中底用ファイバーボードの耐屈曲性

靴および靴材料の試験法
9.中底用ファイバーボードの耐屈曲性
都立皮革技術センター台東支所
はじめに
から各種薬品を加え板状に成形した製品で
中底(Insole)は、ほとんどの靴におい
ある(図1)。セルロースボードは組成が
て靴の土台となる重要な部分である。 甲
均 一 な 上 に、 吸 放 湿 性 に 優 れ、 色 移 り や
材、表底など、靴のほとんどの部品が中底
変色が起こりにくく、 中底材としてほど
に 接 着、 釘 止 め、 縫 合 な ど に よ り 固 定 さ
よい柔軟性と釣り込みしやすい強度を有
れ、靴が組み立てられていく。
し て い る。 現 在、 大 量 生 産 靴 で は、 前 部
1)
中底材料の歴史をたどると 、かつては
ボード(Forepart board)とシートボード
天然皮革の他に、綿を層状に貼り合せたも
(Seatboard)を継ぎ合わせた中底が一般
のが使われていた。その後、レザーボード
的に使われているが 3)、前部ボードにはセ
(Leatherboard)が開発され、低価格靴に
ルロースボードが使用されることが多い
多用されるようになった。レザーボードと
(図2)。なお、シートボードとは中底の
は、皮革や皮革製品を製造するときに排出
土踏まず前部から踵の部分(シート部)に
靴および靴材料の試験法
される固形廃棄物を解繊し、繊維状にして
渡って使われるボードで、バッカー材とも
9. 中底用ファイバーボードの耐屈曲性
から接着剤や合成樹脂等と混合して板状に
呼ばれる。主原料はこれも古紙やパルプな
加工したものである。レザーボードは組成
どの植物繊維で、変形しないように強く加
都立皮革技術センター台東支所
圧加工されている。
が均一で、吸放湿性が高く、皮革廃棄物の
有効利用につながるという利点を有してい
靴 を 履 い て 歩 行 す る 際、 中 底 の 前 部 は
て、前部ボードの耐屈曲性は靴の品質・耐久性を
はじめに
た。一方、中底材としての強度や耐久性の
ボール部で繰り返し屈曲される。したがっ
左右する重要な性能の一つである。
中底(Insole)は、ほとんどの靴において靴の土台
面では改善の余地があった。
となる重要な部分である。甲材、表底など、靴の
ほとんどの部品が中底に接着、釘止め、縫合など
〔注意〕2011年3月、国際タンナーズ協会
により固定され、靴が組み立てられていく。
は、レザーボードの呼称をレザー
中底材料の歴史をたどると 1)、かつては天然皮
ファイバーボードとすることを決
革の他に、綿を層状に貼り合せたものが使われて
定したが、本報ではこれまで一般
いた。その後、レザーボード(Leatherboard)が開
的に使用されているレザーボード
発され、低価格靴に多用されるようになった。レ
という呼称を使うこととする。
ザーボードとは、皮革や皮革製品を製造するとき
に排出される固形廃棄物を解繊し、繊維状にして
から接着剤や合成樹脂等と混合して板状に加工し
1950 年 頃、 米 国 の テ キ ソ ン 社 が セ ル
たものである。レザーボードは組成が均一で、吸
ロースボード(Cellulose board)を開発し
放湿性が高く、皮革廃棄物の有効利用につながる
1,2)
た
。これは木材その他の植物繊維を主
という利点を有していた。一方、中底材としての
図1 セルロースボード
原料とし、それを解繊により繊維状にして
図 1 セルロースボード
強度や耐久性の面では改善の余地があった。
〔注意〕2011 年 3 月、国際タンナーズ協会は、レ
ザーボードの呼称をレザーファイバーボードとす
― 14 ―
ることを決定したが、本報ではこれまで一般的に
セルロースボード
使用されているレザーボードという呼称を使うこ
ととする。
均一で、吸
につながる
材としての
った。
協会は、レ
ボードとす
で一般的に
称を使うこ
ロースボー
れは木材そ
解繊により
に成形した
は組成が均
変色が起こ
