新たな道が開けたとビリー・コーガンが語る スマッシング・パンプキンズの新作に迫る! APOCALYPTICA | THE ANSWER | HALESTORM | CANCER BATS | NIGHTWISH ALL THAT REMAINS | ZEBRAHEAD | WE ARE HARLOT | AIR SWELL RANDY RHOADS TRIBUTE | DONOTS | INSOLENCE | ANGRY FROG REBIRTH Crossfaith | SiM | MAN WITH A MISSION | EXTREME ROCK DEAD POP FESTiVAL | SUMMER SONIC & SONICMANIA 2015 Vol.89 April - May 2015 Issue 特別両面表紙 THE SMASHING PUMPKINS THE ANSWER ♦ HALESTORM CANCER BATS ♦ NIGHTWISH ♦ ALL THAT REMAINS ♦ ZEBRAHEAD WE ARE HARLOT ♦ AIR SWELL ♦ RANDY RHOADS TRIBUTE ♦ DONOTS INSOLENCE ♦ ANGRY FROG REBIRTH ♦ Crossfaith ♦ SiM MAN WITH A MISSION ♦ EXTREME ROCK ♦ DEAD POP FESTiVAL SUMMER SONIC & SONICMANIA 2015 ¥0 ¥0 FREE! FREE! Vol.89 April - May 2015 Issue 特別両面表紙 ♦ CONTENTS GrindHouse Magazine April - May 2015 Issue グラインドハウス・マガジン Vol.89 www.grindhouse.jp Latest News APOCALYPTICA 08 ......... SUMMER SONIC & SONIC MANIA 2015 Latest Interviews 10 ......... THE ANSWER 12 ......... HALESTORM 14 ......... CANCER BATS SWELL 18 ......... NIGHTWISH 19 ......... ALL THAT REMAINS 20 ......... ZEBRAHEAD 21 ......... WE ARE HARLOT 16 ......... AIR Pick-up Artists 22 ......... ANGRY FROG REBIRTH 23 ......... EXTREME ROCK / DEAD POP FESTiVAL 24 ......... RANDY RHOADS TRIBUTE / Crossfaith 04 06 25 ......... DONOTS / INSOLENCE GrindHouse Magazine 15th Anniversary’s Special Columns 26 ......... Jean-Ken Johnny (MAN WITH A MISSION) ......... MAH (SiM ) GrindHouse Disc Reviews 28 ......... 国内盤・輸入盤レヴュー THE SMASHING PUMPKINS What is GrindHouse!? Vol. NEXT 90 June - July 2015 Issue Issue of 2000年の創刊以来、US、UK、日本を中心としたシーン最前線のロックアーティストを紹介してきた「グラインド ハウス・マガジン」。情報提供のスピードアップと、誰でも自由に無料でアクセスできる手軽さを重視し、2012年 フリーペーパー 2015年5月31日発行予定 夏にウェブマガジン&フリーペーパーとしてリニューアル! ウェブマガジンwww.grindhouse.jpには、アー ウェブマガジン www.grindhouse.jpにて随時更新 ティストのインタヴュー、ライヴレポート、ディスクレヴューなど、最新情報を随時アップ。このフリーペーパーでは、 注目アーティストのロングインタヴューとカラーグラビアを厳選してお届けします。「グラインドハウス・マガジン」 フリーペーパーは毎奇数月末の発行。