日本海側の冬の雷雲が40秒間 放射した10 MeVガンマ線を初観測 雷雲 = 理研線形加速器 理研仁科研究センター HPより 1/21 NASA 土屋晴文a 榎戸輝揚b 牧島一夫a,b a理化学研究所 中央研究所 b東京大学理学系研究科 2007年10月5日 雷といえば…日本人なら 風神雷神図(17世紀前半の作) 俵屋宗達作 2/21 図:Wikipediaより 共同研究者リスト 神様たちではなくて…… 土屋 晴文a 榎戸 輝揚b 山田 真也b 湯浅 孝行b 川原田 円a 北口 貴雄b 国分 紀秀c 加藤 博a 岡野 眞治a 中村 聡史d 牧島 一夫a,b a 理化学研究所 中央研究所 b 東京大学 理学系研究科 物理学専攻 c 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部 d 東京理科大学 理学研究科 物理学専攻 4つの機関の11人からなる共同実験 GROWTH Gamma-Ray Observation of Winter THunderclouds 3/21 新潟県柏崎刈羽原子力発電所 1.背景 -宇宙を望む宇宙線 •100年ほど前に発見 発見者 V.F. Hess •宇宙のあらゆる方向から飛来する •電気を帯びた高エネルギー粒子 •90%以上は陽子 宇宙には粒子加速器がある! 宇宙線の謎 起源 加速メカニズム 衛星 生きている太陽 X線•ガンマ線 星の爆発した跡 主に粒子加速に付随して発生する 電気を帯びていないので直進する 粒子より長生きする(透過力が強い) 「ようこう」X線撮影 4/21 「Chandra衛星」 X線撮影 X線やガンマ線は 宇宙線の謎を解き明かす 最適な道具 X線やガンマ線 ●エネルギーの高い(周波数の高い)電磁波 FM波 80 MHz(メガヘルツ) レントゲン 〜10兆 MHz 10 MeVのガンマ線 〜 2000兆 MHz ●光子として1個、2個..と数えられる(すべての電磁波) 赤色の光子1個のエネルギー 〜2 eV 青色の光子1個のエネルギー 〜3 eV レントゲン 〜50,000 eV JAXA/ISAS馬場さんより 5/21 レントゲン写真に代表されるように X線やガンマ線は透過力が強い。 X線やガンマ線は地球の大気中では、 数十mから1km程度進める。 (電子は、数cm から数十m) 1.背景 -雷活動と放射線(1)•地球の上層大気からの衛星によるX線•ガンマ線の観測 NASAのCGRO衛星により発見(Fishmanら,Science,1994) NASAのRHESSI衛星により詳細が明らかに(Smithら,Science 2005) RHESSI衛星の観測点(×)と世界の雷の頻度分布(明るくなるほど多い) 多 少 •人工雷からのX線やガンマ線の地上観測(Dywer ら, Science 2003) 人工雷 6/21 まさに雷の最中にミリ秒以下の継続時間で 電子が高いエネルギーにまで加速されている 1.背景 -雷活動と放射線(2)私たちが特に注目したデータ 原子力発電所 : 構内に放射線監視モニタをもつ 放射線監視モニタ 柏崎刈羽原子力発電所HPより 性能は劣るものの衛星で使われる ものと同様な放射線検出器 日本海側の原子力発電所 雷が頻発する「雪起こし」の時期(11月ー1月)に、 雷活動に伴うように放射線が数秒から数分の間、増える もんじゅ •X線•ガンマ線それとも電子? •到来方向? •どのようなエネルギーを持つのか? もんじゅHPより 7/21 鳥居らにより報告 (2002年) 粒子加速メカニズムの解明のため には詳細観測が必要 2.柏崎刈羽原子力発電所での観測 800m Google map •冬季雷活動時に放射線の増大が観測されていた •監視モニタとの同時観測ができる •宇宙観測よりも圧倒的に安く、迅速にできる 8/21 2.柏崎刈羽原子力発電所での観測 •2006年12月18日より発電所所員の方々の協力のもと、設営開始 理研:加藤博(先任技師)、土屋晴文(協力研究員) 東大:榎戸輝揚、山田真也、湯浅孝行(みな大学院生) 9/21 2006年12月22日より観測開始! 