剛体にはたらく力

剛体にはたらく力
剛体における力のつり合い
§1.剛体における力のつり合い
質点の運動状態が変わらない場合、そこにはたらく力はつり合っているといえた。しかし質点と違って剛体に
は並進運動だけでなく回転運動もあるため、剛体にはたらく力がつりあっている条件として、力のモーメントの
和が 0 でなければならないのだ。
例えば右図のような剛体を考えよう。右側に 1[N]の重力がかかる鉄球、左側に 2[N]の
重力がかかる鉄球、それを結ぶ鉄棒は固いが重さが無く長さが 3[m]とする。この物体に
3[N]で上に引っ張れば並進運動はしなくなるが、これだけでは回転してしまう。回転運動も
しないようにしてはじめて、力がつり合ったといえるのだ。
◆演習: 回転しないようにするには左から 1:2 に内分する位置を支えればいい。(右図)
これを、モーメントの式と回転の中心は任意の位置に設定できることから確認せよ。
◆剛体における力のつり合い1
条件 1.剛体にはたらく力の総和が 0
条件 2.任意の中心点まわりの力のモーメントの総和が 0
§2.平行でない 3 力に関して
平行でない 3 力について、それらが剛体にはたらいていてつり合っているとき。すなわち 2 つの条件が成立し
ているとき、3 力の作用線は 1 点で交わるという性質がある。
まず 3 力の内の 2 力について力のモーメントの和を考えてみよう。この 2 力は平行
ではないので必ず交点があり、交点を P とする。作用線の定理から、この 2 力を
作用線上を動かすことによって交点 P の位置まで移動してみよう。そしてこの交点 P
における 2 力のモーメントの和を考えると 0 になる。なぜなら、どちらのモーメントとも
交点 P からの距離が 0 であるからだ。
残りの 3 番目の力の作用線について考えてみよう。いま 3 力はつり合っているのだから
力のモーメントの和は 0。そして、3 力の内の 2 力のモーメントの和は 0 なのだから、
残りの力のモーメントは 0 になっているはずだ。つまり、3 番目の力は作用線上を動かせば
交点 P の位置にくることができるということである。
というわけで、剛体において平行でない 3 力がつり合っているとき、その作用線は 1 点で交わるといえる。
これは問題を解くときに多用しますので覚えておこう。たとえ力が 4 つ以上ある場合でも、2 つを 1 つに合成し
て全部で 3 力と見なせば上の定理が使える。
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条件 1.を満たしていれば並進運動の運動状態は変わらず、条件 2.を満たしていれば回転運動の運動状態は変わ
らない。もしどちらも満たしていれば、並進状態も運動状態も変わらない。
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