パルス法NMR によるエポキシ樹脂の物性評価

Technical News
株式会社 住化分析センター
● パルス法 NMR によるエポキシ樹脂の物性評価
TN378
Characterization of epoxy resin by pulsed NMR
[概
要]
パルス法 NMR は、高分解能 NMR とは異なり化学シフト情報(局所化学構造など)を与えない代わりに、
分子運動性と密接な関係がある 1H 核の緩和時間(スピン−格子緩和時間 T1 およびスピン−スピン緩和時間
T2)を迅速に測定できる手法です。また、信号強度の定量性が高いことから、異なる緩和時間を持つ成分の
組成比を直接評価できます。例えば結晶性高分子のような結晶相と非晶相の混合系では、緩和時間の差を用
いて結晶、非晶および界面の 3 成分に分離し、各々の比率を求めることができます。
緩和時間に影響する要素として分子鎖の凝集状態、分子量や架橋度などがあり、試料間で比較することに
よりそれらの情報を得ることが可能となります。
[事
例]
二液常温硬化型エポキシ樹脂の硬化状態の経時観察
二液を混合することで重合を開始する樹脂について、混合直後から 2.5 分おきに T2 測定を繰り返し、硬化
反応の経時的な進行状況を観察しました。
緩和時間の異なる 3 成分が検出され、いずれも時間の経過とともに緩和時間の減少が観察されました
(図 1)
。また分子運動性の異なる各成分のセグメント比にも時間変化が見られました(図 2)。
分子運動性が低い成分のセグメント比が時間の経過とともに増加するのに対し、分子運動性が中程度の成
分のセグメント比は低下しました。これはある成分が消費されながら重合が進み、高分子量化している状況
と推察されます。一方、分子運動性が高い成分のセグメント比は時間変化を殆ど示しませんでした。これは
重合に関与しない成分であり、試料全体の分子運動が束縛されるのに伴って緩和時間が低下していることを
示唆します。
エポキシ樹脂の硬化解析 (T2 の経時変化)
300
運動性・高
運動性・中
運動性・低
250
0.7
0.6
200
セグメント比
緩和時間 T2 [ミリ秒]
エポキシ樹脂の硬化解析(セグメント比の経時変化)
0.8
150
100
0.5
運動性・高
運動性・中
運動性・低
0.4
0.3
0.2
50
0.1
0
0
0
10
20
30
硬化時間[分]
図 1.緩和時間 T2 の経時変化
[キーワード]
40
50
0
10
20
30
硬化時間[分]
40
50
図 2.異なる分子運動性を有する成分のセグメント比の経時変化
核磁気共鳴、固体構造
作成:大阪事業所(BE1010)4-R0-(39),4-U0-(49)
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