透析 会誌 44(6)1589∼ 594,2011 症例報告 両側腕頭静脈狭窄症に対 し経皮的血管形成術が奏功 した 1例 1 水 野 真 理 3 中 島 葉 子 2 榎 本 伸 … 高 崎 北 村 北 井 智 卓 真 1 樋 口 輝 美 3 石田 恵美子 3 瀬戸 口 晴美 2 2 上 国 寛 朗 也 3 3 也 志 村 暁 人 5 大川 恵里奈 希 1 知 久 正 明4 斎 藤 4 安 藤 英 之4 山 崎 俊 男 穎 1 2 3 博鳳会敬愛病院腎臓内科 同臨床工学± 同放射線科 同循環器内科4 1 日本大学医学 部附属板橋病 院腎臓 内分泌 内科 5 キー ワー ド :両 倶1腕 頭静脈狭窄症,経 皮的血管形成術 (PTA),Stent留 置,血 液透析 要旨〉 〈 症例は 61歳 ,男 性中糖尿病性腎症による末期慢性腎不全にて 2005年 3月 より血液透析を導入され,同 年 4月 に 左前腕に機骨動脈 と機側皮静脈による内シヤン トを作製された.そ の後他院 にて維持血液透析を受 けていたが 2007年 7月 頃より左上肢の浮腫が出現 し,症 状増悪 したため,静 脈高血圧症の診断にて 2008年 1月 内シャン ト開 鎖術を施行され,同 時に右前腕に新たに内シャン トを作製された.そ の後 "高 度 の顔面浮腫 と右上肢の腫脹が出現 し,シ ャン ト管理を含め 2010年 3月 当院紹介転院となる.転 院後・著 しい顔面と上肢の腫脹を認め,頸 部か ら前胸 部にかけて高度 の側 副血行路の出現 と,頭 重感り鼻開感などを訴えた82010年 4月 右上肢の内シヤン トによる静脈 高血圧症を疑 い血管造影を施行 したところ,右 腕頭静脈に長さ約 30 mmの 90∼ 99%狭 窄を認め,バ ルーン拡張術 とステン ト留置術による経皮的血管形成術 (PTA)を 施行 した.そ の後 ,顔 面の腫脹と側副血行路の原因の一つと して左中心静脈の開塞および狭窄も考慮 し,左 上肢からの静脈造影を施行 したところ,左 腕頭静脈にも長さ 50mrn の 99%狭 窄を認めたためバルーン拡張術 とステン ト留置術 による PTAを 施行 した.そ の後顔面 と上肢の腫脹は改 善 し,頭 重感,鼻 閉感等の臨床症状も消失 した.両側腕頭静脈狭窄 に対する PttAの 報告は本症例が初めてであり 臨床的に有用な治療であると考えられた , , . Percutaneous transium:nal angioplasty in the treatment of bilatera: brachiocephaiic vein stenos:s in hemodialysis patient 丁erumi Higuchil,Mari Mizunol,丁 omoya Takasaki2,HirOaki Ueda2,Erniko ishida3,Yoko Nakashima3, 丁akuya Kitamura3,Akito Shirnura3,Harumi Setoguchi3,shinichi Enomoto2,Maki Kitai5, Erina Okavval,丁 oshio Yamazakil,Masaaki Chiku4,satOshi Saito4 and Hideyuki Ando4 Divislon of Nephrology,Keiai HOspitall;Division Of Clinical Engineer,Keiai Hospita12;Divislo■ of Radiology,Keiai Hospita13:]Division of(Cardiology, Keiai I‐ Iospita14:lDivision of Nephrology and EndOcrinology, Departinent of Medicine,Nihon lUniversity School of〕 √edicine5 Key wOrds:bilateral brachiocephalic vein stenosis, percutaneous transluminal angioplasty, stent placement, hemodialysis (Abstract〉 A 61-year― old maie patient began tO receive hemodialysis due to end‐ stage renal disease in diabetic nephropathy and an arte百 ovenous istuia(AVF)was estabiished in the:eft forearm in March 2005.