性と釣り込
大量生産靴
シートボー
一般的に使
ロースボー
お、シート
の部分(シ
バッカー材
パルプなど
加圧加工さ
はボールフ
。したがっ
本試験法の元となった SATRA Test Method
PM3 では前部ボードに使われる材料を
「ファイバ
ーボード」
(米 Fiberboard、英 Fibreboard)と呼
称しているため、本報もそれに倣った。
図 1 セルロースボード
1. ファイバーボードの耐屈曲性試験の趣旨
ドの屈曲指数」に基づいて行っている。こ
ファイバーボードの試験片を機械的に繰り返し
の試験法は元々SATRA Test Method PM3
屈曲し、試験片が切断されるまでの屈曲回数を求
「ファイバーボードの耐屈曲性試験」であ
め、その耐屈曲性を判定する。
セルロースボード
台東支所ではファイバーボードの耐屈曲性を
り、それが英国規格(BS)に採用された。
BS
5131:Section
なお、BS
5131 4.2「ファイバーボードの屈曲指
: Section 4.2では本試験の対
数」に基づいて行っている。この試験法は元々
象は「シート部以外、ヒール以外に使われ
SATRA Test Method PM3「ファイバーボードの
るボード」としている。
耐屈曲性試験」であり、それが英国規格(BS)に採
用された。なお、BS 5131:Section 4.2 では本試験
の対象は「シート部以外、ヒール以外に使われる
2.ファイバーボードの屈曲試験機
ボード」としている。
ファイバーボードの屈曲試験機(SATRA
シート
ボード
図 2 一般的な靴の中底
(左:紳士靴用、右:婦人靴用)
図2 一般的な靴の中底
(左:紳士靴用、右:婦人靴用)
ける。
止め
とする。止
ていて、止
防いでいる
上方止め金
け調整用小
(4)2±0.01
験片の下部
(5)毎分 60
片は基準点
れる(図 7
に 90±1°
への 90±1
の場合、
この
9)
。
STM129)を図3に示す。複数の屈曲装置
2.
ファイバーボードの屈曲試験機
を有し、それぞれに屈曲回数を示すカウン
フ ァ イ バ ー ボ ー ド の 屈 曲 試 験 機 (SATRA
STM129)を図
3 に示す。複数の屈曲装置を有し、
ターが備え付けられている。試験片が切断
それぞれに屈曲回数を示すカウンターが備え付け
すると自動的にカウンターが止まり、切断
られている。試験片が切断すると自動的にカウン
までに要した屈曲回数がわかる仕組みに
ターが止まり、切断までに要した屈曲回数がわか
なっている。
る仕組みになっている。
本報では前部ボードに使われる材料の耐屈曲性
試験について解説するが、現在、前部ボードには
セルロースボードと若干量のレザーボードが使用
て、前部ボードの耐屈曲性は靴の品質・耐
されているのが現状であるため、実質的にはセル
久性を左右する重要な性能の一つである。
図 4 ファイ
本報では前部ボードに使われる材料の耐
1 屈 曲 性 試 験 に つ い て 解 説 す る が、 現 在、
前部ボードにはセルロースボードと若干量
のレザーボードが使用されているのが現状
であるため、実質的にはセルロースボード
と レ ザ ー ボ ー ド が 対 象 と な る。 な お、 本
試験法の元となったSATRA Test Method
PM3で は 前 部 ボ ー ド に 使 わ れ る 材 料 を
「ファイバーボード」(米Fiberboard、英
Fibreboard)と呼称しているため、本報も
それに倣った。
1.ファイバーボードの耐屈曲性試験の趣旨
ファイバーボードの試験片を機械的に繰
図 3 図3 ファイバーボードの屈曲試験機
ファイバーボードの屈曲試験機(SATRA STM129)
(SATRA STM129)
3. 試験手順
(1)試料となるファイバーボードを温度 20±2℃、
相対湿度
65±2%の環境に 48 時間置く。
耐屈曲性
3.試験手順
試験もこの環境で行う。
