ピートン堆肥による土層改良で 軟弱地盤を生産性の高い農地へ転換

平成 18 年度
1896
事例●096 中部重機協同組合(静岡県藤枝市)
平成18年度
下請業者の経営力・施工力の
充実・強化促進モデル構築支援事業
ピートン堆肥による土層改良で
軟弱地盤を生産性の高い農地へ転換
静岡県藤枝市に所在する中部重機協同組合と牧之原市の南榛原開発(株)は、泥
炭堆肥を活用した有機肥料を用いて軟質地盤農地の土壌改良による農業土木分
野への本格的な参入を目指している。
1.事業の背景と動機
泥炭の肥料化、堆肥化を模索
ピートン堆肥による、発芽試験の様子。堆肥と
土の割合を変えて生育状況を観察している
静岡県下には、県の西部を中心にピー
ト(泥炭)層が多数散在し、軟弱地盤の農
地あるいは原野のままとなっており、これ
ら農地の高付加価値化や農地化は喫緊
の課題であった。中部重機協同組合と南
榛原開発(株)は 10 年以上前から泥炭の
肥料化、堆肥化を研究し、湿地水田の土
壌改良への活用を模索してきた。
2.進出時の苦労やその対応
吸気方式により悪臭を防止する
軟弱地盤が原因で不良農地となってい
る泥炭地水田の改良工法として、泥炭を
掘り起こし、未利用資源として泥炭の堆
肥化を行う過程で発生する悪臭やガスを
どのように防止するかが、技術的な問題
であったが、南榛原開発(株)が開発した
吸気方式がこの問題点をクリアした。
掘り起された泥炭。葦やスゲ等が含まれ、乾
燥して細かく粉砕しないと使えない
中部重機協同組合
代表者●青島 實(代表理事)
所在地●静岡県藤枝市
資本金●300 万円
組合員数●3 社 役職員数 4 名
事業内容●官公需適格組合として建設工事
の共同受注を行なうほか、建設機械の賃貸、
共同購入事業、油脂・安全関係用品の取り扱
い、金融事業、広報・教育事業を営む。
URL●http://www.s-juki.org(中部重機協同
組合)http://www3.ocn.ne.jp/~nanpai/(南榛
原開発(株))
藤枝市
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財団法人建設業振興基金
3.新事業の概要
ピートン堆肥の販売を開始
ピート層の泥炭を掘り起こして乾燥さ
せ、豚糞などの畜糞や廃棄木材、剪定材
等を粉砕した木材チップと混合して有機
肥料とし、この肥料と建設残土を用いて
泥炭を掘削した農地に埋め戻し、土壌改
良・地質改良を行なうものである。泥炭の
肥料化は、南榛原開発(株)が研究・開発
を進め「ピートン堆肥」として販売を始め
ている。中部重機協同組合は、これらの
技術を用いて農地改良工事、農業土木
工事分野への進出を目指すものである。
4.事業の推進体制
事業実施委員会にて事業の基本
方向を検討
中部重機協同組合が、当事業を統括
し、農地の選定や泥炭掘削、土質改良な
どを担当する。南榛原開発(株)は、主に
技術面を担当し、泥炭の堆肥化の研究や
土質・発芽試験を実施している。(協)静岡
県中小企業調査研究機構を加えて事業
実施委員会を結成し、定期的に会合を持
ち、事業の基本方向・進捗管理を行なっ
ている。
5.差別化戦略・競争戦略
資源のリサイクルを推進する技術
ピート層の肥料化は、実用化にまで至
っておらず、本事業が成功すれば、非常
に独創性の高い技術になる。未利用資源
とも考えられる泥炭や蓄糞等から有機肥
料を製造し、再資源化の遅れている建設
残土の活用を促進する事業であり、環境
にやさしい技術である。コスト的にも低価
格での施工提供が可能である。
6.成果と今後の課題
堆肥化サイクルの短縮がポイント
ピートン堆肥による土壌改良によって
湿地が農地化されたり、生産性の高い農
地へと生まれ変わることで、厳しい経営
環境にある農業の活性化につながると期
待される。現在 1~2 ヶ月程度要している
堆肥化サイクルを如何に短縮できるかが
今後のポイントである。これが実現すれ
ば、農地改良の施工コストの低減にもつ
ながる。営業面では、農業経営者等に対
してピートン堆肥を如何にアピールして信
用を得るかが今後の課題である。