丁 he paゼ ent received hemodialysis at another hospital and then swe‖ ing ofthe ieft upperiimb appeared around Juiy 2007.The patient was diagnosed as having venous hypertension and unden″ entiigation of the AVF because of vvorsen:ng symptoms and an AVF was s:rnultaneousiy established in the right fOrearm in January 2008.丁 hereafter swe‖ ing in the face and right upper extrernity edema progressed,the patient was referred to our hospitalin March 2010。 After the patient was transferred,significant facial edema and swe‖ 〒 173-0036東 京都板橋 区向原 3-10-23 博鳳会敬愛病院腎臓 内科 Higuchi Tel:03T3973-381l Fax:03-3530-3030 E― mall i thiguchiOkeiai… hospital.ip 受付日 :2011年 1月 20日 .受 理目 :2011年 3月 2日 〕 〔 樋 口 輝美 Terun■ i ing of the upper extrernity were noted along vvith the 590 樋 口ほか :両 側腕頭静脈狭窄の 1例 appearance of coliateral circulation in the anterior chest and neck,丁 he patient compiained of heaviness in the head and nasai obstruction口 AngiOgraphy was peFfOrrned due to suspicion of venous hypertens:on in the right AVF and tight stenosis for a length of 30 Fnnl Was demonstrated in the right brachiocephaiic veinD ttherefore, percutaneous transluminal angioplasty(PttA)with bal10on angioplasty and stent placernent was performed.Left central vein stenosis or occlusion was aiso considered as one of the causes of facia: edemac Angiography demonstrated 990/。 stenosis for a length of 50 rnm in the left brachiocephalic vein.丁 herefore,we perforrned PttA by ba‖ oon angioplasty and stent placement on the left side as we‖ "Thereafter,facial edema and upper extrernity edema improved,and ciinical symptOms such as the heaviness of the head and nasal obstruction disappeared. This paper is the first repOrt of PTA for bilateral brachiocephalic vein stenoses,and PttA by ba‖ oon angioplasty and stent placement was cOnsidered a usefui treatment in th:s case3 れ転 院 となる . 85。 3kg,体 温 ,血 圧 168/96 mmHg,脈 拍 数 78回 /分 (整 ), 顔 部 は著 しく腫大 してお り,左 右 の頸部お よび前胸部 初 診 時 現 症 :身 長 185 cm,体 重 緒 36.2℃ 血液透析 患者 に とって 良好 な vascular accessを 維 持す る ことは,必 須条件であ り,ま た近 年高齢者 ,糖 に皮 静脈 の怒張 を認めた。左上肢の腫脹傾 向 を認め 尿病性 腎症 に よる導 入 の増加 に伴 い,vascular access の狭窄 ・ 閉塞 な どの 内 シャン ト合併症 も増 えて い る。 右上肢 は著 し く腫脹 して いた。 