卯 浪 集 小 川 み ゆ き 選 晴予報続く日を待ち大根干す 幼児があれ こ れ拾ふ 柿 落葉 それぞれのリズムで落葉踏みしめる 湖の色吹き来る風も冬めける ショベルカー大きく掬ふ草紅葉 小春日や山川草木深呼吸 冬立つや宣言をして禁煙す 雨止んで山の粧ひ新にす 本堂の畳冷 た し真如 堂 黄落の衣を脱ぎて幹眠る 日当たりの塀にひしひし蔦紅葉 ◎鵙猛る野積み傾く無縁墓地 銀杏の臭ひて子等の騒がしき 紅葉狩去来の墓まで歩を伸ばし 裏表色を重ねて散紅葉 去 来 の 墓 木 の 実 踏 み 分け 着 き に け り 初時雨友の話の聞き役に 冬めくやチョコに犬歯のあたる音 夜の町木枯のバスがらんどう 冬めくや風の止む時陽の積もる 宮 会報第四 二号 二○一○年一一月 大 大 宮 大 宮 京 都 京 都 京 京 京 川 川 都 都 都 京 都 京 都 京 都 深 深 池田 紬子 〃 長畑 なみ 中 川 金時 〃 小泉 悦 代 中島 慶雄 〃 西村 博子 辻本 時 子 大黒ひさゑ 〃 木 村 直子 藤井めぐむ 竹 内 恵子 〃 海老澤希由 瀧川 純 〃 〃 落葉踏む音にまぎらすひとりごと 冬晴やおのが影踏む子の一歩 ◎雲流る小春の川の底の底 遠吠えのとぎれとぎれに小夜時雨 日の差せばひ ときは 燃 える冬紅 葉 初冬や北の空から来るたより 帰り花園児 は 唄ふ 野の 小径 子の喧嘩笑ひ見てゐる小春かな 眠つても眠つてもまだ冬の朝 踏みしめる落葉の音 の 遠ざかる 落葉踏む小さき足音追ひかける 真青な空に流るる紅葉かな 鳥黒く飛び交ふ空や冬来る ペンキ剥げ赤錆痛き冬の鉄 塗り立てのベンチにも降る落葉かな ◎一枝に色を重ねて冬紅葉 柿好きの子規にあやかり柿を剥く おで ん鍋 囲みて上戸の 出来上がる ゆつくりと水尾の交はる番鴨 淀みたる 水面彩る冬 紅 葉 紅葉の隙間にのぞく空 の青 落葉掃くそばから落葉降りて行く 柊の花を零して風渡る 秋の夜半闇より深き吐息つく 歌のやうお経聞こえる報恩講 二度寝して 今 日は 勤労 感謝の日 大仏の伏 し目がちなる小六月 発車する各駅停車小六月 剥き出しの白軽々と大根引 お湿りや奈良の仏の冬めける 畏怖持ちて冬の連山眺めをり 炉開に襟を正して集ひたり 深 深 深 深 深 深 深 前 前 前 前 前 原 原 原 宿 宿 宿 宿 宿 〃 富所せつ子 〃 川口 水木 〃 鳶 田 美継 駒井ゆきこ 〃 宮 田 珠子 渡辺 檀 〃 堀田 葵 〃 神子沢さくら 川 池垣真知子 〃 川 秋 野 裕子 〃 川 中村 芳子 川 山田 理恵 川 平 井 輝子 〃 川 植村 美明 〃 川 堀江 惠 〃 橋 飯塚 柚花 橋 千明小狐如 橋 戸所 理栄 橋 森田 幸子 橋 吉田恵美子 〃 前 橋 原 原 宿 前 橋 原 1 冬構伐るべ き ものは す べて伐り やはらかく雑木紅葉に陽が満ちて ◎芝居は ね 夜 風のままに酉の市 枯葉散る友は静かに召されけり ◎冬めくや奥歯がずきんと痛む朝 山頂にひしめき合ひて冬紅葉 凩の街信号のあるばかり 形佳き落葉ノートに挟む癖 迷宮に迷ひ込んだか酉の市 ◎ぎしぎ しと関節が鳴る風邪をひ く ◎木の葉髪今日も予定を組んでをり 参道の冬晴が背を押して来る 冬の蚊の部屋の四隅にをる気配 掘られ来し蓮根の泥も付けて売る 色添へし遊女の墓の冬薔薇 転院の母に紅葉の眩しかり 杭の上に膨れて冬の鴎かな 北向きの窓の向かうの小春かな 掬はれて落葉ふたたび宙を舞ふ 予約した本受け取りに行く小春 虫喰ひのかたちも楽し柿落葉 木枯に尾立て耳立て犬のゆく 紅葉散る足元赤き道しるべ 落葉焚くかをり懐かし並木道 駆け出してかんざし揺れる七五三 移りゆく時が木の葉に残されて 吹き寄せの遊歩道には初時雨 漂ひて干大根のあるらしく 舞ふ紅葉より軽やかに猫のゆく 腹の中つまびらかにしあけびの実 愛用の古き自転車花八つ手 原 原 原 宿 宿 宿 原 宿 原 宿 原 宿 原 宿 青 山 青 山 青 山 青 山 青 山 青 山 青 山 表参道 表参道 表参道 表参道 表参道 表参道 表参道 柏 柏 井上 芙蓉 〃 纐纈 晶子 三小田 宙 〃 服部 萌子 関 千恵子 白山 素風 〃 岸田 祐子 齊藤 好 司 中 里 三句 〃 中里 柚子 竹内はるか 〃 渡辺 光子 遠 藤 由美 小林 含香 〃 福室 百野 〃 堀内みさ子 今泉 晶 〃 近見江 身 子 佐藤眞理子 川口 祐子 窪田 七湖 永井 糸遊 角田卯の 花 白鳥の胸そらせをり昼の湖 新のりの帯に老舗の誇りかな 看り女のふつと息抜く落葉径 国宝の寺の厠や小六月 穭田にモネ の 「積わ ら 」見たりけ り 小春日の月天に満つ夕べかな 冬の夜キャンドル揺らぎ香り来る 豪商の旧家見学冬日和 木の実落つベンチに赤きランドセル 残照の差して紅葉の際立ちぬ 美男葛宿に 美人の女 将をり 朴落葉離るる音を聞きにけり 野良猫のふり返りては冬日かな 鎌倉に俳人多し芭蕉の忌 短日の小町通りにカレーの香 枯葦の先に大橋大入り日 初時雨ネオンの文字の欠けてをり 枯萩の寄る人もなく園の昼 紅葉も裏と表に違ふ顔 妻の手の支へる脚立松手入 豆腐屋のラッパ長々秋深し 秋日和オランウータン子育て中 冬支度済 ませ南国旅 立 ちぬ 小春日や食後に友と一万歩 