222 D - 06 第 50 回地盤工学研究発表会 (札幌) 2015 年 9 月 CO2 ハイドレート含有地盤材料への弾粘塑性構成式の適用 ガスハイドレート 三軸圧縮試験 構成式 京都大学大学院 学生会員 ○岩井 裕正 京都大学大学院 学生会員 小西 陽太 京都大学大学院 国際会員 木元 小百合 1.はじめに CO2 ハイドレート生成熱を利用した MH の増進回収法 や CH4-CO2 置換法などの方法は, メタンガスの生産量増 加が見込めることに加えて, 産業活動によって排出され た CO2 を海底地盤内に固定できるため, CCS 技術の一つ としても, その一端を担うものである. 一方, 海底地盤内 には CO2 ハイドレートが残り, CO2 ハイドレート含有地盤 の力学特性の把握が必要である. そこで本研究では, 豊浦 砂内に CO2 ハイドレートを生成したハイドレート含有砂 供試体の非排水三軸試験を実施した.また時間依存性挙 動を記述可能な弾粘塑性構成式を用い,その再現を行っ た. その結果, CO2 ハイドレート非含有, 含有供試体どち らに関しても三軸圧縮試験の再現が可能であることを示 した. 2.実験概要 本研究では, 豊浦砂内に CO2 ハイドレートを生成した ハイドレート含有供試体を作製し, 異なる初期平均有効 応力及び異なるハイドレート飽和率で非排水三軸圧縮試 験を行った. また比較のためにハイドレートを含有しな い飽和豊浦砂供試体での三軸圧縮試験も併せて実施した. 実験概要を以下に示す. 2.1試験装置及び供試体 本研究では, 従来の軟岩用高圧三軸試験装置に低温循 環給水槽を設置することにより低温下での実験を可能と した温度制御型高圧三軸試験装置を用いた. 供試体には 豊浦砂を用い, 豊浦砂と蒸留水を混合することにより初 期含水比 15%とした試料を, 直径 35mm, 高さ 70mm の金 属モールドに突固めながら充填し凍結させる. 初期間隙 比の目標値は 0.75 である. 金属モールドから凍結試料を 取り出した後, 三軸室内に設置する. 2.2C O2ハイドレート生成過程及び等方圧密過程 図1に CO2 ハイドレート平衡曲線及び生成過程の温度 圧力径路を示す. 図-1中径路(a)に示すように, 温度を一 定に保ちつつ CO2 ガスを 2.3MPa まで圧入する. 同時に有 効拘束圧が常に 0.2MPa となるように制御しながらセル 圧を 2.4MPa まで上昇させる. Pore pressure [MPa] 12 10 CO2 gas-CO2 liquid water(ice)-CO2 gas-hydrate (1°C, 10.0MPa) 8 (c) 6 hydrate stability region 4 2 0 (1°C, 2.3MPa) (b) (10°C, 2.3MPa) (a) -5 0 5 10 15 20 Temperature [°C] 図-1CO 2ハイドレート生成過程の温度圧力径路 その後, 図1の径路(b)のように, 間隙圧力を 2.3MPa に 保ちつつ, セル内部の温度を 10℃から 1℃に冷却するこ とで CO2 ハイドレートが生成される低温高圧条件にする. この状態で 24 時間置き CO2 ハイドレートを生成させる. CO2 ハイドレート生成後, 通水を行い, 残留した CO2 ガス を蒸留水と置換し, 飽和状態とする. 図-1中径路(c)に示 すように, 間隙水圧を目標値まで上昇させ B 値測定を行 ったのち, 等方圧密過程を経てせん断を行う. 本研究では 背圧は全て 10MPa とした. 2.3実験方法及び実験条件 本研究では合計で 6 ケース行った. CO2 ハイドレート含 有供試体に対して, せん断初期平均有効応力を 1.0MPa, 2.0MPa, 及び 3.0MPa の 3 ケース, 同じ初期有効応力でハ イドレートを含有しない飽和豊浦供試体で合計 3 ケース 実施した. 表-1に実験条件を示す. Case 名末尾に「H」を 付したものはハイドレート含有供試体であることを示す. ハイドレート飽和率 SrH についてはせん断後に分解を行い 回収した CO2 ガスの体積から求めた. ここで SrH は以下の 式で定義される. SrH = 100 ´ V H V v H (1) v V 及び V は間隙中のハイドレート体積及び間隙の体積 である. 全てのケースにおいてひずみ速度は 0.1%/min と し, 非排水条件で行った. 表-1実験条件 Initial void Initial mean Hydrate Case-No. ratio: e0 effective stress saturation: SrH [MPa] [%] Case-1 0.74 1.0 0.0 Case-2 0.72 2.0 0.0 Case-3 0.72 3.0 0.0 Case-1-H 0.76 1.0 34.6 Case-2-H 0.73 2.0 27.8 Case-3-H 0.73 3.0 28.5 3.構成式による実験結果の再現解析概要 次に得られた実験結果に対して構成式による再現解析 を実施した. 