⑴ 試料となるファイバーボードを温度
(2)長さ 80 mm、
幅 10 mm の試験片を 6 個採取す
20±2℃、相対湿度65±2%の環境に48
る。その内訳は、靴の長さ方向に 3 個、靴の長さ
時間置く。耐屈曲性試験もこの環境で行
方向に直角に
3 個とする(図 4)
。なお、セルロー
う。
スボードには靴の長さ方向を示す印が入っている
場合が多い。図
4 上の試験片には「CUT
⑵ 長 さ80mm、
幅10mmの 試験 片THUS」
を6個
(この方向に裁断せよ)という文字とともに矢印
採取する。その内訳は、靴の長さ方向に
が示されている。一般的にセルロースボードメー
3個、靴の長さ方向に直角に3個とする
カーのロゴが印刷された方向が靴の長さ方向であ
(図4)。なお、セルロースボードには
る。この指示通りに中底を裁断した方が中底の寸
り返し屈曲し、試験片が切断されるまでの
法安定性が高いためである。
靴の長さ方向を示す印が入っている場
屈曲回数を求め、 その耐屈曲性を判定す
合 が 多 い。 図 4 上 の 試 験 片 に は「CUT
る。
THUS」(この方向に裁断せよ)という 2
台東支所ではファイバーボードの耐屈曲
文字とともに矢印が示されている。一般
性をBS 5131 : Section 4.2「ファイバーボー
的にセルロースボードメーカーのロゴ
― 15 ―
4. 結果の
BS 5131
試験片が切
た対数を求
均値を算出
る。これは
X2、X3 とし
屈曲指数
しかし、
単純に 3 試
る。これは
かりにくく
知りたいと
である。
ちな
回、4.0 は
れる(図 7)
。そこから基準点に戻り、次に左方向
に 90±1°折り曲げられる(図 8)
。左右どちらか
への 90±1°折り曲げが 1 回の屈曲である。多く
の場合、
この屈曲点近傍で試験片は切断される
(図
9)
。
婦人靴用セルロースボードの試験結果を例とし
て表示する。なお、依頼者の要望があれば、平均
値に加え、3 試験片それぞれの屈曲回数も表記し
ている。
BS 5131:Section 4.2「ファイバーボードの屈曲指
数」に基づいて行っている。この試験法は元々
SATRA Test Method PM3「ファイバーボードの
耐屈曲性試験」であり、それが英国規格(BS)に採
用された。なお、BS 5131:Section 4.2 では本試験
の対象は「シート部以外、ヒール以外に使われる
が印刷された方向が靴の長さ方向であ
ボード」としている。
る。この指示通りに中底を裁断した方が
2.中底の寸法安定性が高いためである。
ファイバーボードの屈曲試験機
フ ァ イ バ ー ボ ー ド の 屈 曲 試 験 機 (SATRA
⑶ 試験片を屈曲試験機の上方の止め金に
STM129)を図 3 に示す。複数の屈曲装置を有し、
取り付ける。止め金で締め付ける部分の
それぞれに屈曲回数を示すカウンターが備え付け
長さは約15mmとする。止め金の先端は
られている。試験片が切断すると自動的にカウン
靴の長さ方向
靴の長さ方向に直角
ターが止まり、切断までに要した屈曲回数がわか
円 弧 状(R 0.8) に 加 工 さ れ て い て、 止
る仕組みになっている。
め金によるファイバーボードの損傷を防
ちなみに、この婦人靴用セルロースボードの引
張強さを測定したところ、靴の長さ方向では 27
MPa、靴の長さ方向に直角では 45 MPa であった。
靴の長さ方向に直角に裁断した試験片の方が引張
強さは大きかった。このことから、セルロースボ
図
4 ファイバーボードの試験片
(長さ 80 mm×幅 10 mm)
図4 ファイバーボードの試験片
ードから靴の長さ方向に中底を裁断するというこ
上:靴の長さ方向
(長さ80mm×幅10mm)
とは、引張強さよりも寸法安定性を重視している
下:靴の長さ方向に直角
上:靴の長さ方向 ということがわかる。耐屈曲性については方向に
下:靴の長さ方向に直角
よる明確な傾向は経験上見られない。
4.