川底に眠る 黄葉の星のごと 山谷のありし金婚紅葉晴 ◎金婚の 妻の手の皺 冬 ぬくし 末枯る湖も中州も夜の帳 鴨来ると息づく湖でありにけり 影と影重なり合うて枯芭蕉 ブロンズの裸婦像凛と夕紅葉 ほろにがきみどり幽かに菊膾 柏 松村季代 子 〃 柏 小鷲 溪子 〃 柏 高良 楽 水 〃 柏 吉井 安 里 〃 柏 村田五百代 〃 〃 柏 高貝 敏子 〃 柏 高橋ときこ 〃 〃 柏 伊藤ミヨ子 〃 柏 樺島 祥 柏 大網ゆう子 〃 〃 柏 斉藤 久野 柏 石井 恵 茶 柏 久米 孝子 柏 曽我部晩成子 〃 熊 本 北村 睦子 〃 熊 本 藤井 鴻 〃 小川 房子 熊 本 2 初霜に光る青菜の並ぶ畑 初鴨の水尾に日差しのきらめけり 湧 水 の 恵 み あま ね し 草 の 花 水の上吹き矢のごとく走る鴨 火のやうなコスモスもあり丘の雲 慈しむ笑顔の先に七五三 雑 踏 の 中 に ひ と 色柿 落 葉 ◎山紅葉吸ひ 込まれ ゆ く列車かな 薄れゆく記憶の母や返り花 あれこれと口出す母や障子貼る 日だまりを探して猫の小春かな 酉の市小さき熊手を握りしめ 落葉舞ふゆるい朝日が歩を照らす 冬野菜調理学習楽しんで 一服の茶のもてなしの庭紅葉 ケーキ屋の遊びの砂場小春かな 冬ぬくしサンクチュアリの覗き窓 色鳥の番去りたる狭庭かな 菩提寺の 庭のかたすみ石蕗の花 ◎径阻む朴の落葉の二三枚 日向ぼこなんにも要らぬ今日ひと日 暖炉燃ゆ黒き瞳のみどりごよ 冬の峡トロッコ電車音高し 子等の声紅葉の中のかくれんぼ 初霜や年毎ふえる喪の葉書 山茶花の大樹のもとに咲きにけり 其処彼処計つたやうに木の実落つ 梵鐘に一糸乱れぬ菊花かな 夕日染めビルの谷間に冬紅葉 冬温し古き写 真をめくるごと アスファルト色とりどりの散紅葉 参道に弾む声あり冬紅葉 熊 本 熊 本 熊 本 武蔵野 武蔵野 武蔵野 武蔵野 武蔵野 田 川 田 川 田 川 多 摩 多 摩 多 摩 多 摩 多 摩 多 摩 多 摩 大牟田 大牟田 大牟田 横 浜 横 浜 横 浜 横 浜 鎌田 順子 江上 英子 〃 末松せい子 新海多恵子 鈴木 鈴女 〃 下元 夏乃 〃 〃 古賀 文 子 〃 杉江 葉子 林 紀子 野田 静香 佐 藤 カヨ 渡辺美夜香 〃 原山 惠 堀 洋海 〃 能村みずき 香 川 銀魚 宮西かりん 田 中 きよ 前原八寿 之 海谷 育男 志岐 鈴恵 小原 循 子 鈴木 鈴音 野上 充 子 真壁 藤子 散紅葉一葉を連れて帰宅する きびきびと消防訓練冬初 はにかんで少し背伸びの七五三 《特選句評》 横 浜 横 浜 横 浜 森 奈保美 八木たみ女 芳垣 珠華 冬めくや奥 歯 がずき ん と痛む朝 三小田 宙 神経 がずき んずき んと鋭 角に 突き 刺 さる ように痛む 朝。 そ の痛 さが余 計に 冬の 寒 さを 感じ させた。痛 か った作者 には申 し訳ないのだが面白い捉え方だと思った。 金婚の妻の手の皺冬ぬ くし 曽我部晩 成 子 「手の皺」と季題の「冬ぬくし」がつかず離れずでこの句 の 印 象を よ り 暖 か い も の に して い る 。 夫婦 の 長 い 年 月 と 重み を夫から妻への慈しみの眼で捉えられ感じがよい句である。 山紅葉吸ひ込まれゆく列車かな 下元 夏乃 深 山の 紅葉・雄大な景色。言葉には表すこと のでき ない ほ ど の 美 し さ だっ たろ う 。 列 車 の 乗 って いる 作 者 は 当然 だ が、 丸ご と 列 車 まで 美 し い 山 々 へ 吸 い 込 ま れて い ると 作 者 は 感 嘆 した。起点になっている目が面白い。 径阻む朴の落葉の二三枚 堀 洋海 本 当は 朴の 落 葉で は 径は 阻 まな い だろ う が、 作 者 の 目 に は それ ほど 大 き く 見え た 朴落 葉。 一 枚で はな く 二三 枚と し た曖 昧さがよい。 芝居はね夜風のままに酉の市 纐纈 晶 子 浅 草 は 賑や かで 、 風 物 が 時 折 、 江 戸 時 代 を 彷 彿 さ せ る 。 大 好 き な 芝 居 を 見 た 後 に 何 気 な く 酉 の 市 を 覗 い た 。「 夜 風 の ま ま」としたところにより一層趣がある。 3 《近 詠》 小 川 み ゆ き 花八手少し明るく裏鬼門 花八手日々坦坦と過ぎにけり 子 選 何もかも二人で分かち冬ぬくし 藏 本 聖 《 ひ と こ と 》 月に一 度 の 卯浪。 九月 よりいろいろ な 吟 行 地 を 訪 ね て い る 。 始 めて の 吟 行 地 や 句 会 場を 訪 ね る こ と は 楽 し い 。 わ くわくする。俳句を通して大げさだ が 、 一 瞬 一 瞬 の 人 生 を 楽 し んで い る 自 分がいる。俳 句を楽 しんで いる 自分が 宮 池田 紬子 〃 宮 長畑 なみ 宮 中 川 金時 都 小 泉 悦代 都 中島 慶雄 都 西村 博子 〃 都 辻本 時子 〃 都 大黒ひさゑ 〃 木 村 直子 都 い る。他 にな い、 独 自 の 句作 の 世 界を 京 京 京 大 大 京 京 京 大 作り上げたい。 