2015 年の労働法制改正動向は?

<2015.1 月号> 株式会社フォーラムジャパン
東京都千代田区神田小川町 3-20 第 2 龍名館ビル 6F
2015 年の労働法制改正動向は?
~2015 年は労働者派遣法、パートタイム労働法、労働安全衛生法などの改正が予定されています!~
26 業務の撤廃により派遣期間を「業務単位」から「個人・派遣先単位」へ移行するなどを盛り込んだ労働者派遣法改正案です
が、2014 年は、通常国会と臨時国会に提出するも2度とも廃案に追い込まれました。年末の総選挙で大勝した政府・与党は、今
月の通常国会に再度提出し成立を目指すことになります。また、パートタイム労働法、安全衛生法は、それぞれ 4 月と 6 月、昨
年の臨時国会の会期末ぎりぎりで成立した「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」も 4 月の施行が予定
されています。そのほか、政府の成長戦略に方向性が示され、新たな労働時間制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)導入
に向けて通常国会で労働基準法改正法案を提出する予定です。
【2015 年労働法制改正動向】
■パートタイム労働法改正(2015 年 4 月 1 日施行)
改正内容の主なポイント(厚生労働省資料より)
1.正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者の対象範囲の拡大
<法第 9 条>
有期労働契約を締結しているパートタイム労働者でも、職務の内容、人材活用の仕組みが正社員と同じ場合には、
正社員との差別的取扱いが禁止されます。
【正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者の範囲】
<現行>
<改正後>
(1)職務の内容が正社員と同一
(1)と(2)に該当すれば、賃金、教育訓練、
(2)人材活用の仕組みが正社員と同一
福利厚生施設の利用をはじめ全ての待遇につ
(3)無期労働契約を締結している
いて、正社員との差別的取扱いが禁止される
例えば、有期労働契約を締結しているパートタイム労働者が、職務の内容も人材活用の仕組みも正社員と同じ
であるにもかかわらず、正社員には支給されている各種手当の支給対象となっていない場合には、改正後は、
正社員と同様に支給対象となることが考えられます。
2.パートタイム労働者を雇い入れたときの事業主による説明義務の新設
<法第 14 条第 1 項>
パートタイム労働者を雇い入れたときは、実施する雇用管理の改善措置の内容を事業主が説明しなければなりま
せん。パートタイム労働者から説明を求められたときの説明義務(法第 14 条第 2 項)と併せて、パートタイム労働
者が理解できるような説明をしていく必要があります。
【説明を求められたときの説明内容の例】
【雇入れ時の説明内容の例】
・どの要素をどう勘案して賃金を決定したか
・賃金制度はどうなっているか
・どの教育訓練や福利厚生施設がなぜ使えるか
・どのような教育訓練があるか
(または、なぜ使えないか)
・どの福利厚生施設が利用できるか
・正社員への転換推進措置の決定に当たりなにを
・どのような正社員転換推進措置があるか
3.相談窓口の周知
等
考慮したか
等
<施行規則第 2 条>
パートタイム労働者を雇入れたときに、事業主が文書の交付などにより明示しなければならない事項に「相談窓
口」(相談担当者の氏名、相談担当の役職、相談担当部署など)が追加されます。
【文書などによる明示事項】
<労働基準法で義務付けている項目>
・契約期間、仕事の場所・内容など
<パート労働法で義務付けている項目>
・昇給、賞与、退職手当の有無
・相談窓口
■労働安全衛生法改正(2015 年 6 月から 2016 年 6 月までの間に順次施行)
1.ストレスチェック義務を新設(2015 年 12 月 1 日施行)
◎常時雇用する労働者に対して、医師、保健師等〔※1〕による心理的な負担の程度を把握するための検査
(ストレスチェック)〔※2〕を実施することが事業者の義務となります。
※1
ストレスチェックの実施者は、今後省令で定める予定で、医師、保健師のほか、一定の研修を受けた看護師、
精神保健福祉士を含める予定。
※2
検査項目は、「職業性ストレス簡易調査表」(57 項目による検査)を参考とし、今後標準的な項目を示す予定。
検査の頻度は、今後省令で定める予定で、 1 年ごとに 1 回とすることを想定。
◎検査結果は、検査を実施した医師、保健師等から直接本人に通知され、本人の同意なく事業者に提供する
ことは禁止されています。
◎検査の結果、一定の要件〔※3〕に該当する労働者から申出があった場合、医師による面接指導を実施す
ることが事業者の義務となります。また、申出を理由とする不利益な取扱いは禁止されます。
※3
要件は、今後省令で定める予定で、高ストレスと判定された者な どを含める予定。
◎面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴き、必要に応じ就業上の措置〔※4〕を講じることが事業者の
義務となります。
※4
就業上の措置とは、労働者の実情を考慮し、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の
減少等の措置を行うこと。
2.受動喫煙防止対策を努力義務化(2015 年 6 月 1 日施行)
◎室内またはこれに準ずる環境下で労働者の受動喫煙を防止するため、事業者及び事業場の実情に応じ適切
な措置※を講じることが事業者の努力義務となります。
※
事業者及び事業場の実情に応じた適切な措置の例として、全面禁煙、喫煙室の設置による空間分煙、たばこ煙を
十分低減できる換気扇の設置などがある。
<参考>派遣労働者に対するストレスチェック等の実施について
厚生労働省のストレスチェック制度に関する検討会報告書(2014 年 12 月 7 日)によると、派遣元事業者と派遣
先事業者の役割は、以下のとおりです。
ストレスチェック制度においては、①労働者個人にたいしてストレスチェックを実施し、結果を本人に通知し、
高ストレス者に面接指導を行い、必要に応じて就業上の措置を行う「個人対応」、②労働者個人の結果を集団的に
分析し、職場環境改善に活かす「集団対応」の2つの要素があります。①の個人対応については、法令上、雇用
関係を有する派遣元が実施義務を負います。また、②の集団対応については、実際に労働者が働く職場を管理す
る派遣先の努力義務とすることが適当としています。
また、派遣先事業者が、派遣労働者を含めた職場全体について集団的な分析を行うためには、派遣先事業者に
おいても、派遣元とは別途、自社の労働者と併せ派遣労働者に対するストレスチェックを実施する必要があるこ
とから、派遣労働者に対するストレスチェックの実施も、集団的な分析の努力義務の中で対応することが適当と
しています。
■専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法(2015 年 4 月 1 日施行)
詳細は、FJ ニュース 2014 年 12 月号をご覧ください。
■1 月の通常国会で提出予定の法案
1. 労働者派遣法再改正法案改正の主なポイント
①
特定労働者派遣事業を廃止し、すべての労働者派遣事業を許可制に移行(施行後 3 年の猶予期間あり)
②
現行の業務単位による期間制限の在り方を改め、個人・派遣先単位で派遣期間を設定。26 業務は撤廃。
③
派遣元に派遣労働者に対する雇用安定措置を義務付け。
④
派遣元にキャリア形成支援制度の構築を義務付け。
等
2. 新たな労働時間制度(いわゆるホワイトカラーエグゼンプション)
働いた時間ではなく成果に応じて報酬を支払う新たな労働時間制度について議論している厚生労働省の審議
会は、制度の導入を求める経営側と、反対する労働者側の意見の調整が進まず、当初、2014 年内を目指していた
報告書のとりまとめを
1 月に延期することになりました。厚生労働省は、予定通り通常国会に制度を導入するた
4
めの法案を提出したい意向です。