IFSJ日本伝統アート研究クラスタ 弓道の知とイノベーション 流鏑馬の射手の狩装束 (『流鏑馬絵巻』穴八幡宮蔵より 笠懸の様子 (『男衾三郎絵詞』より) 犬追物 右端の人物は物見役(審判) 平成27年4月9日(木)18:30~20:30 於 小石川後楽園 発表者 小野瀬由一 All Copyright©2015.Y.ONOSE 1 目次 1.弓道の歴史と知からの学び 2.弓道の知とイノベーションに関する考察 3.意見交換 【参考資料】 白石暁著『うまくなる弓道』2003年4月5日発行、ベースボール・マガジン社 吉田レイ監修『弓の道-正法流入門-』2005年12月30日発行、BABジャパン出版局 村川平治著『克つための弓道』1997年12月10日発行、ベースボール・マガジン社 入江康平・森俊男編著『弓道指導の理論と実際』1999年4月23日発行、不昧堂出版 田寺豊著『弓道と人間の本質~生命の発生・存在・存続』1996年10月1日発行、近代文芸社 松尾牧則著『弓道 その歴史と技法』2013年5月10日発行、日本武道館 ウィキペディアフリー百科事典「弓道」 All Copyright©2015.Y.ONOSE 2 1.弓道の歴史と知からの学び① 年代 東洋Eastern ・英国文学の父アダム・ ビート(673~735) ・サラセン帝国モスク建設 ・6’s初に菩提達磨『禅』開眼 →8’s馬祖「禅宗」成立 ・日本『古事記』(712)『日本書 記』(720)『万葉集』(758?)、 東大寺大仏開眼(752) 弓道の知 ・射法の起源(弥生・3世紀)→上長下短の弓(網古式) ・木弓(まっすぐ)→「半湾弓」 ・縄文時代、弓は狩猟の道具 ・弥生時代、弓は武器に使用 場:狩猟→戦い ・・遣隋使・遣唐使が支邯那弓道を吸収 ・原始神道+仏教・儒教・陰陽道との習合→神社神道 ・古代律令国家→兵士(徴兵)→国家常備軍 奈良文化 西洋Western 弓道の歴史 白鳳文化 700 芸術Artの歴史 ・奈良時代、弓は神事に使用 ・大宝令(701)→神祇制度→皇室神道⇒敬神の弓 800 ・レオナン『オルガヌム大 全』→記譜法 1200 ・ドイツボロニア大学創設 (1088) ・スコラ哲学起こる 1300 ・マルコポーロ『東方見聞 録』(1299) ・アラビア文化隆盛 (1320) ・イタリア人ダンテ『神曲』 (1304) ・鳥羽僧正覚『鳥獣戯画』 (1140) ・検校→鎌倉時代の視覚障害 者保護(琵琶法師等) ・中国山水画家梁楷・場麟 ・『新古今和歌集』(1205) ・鴨長明『方丈記』(1212) ・金沢文庫創立(1270?) ・吉田兼好『徒然草』 ・猿楽→能楽確立 ・能楽→室町武家の式学 ・華道→室町僧侶が確立 ・金閣寺建立(北山) ・武家の射から公家の射(礼射・賭弓)へ ・「半湾弓」→宮廷儀式「大射」「射礼」「弓場始め」→礼と貫徹 の射の時代=古代弓道 ・王朝国家体制→人民支配・土地経営権限委譲→有力荘園領 主(私的武力) ・弓術 ①文射(礼射):儀礼としての弓射 ②武射:武器としての弓射 ・神仏習合神道→山王一実神道(天台)・両部神道(真言)・法華神 道(日蓮)・修験道(山岳密教) ・木+竹=「伏竹弓」 場:武家社会 ・鎌倉時代の仏教→天台宗(宮家)を母胎とする融通念仏宗、浄土 宗・浄土真宗(平民)、禅宗(南宋禅の臨済宗、曹洞宗→武家)、日 