はしがき 3 はしがき 中国では、本世紀中葉(2050 年)までに「社会主義現代化」を実現す る目標のもとで、2020 年に「小康社会の全面実現」を達成する課題が提 起され、2006 年から始まった第 11 次 5 カ年規画(計画)以後、その実現 のための観点、目標、方法、施策が具体化、深化されつつある。「社会主 義現代化」の達成と「小康社会の全面実現」にとって、最も関鍵的位置を 占めるのがいわゆる「三農」 (農業、農民、農村)問題である。「三農」問 題は、改革開放、とりわけ 1990 年代以後の急速な経済成長のなかで、工 業と農業、農民と都市住民、都市と農村の様々な格差の拡大として顕在化 した。膨大な農民が貧しく、国内市場を狭隘にしている状況のもとでは、 「社会主義現代化」も「小康社会の全面実現」も達成できない。そこで、 「小 康社会の全面実現」にとって、 「三農」問題の解決こそが、「重点中の最重 点」であるという位置づけがされ、 その解決策として打ち出されたのが「社 会主義新農村建設」の課題である。 ◆「三農」問題深刻化の原因 「三農」問題深刻化の原因としては、大きく次の三つが考えられる。 一つは、中国が農業・農村を中心とする段階から、工商業・都市を中心 とする段階への移行過程にあり、その過程が現物・計画経済システムから 市場経済システムへの移行と絡めて進められていることである。モノ・カ ネ・ヒトが市場原理にしたがって流動化し、都市農村一体社会への転換点 に立っている。いわば、伝統的都市農村の「二元社会」から「一元社会」 への転換の問題である。 二つは、毛沢東時代の工業化政策である。毛沢東時代には、立ち遅れた 農業国から重工業優先の工業化を達成すべく、都市工商業の国有企業化と 農村の人民公社化という国有・集団所有の二所有制度、戸籍による都市と 農村の分断、住民の都市の「単位」と農民の人民公社への封じ込めによる 人々の職業選択や移住に対する極端な制限のもとで、行政指令型の計画経 4 はしがき 済運営がなされてきた。農業は工業化のための蓄積と都市住民への食糧の 低価格安定供給の役割を担わされ、農民は人民公社の集団経済制度のもと で自給自足を強いられてきた。これらの制度と運営はひとまとまりのもの で、これが中国独特の都市農村分割の「二元構造」を形成してきた。 三つは、改革開放以後の漸進的な市場化と対外開放のありようである。 中国の市場経済化は漸進的に進められ、計画体系と市場体系が複雑に絡み 合いつつ、その位置と役割を転換し、次第に市場体系に一元化していく過 程を進んでいる。 「二元構造」の解消過程も、経済・政治・社会の各分野で、 その進展度はさまざまであり、今日に至っても「二元構造」の基本的枠組 みは崩れていない。市場経済化が進んだ分野やそこでの経済主体が、経済 成長を牽引し、伝統的分野を市場原理に基づき、自己の論理に組み込み、 利用してきた。とりわけ、 農業・農民・農村は、 市場経済への移行過程で、 「二 元構造」に由来するさまざまの差別的条件が利用されて、経済の高成長を 支えてきた。例えば、低価格での農産物供給や「農民工」と呼ばれる低賃 金・低福利の膨大な出稼ぎ農民、開発コストを低減させる国有と集団所有 の土地の非農業への低価格での転用や同じく低価格での資源利用、などで ある。その結果、経済成長の過程で、工業や都市の発展に比べ、農業・農民・ 農村が大きく立ち遅れ、格差がいっそう拡大するという事態が出現した。 ◆「三農」問題の根本的解決の枠組み 中国の政策に見る、 「三農」問題の根本的解決の枠組みは、三つの装置 から成り立っている。 一つは、 「小康社会の全面実現」である。 「小康社会の全面実現」にとっ て最大の困難は「三農」問題であり、 「三農」問題の解決なしには「小康 社会の全面実現」はありえない。 「三農」問題は党の工作の最重点課題と して位置づけられた。 二つは、中国独特の「二元構造」からの脱却である。「三農」問題の根 源は「二元構造」とそれを支える体制・システムにある。都市農村の一元 的な構造と全国統一的市場経済システムを打ち立てるなかでしか、「三農」 問題の解決はありえない。