2.柏崎刈羽原子力発電所での観測 A •2台の相補的な検出器 •大部分が手作りで新たに開発 検出器、電源、データ収集回路やソフト、小屋など •冬の雪、風対策もしている 光測定器 電場測定器 ガンマ線粒子分別器 全方位型X線•ガンマ線検出器 40keV-80MeV 指向性型X線•ガンマ線検出器 40keV-3MeV NaI 音測定器 NaI CsI BGO 東大側製作 10/21 NaI 10m 理研側製作 B 2.柏崎刈羽原子力発電所での観測 指向性型検出器の簡単な説明 ガンマ線 電子 NaI 無機シンチレータ BGO 光電子増倍管 ガンマ線粒子分別器 雷活動に由来しない 横や下から のガンマ線 BGO 無機シンチレータ ガンマ線粒子分別器と周囲のBGOが 反応しないものが上空からのガンマ線! 11/21 •手作り! •X線天文衛星「すざく」の 硬X線検出器の概念を ベース 榎戸、山田、湯浅ほか東大大学院生の製作 3. 2007年1月7日のイベント -天候や発光現象2007年1月7日の気圧配置 “日本上空で二つの低気圧が合体 爆弾低気圧が形成された” 日本海側では雷を伴う嵐 雷雲からの発光現象の観測 http://sonotaco.jp/forum/viewtopic.php?t=1277 関東近辺から日本海側の観測 日本海側に発達した雷雲があった証拠 12/21 3. 2007年1月7日のイベント -X線•ガンマ線検出器の観測1日 0時 午前6時 午後0時 午後6時 0時 放射線量 BGO >40 keV 私たちが注目した増加 NaI >40 keV 2時間 日本時間 13/21 大きな放射線量の 変化は降雨によって ラドン娘核種が落ちて きた影響 6時43分ごろ 様相の異なる 突発的な増加 3. 2007年1月7日のイベント -X線•ガンマ線検出器と光や電場との関係40秒間増加 放射線量 上からの>3MeVガンマ線 40秒間増加 3-10MeVガンマ線 増加なし 電場の強さ 光の強さ ガンマ線粒子分別器 14/21 光 70秒 雷が光る! 電場 10分間 日本時間 雷が発生する70秒前に 雷雲から40秒間、 高エネルギーガンマ線が 到来。 ここまで詳細に放射線と 光や電場との関係が 示されたのは初めて。 3. 2007年1月7日のイベント -X線•ガンマ線のエネルギー分布- 3-10MeVガンマ線 ガンマ線粒子分別器 光 ■増加した時 □増加していない時 ガンマ線の数 (MeV-1) 上からの>3MeVガンマ線 粒子加速を詳しく知るためには 絶対必要なエネルギースペクトラム (あるエネルギーのガンマ線が何個来たか) 1 10 エネルギー (MeV) 電場 10分間 15/21 日本時間 冬の雷雲に伴って到来したガンマ線の エネルギーが10MeVに達している ことが初めて明らかに。 3. 2007年1月7日のイベント -放射線量放射線量 (ミリシーベルト) 60,000 がんの局部治療 年間に人が自然に 浴びる放射線 胸部X線写真 2.4 0.05 •高感度の検出器を用いたおかげ •実際の放射線量は 10億分の1mSV(ミリシーベルト) 今回、検出された放射線 0.000000001 人体への影響はまったく無視できる 16/21 3. 2007年1月7日のイベント 雷雲 宇宙線 ++++++++++ ee- e- e----------------ee-e- e- ++++ -イベントの仮説(1)宇宙線が空気分子から電子をはぎ取る (2)電子はプラスの電気の層に引き寄せされる (3)加速された電子が周囲の空気分子から電子 をはぎ取り、電子の数が増える 逃走電子なだれ[Gurevichら、1992 ] (4)光速に近い電子は、ガンマ線を放射する 制動放射 レントゲンや手荷物検査のX線と同じ仕組み ガンマ線 17/21 光速に近い電子は、 “サーチライト”のように前方の狭い領域に のみガンマ線を放射する。 榎戸輝揚 2006年度東大理学系研究科修士論文 Tsuchiya, Enoto & Makishima et al., PRL in press 3. 