蓮宗、時宗の勃発 ・射術の修練→固定的「流鏑馬(やぶさめ)」「笠懸(かさが け)」→移動的「犬追物(いぬおうもの)」=騎射三物⇒弓馬の 射=貫徹の射の時代 ・禅と武士:禅の知識を廃した直覚性と武士の単純性→禅の修 業の単純・直裁・自恃・克己性と武士の戦闘状態→鎌倉北条 氏と禅 ・曹洞宗開祖道元渡宋、栄西門下明全に禅を学ぶ→「心身脱落」 開眼→「本性妙修」説→後般若の座禅 ・北条時頼・時宗禅修業者→元寇退治→宮家にも浸透 南北朝・ 室町 1400 ・ケンブリッジ大学創立 (1209) ・紫式部『源氏物語』(975?) ・源氏物語絵巻(1100) ・空海(弘法大使)、中国(唐時代)の青龍寺恵果から学んだ密教を 基盤とした真言宗(公家)開祖 鎌倉文化 ・マグナカルタ大憲章制定 (1215) ・中国・宋抹茶の時代 ・『日本後紀』に嵯峨天皇梵釈寺大僧都「永忠」から団茶を奉納 (815年) ・「遣唐使」廃止(894年) 場:公家+神事 平安文化 ・宮廷騎士叙情詩『ルーオ トリーブ』(1030?) ・中国・唐山水画の祖浩然 ・『竹取物語』(950?) ・田楽→平安時代確立 ・雅楽→芝、東儀、豊の三家制 定 中世・ ビザンチン文化 900 1000 1100 ・ビザンチン文化(建築・騎 士道文学)復興(850) ・ウネマ譜考案→『グレ後リ ア聖歌』 ・大和猿楽の観阿弥生まれる(1333)、世阿弥生まれる(1363) ・瑩山の門流「四門六兄弟」(明峰素哲、無涯智洪、峨山紹碩、壺 菴至簡)活躍←支配者階級掌握 All Copyright©2015.Y.ONOSE ★弓術流派:14世紀小笠原流(礼射)・武田流(弓馬)成 立⇒15世紀日置弾正日置流(射術)確立 3 1.弓道の歴史と知からの学び② 年代 ・世阿弥『花伝書』(能 学の完成1418) ・華道→京都六角堂 の僧侶により確立「池 坊(いけの坊)」 ・香道→香木の分類 法確立「六国五味」 ・後期ルネッサンス→ ミケランジェロ「最後の 晩餐」&建築 ・英国劇作家→シェー クスピア『ハムレット』 『マクベス』『オセロ』 『リア王』 ・スペイン絵画→ベラ スケス ・オランダ海が→ルー ベンス、レンブラント 弓道の知 ・荘園制の衰退→郷村制の成立→祖霊信仰+死者供養で鎌倉新仏 教の浸透→鎮守神+氏神+先祖神の祭祀=家父長権 ・天台宗・真言宗寺院の復興と曹洞宗への改宗 ・神道、儒教、道教などとの融合による禅への換骨奪胎 ★弓術流派の分派 ・日置流吉田派→出雲派→印西派→寿徳派 左近右衛門派→大倉派 山科派→大和流 雪荷派→道雪派 竹林派 ・正統弓道とは、弓一射の内に、過去身→現在身→未来身の三 世を引き交わし、理想の射道を求め併せ、この三世を正道におい て統一を成す理を求めるのであり、永遠に続く人間の正しい生き ・揚矢→公家+庶民の賭け事として流行 ・近代弓道二大流派の小笠原家が後醍醐天皇の弓馬の師範 へ ・日置弾正正次が二大流派日置流の基を築く ・「ヒゴ入り弓」←操法「弓返り(ゆがえり)」 ・鉄砲伝来(1542)←種子島(マラッカ銃)⇒槍が主役へ⇒遠矢 ・足利幕府滅亡(1573) ・長篠の戦(1574)→弓の価値消滅 ・秀吉の刀狩→武士は文(行政)+武(戦闘) ・武家諸法度(1615)→士農工商へ ・市川団十郎、江戸に 歌舞伎(荒事)を開く (1673) ・宮本武蔵→兵法の道「五輪の書」 (1643) ・曹洞宗寺院17,549寺院に達す(1681) ・徳川幕府「寺請制度」制定→寺社奉行設置(全国寺社統括) ・坂田藤十郎、大阪に 歌舞伎(和事)を開く 方を求めること(日置流)。 ・過去身とは、地球上に最初の生命が誕生する以前。 ・現在身とは、地球上に最初の生命が誕生してから以後の現在ま での生命の存在。 ・未来身とは、現在より未来への理想の人間社会をいう。 日置流竹林派田寺豊著『弓道と人間の本質~生命の発生・存在・ 存続』より (1678) ・浄瑠璃→歌舞伎の 語り→江戸時代芸道 管轄役所「嵯峨御所」 により家元認定 ・人形芝居生まれる ・狩野派狩野探幽『探 幽縮図』 ・琳派尾形光琳『紅白 梅図屏風』 ・浮世絵菱川師宣『見 返り美人図』 江戸文化 ・仏画家ダビッド『アン ティオコスとストラトニ ケ』ローマ賞 ・ウィーン古典派→ハ イドン、モーツアルト、 ベートーベン ・出雲の阿国、かぶき 踊り演じる(1603) 新古典主義 ・フランスロココ時代絵 画→ヴァトー「メズダ ン」 ・後期バロック音楽→ ドイツ・テレマン、英国 バッハ、ヘンデル ・雪舟『山水長巻』 ・銀閣寺建立(東山) ・書院造建築 ・茶道→千利休確立 バロック文化 1700 ・ルネッサンス三大巨 匠→ビンチ{モナリ ザ}・ミケランジェロ「ダ ビデ増」・ラファエロ 「聖母子像」 弓道の歴史 安土桃山文化 1600 東洋Eastern ルネサンス文化 1500 西洋Western 室町( 北山文化 東 →山文化) 1400 芸術Artの歴史 ・月舟、卍山らによる「宗統復古運動」により古義『曹洞宗嗣法』の制 度化→宗学の勃興 ・元禄時代、江戸の吉祥寺(駒沢大学の発生)、青松寺(獅子窟)、泉 岳寺(学寮九宇)、増林寺(江左禅林)に学寮設置 ・弓術→「三十三間堂の通し矢」→300年続く ・射法・射術→「三つがけ」→「四つがけ」→「堅帽子」の弽(ゆ がけ)の出現 ・公郷の武術稽古の禁止⇒幕府の弓術、犬追物の禁止 ・矢→「麦つぶなり」→「差矢弓」+接着剤 All Copyright©2015.Y.ONOSE 場:古式弓道 ・礼射+武射=五射六科→五射(巻藁前・的前・遠矢前・差矢前・ 要前)+六科 ①射術(弓理) ②射礼(礼法・作法) ③弓法(弓 矢の取扱い法) ④弓器(弓具の知識) ⑤弓工(弓具制作の方 法) ⑥弓道(四明・丹心・錬心・蟇目・鳴絃=心の訓練) (大和流流祖森川香山による五射六科) ・三十三間堂の「堂射(通し矢)」盛ん→寛文9年(1669年)星野勘 左衛門(日置流尾州竹林派)によって総矢数10,242本・通し矢数 8,000本、貞享3年(1686年)和佐大八郎(日置流紀州竹林派)に よって総矢数13,053本・通し矢数8,133本という大記録が生まれる。 4 1.弓道の歴史と知からの学び③ 年代 西洋Western 東洋Eastern ・仏画家フリードリヒ『氷 の海』 ・文人画⇒与謝蕪村『鳶 烏図』→俳画 ・仏画家モネ『印象・日 の出』『睡蓮』 ・玄透即中、道元550回忌記念『正法眼蔵』90巻開版(1808) ・白隠慧鶴による公安(教育)体系道(『座禅和賛』箸)→日本禅の 独自性→前般若の座禅→「心性本清浄」論←日本禅のプロテスタ ント ・徳川太平の世→戦闘者から為政者へ ・弓道は江戸幕府の盛衰と基に盛衰⇒堂射 ★文久二年(1862)幕府の弓術上覧の儀廃止→同年講武所 の教科から犬追物稽古廃止 ・江戸幕府洋式戦闘術採用→弓術の消滅 明治維新 ・神仏分離令発令(1869) ・徴兵令布告(1873)→国家軍隊徴兵 ・日本画⇒横山大観『屈 ・曹洞宗、「僧録制度」廃止→永平寺、総持寺へ大本山→「曹洞宗 原』『生々流転』、下村観 宗制」施行(1875) 山『木の間の秋』、菱田 ・軍人勅諭(1882)←戦闘者の思想の基本 春草『落葉』 ・「曹洞宗大学林」設立(1883) ・洋画⇒黒田清輝『湖畔』、 ・新渡戸稲造「BUSHIDO:武士道」米国出版 青木繁『海の幸』『 アールヌーボ ・浮世絵⇒月岡芳年『和 漢百物語』、河鍋暁斎 『東京開化名勝』 ・新民謡→北原白秋『松 島温度』『ちゃっきり節』 ・新派劇→歌舞伎対抗し た演劇、『金色夜叉』(尾 崎紅葉)、『婦系図』(泉 鏡花) ★侍の子は7歳前後に柔術稽古開始の儀式(弓始)→本格 的な稽古は15歳頃から ・仏洲仙英、瑩山伝記『伝光録』開板(1857) 明治文化 印象派 1900 ・仏画家ルノワール 『ムーラン・ド・ラ・ギャ レット』 ・三大ポスト印象派→仏 画家セザンヌ『サント・ ヴィクトワール山』・仏画 家ゴーギャン『タヒチの 女』・仏画家ゴッホ『ひま わり』 ・後期ロマン派→マー ラー、R・シュトラウス ・浮世絵⇒喜多川歌麿 『婦人図』、葛飾北斎『富 嶽三十六景』、歌川広重 『東海道五十三次』 ・能楽形態成立→能+式 三番+狂言 ・民謡→ヨナ抜き音階 弓道の知 ・新舞踊→大正時代坪内 逍遥らが公演 ・仏画家マネ『草上の昼 食』 ・仏画家ドガ『バレエの レッスン』 ・文人画⇒渡辺崋山『鷹 見泉石像』 ・写生画⇒円山応挙『雪 松図屏風』 写実主義 ・仏画家クールベ『オル ナンの埋葬』 ・仏画家ミレー『晩鐘』 ・オペレッタ→オッフェン バック『天国と地獄』、 シュトラウス『こうもり』 弓道の歴史 江戸文化 ・独画家ドラクロワ『民 衆を導く自由の女神』 ・ロマン主義音楽→バッ ハ、モーツアルト、ベー トーベン ロマン主義 AD 1800 芸術Artの歴史 ★弓術の遊戯・娯楽化→楊弓場(射的場)+売春⇒伝統弓 術の伝道師範(奥村久忠・石崎八郎・横浜有仲・浦上直置・ 生駒新太郎・宇野丈九郎・本田利實・関口源太・岡内木・森 川秀実・市川虎四郎ら) ・小笠原清務(小笠原流28代)最初の学校弓道(1889) ・東京第一高等学校に弓道部設置(1892)←本田利実師範 (本田流) ・大日本武徳会結成(1895)←京都亀岡藩及川広愛師範 ・能登の総持寺が横浜移転 場:学校弓道 ・日本弓術会設立(1909)→本田流設立 ・中学校施行規則→師範学校で弓道が正科授業化(1911) All Copyright©2015.Y.ONOSE 5 1.弓道の歴史と知からの学び④ 年代 芸術Artの歴史 西洋Western ・仏画家マティス『ブー ローニュの森』 ・ピカソ、ブラックとキュ ビズム創始 ・印象主義音楽→ラベ ル、ドビュシー キュビズム 作曲『ショーボート』 (1936) 昭和文化 ・近代ミュージカル→ ジェローム・カーン ・トーキー映画登場 ・臣民謡→当地ソング 「東京温度」など ・新歌舞伎→坪内逍遥 『桐一葉』、岡本綺堂の 『修善寺物語』『鳥辺山 心中』、岡鬼太郎『今様 