本解析では, 従来提案されてきた構成式の妥 当性を検証するとともに, ガスハイドレート含有地盤の 変形問題に対するシミュレーションに用いる材料パラメ ータを決定する. 本研究で用いた構成式は,Kimoto et al. (2010)1)のガスハイドレート飽和率依存性を考慮した弾粘 塑性構成式である.このモデルは,粘性土など時間依存 性挙動を示す材料の構成式として提案された Adachi and Oka (1982) 2)による構成式に内部構造変化を考慮して拡張 した弾粘塑性構成式(Kimoto and Oka, 2005)3)をもとにして いる. 3.1硬化パラメータのハイドレート飽和率依存性 応力状態が過圧密領域とそれ以外の正規圧密領域にあ る場合とで異なるダイレイタンシー特性を示すことを考 慮し,以下のような過圧密境界面を定義する. * ¢ )=0 fb = h(0) + M m* ln (s m¢ s mb (2) ここで fb ³ 0 のとき正規圧密領域, fb < 0 のとき過圧密 Application of an elasto-viscoplastic constitutive model for CO2-hydrate-containing soil material: Hiromasa IWAI, Yota KONISHI and Sayuri KIMOTO (Kyoto University) 443 * 領域であるとする.h(0) は相対応力比, M m* は体積圧縮か ら体積膨張へ変化する応力比を示す.式中の s mb ¢ は,硬 化パラメータであり,初期では圧密降伏応力に一致する. MH は地盤中の土粒子に固着する形で存在し,ハイドレ ート飽和率の増加に伴い強度が増加することが報告され ている. そこで本研究では以下のように硬化パラメータ を設定し,MH 飽和率による強度増加を表現した. 式(3)中の l は圧縮指数を表す. 式(4)は MH 飽和率による 強度増加を表す. SrH は現在の MH 飽和率, n H は MH 含 有率, n は間隙率である. nm は初期 MH 飽和率 のときの 強度増加率, nd は強度の変化速度を調整するパラメータ である. 3.1材料パラメータ 弾粘塑性構成式に用いたパラメータを表-2に示す. 時 間依存性を表すパラメータ m' は, 別途行ったひずみ速度 急変非排水三軸圧縮試験より決定した. 拘束圧によって 変化させたパラメータは, 初期せん断弾性係数と圧密降 伏応力である. s ' mbi s 'm 0 で定義される擬似過圧密比は Case-1, 1-H で 3.5, Case-2, 2-H で 1.5, Case-3, 3-H で 1.0 と なっている. またハイドレート含有による変形特性への 影響は, SrH 依存性パラメータによって表現される. 表-2解析に用いた材料パラメータ 1 s m¢ 0 SrH e0 e&a G0 ¢ s mbi l k M m* m¢ C1 C2 A* B* SriH nd nm 1-H 1000 0.0 34.6 0.74 0.76 50000 3500 2 2-H 2000 0.0 27.8 0.72 0.73 0.1 100000 3000 0.0112 0.0026 0.98 109.9 3.5×10-12 1.0×10-12 0.98 55 0.55 0.75 0.6 レート含有, 非含有に関わらず M m =1.20 となった.この 実験結果の構成式による再現結果を図-3中に実線で示す. ハイドレート非含有のケースにおいて得られたパラメー タに加えて式(3), (4)を考慮してフィッティングを行った. ケース間において SrH 依存性パラメータ 1~3 を変更する ことなく全てのケースにおいて同じ値を用いている. 図3に示すように, 応力-ひずみ関係及び有効応力径路のど ちらにおいても実験結果をよく再現できていると言える. 6 3-H 3000 0.0 28.5 0.72 0.73 4 3 Case-1, SHr =0.0%, e0=0.74 Case-2, SHr =0.0%, e0=0.72 2 H r Case-3, S =0.0%, e0=0.72 Simulation, OCR*=3.5 Simulation, OCR*=1.5 Simulation, OCR*=1.0 1 0 5 10 Axial strain ea [%] 15 20 e&a = 0.1% / min 1.20 5 1 4 3 2 1 0 0 1 2 3 4 5 6 Mean effective stress p' [MPa] 図-2応力-ひずみ関係及び有効応力径路( 非含有) 150000 3000 4.