Interventionalな 手法 の一 つ で あ る経 皮 的血管形成術 い,経 皮 的血管形成術 (percutaneous transluminal angioplasty:PTA)が 導 , 治療経過 :2010年 5月 13日 右 中心静脈狭 窄症 を疑 (PTA)目 的 にて血管造 影 を施 行 した。右腕頭 静脈 にお い て約 30 mmの 90∼ 99%狭 も中心静脈 の 閉塞 ,狭 窄 は深亥Jな 合併症 の一 つ である 窄 を認めた。 また血流 は逆 向性 に内頸静脈 へ と流 れ 鎖骨下静脈 か ら腋 宙静脈 へ の逆流 も認め,静 脈 のull副 が,こ れ らに対 しての PTAは Glanzら 1)に よって報告 血 行路 の増 生 も認 めた (図 入 され,シ ャ ン ト修復術 の選択肢が拡が った。 なかで 2-l① されて以来 ,そ の有用性が数多 く報告 されて い る . 今回,両 側 の腕頭静脈 の狭窄が原 因で,著 しい顔面 , 1)。 PTAに 関 して は,以 下 の ご と く行 った。右前腕 の 内 シ ャ ン ト部 よ り長 さ 3 cmの 6 Fr.シ ー ス を挿 入 しヘパ リ ン 1,000単 位使用 と上肢 の腫脹 を認め, さらに鼻 閉感 ,頭 重感 な どをき し,0.018 inchガ イ ドワイヤ ー単独 では病変部 を通過 た したため,そ れぞれの病変 に PTAを 施行 し,著 明 す るのが 困難 だ ったため,Judkins JR4を 併用 し病変 な改善 を認めた症例 を経験 したので報 告す る 部 を通 過 させ た。 10 . linぴ 症 )ba11。 Ster“ on catheter(Boston scientiic)で バ ルー ン 10 mm径 で長 さ 39 mmの Wall‐ scientiic)を 留置 した.さ らに上記の 拡張 を行 い,そ の後 例 stent° 患者 :61歳 ,男 性 mm径 で 長 さ 40 mmの (Boston バ ルー ンカ テ ー テ ル にて追加拡張 を行 った。PTA後 . 主訴 :顔 面腫脹 ,左 上 肢腫脹 ,鼻 閉感 ,頭 重感 . の血 管造影 で は内頸静脈 は造 影 されず ,ほ とん どの血 既往歴 :糖 尿病 ,高 血圧症 家族歴 :特 記す べ きことな し。 流 は腕頭静脈 か ら_L大 静脈 へ と流 れて い た。 また術 前 現病歴 :2004年 よ り糖尿病性腎症 に よる慢性 腎不全 中,治 療 後 に合併症 は特 に認 め なか ったc . に認 め られた側副血行路 の消失 を認 めた (図 2).治 療 PTA後 か にて他院外来 にて フ ォロー ア ップ されて い たが ,2005 ら顔面 の腫脹 と右上 腕 の腫脹 は軽快 したが ,顔 面 の腫 年 3月 腎機 能 の急激 な増悪 を認め,血 液透析導入 とな 脹 が全体 に及 び,左 上肢 も軽度 の腫脹 を呈 して い た こ る、血 液透析 導入後 ,左 前腕 に撓骨動脈 と撓側 皮静脈 と,ま た 鼻閉感 ,頭 重感等 を訴 えて い た こ とな どか ら に よる内 シャン トを作 製 された。 そ の後他院 にて維持 左 中心静脈狭 窄症 も今回 の 臨床症状 の原因 の一 つ と考 透析 を受 けて い たが ,2007年 7月 頃 よ り左 上 肢 の 浮腫 え,そ の後左 中心静脈狭窄 の疑 い にて血管造 影 を施行 が 出現 し,次 第 に症状が増悪 したため,静 脈高血圧症 した。旧内 シャ ン ト血管の撓側皮静脈 よ り血管造影 を の 診 断 にて 2008年 1月 内 シ ャ ン ト閉鎖 術 を施行 され 施行 した ところ,左 腕頭静脈 は約 50 た。同時 に右 前腕 に新 たに撓骨動脈 と撓側皮静脈 によ を認 め ,複 雑 な静脈 の側 副 血 行路 を認 め た (図 , mmの 99%狭 窄 3). る内シ ャ ン トを作製 された。 そ の後左上肢 の浮腫 は軽 PTAは 右 内 シ ャ ン トか らの アプ ロー チ と同 様 に,長 快 傾向 になる も。高度 の顔面浮腫 と右上 肢 の 浮腫 も出 さ 3cmの 6 Fr.シ ース を挿入 し,ヘ パ リ ン 1,000単 位 現 し,シ ヤ ン ト管理 を含 め 2010年 4月 当院 に紹介 さ を使用 し,今 回 も 0.018 inchガ イ ドヮイヤ ー単独 では 樋 口ほか :両 側腕頭静脈狭窄 の 1例 ﹄ 計 一 ・ ・ ‐ ・ 鷺 図 1 The angiograrn shows 90% stenosis of the 図 3 The angiogram shows tte severe stenosis of length of 30 rnm in the right brachiocephalic the length Of 50 rnm in the left brachiocephalic vein and a complex collateral circulatione vein. 