晴予報続く日を待ち大根干す 鰯雲シンガポールへ続く空 それぞれのリズムで落葉踏みしめる 比叡より時雨連れ来る湖の風 伝へたきこと多かりし十夜寺 念佛の踊り楽しや空也の忌 本堂の畳冷 た し真如 堂 照紅葉朽ちた墓石に降り注ぐ 問ふことのいくつかありて亥の子餅 朝まだき黙保たる鴨の陣 散紅葉会津の志士の眠る山 縁の綱引いて繋がる十夜仏 紅葉して高き低きに混じり合ふ ◎紅葉狩去来の墓まで歩を伸ばし 門前の茶店を灯す石蕗の花 去 来 の 墓 木 の 実 踏 み 分け 着 き に け り 広い海目指し紅葉の流れゆく 冬めくやチョコに犬歯のあたる音 冬ぬくし紙飛行機に追ひ抜かれ 冬晴れやおのが影踏む子の一歩 雲流る小 春の川の底の 底 踏み切りの音の大き く 風冴ゆる 落葉踏み音を楽しむ小道かな 菊の香は 亡き人偲ぶ よ すがかな 七五三おてんば娘の晴れ着かな 小春日の光も入るる万華鏡 子の喧嘩笑ひ見てゐる小春かな 踏みしめる落葉の音 の 遠ざかる 掛小屋の準備整ひ酉の市 落葉踏む小さき足音追ひかける 菊の香を抱くといふより抱かれたる あしたのジョーこの秋俺は燃え尽きたぜ ペンキ剥げ赤錆痛き冬の鉄 動かざる紅葉水面に揺れ止まず 大空へ解き放されて散る黄葉 一枝に色を重ねて冬紅葉 新米の炊き上がりたるかをりあり 足先の力抜けたる炬燵 かな 落葉掻く乾きし音の心 地よさ 冬空に大きな刷毛で描きをり 秋の夜半闇より深き吐息つく 浜離宮吉宗ゆかりの冬紅葉 二度寝して 今 日は 勤労 感謝の日 大仏の伏 し目がちなる小六月 発車する各駅停車小六月 京 京 深 深 深 深 深 深 深 深 深 前 前 前 前 富所せつ子 〃 川口 水木 鳶 田 美継 駒井ゆきこ 〃 宮 田 珠子 神子沢さくら 都 藤井めぐむ 都 竹内 恵 子 〃 川 海老澤希由 川 瀧川 純 川 池垣真知子 〃 川 秋 野 裕子 〃 川 中村 芳子 〃 川 山田 理恵 川 平 井 輝子 〃 川 植村 美明 〃 川 堀江 惠 橋 飯塚 柚花 橋 千明小狐如 〃 橋 戸所 理栄 橋 森田 幸子 〃 吉田恵美子 前 橋 前 橋 前 橋 宿 原 宿 原 宿 原 宿 原 4 振り返ること増えてきし神無月 東京を離れ勤労感謝の日 畏怖持ちて冬の連山眺めをり 炉開に襟を正して集ひたり 朽ちてゆく桜紅葉を踏みにけり 掃きよせて掃きよせてなほ落葉かな 街路樹は銀杏落葉となりにけり 枯葉散る友は静かに召されけり 木の葉髪終活準備始めるか 新しき落葉踏み応へなき音 オルガンの響き冷たしカテドラ ル 考査終へ銀杏落葉の明りかな ちらり見てマスク同士のすれちがふ すべらかな丸き肩した大根引く ハイヒール履いて小走り初時雨 小春日に祈りの心開きけり 石蕗の花 雨の日なれど 輝けり 参道の冬晴が背を押して来る 冬の蚊の部屋の四隅にをる気配 掘られ来し蓮根の泥も付けて売る 稲の穂を挿して仕上がる大熊手 介護終へ 街にジングル ベル流る 黄落や町騒にゐて一人きり 父と子のチャンバラ銀杏もつと散れ 冬晴やビルの谷間の小さき庭 朝刊や凍て つ くポスト はステン レス 予約した本受け取りに行く小春 旅人のごとく落葉は風まかせ 紅葉散る足元赤き道しるべ 降り続く落葉の小さき声を聴く 駆け出してかんざし揺れる七五三 お日様はありがたきもの初時雨 原 宿 渡辺 檀 〃 原 宿 堀田 葵 〃 原 宿 井上 芙蓉 原 宿 纐纈 晶子 〃 原 宿 三小田 宙 〃 原 宿 服部 萌子 原 宿 関 千恵子 〃 原 宿 白山 素風 〃 原 宿 岸田 祐子 青 山 齊藤 好 司 〃 青 山 中 里 三句 〃 青 山 中里 柚子 青 山 竹内はるか 〃 青 山 渡 辺 光子 〃 青 山 遠 藤 由美 〃 青 山 小林 含香 表参道 福室 百野 表参道 堀内みさ子 〃 表 参 道 今泉 晶 〃 移りゆく時が木の葉に残されて 引力にかなひませんと木の葉舞ふ サックスの音のせて舞ふ落葉かな 片時雨心模様に似てもあり 木の実ほど期待抱へて逢ひにゆく 海の見え斜面好みし石蕗の花 人生が大きく曲がる去年今年 山茶花の垣根続きし屋敷跡 ◎意地張つて置いてけぼりの秋の暮 大小の熊 手積まれて 御 焚上 落葉籠背負ひ明るき林出る 穭田にモネ の 「積わ ら 」見たりけ り 冬の夜キャンドル揺らぎ香り来る 豪商の旧家見学冬日和 木の実落つベンチに赤きランドセル ◎朴落葉離るる音を聞きにけり 裸木となりても名残ありにけり 短日の小町通りにカレーの香 江の島の沖より長夜はじまりぬ ◎初時雨ネオンの文 字 の欠けて を り 爪切れば時雨来りて過ぎにけり 弱 る 母 一 点 見つ め 木 の 葉 散 る 豆腐屋のラッパ長々秋深し 小春日を背負ひて夫とペダル漕ぐ 宮参り秋天呑み込み大欠伸 小春日や食後に友と一万歩 時雨きて竹林けぶる寺の奥 金婚の妻の手の皺冬ぬくし 末枯る湖も中州も夜の帳 鴨来ると息づく湖でありにけり 影と影重なり合うて枯芭蕉 山茶花や靴のひも締め石畳 表 参 道 近見江 身 子 〃 表 参 道 佐藤眞理子 表参道 川口 祐子 表参道 窪田 七湖 柏 永井 糸 遊 柏 角田 卯の花 〃 〃 柏 松村季代 子 柏 小鷲 溪子 柏 高良 楽 水 柏 吉井 安 里 〃 柏 村田五百代 柏 高貝 敏子 〃 柏 高橋ときこ 〃 柏 伊藤ミヨ子 〃 柏 樺島 祥 柏 大網ゆう子 柏 斉藤 久野 〃 柏 石井 恵 茶 柏 