これによって、 「三農」 問題は都市や工業を含む、 はしがき 5 国民経済全体のあり方とのなかに位置づけられた。 三つは、 国民経済の発展段階を「二つの傾向」として考えることである。 即ち、発展段階を農業が工業を育てる段階と工業が農業を育てる段階に分 け、中国は工業化の中期段階に達し、その段階は工業が農業を育てる段階 であるとしたことである。国民経済構造や経済発展戦略の転換である。 以上の枠組みのなかで描かれた「三農」問題解決の青写真が社会主義新 農村建設である。 ◆「社会主義新農村建設」の四側面 「社会主義新農村建設」は次の四つの側面から進められつつある。 ①農民の都市への流動の促進=都市での就業と都市への移住に対する制限 や差別の撤廃、技術や職業教育による農民の都市での就業能力の向上。 ②農民の農村での非農業への流動の促進=郷鎮企業や私営企業、工商業の 発展、 「県城」や「小城鎮」の発展と都市的インフラ整備と農民の都市 への移住の促進。 ③農業の近代化=商業化、産業化、インテグレート化。 ④農民の生活向上=所得増大と教育・医療・社会保障や農村居住のインフ ラ条件の改善。 ここには、中央・地方政府の政策的方向付けと財政・金融支援、都市や 第二・第三次産業からの労働力需要、農村の産業構造の高度化、農業の近 代化、農民の生活基盤整備、それらを行うための農民の主体形成と資質の 育成などの政策と理論問題がある。 以上述べてきたことを一言で言えば、中国の個別・特殊な歴史的、政治 経済的条件のもとで、農業・農村社会から工商業・都市社会への急速な転 換過程で、農業・農村・農民がどのように近代化しつつあるのかという問 題である。 ◆本書の構成と概要 本書は、近代化に向けて急速に変化しつつある中西部農村の変化の実相 を、様々な側面から具体的に把握し、農村近代化の全体像を構成し、その 6 はしがき 将来を占おうとするものである。 本書の構成と概要は以下のとおりである。 第Ⅰ部では中国における農業問題の所在と近代化のありようを概括する とともに、西部の四川省と中部の湖北省の農業近代化の現状と到達点、課 題を概観した。 第Ⅱ部では、 中西部の個別農村における農村近代化のありようについて、 財政、土地、労働力(出稼ぎや地元就業) 、地域振興(一村一品運動、帰 郷創業)、金融、インテグレーション、医療など、様々な側面について個 別的に明らかにした。 次に各章の要点をまとめておく。 第Ⅰ部「第 1 章 中国の農業問題の所在と農業近代化」は、改革開放 以後の中国農業の市場化、近代化のあり方を①ソ連型ないし毛沢東型社会 主義から社会主義市場経済への路線の転換とその制度的変化、②農業・農 村社会から工業・都市社会への歴史的移行過程、③自立的一国的工業化か らグローバルエコノミーへの包摂過程での工業化、の三つの軸線の中で把 握するという視点からその到達点と課題を明らかにしようとする。先ず、 農業の国民経済での位置と役割の変化と歴史的到達点を数量的に明らかに する。第 2 に、都市農村住民の経済格差、農民から市民ないし労働者への 移行形態としての「農民工」の特徴を明らかにすることによって、中国社 会の「二元構造」の特質を明らかにする。第 3 に市場経済への移行と農村 経済制度の転換について歴史過程を整理し、都市農村の所得格差の拡大及 び「三農」問題の発生の原因を明らかにする。第 4 に、戸籍制度、農民工、 農村の土地所有と土地利用、農村基層政府と基層財政、農業経営主体につ いての政策的変化と到達点を明らかにし、最後に、中国農村の近代化の課 題はその解決のための布石が置かれた段階で、依然として「石を探って川 を渡る」長期の過程が必要であろうと結論づけている。 第 2 章は 2 論文で構成されている。 「四川省農業の現状―問題点と趨勢」 および「四川省農業発展と農民増収の現状と政策提言」である。前者は、四 川省農業の発展方向と直面している問題点を明らかにしている。現代的農業 への転換が発展の基礎となっているが、解決すべき自然環境や科学技術導入 はしがき 7 での問題点がある。