実験結果及び解析結果 図2に CO2 ハイドレート非含有供試体の非排水三軸試 験結果及びそのシミュレーション結果, 図-3に CO2 ハイ ドレート含有供試体の非排水三軸試験結果及びそのシミ ュレーション結果をそれぞれ示す. シンボルでプロット されたものは実験結果であり, 実線で示したものは構成 式によるシミュレーション結果である. まず,図2に示す CO2 ハイドレートを含有しないケー スに関して, 実験結果では, せん断初期における応力-ひ ずみ関係の立ち上がりは初期有効応力が大きくなるほど 増加しており,初期剛性の拘束圧依存性が確認できる. Case-1~Case-3 いずれにおいても明瞭なピークは観察され ず, 最終的に軸差応力は 3.5MPa~4.0MPa 近傍に近づいて いる. シミュレーション結果は,これらの応力-ひずみ関 係をよく再現できている.一方で有効応力径路を見ると, Case-1, Case-2 の径路は, 実験結果をよく再現できている のに対して, Case-3 の径路に関しては解析において平均有 効応力が大きく減少する結果となった. これは Case-3 で は前述の疑似過圧密比を 1.0 と設定しており, 正規圧密状 6 e&a = 0.1% / min 5 0 3 6 Deviator stress q [MPa] Case-No. 初期有効応力 [kPa] ハイドレート飽和率 [%] 初期間隙比 ひずみ速度 [%/min] 初期せん断弾性係数 [kPa] 圧密降伏応力 [kPa] 圧縮指数 膨潤指数 限界状態応力比 粘塑性パラメータ 粘塑性パラメータ [1/s] 粘塑性パラメータ [1/s] 移動硬化パラメータ 移動硬化パラメータ SrH 依存性パラメータ 1 SrH 依存性パラメータ 2 SrH 依存性パラメータ 3 れる. 一方, 限界状態の応力比 M m = 3 2 M m* は, ハイド Deviator stress q [MPa] (4) 6 e&a = 0.1% / min 5 4 Case-1-H, SHr=34.6%, e0=0.76 3 Case-2-H, SHr=27.8%, e0=0.73 2 H r Case-3-H, S =28.5%, e0=0.73 Simulation, OCR*=3.5 Simulation, OCR*=1.5 Simulation, OCR*=1.0 1 0 0 5 10 Axial strain ea [%] 15 Deviator stress q [MPa] (3) Deviator stress q [MPa] æ 1 + e0 vp ö e kk ÷ è l -k ø H é nH æS ö üï ù ïì H N m = ê1 + nm exp í- nd ç riH - 1÷ ý ú , Sr = n êë è Sr ø þï úû îï ¢ = N ms ma exp ç s mb 態としているためであると考えられる. 次に, 図-3に示す CO2 ハイドレート含有の実験結果に 関して, いずれのケースにおいても非含有の場合と比較 して軸差応力の大きな増加が見られる.ハイドレート含有 試料と非含有試料の最大軸差応力の比を求めると Case-1, 1-H で 1.26, Case-2, 2-H で 1.16, Case-3, 3-H で 1.27 となっ ている. Case-2-H は, ハイドレート飽和率が小さかったた めに強度増加も小さくなったものと考えられる. また, Case-1-H ではハイドレート飽和率が 34.6%, Case-3-H では 28.5%と, Case-1-H の方が大きかったにも関わらず, 最大 軸差応力の比が Case-3-H の方が大きくなったことに関し て, 最大軸差応力比の拘束圧依存性があることが考えら 20 e&a = 0.1% / min 1.20 5 1 4 3 2 1 0 0 1 2 3 4 5 6 Mean effective stress p' [MPa] 図-3応力-ひずみ関係及び有効応力径路( 含有) 5.結論 本研究では, 豊浦砂供試体(ハイドレート非含有)及び CO2 ハイドレート含有供試体の非排水三軸圧縮試験を実 施し, さらにその実験結果に対して, ハイドレート飽和率 依存性を考慮した構成式によるフィッティングを行った. 実験結果より, ハイドレート含有供試体は非含有供試体 と比較して最大軸差応力は増加し, その増加割合はハイ ドレート飽和率及び拘束圧に依存することが分かった. また限界状態における応力比は含有, 非含有に関わらず 一定の値になることが分かった. また, 本報で用いた構成 式及び材料パラメータは実験結果を良く再現できること が確認された. 謝辞 本研究の一部は, 特別研究員 24・1274 の助成を受 けたものである. ここに謝意を示す. 参考文献 1) Kimoto, S. et al., Int. Jour. Mech. Sci., 52(2), pp. 365-376, 2010. 2) Adachi, T. and Oka, F., S. and F., 22(4), pp.57-70, 1982. 3) Kimoto, S. and Oka, F., S. and F., 45(2), pp.29-42, 2005. 444
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