次号Vol.90は2015年5月31日発行予定です! グラインドハウス・マガジン編集部 〒153-0052 東京都目黒区祐天寺1-20-8-301 有限会社 グラインドハウス TEL: 03-3794-6405 FAX: 03-3794-6406 [email protected] 発行人:有島博志/Publisher: Hiro Arishima 編集:権田アスカ/Editor: Aska Gonda スタッフ:松本美和、望月裕介 Staff: Miwa Matsumoto, Yusuke Mochizuki デザイン:一乃瀬光太郎 印刷:株式会社 八紘美術 2015年 3月31日発行 ※本誌掲載の記事、写真等の無断複写、複製、転載を固く禁じます ©GrindHouse magazine Where to Get? [ 配布場所 ] 全国のタワーレコード、ディスクユニオン、HMVの店舗ほか、アパ レルショップ、バー、ライヴやイベント会場にて、無料で配布中! フリーペーパーの設置や配布にご協力いただける店舗も、随時募集 しております。配布場所、広告、記事に関するお問い合わせやご要望 は、[email protected]までメールでお願いいたします。 どうぞお気軽にご連絡ください!! April - May 2015 03 ンスピレーションのもとになるか、いかに仕事しやすい、 すばらしい人かを聞いていたんだ。ニックにオレたちとや る時間があるのか、そもそもオレたちとやる興味があるの かも知らなかったけど、幸い一緒にやれることになった。 一番よかったのは、オレたちが今回やりたかったヴィジョ ンを、理解してもらえたこと。すべてを理解した上で、オ レたちにそれを実現させ、その方向にさらに踏み込ませて くれたんだ。1分1分が本当に楽しかったよ。 ̶正直、新作を聴いてけっこう驚きました。多くの曲に ヴォーカルが入り、しかもそれが異なるゲストではなく、 同じ人物だということ、フランキーがこれまでにゲスト参 加してきた数多のヴォーカルとは明らかに違う歌唱法、表 現法を持つこと、いわゆる“アポカリプティカ節”はブレ ていないものの、曲やサウンドアプローチに大なり小なり の新しい試みがあることです。 そういうふうに言ってもらえると、うれしいね! 3曲、と チェロでメタルを演る 唯一無二の存在アポカリプティカが、 新たな扉を開く新作を発売! ても素敵なインストゥルメンタルがある。かなり壮大なヤ ツでね。その一方、ヴォーカルがひとりになり、バンド感 が強い作品になったんじゃないかな。今回はインストゥル text by Hiro Arishima translation by Sachiko Yasue メンタルをイントロやアウトロに多用し、転換部的な形で 使っていることが多い。たとえばタイトル曲の“シャドウ 日本でもっともっと知られていいし、評価されるべき存在が、このフィン ランド出身のアポカリプティカだ。音楽学院の最高学府を卒業した、3人の チェロ奏者にドラマーを加えるという、彼らならではの布陣に、今回初めて、 パーマネント的にヴォーカリストのフランキー・ペレスを迎えた。それが 通算8枚目の新作『シャドウメイカー』だ。バンドの司令塔であるエイッカ・ トッピネンに聞いた。 メイカー”はヴォーカル入りの曲だけど、途中にインス トゥルメンタルパートが入ってくる。インストゥルメンタ ルのアポカリプティカと、バンドとしてのアポカリプティ カが、うまくつながっている作品だと思うね。1枚の作品と しての充実感も高いしね。 ̶クラシックならではの繊細さ、高揚感、美しさと、メ タル、ロック特有のダイナミズム、ヘヴィネス、アグレッ ロック、メタル作を作るということで、以前とはまた違う 験があるヤツじゃないと、というのはあったよ(笑)。フラ ションなどが巧みに編み込まれ、ブルージーでエモーショ 感覚、ヴァイブ、観点で臨めたのでは? ンキーとは今のところ10回くらいライヴを一緒にやったけど、 ナルなフランキーのヴォーカルが聴き手を惹きつけ、グイ ある意味そうだね。プレッシャーもなかったから普段はや ホントに息が合うんだ。最高の人選をしたと思っているよ。 グイ引っ張っていきますね。 らないこともできた。いつも作品にはクラシックの要素を ̶ひとりのヴォーカリストが大方の曲を歌うということ うれしい言い方をしてくれるね。とてもうれしいよ。ありが たくさん入れているけど、今回は本格的なロック作にし を意識しつつ、新作『シャドウメイカー』の曲作りをし、 とう。フランキーはこのバンドにとても合っていると思う。 た。そうなったのも、ワーグナープロジェクトの経験が 作品全体のテーマ、コンセプト、性格、流れなどを構築し いろんなスタイルを歌うことができるからね。アポカリプ あったからさ。歌入りの曲がいっぱいできたから、ヴォー ていったんですか? ティカでは、それがとても大切なことなんだ。