久米 孝子 柏 曽我部晩成子 熊 本 北村 睦子 〃 藤井 鴻 〃 熊 本 5 光りつゝ秋の翡翠飛び行けり 冬の霾山 頂の景隠しけ り 初霜に光る青菜の並ぶ畑 ◎初鴨の 水 尾に日差 しのきらめけ り 湧 水 の 恵 み あま ね し 草 の 花 静けさに末枯すすみ昼さがり 火のやうなコスモスもあり丘の雲 柿落葉径彩るや散々に 雑 踏 の 中 に ひ と 色柿 落 葉 柔らかき日差しが守る冬紅葉 ◎山紅葉吸ひ 込まれ ゆ く列車かな 薄れゆく記憶の母や返り花 日だまりを探して猫の小春かな 帰り花日なたにあれば良いものを 落葉舞ふゆるい朝日が歩を照らす トンネルを抜けて広 が る冬田かな 女四人会話弾みて冬の旅 見し時の紅葉且つ散る寺苑かな 一服の茶のもてなしの庭紅葉 ケーキ屋の遊びの砂場小春かな 吾子抱きて小さな秋を拾ひけり 潮風に黄の群明り石蕗の花 冬ぬくしサンクチュアリの覗き窓 枝先を空に突き刺し銀杏散る ◎日向ぼこなんにも要らぬ今日ひと日 雑木紅葉水あるところ埋めにけり 暖炉燃ゆ黒き瞳のみどりごよ ◎家一つ壊して生るる冬の空 冬の峡トロッコ電車音高し 子等の声紅葉の中のかくれんぼ 赤に黄に森の紅葉はシンフォニィー 初霜や年毎ふえる喪の葉書 熊 本 熊 本 熊 本 熊 本 武蔵野 武蔵野 武蔵野 武蔵野 田 川 川 武蔵野 田 川 田 多 摩 多 摩 多 摩 多 摩 多 摩 多 摩 多 摩 小川 房子 〃 鎌田 順子 江上 英子 〃 末松せい子 新海多恵子 鈴木 鈴女 〃 〃 下元 夏乃 〃 古賀 文 子 〃 杉江 葉子 林 紀子 〃 野田 静香 〃 佐 藤 カヨ 〃 渡辺美夜香 〃 原山 惠 堀 洋海 能村みずき 〃 香 川 銀魚 〃 宮西かりん 〃 田 中 きよ 冬日向洗濯物の移りをり 其処彼処計つたやうに木の実落つ 踵のみ見えたる冬の象舎かな 炉開や客と亭主に古き友 ◎冬温し古き写真をめくるごと アスファルト色とりどりの散紅葉 澄み渡り雲一刷毛の冬の朝 ◎襟袖の乾きが遅し冬に入る 水低き方へ流れて石蕗の花 きびきびと消防訓練冬初 はにかんで少し背伸びの七五三 落葉舞ふ見送る母の足元に 《特選句評》 浜 大牟田 大牟田 大牟田 横 浜 横 浜 横 浜 横 浜 横 浜 横 浜 横 前原八寿之 海谷 育男 志岐 鈴恵 小原 循子 鈴木 鈴音 野上 充 子 真壁 藤子 森 奈保美 八木たみ女 〃 芳垣 珠華 〃 紅葉狩去 来の墓まで 歩 を伸ばし 藤井めぐむ 今 年 の 京 都 の 紅 葉は 例 年 に な く 美 し いと 聞 いて い ます 。 その 素 晴 ら し い 紅 葉 狩 の 歩 を 俳 人 で あ る が 故 、 去 来 の 墓 まで 紅 葉 狩 りを楽しんだのでしょう。 意地張って置いてけぼりの秋の暮 角田卯の 花 落ち着いて 考えれば たいしたことではないのに、ついつい意 地を張って しまう 事が あります。 後悔、 そして その 後のむ なし さが残っている作者。そのことが、『秋の暮れ』という季題から 伝わってきます。 朴落葉離るる音を聞きにけり 高貝 敏子 朴の葉は、分厚く大きい。それだけにほかの気の落ち葉とは 違います。 木から 離れ落ちた 朴の 葉の音 があったと 作者 には聞 こえるほど の 存在感 が あったの か も しれませ ん。 6 初時雨ネオンの文字の欠けてをり 伊藤ミヨ子 か つて は 賑 や か だ っ た だろ う ネ オ ン 街 の 景 を 思 い 浮 か べ るこ と が 出 来 ま す 。 日 本 全 体 に 不 況 の 嵐が 吹 いて い る 故 に こ んな 句 が生まれたのかもしれません。「初時雨」がより一層うらぶれた 飲み屋街を思い起こさせてくれます。 大 大 宮 宮 池田 紬子 〃 長畑 なみ 仕事柄十二月は頭の痛い季節で す 。 とい う のも 、 子 供たち の成 績を 付けなくてはなりません。 その仕事を ようやく終えるこ とが 出 来 、 肩 の荷 が ち ょ っ と 軽 くな っ た 気分です。 一ヶ月に一回、卯浪句会で 行く吟 行 は 、 仕 事で 余 裕 の な い 生 活 に ほっ とする時間を与えてくれます。 《ひとこと》 襟袖の乾きの遅し冬に入る 森 奈保美 主 婦 の 俳 句 な の で し ょ う 。 今 まで は す ぐ に 乾 いて い た 洗 濯 物 の乾きが遅 くなってしまう冬。特に襟袖の乾きが遅くなります 。 普段の生活の中の実感から生まれた俳句だとと思います。 