CALET: 全吸収型カロリメータ(TASC)前置回路 伊藤大二郎、鳥居祥二

P-052
シミュレーション計算によるCALETのガンマ線観測性能
堀内 陽介、鳥居祥二A、浅岡陽一A、小澤俊介、笠原克昌A、赤池陽水B、
Holger Martin MotzC、仁井田多絵、大和啓一、森正樹D 他CALETチーム
早大先進理工、早大理工研A、東大宇宙線研B、早大国際教育センターC、立命館大理工D
概要
CALET計画は、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験モジュール「きぼう」船外実験プラットフォームにおいて、最長5年間の観測を行う宇宙線観測実験である。
CALETでは高いエネルギー領域における宇宙線の長期間の直接観測が可能であり、宇宙における高エネルギー現象の体系的解明や暗黒物質由来のガンマ線成分の
検出が期待されている。本発表では搭載装置モデルを用いたモンテカルロシミュレーションによって求めた、ガンマ線観測性能ついて報告する。特に、荷電粒子との識
別によるガンマ線の検出性能や、ガンマ線の到来方向の決定精度について、軌道上観測における条件を考慮した総合的な性能を報告する。
CALET計画におけるガンマ線の観測
シミュレーション
CALETにおけるガンマ線の観測は、高エネルギー領域まで高精度な観測を行うことが
可能であるという特徴がある。特に数10GeVからTeV領域の拡散ガンマ線成分の観測に
より、その起源を明らかにすることを目指している。さらに、有力な暗黒物質の候補である、
SUSY粒子の対消滅に由来するライン成分等が検出される可能性が指摘されているため、
高いエネルギー分解能(~2%)をもつCALETの観測は重要な意味を持つ。
表1観測対象と観測エネルギー
1GeV – 20TeV
e±
International Space Station
4※GeV
γ
p~Fe
– 10TeV
several 10GeV – 1000TeV
※検出効率50%
検出器モデル
CALET搭載モデルを模擬した構
造をシミュレーションで構築(シンチ
ファイバーの不感領域、IMC層間の
ハニカム構造、PWOの面取り等の
影響を考慮)。
• IMCを用いたシャワー軸再構成
1) IMC7,8層の最大発光点と±1本のScifiのエネルギー重心を結んだ直線を
用い、上層に向けて一層毎にフィットを繰り返し、精度を向上する。
2) IMC内での候補点(最低3点)から求めたシャワー軸について、TASCの情
報を用いて幾何条件の判定を行う。
各条件によるエネルギースペクトルの推移
シミュレーションデータ
all:全イベント
trig:
トリガ条件を満たすイベント
track:
シャワー軸再構成可能なイベ
ント
track_geometry:
シャワー軸が幾何条件を満た
すイベント
all_geometry:
シミュレーションより幾何条件
のみを満たすイベント
COSMOS v7.645
EPICS v9.165
ガンマ線:1GeV-10TeV、E-1 (微分)
電子
:2GeV-20TeV、E-1 (微分)
検出器を囲む球面から一様に入射
Dark Matter
解析条件
annihilation
or decay
e- & e+ きぼう
2gamma
• シャワートリガー
High Energy Shower Trigger(>10GeV)
Japanese
Experiment
Module
Cosmic Ray Sources
• 幾何条件
electron
gamma
nucleus
CHD、及びTASC最上層、最下層を通過
すると判定されたイベントを採用
図1.CALETミッション概念図
図3.各条件によるエネルギースペクトルの推移
図2.CALET検出器概要
信号無し
電子・ ガンマ線識別性能
電子とガンマ線の判定は、入射粒子の電荷
を測定することにより判定する。
・電子
:入射位置で信号有
・ガンマ線 :入射位置で信号無
Point Spread Functionの導出
IMCによるシャワー軸再構成方法を用い、ガンマ線のシャワー軸を決定。