丁he blood was fiowing into the right internaliugular vein in retrograde,aiso showed proliferation of venous col:aterals. は 十 分 で あ り,PTA前 の血 管 造 影 で 認 め られ て い た 複 雑 な領1副 血 行路 は 消 失 した (図 4)。 そ の 後 の 経過 と して ,顔 面 の 腫 脹 は 改 善 し,左 右 の上 肢 の 腫 脹 はほ ぼ 消 失 し,ま た 鼻 閉感 り頭 重 感 等 も消 失 した。 また臨床 症状 の 改 善 と と もに精 神 面 にお いて ,術 後 よ り発 語 が 非 常 に 多 くな り,明 る くな った とい う面 は特 筆 す べ き 点 と思 われ た。 Ⅱ.考 察 ギー ︲ ︲ 血液透析患者 の 内 シャ ン ト合併症 として静脈高Jttl圧 : 堪 i ,… 区12 症が あ tデ られ る.静 脈高血圧症 は静脈狭窄 ・ 閉塞部 の J・ ‐ 末梢側 の四肢 に腫脹 ,浮 腫 ,発 赤 ,疼 痛 な どが出現す る病態 で あ り,そ の一つ に鎖骨下静脈 ,腕 頭静脈 な ど 毎 再 の 中心静脈 の狭 窄 ・ 閉塞があ る.中 心静脈 の狭窄あ る い は 閉塞 の 発 生 頻 度 に つ い て の 報告 で は,報 告 者 に L= よって異 なるが,血 管造影 上 8°/0か ら 40%と 比較 的多 丁he angiogram after PTA shows the disap“ pearance of reflux into the internaliugular vein い 合併症 で あ る7,8,17-20,し か し中心 静脈狭 窄 が認 め and the coHateral vein. られて も全例が治療 の対象 となるわけではない。臨床 症状 として,静 脈高血圧症 の症状が 出現 し,そ の原 因 病 変 部 を通 過 で き な か っ た た め,Judkins JR4と 0。 018 inchガ イ ドワイヤ ー を併用 し病変 部 を通過 させ た。 10 mnl径 で長 さ 40 法 としては,外 科 的バ イパ ス 手術 ,経 皮 的血管形成術 rrlrrlの Sterlinge ba1loon cath‐ eter(Boston Scientiic)で バ ルー ン拡張 を行 い その後 として血 管造影 上 明 らかな狭 窄所見 を呈 した時 に治療 の対象者 となる,一 般 的 に中心静脈狭窄 に対す る治療 , PTAが あ り,PTAの 面 で はバ ルー ン angiOplasty,ス 10 mnl径 で長 さ 49 mmの Wallstente(Boston scien― テ ン ト留置術 があげ られ る。 日本透析 医学 会 よる慢性 tiic)を 留置 し,上 記 のバ ルー ンカテー テ ルで 追加拡 血液透析用 バ スキュラーアクセスの作製お よび修復 に 張 を行 った。PTA後 の血 管造影 で は腕頭 静脈 の拡張 関す るガイ ドライ ン 21)で は静脈高血圧症 を呈す る中心 樋 口ほか :両 側腕頭静脈狭窄 の 1例 592 ほ うが よい かの はっ き りとした コンセ プ トは得 られて い な い。 これ までの外科 的治療 と PTAを 比較 した検 討 で は,繰 り返 し PTAを 施行 した 1年 間存率 は 63% か ら 86%で あ り,外 科 的治療 の場合 (外 科 的治療群 で 75%か ら 88%)と くらべ て有意 な差 は得 られなか った 22-2→ .し か し外科 的治療 の場合 ,全 と報告 されて い る 身麻酔 ,開 胸術 といった よ り侵襲性 の高 い治療 とな り , また当然 の こ となが ら入院での治療 が必要 となる.患 者 へ の侵襲性 の 面お よび外 来 での 治療が可能 とい う面 か らは血管内治療 のほ うが優 れて い る と思 われ る。 し か し血管 内治療 では繰 り返 しの治療 が必要 となること 鶴 が多 い ため医療経済 の面 では さらなる検討が必要であ る と思 われ る。 これ まで の 中心静脈 に対す る血管内治療 にお け る , バ ルー ン angiOplastyと ス テ ン ト留 置 に 関す る 開存 率 に関す る報告 を検 討 した.