薩摩歌』、真山青果『元 禄忠臣蔵』 ・洋画⇒林武『梳る女』、 小磯良平『斉唱』 平成文化 ・日本画⇒奥村土牛: 『踊り子』、東山魁夷:『濤 声』『山雲』 ・「国家神道」制度的完成期→明治30年代(1900年代後半)-昭和 初期(1930年代)→日本資本主義の帝国主義化→内務省神社行政 確立→官国幣社等神社制度完成→資本主義+民主主義・社会主 義普及防止→政府の諸宗教による国民思想「善導」→神社の社会 的機能強化→「神社法」制定 ・1920年(大正8年)大日本武徳会は剣術を『剣道』と名称改め ・中学校課外授業で弓道盛ん(大正中期) ・明治神宮大会で弓道(1925) 場:近代弓道 アールデコ バウハウス ・ベルギー画家マグリッ ト『光の帝国』 ・米国ジャズ→ガーシュ イン『ラプソディ・イン・ ブルー』、バーンスタイ ン『ウエスト・サイド・ス トーリー』 ・文芸⇒芥川龍之介、有 島武郎・武者小路実篤・ 志賀直哉ら活躍 アールヌーボ シュルレアリズム ・スペイン画家ダリ『時 間のプロフィール』 大正文化 ・仏画家ローランサン 『招待』 ・日本画⇒村上華岳『日 高河清姫図』 エコール・ ド・ パリ ・仏画家ユトリロ『ラパ ン・アジル』 ・洋画⇒岸田劉生『麗子 像』、梅原龍三郎『狩野 川』、安井曾太郎『金蓉』 抽象絵画 ・露画家カンディンス キー『モスクワ』 弓道の知 東洋Eastern 野獣派 AD 1900 弓道の歴史 ・中学正科授業で弓道が柔道・剣道と共に採用(1936) ・太平洋戦争敗戦(1945)→武道教育中止 ・大日本武徳会解散(1946)→全日本弓道連盟結成(1947) →全日本弓道連盟解散(1948)→日本弓道連盟結成(1949) (後に全日本弓道連盟と改称) 場:日本弓道連盟 ・学校弓道許可(1946) ・第1回全国高等学校弓道大会(1956) ・全国女子弓友会結成(1964) ・グラスファイバー弓登場(1967) ・欧州弓道連盟(EKF)結成(1980) 場:国際弓道連盟 ・国際弓道連盟(IKYF)発足(2006) All Copyright©2015.Y.ONOSE ・第1回世界弓道大会東京開催(2010) ★日本弓道正覚図 ①弓→発心→修練→射格→果 ②修身→弓道(直心大和+民族自覚)→有識者育成(伝統護持 +心身鍛錬+哲理具現)→正法→正射正中(聖射)→悟道→絶 対界→活人弓 ③享楽→弓戯(唯物自我+的中至上)→機械的練習(筋肉酷使 +技巧追及+競射反復)→邪道→弄技的中 (凡射)→巧拙→差別界→殺人弓 吉田レイ監修『弓の道~正方流入門』より ★射法八節(日本弓道連盟)⇒現在弓道目的は真善美追求 ①足踏み(礼射系=一足開き、武射系=二足開き) ②胴づくり(足踏みの線・腰の線・肩の線を平行=三重十文字) ③弓構え(礼射系=正面の構え、武射系=斜面か正面の構え) ④打起し(肩上げない、矢の向きは平行か矢先やや低く) ⑤引き分け(手の内を崩さない、矢の向きに注意し左右均等引く) ⑥会(詰合・伸合・彀やごろ) ⑦離れ(強く残心まで鋭く引く、余勢で胸開く)⇒無理なく矢返り ⑧残心(精神が全活動を終わって元に戻る精神的な間) ★段・級位の資格基準 十段(記載なし)・九段(弓道の真体に達した者)・八段(技能円 熟・射品高雅・射芸の妙体得)・七段(射型・射術・体配備わり+ 射品高く練達)・六段(技術優秀にして精練の功更に顕著な者)・ 五段(射型・射術・体配共に法に適って射品現れ、精励の功特に 認められる者)・四段(三段基準+気息正しく+離れ鋭く+的中確 実の域)・三段(射型定まり+体配落着き+気息整い+射術の運 用法に従い+矢飛び直ぐ的中やや確実)・二段(射型・体配共に 整い、射術運用に気力充実、矢所乱れぬ者)・初段・一級・二級・ 6 三級・四級・五級 2.