角度分解能のエネルギー依存性を対生成位置毎に導出。
IMCで決めたシャワー軸のCHD,IMCにおける
粒子通過位置の信号をもとに判定する。
対生成位置
lay_0:
IMC入射前
lay_n:
IMCn層目、n+1層目間
図4.電子45GeV(左)、ガンマ線40GeV(右)シミュレーションイメージ
後方散乱
後方散乱
電子
電子
ガンマ線※
ガンマ線※
図8.ガンマ線角度分解能(68%containment)
対生成位置でイベントを分類しPSFを導出
各イベントのθsを以下の式で定義し、sin-1δθの重みを付
けたヒストグラムからPSFを決定[3]、P(θs)でフィット
図5.CHD-X(左)、IMC1層目-X(右)の粒子通過位置の粒子数分布66~120GeV
Scaled angular deviation: θs=
δθ:角度誤差 θ68:角度分解能
※IMC1層目以降に対生成したイベント
使用する層:CHD XY
IMC1層目 XY
信号の閾値:0.1MIP
発光層数に対するイベントの割合か
ら判定条件を決定
表2 発光層数に対するイベントの割合66~120GeV
層数
電子
ガンマ線
図9.対生成位置毎のガンマ線角度分解能
P(θs)=fcoreK(θs,σcore,γcore)+(1-fcore)K(θs,σtail,γtail)
4
3
2
1
0
99% 0.58% 0.039% 0.0% 0.0%
0.0060% 0.69%
9.3% 37% 53%
1
K(θs,σ,γ)= 2
2𝜋𝜎
電子・ガンマ線判定条件(表2)
電子
:信号が3層以上(99.58%)
ガンマ線 :信号が2層以下(99.3%)
図10.Point Spread Function (IMC2層目以下で対生成)
電子誤認率とガンマ線検出効率の定義
電子誤認率: δ=Me/Ae
Me:ガンマ線と誤認した電子
Ae:識別に使用した全電子
ガンマ線検出効率:ε=Og/Ag
Og: ガンマ線と判定されたガンマ線
Ag : IMC一層目以降に対生成を起こした全
ガンマ線(ガンマ線イベントの89%)
ガンマ線点源に対する角度分解能
PSFを用いて点源の拡がりのエネルギー
依存性を求めた。
1) 点源の位置は銀経0度で、300イベント
の観測を仮定
2) 各ガンマ線に対し、対生成位置を決定
3) 各対生成位置におけるPSFを用いて、
角度分解能より観測座標を求める
図6.ガンマ線検出効率
1TeVまでの領域でガンマ線検出効率:90%以上(図6)
10GeV以上の電子誤認率:1.95×10-4(90% C.L.)
Fermi-LATの観測結果[1][2]をTeV領
域まで外挿し、ガンマ線に混入する電
子の割合を計算
1−
1
𝛾
2
1
1 𝜃𝑠
+
2𝛾 𝜎 2
−𝛾
図11.点源の実測値のエネルギー依存性
まとめ
銀河系内拡散ガンマ線の観測
ガンマ線
-80 <= l <= 80°
-8 <= b <= 8°
𝛿𝜃
θ68
電子
→ 104以上の除去能によりガンマ線に
混入する電子は数%以下
CALETのガンマ線観測性能について、シミュレーション計算を用い以下の性能を確認した。
電子・ガンマ線識別性能:
ガンマ線角度分解能
• 電子誤認率(>10GeV): 1.95×10-4(90%C.L.)
• 0.33 deg (10GeV); 0.26deg(100GeV)
• ガンマ線検出効率(<1TeV): 90%以上
ガンマ線点源に対する角度分解能
銀河系内拡散ガンマ線成分
• PSFを用いた点源の拡がりのエネルギー
• ガンマ線に混入する電子: 数%以下
依存性を導出
Reference
図7.銀河系内拡散ガンマ線と電子フラックス(上)
ガンマ線に対する混入電子の割合(下)
[1] M. Ackermann et al., ApJ, 750 (2012) 35.
[2] D. Grasso et al., Astropart.Phys., 32 (2009) 141.
[3] M. Ackermann et al., ApJS, 203 (2012) 108.