13. 共鳴 X 線発光スペクトル

13. 共鳴 X 線発光スペクトル
13.1. TiO2 L23 スペクトル
TiO2 の L2,3 吸収端スペクトルを示す. 非常に複雑な構造を示す.これは,L2,3 のスピ
ン軌道分裂や多重項分裂が入ってきたためである.この構造と電子状態を比較するのに,
共鳴発光スペクトルが用いられる.共鳴というのは,吸収端付近のエネルギーで励起する
時に用いられる.一方,非共鳴は、n に示したように、蛍光 X 線が現れる。これは、一般
に Lと Lの2つ種類ある。Lは、3d5/2,3d3/2→
2p3/2(452.2eV)への遷移であり、Lは、
3d3/2→2p1/2(458.4 eV)への遷移である。Ti は 4+であるから、d 軌道に電子があるのはおかし
いと感じる。これは、酸素と結合を作り、酸素に穴が開いた状態が d 軌道に混じっている
と考えれば理解される。( =c-1d1c-1d2L-1)内殻に穴があくと、d 軌道から電子が落ちてき
て発光する。
さて、吸収端付近ではどうなるだろうか?
吸収端では、終状態として、連続順位だけで
なく、空 d 軌道などの束縛順位への遷移も可能になる。それでは、空 d 軌道はどうなって
いるだろうか? 図 13-2 にその様子を書いた。発光を考えるときに、二つの遷移すなわち
吸収と発光遷移行列を考える必要がある。a では、吸収端前であるから、ほとんど吸収は起
きないが、しかしながらこの領域で発光を示す。2 本あるが、一本は入射 X 線と同じエネル
ギーをもち、もう一つは、6-7 eV シフトしたものである。これは、仮想的な遷移が起こり、
仮想的な発光の際にエネルギーロスが起きると考えれば理解できる。
b や d でピークが現れるが、これは、d1 への遷移と考えると、こうした電子遷移が複雑に
絡んで現れたスペクトルいうことになる。
図 13-1
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図 13-2 TiO2 の発光スペクトル
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二つ以上の化学種が存在すると、それぞれで異なる蛍光スペクトルを持つから、それぞれ
の波長で測定すると分離ができるはずである。これが状態選別の XAFS になる。この手法
を用いるときには、対象物質が十分に濃度の小さいことを考えないと自己吸収があり、思
わぬ error を生じることがあるので注意を要する。
図 13-3
MnF2 と BaMn8O16 の発光スペクトル
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