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Title
イリジウム複核錯体の系統的合成法の開発( はしがき )
Author(s)
海老原, 昌弘
Report No.
平成11年度-平成12年度年度科学研究費補助金 (基盤研究
(C)(2) 課題番号11640560) 研究成果報告書
Issue Date
2000
Type
研究報告書
Version
URL
http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/487
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
はしがき
金属原子間結合を持つ錯体に関する研究は,過去30年あまりの間に大きく発展し
てきた.本研究者は,金属間に結合を持つ新たな錯体を合成し,その構造を決定する
とともに,酸化還元電位や電子スペクトルなどの分子物性の測定と評価を行ってきた.
ランタン型複核錯体は金属間に結合を持つ錯体の中で最も基本的なものであり,その
研究例も多い.▼
その中でロジウム複核錯体は合成例も多く,また,架橋配位子やアキ
シァル配位子を変えることによりHOMOの軌道が入れ香わることが報告されてお.
り非常に興味深い系である.近年では,触媒反応や抗ガン剤としての研究も行われて
おりさらなる発展も期待される.これに対して,周期表のすぐ下に位置するイリジウ
ムはランタン垂錯体の合成例は3例しかなく系統的な合成法はまだ確立されてい
い.しかし,5d金属ではd軌道が4d金属より広がるためロジウムより強い金属原
子間や金属一配位子間結合が期待できる.
本研究ではロジウム複核錯体の系統的な合成法を確立することを目的として研究
を行った.ランタン型複核鍔体の合成にrは至らなかったが,その足がかりとなると考
えられる錯体を合成しその構造や性質を明らかにすることができ,ランタン型複核錯
体の合成に「歩近づいたと考えられる.
本研究における成果時以下のよう≒にまとめられる義
1・市販の六塩化イリジウム酸から1段階の反応で酢酸を架橋配位子としてカルポ
ル,塩作物イオンを配位子とするイリジウム(ⅠⅠ)複核錯体が生成することを見
たJこの錯体を様々な溶媒に溶かすことにより軸位にビリジン,アセトニトリルなど
が酷使した錯体を単離しⅩ線構造を決定した.また,これらの錯体の酸化還元反応性
を調べ,電解により酸化したカチオン種のESRからこの錯体のHOMOの軌道が8*
であオとを決定した.
2.酢酸を架橋配位子としてカルポニル,塩化物イオンを配位子とするイリジウム(ⅠⅠ)
複核錯体の軸位にホスフィン,ホスファイト,アルシンなどの¢供与性の高い配位子
を酷使させた錯体を合成しⅩ線構造を決定した」これらの錯体の酸化還元はビリジン
やアセトニトリルを配位子とするものより低く,k-Ir距離は長くなっていた.また,
ホスフィンやアルシンを配位子とする錯体を電解により酸化したカチオン種のES
Rからこの錯体のHOMOの軌道はロ*であることかわかった、
3.酢酸を架橋配位子としてカルポニル,塩化物イオン壷配位子とするイリ.ジウム(ⅠⅠ)
複核錯体と芳香疲架橋配位子を反応させた.1-ヒドロキシイソキノリンを反応さ
ると酢酸架橋がこの配位子に置換した化合物が生成した.4-メチルー2-ヒドロキ
シビリジンとの反応ではこの配位子が3つ架橋し残ったエカトリアル位にカルポニ
ル基が配任した錯体が生成した,このことから,カルポニル基の置換は難しいことが
わかった.
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