《近 詠》 藏本聖子 雪舟の庭の借景照紅葉 水音の育てし峡の末枯るる 正 樹 選 この辺り古称は馬関小春か 日 置 晴予報続く日を待ち大根干す 幼児があれ こ れ拾ふ 柿 落葉 それぞれのリズムで落葉踏みしめる 比叡より時雨連れ来る湖の風 ◎秘密基地跡らし木の実の並びをり 大楠をつかみ這ひ上ぐ蔦紅葉 小春日や山川草木深呼吸 念佛の踊り楽しや空也の忌 午後からの句会や窓を木の葉雨 縁の綱強く握りて十夜寺 ころあひになりて酢茎の引くを待つ 日当たりの塀にひしひし蔦紅葉 鵙猛る野積み傾く無縁墓地 ◎散紅葉会津の志士の眠る山 銀杏の臭ひて子等の騒がしき 紅葉して高き低きに混じり合ふ 常に鳴る鐘に願ひを十夜寺 裏表色を重ねて散紅葉 大綿が回つてをりし百度石 門前の茶店を灯す石蕗の花 球根を植ゑて良き春待つばかり 夜の町木枯のバスがらんどう 冬めくや風の止む時陽の積もる 冬ぬくし紙飛行機に追ひ抜かれ 冬晴やおのが影踏む子の一歩 雲流る小 春の川の底の 底 遠吠えのとぎれとぎれに小夜時雨 日の差せばひ ときは 燃 える冬紅 葉 色形選びて落葉しをりにす 初冬や北の空から来るたより 帰り花園児 は 唄ふ 野の 小径 小春日の光も入るる万華鏡 ◎眠つても眠つてもまだ冬の朝 掛小屋の準備整ひ酉の市 京 京 大 都 都 宮 京 都 京 都 京 都 深 深 深 川 川 川 川 都 深 川 京 深 川 川 都 都 深 深 川 京 京 深 中 川 金時 〃 小 泉 悦代 〃 中島 慶雄 〃 西村 博子 辻本 時子 大黒ひさゑ 〃 〃 木 村 直子 〃 藤井めぐむ 竹 内 恵子 〃 〃 海老澤希由 瀧川 純 〃 池垣真知子 〃 秋 野 裕子 〃 中村 芳子 〃 山田 理恵 平 井 輝子 〃 植村 美明 〃 7 落葉踏む小さき足音追ひかける 真青な空に流るる紅葉かな 鳥黒く飛び交ふ空や冬来る 菊の香を抱くといふより抱かれたる ペンキ剥げ赤錆痛き冬の鉄 冬小物揃へて今日の句会かな 動かざる紅葉水面に揺れ止まず 大空へ解き放されて散る黄葉 高きよりくるくるくると散る黄葉 一枝に色を重ねて冬紅葉 新米の味 引き立たす塩 のあり 新米の炊き上がりたるかをりあり ゆつくりと水尾の交はる番鴨 初時雨光の中を雨の糸 ◎足先の力抜けたる炬燵かな 紅葉の隙間にのぞく空 の青 落葉掻く乾きし音の心 地よさ 柊の花を零して風渡る ◎猫の目は木枯の町映しけり 秋の夜半闇より深き吐息つく 浜離宮吉宗ゆかりの冬紅葉 二度寝して 今 日は 勤労 感謝の日 母からの電話待つ子に日短 振り返り振り返り見る七五三 手首出て小さくなりし子のコート きつちりと撫で付けてゐる木の葉髪 大木の細き枝して黄落す 振り返ること増えてきし神無月 東京を離れ勤労感謝の日 人々が子等を祝へり神の留守 宿を閉づ唐松黄葉急ぎをり 深 前 前 前 前 前 前 前 原 原 原 原 原 原 川 堀江 惠 〃 橋 飯塚 柚花 〃 橋 千明小狐如 橋 戸所 理栄 〃 橋 森田 幸子 〃 〃 橋 吉田恵美 子 〃 橋 神子沢さくら 〃 〃 橋 富所せつ子 〃 宿 川口 水木 〃 〃 宿 鳶 田 美継 宿 駒井ゆきこ 〃 宿 宮田 珠子 〃 〃 宿 渡辺 檀 〃 〃 堀田 葵 〃 宿 一本の紅 葉燃え たつ 曲 がり角 ◎冬構伐るべきものはすべて伐り 緋を流し谷間に向ふ紅葉かな ◎掃きよせて掃きよせてなほ落葉かな 芝居はね夜風のままに酉の市 枯葉散る友は静かに召されけり 山頂にひしめき合ひて冬紅葉 冬耕のぽっかりとしたながめかな ◎凩の街信号のあるばかり 形佳き落葉ノートに挟む癖 ちらり見てマスク同士のすれちがふ 深呼吸して朝寒さの中にゐる 小春日に祈りの心開きけり 木の葉髪今日も予定を組んでをり 屋上に花壇あるらし冬日和 冬の蚊の部屋の四隅にをる気配 人波に掲げて進む熊手かな 掘られ来し蓮根の泥も付けて売る 拡声器黄落並木を案内す 風を待つ金色の葉に射す冬日 天空へ壊さぬやうに熊手担く 稲の穂を挿して仕上がる大熊手 黄落や町騒にゐて一人きり 父と子のチャンバラ銀杏もつと散れ 北向きの窓の向かうの小春かな 冬晴やビルの谷間の小さき庭 風に散り車に踊る木の葉かな 木枯に尾立て耳立て犬のゆく 小春日の 経 ゆ るゆると 七回忌 晩秋の窓さす色は黄金なる 小春日の温もりを溜め歩き出す 降り続く落葉の小さき声を聴く 原 原 宿 宿 宿 原 宿 原 宿 原 宿 原 原 宿 青 山 青 山 青 山 青 山 青 山 青 山 青 山 表参道 表参道 井上 芙蓉 〃 〃 纐纈 晶子 〃 三小田 宙 服部 萌子 関 千恵子 〃 白山 素風 〃 岸田 祐子 齊藤 好 司 〃 中里 三 句 〃 〃 中里 柚子 〃 〃 竹内はるか 〃 渡 辺 光子 〃 遠 藤 由美 〃 小林 含 香 福室 百野 〃 堀内みさ子 〃 〃 8 駆け出してかんざし揺れる七五三 お日様はありがたきもの初時雨 移りゆく時が木の葉に残されて サックスの音のせて舞ふ落葉かな 片時雨心模様に似てもあり 舞ふ紅葉より軽やかに猫のゆく 手編みしてこつくりこつくりの小春かな 山茶花の垣根続きし屋敷跡 高きより庭師の落とす冬紅葉 新のりの帯に老舗の誇りかな 幼等は従兄弟同志や柿落葉 落葉籠背負ひ明るき林出る 小春日や球根植ゑも終りけり 名画みて木枯連れて帰りけり 豪商の旧家見学冬日和 木の実落つベンチに赤きランドセル 残照の差して紅葉の際立ちぬ 天と地とほんのり温き冬紅葉 木の葉散るただ散り際の潔く 朴落葉離るる音を聞きにけり 裸木となりても名残ありにけり 鎌倉に俳人多し芭蕉の忌 枯葦の先に大橋大入り日 初時雨ネオンの文字の欠けてをり 絣織る筑後の里も冬に入る 妻の手の支へる脚立松手入 豆腐屋のラッパ長々秋深し 冬帽の携帯電話覗き込み 小春日を背負ひて夫とペダル漕ぐ 植木屋と共に働く冬日和 大木の楓下から覗き見る 表参道 表参道 表参道 表参道 表参道 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 