さらに、伝統的小農経営から規模経営への脱却が必要で あり、各種経営方式の導入が模索されている。後者は調査論文であり、新経 営方式の一つである、合作経営方式を事例としながら、直面している問題点 とその対策について提言をおこなっている。 「第 3 章 湖北省の新農村建設と農業近代化―施策・現状と課題」は農 業大省である湖北省の新農村建設の背景、 主な施策、新農村建設以来の「三 農」の変化、現在の到達点と課題を、松滋市の事例を交えながら分析し、 湖北省の「三農」発展の将来を展望した。まず、新農村建設以前の湖北省 の「三農」状況を概観した後、新農村建設と農業近代化について、湖北省 の進め方を整理し、次いで農村インフラ整備と公共サービス、農民の就労・ 移動と収入、農業と農産物加工業、農業生産の規模化・組織化・機械化の それぞれの分野について、現状を整理し、評価し、課題を提起している。 最後に、農業生産性と農民所得の向上のため、農業生産人口の農外移転 と農地の規模経営化について、工業化と都市化と連動した大規模な農業労 働力の移転と土地の集約化に関わる展望を示している。 第Ⅱ部は各論であり、主として四川省、湖北省での農村調査を踏まえた 実態把握がなされている。 「第 1 章 湖北省松滋市の財政構造と土地問題」は、松滋市の財政構造 を分析し、松滋市財政は自主財源が極めて少なく、多くの事務は上級から の一般ないし特定移転支出に依存せざるを得ず、移転支出に依存する事業 には多く自己負担分がかぶせられ、その持ち出しが財政をさらに圧迫して きた。それを解消する手段の一つとして採られたのが不動産開発と売買事 業に関する業務である。しかし、工場団地の造成と企業誘致では低い土地 価格で使用権が売買されるので利益はないか少ない。商業サービス業、住 宅などへの不動産売買では相当の利益を期待できるという。しかし、財政 赤字は依然として大きいし、開発コストは上昇し、不動産はバブルのリス クを抱え、この方法では財政健全化の道は険しい。こうした状況が明らか にされた。 「第 2 章 四川省成都市の農地財産権制度改革」は、都市化が急速に進 む中で農地の非農業的利用が増大し、都市農村の統一的計画的発展政策の 8 はしがき 一典型として打ち出された「成都モデル」を検討する。成都市は都市農村 の統一計画で、いわゆる「三つの集中」 (工業の団地への集中、農地の適 度規模経営への集中、 農民の都市と新農村居住区への集中)を打ち出した。 この政策実施過程で農地財産権改革が必要になり、農民の土地、家屋の使 用権と財産権、農村の資産の資本化、生産要素の自由流動、農村生産力の 解放と発展のための手立てが打ち出された。集団農地の権利確定証書発行 工作、耕地保護メカニズム、都市農村土地の増減リンク、多種の集団建設 用地市場参入モデルなどの改革の具体的な実施過程を分析し、最後に、成 都モデルの意義と今後の課題を整理した。 「第 3 章 農村金融の現状と課題」は、農業近代化を誘導・促進し、農 村地域の経済と社会発展をサポートするという農村金融の重要な役割がど こまで発揮されているかについて、西南・西北地域から選んだ各一県での 実態調査の結果を用いて、その現状と課題を分析した。ここで明らかにさ れたことは、中西部でも県の経済発展レベルにより、農村金融システムが 異なる方向で進化しているとのことである。即ち、発展の比較的に進んで いる地域では多様な正規金融機関が農村金融に参入し、競争的局面が形成 されつつあるが、貧困地域では既存の正規金融機関は依然として農村金融 を敬遠している。しかし政府主導の資金互助社や民間の新型金融組織はこ れらの地域に進出し、補完的役割を発揮できるようになっている。課題と して、農村金融の供給は総じて増え、少額貸出は容易になったものの、特 殊な土地所有制度などにより農業産業化大口融資のニーズはなかなか満足 されないこと、また新型農村金融組織の経済的持続可能性などの問題があ る。 