乳頭筋の修復困難と判断され、人工機械弁による僧帽弁置換
【症例】74 歳男性
術が施行された。術後検査の経過も良好で後日退院した。
【現病歴】高血圧・糖尿病、内服治療中。8月18日、気分不良・
【結語】
胸苦しさ・脱力感・食欲低下があり経過を見ていたが改善なく
急性心筋梗塞発症後 5 日後、急激に乳頭筋不全断裂が進行
2 日前発症の急性心筋梗塞を疑われ当院に緊急搬送となっ
し、経時的心エコー図で推測だが乳頭筋完全断裂に至る直
た。
前の状態を診断し救命した。経時的心エコー図検査の重要
【入院後経過】経胸壁心エコー図検査で後下壁の壁運動低下
性を示す症例であった。
と僧帽弁逸脱に伴う中等度逆流を認めた。乳頭筋部分断裂が
示唆されたが、断裂を疑う部分は一部で血行動態も保持され
ていたため、右冠動脈領域に対する緊急経皮的冠動脈形成
術を施行した。再灌流後の経過は良好であり僧帽弁逆流の程
度にも大きな変化は認めなかった。発症 5 日後の第 3 病日、
急速に心不全が進行し心エコー図検査にて後乳頭筋の進展
に伴う僧帽弁逸脱の悪化と逆流の悪化を認めたため乳頭筋
連絡先:0985-24-9119
当院で経験した百日咳症例
水谷早貴、野中真由美、吉田万恵、石神加納子、中村香穂子
県立宮崎病院 臨床検査科
【はじめに】百日咳は特有のけいれん性の咳発作を特徴とす
【結果】検査結果は 3 症例とも LD の軽度上昇を認め、CRP は
る急性気道感染症であり、1才以下の乳児、特に6ヶ月未
いずれも陰性であった。末梢血では白血球数が著増し、特
満では死に至る危険性もあるが、ワクチン接種により予防
にリンパ球数が 27,000~34,000/μL と増加していた。
リン
が可能な疾患でもある。2008 年から 2013 年までの百日咳
パ球の形態的特徴は、細胞径が 8μm~10μm と小型で核・
報告症例数は 1241 件である。近年、小児期に受けたワクチ
細胞質比は高く、核クロマチンは粗剛で核小体は認めなか
ンの抗体価が低下した成人における患者数が増加傾向にあ
った。また核に切れ込み(浅いものから深いものまで様々)
り、成人保菌者が乳幼児に対しての感染源になっていること
を有するリンパ球を 30~50%認めた。これらの検査結果か
が問題になっている。今回、リンパ球に形態変化を認めた百
ら血液疾患も鑑別に挙げられるが、最終的に菌分離、PCR
日咳 3 症例を経験したので報告する。
法により百日咳と診断された。
【症例】年齢 生後 2 ヶ月~8 ヶ月,男児1例,女児 2 例
【考察】リンパ球に特徴的な切れ込みを認めた百日咳 3 症例
【主訴】3 症例とも 10 日以上続く咳嗽
を経験した。百日咳の確定診断には時間を要するが、今後
【入院時検査所見】症例① LD 328IU/L, CRP 0.03mg/dL, WBC
は末梢血のリンパ球の形態から百日咳を疑い、迅速に臨床
449.3×102/μL(NEUT26%, LYMPH 69.5%), Hb12.8g/dL, PLT
に提言することで早期診断に貢献できると思われる。
また、
50.8×104/μL. 症例② LD 296IU/L, CRP 0.20mg/dL, WBC
今回のようにリンパ球の増加を認める症例ではフローサイ
516.3×102/μL(NEUT 28.5%, LYMPH 67%), Hb 10.3g/dL, PLT
トメーターによるリンパ球細胞表面抗原の検索も必要であ
92.8×104/μL. 症例③ LD 323IU/L, CRP 0.11mg/dL, WBC
ると思われた。
380.6×102/μL(NEUT24%, LYMPH 72%), Hb 10.1g/dL, PLT
53.2×104/μL.
連絡先 0985-24-4181(内線 2062)
当センターで経験したマラリアの一症例
染矢ひとみ 福吉知子 井本雅志
宮崎市郡医師会臨床検査センター
はじめに
診断:当センターのマラリア原虫報告後、大学病院へ紹介。マ
感染症法施行の 1999 年以降、宮崎県内でのマラリア発症は
ラリア迅速キットでユニバーサルなマラリア原虫抗原に(-)で
宮崎県衛生環境研究所によると 6 例となっている。当センター
あったが、血液像鏡検の結果と合わせて熱帯熱ではないマラ
では宮崎市内の医療機関から、時折マラリア疑いの血液像依
リア原虫(+)と診断された。
頼はあるものの、20 数年間マラリアの症例を経験することはな
考察
かった。今回、海外渡航歴があり帰国後二か月以上経過した
いままで、マラリア疑いの血液像依頼では、マラリアを確認で
三日熱マラリアの症例を経験したので報告する。
きずにいたが今回の症例では、当センターのような通常のメ
症例
イギムザ染色でもマラリア原虫鏡検が容易であった。重篤に
患者:25 歳男性
主訴:発熱
なりやすい熱帯熱マラリアとの鑑別を迅速に行うためにも、患
現病歴:海外協力隊員として 2012 年 6 月より 2014 年 12 月 19
者様に近い施設での簡便な血液像でマラリアを早く確認す事
日までパプアニューギニアに滞在し、その間は、日常的に蚊
は重要である。
に刺される生活環境であった。2015 年 2 月 13 日悪寒、15 日
宮崎市郡医師会臨床検査センター
発熱39.2℃、16日近医受診、インフルエンザ(-)。抗生剤、
Tel0985-52-5115
解熱剤投与で経過観察となり、2月17日当センターへマラリ
ア疑いで血液像の依頼。
検査結果:CRP 5.02mg/dL WBC 3100/μL HGB
14.8g/dL PLT 6.2 万/μL 血液像メイギムザ染色にて赤
血球内にマラリアの輪状体を認める。