柏 今泉 晶 〃 近見江 身 子 佐藤眞理子 川口 祐子 窪田 七湖 永 井 糸遊 角田卯の 花 松村季代子 〃 小鷲 溪子 〃 高良 楽 水 〃 吉井 安 里 村田五百代 〃 〃 高貝 敏子 〃 〃 高橋ときこ 〃 伊藤ミヨ子 樺島 祥 大網ゆう子 〃 〃 斉藤 久野 石井 恵 茶 〃 幾年の紅葉とありし石 灯籠 時雨きて竹林けぶる寺の奥 金婚の妻の手の皺冬ぬくし 末枯の岸に片寄せ廃れ舟 ◎末枯るる湖も中州も夜の帳 鴨来ると息づく湖でありにけり 影と影重なり合うて枯芭蕉 広き湖せまく遊べり鴨の群 指差せる彼方隠せし冬の霾 冬の霾山 頂の景隠しけ り 初霜に光る青菜の並ぶ畑 初鴨の水尾に日差しのきらめけり 小春日や江津公園の人の数 鴨立ちて広い湖水に影写し 火のやうなコスモスもあり丘の雲 慈しむ笑顔の先に七五三 柔らかき日差しが守る冬紅葉 ふはふはと銀杏落葉の黄絨毯 山紅葉吸ひ込まれゆく列車かな あれこれと口出す母や障子貼る 日だまりを探して猫の小春かな 酉の市小さき熊手を握りしめ 落葉焚き暮れて香ばし芋ふたつ ◎帰り花日なたにあれば良いものを 手術待つ胸の高まり秋高し 部屋籠もり友と競ひて毛糸編む トンネルを抜けて広 が る冬田かな 女四人会話弾みて冬の旅 行秋や夫婦二人の旅に出る 一服の茶のもてなしの庭紅葉 吾子抱きて小さな秋を拾ひけり 結ひ髪のぴよんと跳ねたり七五三 柏 柏 熊 本 熊 本 熊 本 熊 本 熊 本 熊 本 武蔵野 武蔵野 武蔵野 武蔵野 田 田 川 川 川 武蔵野 田 久米 〃 孝子 曽我部晩成子 北村 睦子 〃 〃 藤井 鴻 〃 小 川 房子 〃 鎌田 順子 江上 英子 〃 末松せい子 新海多恵子 鈴木 鈴女 〃 下元 夏乃 〃 〃 古賀 文 子 〃 〃 〃 杉江 葉子 〃 林 紀子 〃 野田 静香 〃 佐藤 カ ヨ 〃 9 冬ぬくしサンクチュアリの覗き窓 色鳥の番去りたる狭庭かな 槖駝師の命綱あり松手入 枝先を空に突き刺し銀杏散る 窓に灯の ぽつぽつ点る夕時雨 径阻む朴の落葉の二三枚 日向ぼこなんにも要らぬ今日ひと日 暖炉燃ゆ黒き瞳のみどりごよ 家一つ壊して生るる冬の空 冬の峡トロッコ電車音高し 縄飛びを親子で飛ぶよ冬日和 幼子の父を追ひかけ冬日和 初霜や年毎ふえる喪の葉書 山茶花の大樹のもとに咲きにけり 秋高し辞儀と笑ひの披露宴 花薄月待人となりにけ り ◎踵のみ 見えたる冬の 象舎かな 振り袖と笑顔の親子七五三 無人家に たわわに実る蜜柑かな 銀杏にぬるりと足を取られけり 冬眠に入れ ぬ熊の悲しき目 朝顔のまだ残りたる小 春かな 澄み渡り雲一刷毛の冬の朝 参道に弾む声あり冬紅葉 襟袖の乾きが遅し冬に入る 水低き方へ流れて石蕗の花 古民家の裏庭に聴く落葉掻 はにかんで少し背伸びの七五三 落葉舞ふ見送る母の足元に 多 摩 多 摩 多 摩 多 摩 多 摩 多 摩 多 摩 大牟田 大牟田 大牟田 横 浜 横 浜 横 浜 横 浜 浜 横 浜 横 浜 横 渡辺美夜香 〃 原山 惠 〃 堀 洋海 〃 〃 能村みずき 香 川 銀魚 〃 宮西かりん 〃 田 中 きよ 前原八寿 之 海谷 育男 志岐 鈴恵 〃 小原 循子 鈴木 鈴音 〃 〃 野上 充 子 真壁 藤子 〃 森 奈保美 八木たみ女 〃 芳垣 珠華 〃 《特選句評》 掃きよせ て 掃 きよせ て なほ落葉かな 纐 纈 晶 子 平 明 に して 簡 潔 な 一 句 。 落 葉 散 り 敷 く 中 を 掃 き 寄 せ て も 掃 き 寄 せ て も 落 葉 は 止 ま な い 。「 掃 き よ せ て 掃 き よ せ て 」 と い う リ フ レ イン の 効 果 と 「 な ほ 」 の 効 果 。 無 駄 な 言 葉を 一 切 捨 て た 簡 潔 な 一 句 に 豊 か な 詩 情 を 感 じ ま す 。 初 冬の 静 か な 光 景 が 描け ま した。 冬構伐るべきものはすべて伐り 井上 芙 蓉 風雪の厳 し い地 方で は 冬に 向 かう 準備を 怠ら ない。 降雪 に よ る 枝 折 れ 、 倒 木 等 を 防 ぐ た め に で あろ う 「 伐 る べ き も の は す べ て 伐 り」 と い う 中 七 下 五 の 言 葉 の 厳 し さが 温 暖 な 地 域 に 住む 私 には想像できない冬の厳しさを感じさせます。 帰り花日なたにあれば良いものを 古賀 文子 冬 の 薄 い 日 差 し に 咲 く 帰 り 花 。 一 本の 桜 の 枝 先 に 、 それ も 日 陰 に 咲 く 帰 り 花 。 せ め て 「 日 な た に あ れ ば 良 い も の を 」 と 思わ ず心 の中で 呟い たその ままが一句 にな りました。 小さ くも健気 に 咲 く 帰 り 花 へ の 愛 情 が 感 じ ら れ ます 。 小 さ な 命 へ の 愛 情 は こ の 作 者 の 「 日 だ ま り を 探 して 猫 の 小 春 か な 」 に も 感 じ 取 れ ま す 。 凩の街信号のあるばかり 関 千恵子 凩 が 吹 き 抜 け る 街 の 、 人 も 車 も 途 絶え た 中 で 信 号 だ け が 自 動 的 に 点 滅 し て い る 情 景 。 