「第 4 章 扶貧政策と地域経済の発展」では、中国の扶貧政策(農村の 貧困削減政策)は、基本的に貧困地域の経済発展を促進することを目的と して実施されてきた。そのため、本来の扶貧政策の対象者は策定された貧 困ライン以下の貧困農民層であるが、実際には貧困層農民が多数所在する 地域への地域開発事業であり、対象地域も国定貧困県へ、さらに扶貧重点 貧困村へと縮小されてきたと整理したうえで、新世紀以降の三農問題解消 を志向する様々な支援政策と相まって、貧困県 ・ 村以外の西部地域の経済 はしがき 9 発展効果と扶貧政策による傾斜的な地域経済発展政策による貧困県 ・ 村そ して特殊類型地域での扶貧効果を比較し検証している。 「第 5 章 農民工の帰郷創業と労働移動」は、中国経済発展を支えてき た農民工が、2008 年のリーマンショックを契機に帰郷して創業をおこな う背景を農民工側と移転元の農村側から検証し、さら帰郷創業が直面して いる問題点を取り上げた。農民工自体は農村と都市での所得間格差から発 生しているが、中西部地域経済発展状況から、その流動動向は次第に省内 に留まる傾向となっている。一方、農村地域も壮年層労働力不足と財政資 金不足から外出農民工を帰郷させる傾向も内発的に存在していた。農民工 が習得してきた技術 ・ 各種ノウハウ ・ 資本及び人的諸関係は農村にとって 経済面ばかりでなく、三農問題を解消する上で必要不可欠となっている。 しかし、帰郷創業には操業資金やインフラ問題等が山積し、十分な受け入 れ体制がないとする。 「第 6 章 湖北省松滋市における農村労働力の県内での移転と県域経済 の発展」は中西部の二つの有名な出稼ぎ県市での調査を通じて、近年の労 働集約産業の代表格であるアパレル産業の沿海からの移転が加速している こと、これに伴い出稼ぎ労働者の逆戻りと故郷での再就職が増えているこ と、帰郷創業も加速していること、またこうした産業と労働力のシフトに るその経済的・社会的効果が大きいということを確認した。政策的含意と して、中西部で県域内の自立的・内生的経済発展、農村の近代化を実現す るために、農村労働力の現地・近辺就職を促進することは必要不可欠であ るとする。 「第 7 章 湖北・四川両省の調査から見た農業産業化経営組織形態」 では、 農業産業化とは、農業生産、経営、サービスの一体化を指し、第二次世界 大戦後のアメリカから始まり、その後は西欧、日本など先進諸国までに広 がってきた。農業産業化は主に経済と法律の両面から生産における初期段 階、中間段階、最終段階に分けて取り上げられている。その中で、中心に なっているのが一体化された農業産業におけるシステムの整備と運営であ るととらえる。中国における農業産業化は 1980 年代中・後期から本格的 に推進され、農村経済改革と発展の中で成長されてきたと整理し、上記の 10 はしがき 農業産業化というキーワードを用いながら農業産業化経営組織の形態を検 討している。その対象は、主として実態調査を行った中国湖北省松滋市周 辺、四川省成都市近郊周辺の地域である。 「第 8 章 農業産業化における『竜頭企業』の経営行動」。まず、中国 の竜頭企業とは、農家が生産する農産物の加工販売などを行い、地域の農 村経済の発展に寄与するとして認められる企業を指すと定義する。竜頭企 業は、強い経済力を持ちながら所在地農村経済の発展にリーダー、牽引役 を果たしている企業であり、農業産業化経営組織のなかで代表的な形態と して役割を果たしている。 竜頭企業は湖北省、四川省ではすでに相当の規模まで成長しており、生 産加工能力、 販売能力面ではまさしく当該地域における先頭に立っている。 その反面、発展途上段階に置かれていて解決すべき問題も残されていると する。 さらに、湖北省松滋市周辺、四川省成都市周辺で行われてきた産業化経 営組織形態の発展と当該地における竜頭企業の経営状況について検討して いる。 「第 9 章 四川省農民専業合作社における発展状況と支援政策」は、四 川省の、状況が異なる三県で実地調査を行い、農民専業合作社の発展状況 を整理し、問題点を探り出し、解決のための提案をしている。 