バ ルー ン angiOplasty単 独 図14 丁he angiograrrl after PttA shows the dilated 群 の 1年 間 の 初 期 開 存 率 は brachiocephalic vein and disappearance of a complex co‖ ateral circulation. 者 4,10,H,M,D,20に 10%か ら 52%と 報 告 よって差異 はあ るが,十 分 な もの とは い えない。一 方 ,ス テ ン ト留置群 の 1年 間 の 初期間存 静脈狭 窄症 に対 す る治療 は,外 科 的再建術 も可能 だが 低侵襲 なステ ン ト留 置 を含 めたイ ンターベ ンシ ョン治 率 も 11%か ら 70%,2次 開存率 は 46%か ら 100%と 報 4∼ 6謁 ,9,2‐ 5,25,20。 また バ ル ー ン単 告者 に よって 異 な る 療 を優 先 させ て もよい として い る。 またイ ンターベ ン 独群 とステ ン ト留 置群 とを比 較 した studyに よる と シ ョン治療 や外科 的治療 の適応 とな らない よ うな高度 612"と ,明 らか な 開存 率 に有 意差 が あ った とい う報告 の静脈高血圧症 に対 しては,そ のアクセス を開鎖 して 有 意差 を認 め なか った とい う報 告 が あ る , , 4,H,1詢 .し か 対 ullに 新 た な ア ク セ ス を作 製 す るのが よい と して い Dは 両群 間 で 有意差 は認 め な し これ らの中 で Kimら る。本症例 にお い ては,2007年 7月 頃 よ り左 上 肢 の 浮 か った ものの,ス テ ン ト留 置 はバ ルー ン angiOplasty 腫 が出現 し,次 第 に症状が増悪 し,2008年 1月 に静脈 単独 で は残存狭 窄 を認 め た caseに のみ 行 ってお り 本当 の意味 での比較 にな らな い とも報告 して い る。 高血圧症 の診断 にて内 シャン ト閉鎖術 を施行 されて い , る。 また当院初 診 時 の 2010年 4月 の 時点 で,左 右 の また中心静脈 の狭 窄例 と末梢静脈 (内 シャン ト)に 頸部 お よび前胸部 に皮静脈 の怒張 を認めて い た`左 腕 頭静脈狭窄 の発症 時期 につ い ては不 明 だが ,内 シ ャ ン 対す るバ ルー ン angiOplastyに お い て,中 心 静脈 の狭 ト閉鎖術施行時 (2008年 1月 )に は静脈高血圧症 の症 窄 例 で,有 意 に再 狭 窄 例 が 多 か っ た との 報 告 が あ 2,3,2η る .Davidsonら 2つ は血 管 内超 音 波検 査 (intra‐ 状 が完成 されてお り,左 内 シャ ン ト作製時期 で あ る vascular ultFaSOund:IVUS)に よる検討 で,末 梢血管 2005年 4月 か ら閉鎖 術施行 時 まで の 間 に徐 々 に病 変 に くらべ 中心静脈 のバ ルー ン angioplasty後 で 高頻度 が進行 して いった可能性が高 い と思 われ る.ま た左 内 に elasuc recoilが 観察 された として いる。 そのため中 シ ャ ン ト閉鎖術 を施行 して い るが ,そ の際 の血 管造影 心静脈の血管 内治療 で は,バ ルー ン angiOplasty単 独 の所見等 も存在 しな い ため,日 本透析 医学 会 の ガイ ド 2)の ライ ン ,イ ンターベ ンシ ョン治療 や外科 的治療 の よ り,ス テ ン ト留 置あ るい は atherectomyが 有用 では , 適応 とならない ような高度の静脈高血圧症であったか どうかは不明である。 しか し当院は,血 管内治療が可 能な施設であ り,今 回の左腕頭静脈狭窄の同程度 の狭 窄 (約 50 mm長 の 99%狭 窄)と したら,一 度 は PTA を施行 した と思われ る。 一方,長 期的な予後 (開 存率)の 面か ら,バ イパス 術 を含 めた外科的治療 が よいのか,バ ルー ン anglo‐ plastyを はじめ ステン ト留置術 を含めた血管内治療 の ない か と示 唆 した。 われわれ も IVUSに よる検討で 末梢 血管の 内 シ ャ ン ト狭 窄 の PTAの 拡張 の メカニ ズ , ム は伸展 (stretch)と 血管 の解離 であ ることを報告 し て い る"。 一 方 ,Oderichら "は ,末 梢 の静脈狭窄 に対 す るステ ン ト留置 よ り中心静脈狭窄 に対 す るステ ン ト 留置 の方が開存率 は よか った と報告 して い る。それ ら 一ン angiOplasty後 の carly recoilが の ことか ら,バ ル ヽ 強 い症例 にお いて はステ ン ト留置が強 く推奨 され る と a)で 考 え られ る。 