2007年1月7日のイベント 雷雲 宇宙線 ++++++++++ ee- e- e----------------ee-e- e- -イベントの仮説時速10kmから50km ++++ ガンマ線 17/21 榎戸輝揚 2006年度東大理学系研究科修士論文 Tsuchiya, Enoto & Makishima et al., PRL in press 3. 2007年1月7日のイベント -イベントの仮説雷雲 宇宙線 ++++++++++ (5)検出器上空にガンマ線が 来たとき検出できる ee- e- e----------------ee-e- e- ++++ ガンマ線 17/21 榎戸輝揚 2006年度東大理学系研究科修士論文 Tsuchiya, Enoto & Makishima et al., PRL in press 3. 2007年1月7日のイベント -イベントの仮説雷雲 宇宙線 ++++++++++ (5)検出器上空にガンマ線が 来たとき検出できる (6)放射線の増大が終了 ee- e- e----------------ee-e- e- ++++ ガンマ線 17/21 榎戸輝揚 2006年度東大理学系研究科修士論文 Tsuchiya, Enoto & Makishima et al., PRL in press 4.今後の課題と発展 冬の雷雲が電子を光速近くまで加速できる 天然の粒子加速器であることを突き止めた! 雷雲 太陽 超新星残骸 今後調査すること •”サーチライト”モデルは正しい? •電子そのものが来るような現象はあるのか? 広い範囲に小型で感度の良い検出器を設置 サーチライトの動く様子を観測 ガンマ線の走る距離>>電子の走る距離 例 10 MeVのガンマ線 300 m 程度 10 MeVの電子 50 m 程度 電子が届かなかっただけかもしれない 18/21 柏崎刈羽原子力発電所HPより 4.今後の課題と発展 •宇宙線と雷の発生との関わり “宇宙線が雷を誘発する”という理論がある(Gurevichら 1992) 宇宙線 雷雲 e++++++++++ ee- ee----------------e- e-e- ++++ e- e- 雷が光る 19/21 地表 雷雲を抜けた電子が空気中を 走り、地表まで”電気の道筋”を 作る。 地表まで道が通ると、そこを 大電流が流れて雷が光る これが本当だとすると、私たちの 観測したようなガンマ線は頻繁に 発生しているかもしれない。 今後、観測データを増やして調査 雷の発生メカニズムのヒントとなる 可能性 5. まとめ 宇宙の粒子加速器の仕組みを知りたい 太陽 超新星残骸や パルサー ブラック ホール 「ようこう」 Chandra Chandra 地球の雷現象の観測 粒子加速メカニズム解明への新たなアプローチ 衛星 X線•ガンマ線 電波や光 Wikipediaより 地上 NOAA Photo Library 20/21 謝辞 • 日本原子力開発機構 鳥居健男様(主任研究員) • 柏崎刈羽原子力発電所技術総括部放射線安全グループの 皆様 • 理研技術部 池上様と東大理学部装置試作室 大塚様 • 理研広報室&東大理学研究科広報室の皆様 • 理研牧島宇宙放射線研究室&東大牧島研究室の皆様 21/21 終了 1.背景 -宇宙からの放射線宇宙の粒子加速器 星の爆発した跡(カシオペアA) 衛星 「Chandra」撮影 生きている太陽 「ようこう」撮影 電気を帯びない X線•ガンマ線 (中性子、ニュートリノ) は直進する 地上の観測装置 電気を帯びている 宇宙線は進路が 曲げられる 雷雲からのさまざまな発光現象 高度 (km) エルブス 雷雲 オリジナルの図は、http://pat.geophys.tohoku.ac.jp/~termo/sprites/whatissprite.htmから入手 引き算したスペクトラム 正味のスペクトラム ■-□ 両検出器で得られた エネルギースペクトラム 東大側 理研側
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