弓道の知とイノベーションに関する考察 場(エリア) 弓道の知 型(モデル) ・狩猟の場 ・縄文時代、弓は狩猟の武器 ・戦いの場 ・弥生時代、弓は戦いの武器(射法の起源) ・神事の場 ・奈良時代、弓を神事に使用 ・武家+公家の場 ・平安時代、弓術(文射・礼射+武射)=古式弓道 ・古式弓道 ・江戸時代、五射・六科の体系化→江戸幕府の洋式戦闘術採用に伴い弓 術消滅 ・学校弓道 ・明治時代、小笠原清務(小笠原流28代)最初の学校弓道(1889)開始 革新 伝承 ・ 神事への採用 ・文射・礼射+武射⇒弓術(古式弓 道) ・弓術の体系化 ・五射・六科の体系化 ・日本弓道連盟 ・射法八節の制定 ・日本弓道連盟による段位制度 ・弓道の国際展開 ・国際弓道連盟による国際競技化 【弓道の型式化】 ・江戸時代、五射・六科の体系化⇒明治時代、学校弓道開始⇒昭 和時代、日本弓道連盟、射法八節(弓道八節)の制定⇒平成時代、 国際弓道連盟による国際競技ルールの制定⇒オリンピック化? 【弓道とイノベーション】 ・文射・礼射+武射⇒弓術(古式弓 道)の成立⇒五射(射の場と型)・六 科(理論+礼法+道具+心の訓 練)の体系化⇒セルフトレーニング 【アーチェリーとの比較】 ・アーチェリーは矢を(身体から見て)弓の左に番え、弦は右手人差 し指、中指、薬指で引く「地中海式」に対し、弓道は矢を弓の右に番 え、取り掛けは右手親指根で弦を引っ掛けるようにして保持する 「蒙古式(モンゴル式)」 ・日本アーチェリーは弓道の射法八節を取り入れている ・射法八節⇒技術論+精神論⇒真 善美の追及⇒守破離=真行草⇒ 的に当てる+貫徹力(松尾牧則)= 日置流正統弓道「弓一射に過去身 +現在身+未来身の三世を引き交 わす」 【弓道の伝承】 ・神事採用→弓術→学校弓道→連盟段 位制度→国際競技化 【弓道の課題】 ・環境問題:矢羽根に使用される羽→ワ シタカなど猛禽類(ワシントン条約絶滅危 惧種)から七面鳥やガチョウの羽へ→国 際柔道連盟ワシントン条約に抵触する羽 の使用禁止措置(2012) ・昭和時代、中学正科授業で弓道が柔道・剣道と共に採用(1936)→太平 洋戦争敗戦により武道教育中止(1945)→学校弓道許可(1946) ・国際弓道連盟 ・日本弓道連盟、射法八節(弓道八節)の制定と指導(弓道教本) 弓道の知 とイノ ベーショ ンに関す る考察 【弓道の場】 ・狩猟の場+戦いの 場⇒神事の場⇒公 家+武家による伝 承=弓術(古式弓 道)⇒日本弓道連盟 による射法八節と段 位の制定⇒国際弓 道連盟による国際 競技化 ・学校弓道への展開 All Copyright©2015.Y.ONOSE ・宗教・思想問題:国際競技ルールにお ける「道場」への「神棚」設置、道場に立 入る際や競技時の「礼」などのあり方? 7
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