オレたちの曲 由にさせてもらえたんだ。オレにとっては映画のスコアを カルが強い作品にしたいと思った。ただ、またゲスト うーん、そうでもないな。というのも、フランキーが入る には、いろんな影響が入っている。ヴォーカルがシャウト 書くような気分だった。映像はなかったけどさ(笑)。それに、 ヴォーカルがいっぱい出てくる作品を作るのはあまり意味 前に、曲は大体できていたから。ただ、ヴォーカルがいる しっぱなしっていうのは、アポカリプティカ的にはあまりお オレたち自身も動く竜のなかでプレイしたりとか、塔の がないと思ってね。で、「1人の男が全部のヴォーカルを担 状態でリハーサルルームに入り、実際のレコーディングの もしろいものじゃない。フランキーはポップもファンクも歌 てっぺんまで登ったりとか、いろいろやることがあった。 当するのが一番イイんじゃないか」という話になったん 前にプリプロダクションを一緒にやれたのがよかった。ゲ うことができる。実際いろんな曲を歌ってきているし。それ とにかく楽しかったよ。もちろん壮大な企画だからものス だ。一緒にツアーができるヴォーカルを探し始めたとこ ストヴォーカルを迎えていたころは、そういうのができな がチェロのサウンドに合っているんだと思う。 ̶前作『7TH SYMPHONY』 (2010年)から約4年半 ゴく労力がいったけど、携われて本当によかった。 ろ、たくさんの推薦があり、5人選んでテープオーディショ かったから。5人で一緒に作業したことで、曲に対してそれ ̶フランキーの声色がチェロに合っているっていうの ぶりとなる新作『シャドウメイカー』がもうすぐ発売されま ̶その後、新作『シャドウメイカー』の制作に取りか ンをやったんだ。 “アイム・ノット・ジーザス” (2007年 までとは違った見方が生まれたり、アレンジについての考 は、当たっていますね。 すね。 かったんですね? 発売『ワールズ・コライド』収録曲。スリップノット、ス えがまとまったりしたしね。新作を聴いてもらえれば、い だろ? チェロと声質が似ているんだ。なにかしらとても 新しい試みをしているから、発売が楽しみだよ。サウンド 実は、2012年9月に前作のツアーが終わってから、1年く トーン・サワーのコリィ・テイラーが参加)を歌っても ろんな面で洗練されたのがわかると思うよ。前作よりサウ 通じるものがある。 にも曲の出来にもとても満足している。ファンの反応が今 らいオフをとったんだ。 「よし、1年間なにもしないぞ」っ らってね。そのテープからさらに3人に絞り、今度は新曲 ンドがクリアになっている。フランキーはすばらしい ̶新作がアポカリプティカにとって新しいステージへの Interview with Eicca Toppinen から楽しみだね。 てね。オレだけその間『WAGNER RELOADED』の曲を “ホール・イン・マイ・ソウル”を歌ってもらった。フラン ミュージシャンだし、オレたちもヤツに大きな余地を与え リーチ作と言えますか? ̶2013年、ワーグナー生誕200年を記念し、クラシック 書いていたけど(笑)。で、基本的にはメンバーと会わずに キーはまったくの別格だったね。そうやって出会ったん ることができたと思う。ヤツがすべてを入れられるように 過去の作品と比べたら、レベルがまったく違うよ。みんな /ミュージカル・コンサートをやりましたね。この模様は 過ごした。それでリフレッシュできたのもあったし、ちょ だ。作品を作るときにゲストが多いと、それはそれで楽し ね(笑)。最高の結果になったと思うよ。 もそう思ってくれるか、これからが見ものだね(笑)。う 後日ライヴ盤『WAGNER RELOADED-LIVE IN LEIPZIG』 うどレコード会社との契約も切れたところだったからプ いけど、自分たちがコントロールできる範囲を超えてしまう。 ̶歌詞を書いたのはフランキーですか? ん、アポカリプティカを新しいステージに運んでいる作品 レッシャーからも解放された。いったんバンド活動から離れ、 最終的には、新作をプロデューサーのニック・ラスクリネ 曲によるけど、 “カム・バック・ダウン”はヤツが書いた。 だと思う。音楽的にも作風的にも、新しいレベルにきてい アーティストとしてリフレッシュできたのでは? オフが終わったあと、みんなでまた集まったときには音楽 クスと、アポカリプティカとフランキーだけで作ったんだ。 最初はインストゥルメンタルにする予定だったんだけど、 る。オレたちもそう自負しているよ。 普段のバンドとしてのやり方とは全然違う動き方をしたし、 の話ばかりしていたよ。なにをやったらおもしろいか、ど スタジオに6週間、文字通り缶詰になってね。