発展状況では、規模拡大と形態の多様化、段階的特徴、近代農業発展の 有効な担い手や社員構成の多様化という、古典的発展モデルとは異なる特 徴を述べている。合作社支援策での問題では、認識上の誤り、行政部門の 不適切な関与、支援対象選定上の偏り、単一的支援方式、能力強化のため の支援策の欠如、付帯政策の不足をとりあげ、以下の支援策整備を提案し ている。それらは支援対象の明確化、各部門の資源の整合化、分類指導メ カニズムの構築、方式・手段の刷新、能力強化のための支援強化、適切な 付帯政策の制定である。 「第 10 章 農村地域における『一村一品』運動の展開と課題」は中国 の一村一品運動の導入と発展の歴史を整理し、事例研究で一村一品の実態 とその特徴を明らかにし、中国農村の近代化における一村一品運動の位置 はしがき 11 付け、その成果と課題などを検討している。 中国の「一村一品」運動は 1983 年以降、地域毎の導入、実践が始まり、 2006 年以後に全国レベルで取り組まれるようになった。事例研究では湖 北省松滋市の老城碑亭村菊花産業(農村リーダーの牽引) 、同八宝鎮西瓜 産業(郷鎮政府・村の主導) 、四川省井研県の養兎業(竜頭企業の牽引) の実践を整理、類型化し、最後に、目的・事業モデル・推進主体・人づく りの面で、日本の経験と比較し、中国の一村一品運動の特徴と課題を整理 している。中国政府は一村一品専業村の建設事業を推進しているが、筆者 は次のステップとして、より包括的一村一品運動、即ち、多様化・多彩な 地域おこし運動を期待している。 「第 11 章 農村基本医療サービス均等化の政策と実践」は「善良な統治」 の視角から、国家と地方政府の医療サービス均等に関連する公共政策と計 画を分析し、湖北省松滋市の地方実践を事例とし、地理情報系統及び関連 空間分析方法を借りて、 病気を医者に診てもらうのが困難な問題を解決し、 医療資源利用効率と資源分配公平性を向上させる理論と実践問題を検討し ている。 先ず、 国家レベルの農村医療サービス均等化政策を整理し、次いで、 湖北省松滋市を事例に医療サービス条件・医療社会保障の現状、医療機構 の空間立地と空間的到達可能性を分析し、医療不足区を判定する。さらに 松滋市の医療サービス均等化促進の公共政策を基層での初診の保障、近く での診療、制度の健全化と管理の規範化、政策宣伝と指導の強化、組織建 設などの面で検討し、最後に、農村医療衛生サービスは依然として農村社 会発展のボトルネックの一つであり、農村住民の絶えず増加する基本医療 衛生サービス需要を満たし、農村医療衛生サービス均等化推進の任務は依 然として極めて困難であると結論している。 ◆本書の成り立ち 本書は同じメンバーが日本学術振興会の科学研究費補助金を得て行った 以下の研究を基礎にし、その後の変化を付け加えて出来上がったものであ る。即ち「市場経済システム形成下での中国中西部地区経済の国内・国際 的リンケージに関する調査研究」 (2004 ∼ 2007 年度) (代表座間紘一)、 「中 12 はしがき 国西部地域農村近代化に関する調査研究―土地・労働力・産業化・インフ ラを中心に―」(2009 ∼ 2011 年度) (代表座間紘一)である。この二つの 調査研究で、湖北省、四川省の農村を 6 年間にわたって定点調査的にフォ ローすることができた。 この調査研究では、華中師範大学都市与環境科学学院羅静院長及び同学 院教職員の皆さん、四川省社会科学院郭暁鳴副院長、四川省社会科学院農 業発展研究所戴旭宏研究員及び同研究所の研究員の皆さん、湖北省松滋市 人民政府趙茂安常務副市長(現同市人民代表大会常務委員会主任)をはじ めとする同市の職員の皆さんの絶大な協力を得ることができた。この場を 借りて謝意を表したい。 また、このようなマイナーな専門的で地味な内容の本の出版を引き受け ていただき、良心的で丁寧な本づくりをしていただいた蒼蒼社の中村公省 社長と社員の皆さんに心から御礼申し上げる次第です。 2015 年 9 月 9 日 編者 座間紘一
© Copyright 2024 ExpyDoc