結果の表示
BS 5131:Section 4.2およびSATRA PM3では、
試験片が切断したときの屈曲回数の、10 を底とし
締め付け調整用小片
た対数を求め、試験片の方向ごとに 3 試験片の平
均値を算出し、屈曲指数(Flexing index)としてい
る。これは 3 試験片の切断時の屈曲回数を
X1、
ねじ止め
X2、X3 としたとき、下式で表される。
いでいる。なお、試験片が厚いときなど
には、上方止め金の締め付けが均一にな
るよう、締め付け調整用小片を挟む場合
もある(図5)。
⑷ 2±0.01kgの重りが付いた下方の止め
金に試験片の下部を取り付ける(図5、
図 3 ファイバーボードの屈曲試験機(SATRA STM129)
図6)。
⑸ 毎 分60±10回 の 速 度 で 屈 曲 を 開 始 す
3. 試験手順
る。試験片は基準点からまず右方向に90
(1)試料となるファイバーボードを温度
20±2℃、
相対湿度
65±2%の環境に
48 時間置く。
耐屈曲性
± 1°折
り 曲 げ ら れ る(図
7)。 そ
こか
試験もこの環境で行う。
ら基準点に戻り、次に左方向に90±1°
(2)長さ 80 mm、
幅 10 mm の試験片を 6 個採取す
折り曲げられる(図8)。左右どちらか
る。その内訳は、靴の長さ方向に 3 個、靴の長さ
への90±1°折り曲げが1回の屈曲であ
方向に直角に 3 個とする(図 4)
。なお、セルロー
る。多くの場合、この屈曲点近傍で試験
スボードには靴の長さ方向を示す印が入っている
屈曲指数 = (log10X1 + log10X2 + log10X3)÷3
しかし、台東支所ではこの屈曲指数を用いず、
単純に 3 試験片の屈曲回数の平均値を表示してい
る。これは、対数を用いた屈曲指数では結果がわ
試験片
かりにくく、単純に切断までに要した屈曲回数を
知りたいという依頼者からの要望が多かったため
である。
ちなみに屈曲指数5.0 は屈曲回数100,000
回、4.0 は 10,000 回、3.0 は 1,000 回を表す。
片は切断される(図9)
。
場合が多い。図
4 上の試験片には「CUT
THUS」
(この方向に裁断せよ)という文字とともに矢印
が示されている。一般的にセルロースボードメー
4.結果の表示
カーのロゴが印刷された方向が靴の長さ方向であ
BS 5131 : Section 4.2およびSATRA PM
る。この指示通りに中底を裁断した方が中底の寸
3では、試験片が切断したときの屈曲回数
法安定性が高いためである。
の、10を底とした対数を求め、試験片の方
向ごとに3試験片の平均値を算出し、屈曲
指数(Flexing index)としている。これは
1,607 回
1,166 回
2
3試験片の切断時の屈曲回数をX 1、 X 2、
X 3としたとき、下式で表される。
屈曲指数
2±0.01 kg
の重り
=(log10 X 1+log10 X 2+log10 X 3)÷3
しかし、台東支所ではこの屈曲指数を用
いず、単純に3試験片の屈曲回数の平均値
を 表 示 し て い る。 こ れ は、 対 数 を 用 い た
図5 屈曲装置の模式図
図 5 屈曲装置の模式図(単位は
mm である)
(単位はmmである)
― 16 ―
3
果を例とし
果を例とし
れば、平均
れば、平均
数も表記し
数も表記し
5. ファイバ
5.ファイバー
ファイバ
ゆる基準値)
ファイバー
として Harv
ゆる基準値)
屈曲性の性能
として
Harv
回
回
回
回
屈曲性の性能
表 1 ファイバ
表 1 ファイバ
ファイバ
ボードの引
ボードの引
方向では
27
向では 27
a
であった。
a であった。
の方が引張
の方が引張
ルロースボ
ルロースボ
るというこ
るというこ
視している
視している
ては方向に
ては方向に
ファイバ
セルロー
2 方向の
セルロー
2 方向の
Harvey は
け、それぞれ
Harvey は
選択すること
け、それぞれ
にその分類は
選択すること
にその分類は
○A 級:高級
例えば、
グッ
○A
級:高級靴
安全靴、子供
例えば、
グッド
○B
級:着用
安全靴、子供
士用タウンシ
○B
級:着用
供が学校以外
士用タウンシ
なファッショ
供が学校以外
○C 級:低価
なファッショ
低価格の流行
○C
級:低価格
靴など。
低価格の流行
小片
片
め
図 66 試験開始前(基準点)
試験開始前(基準点)
図6 試験開始前(基準点)
図
図 8 左方向に 90°屈曲した状態
図8 左方向に90°
屈曲した状態
図 8 左方向に 90°屈曲した状態
靴など。
6. ファイバ
ときの注意点
6.
ファイバ
上記のよう
ときの注意点
いないので、
上記のよう
性は、他のフ
いないので、
せて相対的に
性は、他のフ
の提案のよう
せて相対的に
イバーボード
の提案のよう
試験を行うこ
イバーボード
試験を行うこ
参考文献
1)The insole
参考文献
4, P. 30-32,
1)The
insole2
2)Texon
–w
4, P. 30-32,
2
20,
No.