日本透析 医学会 の ガイ ドライ ン も中 樋 回ほか :両 側腕頭静脈狭窄 の 1例 593 心静脈狭 窄症 に対す る治療 は,PTAが 第 一 選択 とな にお い ては,患 佃Iの シャン ト肢 の腫脹が主 な症状 とし るが ,ス テ ン トの留置 は elasdc recoilが 認 め られ る病 変 へ の適応が好 ましい と報告 して い る。本症例 におい て現 れるが ,両 領1の 頸部 か ら胸 部 にかけての毛 細血管 の拡張 ,お よび顔部 の腫脹 な どを呈 した点 な どは,わ て,左 右 の腕頭静脈狭窄症 に対 しバ ルー ン angiOplas‐ れわれの報告 と類似 す る。 今後 ,両 側 の頸部か ら胸 部 ty後 にス テ ン ト留 置術 を施 行 した。バ ルー ン angiO‐ にか けての毛細血管 の拡張 ,顔 部 の腫脹 な どを里 す る plasty後 の血 管造影 にて,elastic recOilが 認 め られ た 透析患者が い れば両側 の深部静脈 の狭 窄 ・ 閉塞症 を疑 ためであ る。 ただ し,今 後 recOilの 程 度 を計渓1し ,把 握 した上で ステ ン ト留置 の有無 を考慮す る必 要が ある い,積 極 的 にエ コー検査 ,血 管造影等 の検査 を施行す べ きであ る。 しか し実際 にはその よ うな検査治療 を独 と考 える◆中心静脈狭 窄症例 にお い て recOilが 強 く出 自で行 える施設 は限 られてお り,今 後病診連携 あ るい 現す る症 例 と,そ うでない症例が存 在す るメカニ ズム は病病連携 をはか るネ ッ トワー クの構築が必要 で あ る は明 らかではな く,今 後 の検討が待 たれる。 またス テ と思 われ る。 ン ト留置例 における再狭 窄 のメ カニ ズム も明 らかでは 今 回,両 側腕頭静脈狭 窄症 を呈 した血液透析患者 に ないが ,わ れわれが IVUSを 使用 して報告 した,人 工 バ ルー ン angiOplastyと ス テ ン ト留置 に よ り,静 脈 高 血管内,お 血圧症 の症状 が著明 に改 善 した患者 を経験 した ので よび末梢血管でのステ ン ト内の新生内膜 の 29,30。 著 しい増殖所 見 はそれ に関与す る可能性 があ る , , 若干 の文献的考察 を加 え報告 した。 今後 ,再 狭 窄 の 予 防 の ため の 内服 お よび drug deliv‐ ery stentな どの 開発が待 たれ る。 本症例 にお い て,非 シャン ト肢 である左 腕頭静脈狭 窄症 に対 し PTAを 施行 した。右腕頭静脈狭 窄症 に対 し PTAを 施行後 ,右 上 腕 の腫脹 は軽快 したが ,顔 面 文献 1)Glanz S,Gordon D,Butt KMH,Hong J,Adamson R, Sclafani SJA:Dialysis access istulas:treatment of stenoses by translurlinal angioplasty」 Radiology 152: 637-642,1984 の腫脹 が全体 に及 び,左 上 肢 も軽 度 の腫脹 を呈 し,左 2)Beathard GA:PeFCutaneous angioplasty in the 右 の頸部 お よび前胸部 に皮静脈 の怒張 を認 めた点 ,お treatntent of vascular access stenoslse Kidney lnt 42: よび鼻 閉感,頭 重感等 を訴 えて い た こ とな どか ら,左 1390-1397.1992 中心 静 脈狭 窄症 も今 回 の 臨床症 状 の 原 因 の一 つ と考 3)Kovalik EC,Newman GE,Suhocki NP,Knelson N/1, え,PTAを 施行 した。その後 の経過 として,顔 面 の腫 Schwab SJ:100rrection of central venous stenoses: 脹 は改善 し,左 右 の上肢 の腫脹 もほぼ消 失 し,臨 床症 use of angioplasty and vascular Wallstentso Kidney lnt 45: 1177-1181,1994 状 としての鼻 閉感 ,頭 重感等 も消失 した。 結果 として 4)Quinn SF,Schuman ES,Demlow TA,Standage BA, 非 シャ ン ト肢 であ るが ,今 回 の症 Fljの 症状 に左腕頭 静 Ragsdale JW, Green CS,Sheley RC:Percutaneous 脈狭 窄症 も関与 して い た可能性 が 高 い と考 え られた。 