昼 間 と も 夜 と も 思 え ま す 。「 信 号 の あ る ば か り 」 と い う 少 し 不 気 味 な 、 機 械 的な 光 景 が 現 代 に 生き る 私たちの暮しの一面を描き「凩」を実感させています。 10 「 」 年 末 は 忙 しい 。 や ら ねば な ら ぬ 事で 忙 し く も あ る が 、 句 作 りで も 忙 し い 。 こ の 時で な け れ ば 詠 め な い 季 題 が た く さんあるからである。ことに「大晦 日 」。「 掃 納 」 し て 「 行 年 」 を 惜 し み 、 「晦日蕎麦」を食べて 年守る 。 「除夜 の鐘」を撞いて帰る頃には「去年今 年 」と新年へ続く季題が待って いる。 数時間寝てから「初日」を拝みに出る。 「 初 明 り 」「 初 空 」「 初 鴉 」「 初 富 士 」 「初詣」 「元日」も忙しい。ご健吟 を。 《 ひ と こ と 》 踵のみ見えたる冬の象舎かな 志岐 鈴恵 寒さが厳しい冬の動物園。象舎に入ったままの象を見に 行っ た作 者 の目 に映 っ たの は 象 の 踵だけで し た。 大き な 象の ま こ と に 踵 の 一点 だけ に 焦 点 を 絞 っ て 、 象の 大 き さと 冬 の 象舎 の 様子を描きました。 《近 詠》 日 置 正 樹 憂きことも話せばほぐる日向ぼこ 纏ひたる黒き羽音や花八手 寒禽にあらはとなつてゆく木立 添削のページ ・ ・ ・ ・大空へ解き 放たれて 散る黄葉 黄 葉や 紅 葉 が 散 っ て い る の を 見 る の は 荘厳 で 美 し い 。 日 本 に 生 まれたことに喜びを感じる。沢山散って いるので しょうから「散 る黄葉」 よりも「散黄葉」にした方がよりその情景を表すこと が できると思う。 大空へ解き放たれて散黄葉 ・冬の蠅とまる眠りし犬の背に 「とまる」と言わなくても「犬の背に」と方向を示す「に」を 使って い ますので と まって いる状 態は 既にわ かり ます。 その 言 葉 を省いたぶん他の言葉を入れてみました。 冬の蠅とろとろ眠る犬の背に 犬がどういう状態で眠っているのか具体的に表すことにより蠅と 犬の二つの動物をより生き生き描くことができます。 みゆき】 ・行秋や夫婦二人の旅に出る 夫婦二人の旅を秋を惜しみながら楽しまれたことでしょう。 夫婦は二人と決まっていますので二人と言わなくてもいいと思いま す。また、夫婦と限定しなくて二人を生かしたなら、「夫婦」を 取ってしまうことにより、想像できる人間関係の幅は広がります。 行秋の旅に出でたる二人かな 【以上 ・寒々と 冬田眠りに 入りけり 冬田の持つ季節感。「寒々と」と言わなくてもこの季題のかもし 出すものが寒々の様子だと思います。「寒々」は「寒さ」の季題と 重なると 思います。もっと違う言葉を捜したほうがいい句になる のではないでしょうか。 見る限り冬田眠りにつきにけり もっ と い い 言 葉 が あ ると 思 い ます が 、 こ の よ う に して は い か が で しょうか 。 11 ・ここよここ昔のポーズに冬の花 ・目つむりて経読む姿や空也の忌 ・冬構街路樹の先は切られをり 三 句と も 中 が 八 文 字 に な り 字 あ ま りで す 。 字 余 り が 功を 奏 す る こともあるとはおもいますが、俳句はやはり調べを大切にしたい と 思い ます。 その 意味 から かんがえ ると 、や は り字余 りは考え た ほうがいい気がします。吟行に行って出来た俳句などは、よく字 余りになったり、季題が抜けて しまっていたりすることがあり ま す。俳句を詠んだ後、もう一度推敲をすることが大切だと 思い ま す。 ここよここ昔のポーズ冬の花 目つむりて経読む姿空也の忌 冬構街路樹の先切られをり あるいは、 冬日差し洗濯物に移りをり ・木の葉雨箒の終う暇も無し この句も助詞一字を直しました。 木の葉雨箒を仕舞ふ暇も無し ・色添えし遊女の墓の冬薔薇 遊 女 の 墓 に 供 え ら れ た 冬 薔 薇 を 捉 え た 素 敵 な 一 句 で す 。 惜 しむ ら くは「色 添え し」と 「冬薔薇」 の 二つの言 葉が離れて しまって い ま す 。 原 句 は 「 色 添え し 遊 女 」と 続いており、読者に一瞬の 誤読を誘ってしまいます。しかも「色」「遊女」ですから。そこで 冬薔薇遊女の墓に色を添ふ (あるいは連体形止めで 色添ふる) または 冬薔薇遊女の墓に手向けられ などでどうでしょうか。 ・ ・ ・ 「 だ ・ ・ ・ よ ・ ・ ・ 〈 大 宮 句 会〉 句 会 り 正樹】 平成二十二年十一月七日(日曜日) 吟行地・武 蔵 一宮氷 川 神社・大 宮公園 句会場・高鼻コミュニティセンター 【以上 ちなみに「添える」の古語は「添ふ」ですので原句の表記は 添 えし遊女 」で な く 「色 添 へし 遊女 」 と な り ます 。 た だ し眼 前の景を詠んで いるのですから過去の助動詞「し」を使う必要は ないと思います。原句の場合でも「色添ふる遊女 」と 表記すべ きでしょう。 ・ ・ ・ 聖子】 「に」、「や」、「は」のある原句と比べてみてください。