菌交代現象を認める患者に対する糞便移植の有用性の検討研究協力のお願い近年、抗菌剤の使用などから、腸管内の細菌叢が異常を来し、Clostridium difficile などの菌が増加することにより下痢や腸炎などを引き起こす場合があります。一般的には Clostridium difficile に対してバンコマイシンやメトロニダゾールなどの抗菌剤の投与を行うことにより治療を行いますが、しばしば再発をきたします。そのような難治性の患者さんを対象に、2013 年に糞便移植が有用であると報告され、本院においてもおすすめしております。まだ、保険で認可された治療法ではありませんが、この研究を行うにあたり、本院の倫理審査委員会の審議に基づく病院長の許可を得ています。この説明文章を読まれて、この研究に協力いただける場合は、同意書に署名をお願いいたします。研究に参加されるかどうかはあなたの自由意志でお決め下さい。この研究に参加されない場合でもあなたが不利益を被ることは一切ありません。 (１)研究の概要について糞便移植を行うにあたりドナー（提供者）が必要となります。通常、血縁者間からドナーを選定することをおすすめしております。ドナーの方は、本院で種々の感染症に対するスクリーニング検査や質問票の記入をお願いしております。ドナーのスクリーニングで異常が無ければ、糞便を提供していただき細菌成分を分離した液体をレシピエント（患者さん）に投与します。レシピエントは必要に応じて腸管洗浄剤の内服を行い、腸管内を洗浄後、経鼻的に十二指腸までチューブを留置しそのチューブを通して細菌成分を分離した液体を投与し終了します。 (２) 研究の方法について・ドナーの準備１．本院を受診していただく必要があります。受診時に、採血、採便、質問票などのアンケートを実施します。後日、スクリーニングの結果からドナーとして適切であるか判定いたします。２．結果、適切と判定された場合、移植を実施する際に、糞便の提供をお願いいたします。・レシピエントの準備１．本院で Clostridium difficile などの菌交代現象が認められ、従来の治療法に抵抗性であると判定された方が対象となります。２．移植の前日に腸管洗浄剤を用いて腸管内の洗浄を行います。また、移植には経鼻的に十二指腸にチューブを留置する必要があります。３．移植はそのチューブから細菌成分を分離した液体を投与します。４．投与後、チューブを抜去し治療は終了です。 (３)効果 2013 年の New England Journal of Medicine 紙に掲載された論文によると、Clostridium difficile 感染患者に対する従来の治療法による有効率が 30%であったものが、単回の糞便移植で 81%、繰り返し行った症例も含めると 93%程度の有効性が得られたと報告されています。 (４)予測される結果（副作用・危険性・不利益等）について 2013 年の New England Journal of Medicine 紙に掲載された論文によると、移植後すぐに 94%の患者さんが下痢を認め、31%が腹痛、19%がゲップなどの症状を認めたようですが、全員が数時間で症状は軽快したと報告されています。以前の報告も含め、重篤な副作用は報告されていません。しかしながら、未知の感染症や副作用が起こる可能性は否定できません。不測の事態に対しては保険診療内で最善の処置を行います。 (５)個人情報保護についてこの試験で得られた結果は､これらの治療方法と安全性を確認する資料として使用します。専門の学会や学術雑誌に発表されることもありますが､患者さんのプライバシーは十分に尊重されます。結果発表の際には慎重に配慮し、患者さん個人に関する情報（氏名など）が外部に公表されることは一切ありません。 (６)研究成果の公表についてこの研究成果は学会発表、学術雑誌およびデータベースなどで公表します。 (７)同意および撤回についてこの説明書をお読みになり、担当医の説明を聞いて、この治療を受けることに同意される場合は､別紙の同意書に署名または記名・押印をして下さい。あなたが他の治療法を選択されても、一切不利益は生じません。また､あなたがこの試験に同意した後でも､その同意をいつでも撤回できます。 (８)費用および謝礼についてこの治療に関する個人負担は発生しません。それ以外の費用は保険診療内で行われます。また、ドナーのスクリーニング費用は当科で負担致します。 (９)問い合わせ等の連絡先この治療について何か分からないことや心配なことがありましたら､いつでも担当医師にご相談下さい。滋賀医科大学消化器内科馬場重樹、安藤住所：520-2192 朗滋賀県大津市瀬田月輪町電話番号：077-548-2217