4,
P.
2)Texon – w
3)Harvey,
20,
No. 4, P.A.3
technology,
3)Harvey, A.
1999
technology,
である)
ある)
1999
その他、本
図 9 試験終了時(試験片の切断)
図 7 右方向に 90°屈曲した状態
図7 右方向に90°
屈曲した状態
図 7 右方向に 90°屈曲した状態
3
3
図 9 試験終了時(試験片の切断)
図9 試験終了時(試験片の切断)
― 17 ―
4
4
その他、本
屈曲指数では結果がわかりにくく、 単純
Harveyは靴のランクをA級、 B級、 C級
に切断までに要した屈曲回数を知りたい
に分け、 それぞれの仕様に適したファイ
という依頼者からの要望が多かったため
バーボードを選択することが重要であると
である。ちなみに屈曲指数5.0は屈曲回数
述べている。ちなみにその分類は以下のと
100,000 回、4.0 は 10,000 回、3.0 は 1,000 回 を
おりである。
表す。
婦人靴用セルロースボードの試験結果を
A級: 高級靴や過酷な条件で長期間使わ
例として表示する。なお、依頼者の要望が
れる靴。例えば、グッドイヤウエ
あれば、平均値に加え、3試験片それぞれ
ル ト 式 製 法 で 作 ら れ た 靴、 安 全
の屈曲回数も表記している。
靴、子供の学校用靴、スポーツ靴
など。
靴の長さ方向 1,607回
靴の長さ方向に直角 1,166回
B級: 着用環境と価格が中程度な靴。例
えば、紳士用タウンシューズ、婦
ちなみに、この婦人靴用セルロースボー
人用タウンシューズ、子供が学校
ドの引張強さを測定したところ、靴の長さ
以外で履く靴、サンダルやブーツ
方向では27MPa、靴の長さ方向に直角では
のようなファッション性の高い婦
45MPaであった。靴の長さ方向に直角に裁
人靴など。
断した試験片の方が引張強さは大きかっ
C級: 低価格靴や長時間履かれない靴。
た。このことから、セルロースボードから
例えば、低価格の流行靴、スリッ
靴の長さ方向に中底を裁断するということ
パ、室内靴、パーティ用靴など。
は、引張強さよりも寸法安定性を重視して
いるということがわかる。耐屈曲性につい
6.ファイバーボードの耐屈曲性試験を依
頼するときの注意点
ては方向による明確な傾向は経験上見られ
上記のように耐屈曲性の性能要件は定め
ない。
られていないので、 試験したファイバー
5.ファイバーボードの耐屈曲性の性能要件
ボードの耐屈曲性は、他のファイバーボー
ファイバーボードの耐屈曲性の性能要
ドの結果と照らし合わせて相対的に判断す
件(いわゆる基準値) は定められていな
る必要がある。また、 Harveyの提案のよ
い。ここでは参考としてHarveyが提案し
うに、 製造する靴の仕様に適したファイ
たファイバーボードの耐屈曲性の性能要
バーボードをしっかりと把握し、選択して
件
3)
から試験を行うことも重要と考えられる。
を紹介する(表1)。
参考文献
表1 ファイバーボードの耐屈曲性の
性能要件 3)(参考) ファイバーボードの種類
セルロースボード
2方向の平均値である
1) The insole’s progress, World Footwear , 21,
屈曲指数(最小値)
A級
B級
C級
3.7
3.2
2.7
No.4, P.30-32, 2007
2) T e x o n – w h a t ’ s i n a n a m e ? , W o r l d
Footwear , 20, No.4, P.37-39, 2006
3) Harvey, A. J., Footwear materials and
process technology, P.134-146, A Lasra
― 18 ―
publication, 1999
その他、本原稿を執筆するに当たり、下
記の文献を参考にした。
・BS 5131 : Section 4.2 Flexing index of
fibreboard(1975)
・S A T R A T e s t M e t h o d P M 3 , F l e x i n g
endurance test for fibreboards(1980)
・中底材料の機械的性質と各種要因の複合に
よ る 劣 化 に つ い て, 平 成 元 年 度 東 京 都 皮 革
技 術 委 託 研 究 報 告 書, 東 京 都 産 業 労 働 会 館
(1990)
― 19 ―