translurrlinal angioplasty versus endovascular stent 下肢 の深部静脈 血 栓症 の際 は下大 静脈 フ イル ター留置 placement in the treatment of venous stenoses in な どの肺塞栓症 の予 防 の治療 が主体 とな り,血 管拡張 patients undeFgOing hemodialysis:internlittent re‐ sults.Jヽ raSC Interv]Radio1 6:851-855,1995 術 を施行 しない症例 が多 い。当然の こ となが ら,鎖 骨 下静脈 をは じめ とした 中心静脈 の狭窄 ・ 閉塞 rlJに お い て も血栓性 閉塞 が疑 われ る場合 ,肺 塞栓 の予 防が メイ ン とな り,血 管 内治療 を施行 す るな ら,血 栓吸引療 法・ 血栓溶解療法が主体 となる。 術前 の超音波検査,造 影 CT,MRI検 査 ,血 管造 影検査 とい った慎重 な検索 が 必要 であ る。 これ まで,透 析患者 の両側 中心静脈狭 窄症 ・ 閉塞症 に対 しての血 管 内治療 に関 しては,Murasatoら の 報 m)が 5)Mickley V,Gorich」 ,Rllinger N,Storck M,Abendroth E):Stenting of central venous stenoses in helll10dialy‐ sis patients:long tern■ results`Kidney lnt 51:277-280, 1997 6)Vesely TM,Hovsepian DM,Piltgrallrl TK,Coyne DW, Shenoy S:Upper extrelllity central venous obstruc‐ tion in in hemodialysis patients i treatment vFith Wallstents.Radiology 204:343-348,1997 7)Lumsden AB,MacDonald MJ,Isiklar H,Martin LGタ Kikeri D, Harker LA, Allen RC:Central venous ぁ る。 そ の報告 に よる と,対 象 となった患 者 は stenosis in the hemodialysis patient:incidence and 胸郭形成術後 で両側 の 中心静脈 閉塞 を呈 し,外 科 的手 efttcacy of endovascular treatrrlente Cttdiovasc Stlrg 告 術 は high riskで あ り,血 管 内治療 は有 用 な治療 であ る と報告 して い る。その患 者 の 中心静脈 閉塞 は過去 の 肺 結核 の 手術既往 が 関与 してお り,わ れ われの case とは異 なる。通常 ,片 側 のみの 中心 静脈狭窄 ・ 閉塞症 5:504-509,1997 8)Haage P, Vorwerk D, Piroth lV, Schuermann K, Guenther RヽV:Treatlnent of hemodialysis related central venous stenosis or occlusion:result of pri‐ 樋 口ほか :両 側腕頭静脈狭窄の 1例 594 mary wall stent placement and follow― up in 50 patientso Radiologbr 212: 175-180,1999 ス の作 製 お よび修 復 に関す る ガ イ ドラ イ ン.透 析 会誌 38: 1491-1551, 2005 9)Oderich GS,TreiΠ lan GS,Schneider P,Bhirangi K: 22)Wisselinkヽ V,Ⅳ loney S,Becker MO,Rice KL・ Ralllee Stent placement for treatment of central peripheral SR,White CJ,Kazmier FJ,H01lier LH i ColmpaFiSOn Of venous obstruction:a long― term multi… institutiOnal operative reconstraction and percutaneous ba1loon eXpeFienCe.J Vas Surg 32:760-769,2000 dilatation for central venous obstruction.AIn」 10)MIaskOva J,Komakava J・ Kivanek 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