やはり中 七文字にしたほうが調べがいいように思うのですが、いかがで しょうか 。 【以上 ・冬構街路樹の先は切られをり 中八となっていますので直します。「街路樹の先」は「街路樹の 枝先」のほ うがより情 景がはっき り分かり ま す。 街路樹の枝先切られ冬構 ・冬日向洗濯物の移りをり 冬 日 が 当 た る 場 所 、 日 向 と 洗 濯 物 の 位置 関 係 に 着 目 し 、 徐々 に 冬 日 が 動 い て い く 情 景 を 描 い た と 思わ れ ま す 。「 洗 濯 物 の 移 り を り」では洗濯物が動いたことになって しまいます。助詞一字を 変 えて 冬日向洗濯物に移りをり 12 立冬と聞きて上着の 前 を閉づ 寝ころんでふと見上げれば秋の月 転ぶなと言はれて転ぶ七五三 光 麻 子 乃ン子 な み 大宮教室は、武蔵一宮・氷川神社のすぐそば、高鼻コミュニティー セ ン タ ー で 、 毎 月 第 一 日 曜 日 に 開 催 さ れ て い ま す 。 氷 川 神 社 の 隣 には 大 宮 公 園 が あ り 、 季 節ご と に 様 々 な 行 事や 植物 を 見 る こ と がで き 、吟 行にはふさわしい場所といえると思います。 私 は こ こ へ 向 か う 時 、 最 寄 り 駅 のひ と つ 手 前 から 、 参 道 を 通 って 行 くこ と に して い ます 。 京 浜 東 北線 ・ さ い た ま 新 都 心 駅を 降 りて 、 旧 中 山 道 を 少 し 北 へ 向 か う と 、 一 の 鳥 居 が 見 え て き ます 。 こ こ か ら 、 二の 鳥居・三の鳥居を抜けて本殿までは十八丁 約(二キロ 、)小さな石の道し るべが何丁歩いたかを教えて くれます。この参道を歩く時間は、普段 の生活を忘れて、句作のことだけを考える贅沢な時間です。 当 日 は 、 十 一 月 七 日 、 立 冬 。 神 社 周 辺 は 七 五 三 の 家 族 で あふ れ 、 境 内で は 菊 花 展 が 開 催 中 、 季 題 に あふ れ た 句 作 にふ さわ し い 日で し た。 せっかく立冬なので、立冬で 一句作るぞ !と 意気込んで 神社から公園 への道を進んでいきました。 大 宮 教 室 は 人数 が 少 な くて す こ し 寂 し かっ た ので す が 、 今 年は 三 人 の 方が 新 た に 参 加 して く だ さ っ て い ます 。 新 し い 方 た ち は 十三 時 よ り、 く に 彦 先 生 の 講 義 を 受け ら れ て 、 句 会 は 十 四 時 か ら 始 ま り ま す 。 私は 公 園 を 歩 き 「 立 冬 」 と 格 闘 し て い ま し た が 、 結 局 、 立 冬 で は 一 句 もで き ず 時 間 切れと な り ま し た。 句 会で は 、 季 節の 移 り 変わ る 時 期 ならで は の 、 様 々 な 句 が 披 露 さ れ ま し た 。 こ う い う 時 期 に は 同 じ 秋で も 「秋 の 名残 」 など が使え る ね。と い う お 話 も して い ただき ま し た。 私はあ まり数が作れないので、これから苦手な植物の名前など も勉強してい (長畑なみ記) きたいと思います。 稜線に秋の 雲 引く信 州 路 くに彦 『俳句入門』 (稲畑汀子)より 表現のぎりぎりが詩である ホトトギス雑詠で私の選んだ句に、 峨々越えて冬日の原に逢着す 日本伝統俳句協会 の一句があった。これに対して句評の中で、「峨々や形容動詞であり、 峨々たる山を越える等と表現しないと無理」という意見があった。 形容 動詞は 名詞を 語幹と して 、こ れ に助 動詞を 語 尾と して 付けて 成 る も の で あ る か ら 、 語 幹 の 峨 々 を 名 詞 と し て 使 う 用 法 は 誤 り と は 言え な い 。 し か し 峨 々 を 越え る と い う 言 葉 遣 い が 一 般 的で な い の は 指 摘の 通 りで ある 。 用 例 も 先 ず な いで あろ う 。 恐ら く その 理 由 は 峨々 と いう 状 態 を 表 す 抽 象 名 詞 が 具 体 的 な 動 詞 の 目 的 語 に な り に く い か ら で あろ う 。 散 文 、 記 述 文 の 世 界で は そ う で ある 。 し か し 詩 の 場 合 は ど う で あ ろ う か 。 散 文 で は 「 深 い 河 を 渡 る 」 で な け れ ば な ら ぬ と こ ろ を 、 詩で あればこそ「河の深 さを渡る」という表現が許され、かえ って力を発 揮 する の で は な かろ う か 。 選 も 句 評 も善 意で な され な け れ ば な ら な い。 私はこの句に作者の創作の苦しみの跡を 感じ、ぎりぎり許される表現 と判断したのである。 社団法人 〒一○八ー○○七三 - 東京都港区三田三 四 一一 三田三丁目ビル六階 (○三)三四五四 五一九一 - 風 神園の秋のなごりを映す水 13
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