おかげで好き リハーサルを繰り返すうちに、ヴォーカル向けの曲になって ̶それでいて、今までの“らしさ”もきちんとあるのが、 とてもおもしろい経験だった。曲はオレが全部ひとりで書 んなサウンドを作りたいか、アイディアがどんどん浮かん なようにできたし、望みどおりの作品に仕上がったよ。 いったんだ。それから、 “デッド・マンズ・アイズ”もヤツ またイイですね。 いたんだけど、脚本を読みながら、どんな曲を作るか考え できたんだ。そして、バンドサウンドを作りたいというこ ̶アナタたちにとって、それだけフランキーは魅力的な が書いたね。 うん。きっとインストゥルメンタルの曲も気に入ってくれ たんだ。アポカリプティカの作品を作るときとはまったく とで全員の意見が一致した。この15年くらい、いろんな 存在だったと? ̶今回、プロデューサーにニック・ラスクリネクスを起 ると思う。とてもユニークな内容で、今まで聴いたことが やり方が違った。脚本家と場面ごとに読み合わせをし、こ ヴォーカルと組んできたし、オーケストラともやってきた そう。フランキーにはストーリーを伝える力があり、そこ 用していますね。彼を起用した理由は? レコーディング ないような感じのものだからね。 の場面はこういうことが起こります、ワーグナーの人生の から、次は自分たちだけのことに専念したいと思った。ア が気に入ったんだ。とても個性的な声色、歌唱法の持ち主 はアメリカのナッシュヴィルにある彼のスタジオでやった この部分ですって、教えてもらったんだ。どういうエネル ポカリプティカの核に踏み込んでいきたかった。オレたち さ。アーティスティックだしね。それに、経験も豊富だっ そうですけど。 ギーが必要で、どのくらいの長さの場面なのか。それに はなんなのか、どんな音楽をやっていきたいのか。新作は たのがまたよかった。オーディションしたなかには、とて プロデューサーの候補はほかにもいたんだけどね。ニック フィットするよう曲を書いた。参考になるヴィジュアル素 それを体現した作品だよ。 も若いヤツらもいたけど、そういうヤツらはツアーの経験 にしたのは、彼が過去に手がけた作品を知っていたから。 材がその時点ではできあがっていなかったから、ある意味自 ̶ワーグナープロジェクトをやったことから、今回再び がなかったりする。まあ、正直言って、オレたちくらいの経 ニックと組んだほかのバンドの知り合いから、彼がいかにイ (2013年/日本盤未発売)として発売されましたけど、 04 April - May 2015 April - May 2015 05 Interview with Billy Corgan スマパンが終わりに向かう? 新作を携えて、ビリーが進む先にあるものとは? text by Yusuke Mochizuki 轟音とセンチメンタルなメロディが渦巻くサウ ンドが、今も多大な影響を与え続ける、スマパ ンことスマッシング・パンプキンズ。彼らの復 活 3 作 目『 モ ニ ュ メ ン ツ・ト ゥ・ア ン・エ レ ジー』が発売されたが、バンドの健在振りをア ピールする力作だ。しかし、バンドの…というか、 ビリー・コーガン(vo,g)のなかでは、またいろ いろとあったご様子。いったい、今度はどうした というのか。ビリー本人が語るところをお届け しよう。 ̶新作『モニュメンツ・トゥ・アン・エレジー』が発売 ルタナティヴロックと呼ばれるムーヴメントにおいて、目 入らなかった」ですらなかった。今はインターネットの時 されました。今はどんな気分ですか? の敵にされてきたバンドのひとつですよね。それもあっ 代だから、マーケティングをしなければ存在しないも同然 新作については、ちょっと複雑な気持ちなんだ。という て、この人選はかなり意外でした。 なんだ。「誰もいない森で倒れる木は音をたてない」とい のも、終わりに向かっているつもりで作っていたから いやぁ、僕は昔からモトリー・クルーのファンだったから う哲学の言葉があるけれど、そういうことさ(=誰も聴い ね。バンドの終わりというより、特定のタイプの音楽を ね。聴き始めたのは、83年だったと思う。大好きだった てくれない音楽なら、存在しないのと一緒)。無料という 作るという、自分の哲学を終わらせようとしていたん ね。ユニークで特別なバンドだってずっと思っていた。で のは不思議なものだよ。無料だったら、あとでなにかまず だ。ただ、今はまた道が開けたような気もしている。僕 も僕に言わせれば、おかしな話だよ。自分がなにを好きに いことになるに違いないって思われてしまうんだ。それで はスマッシング・パンプキンズを解散させてから、ほか なって、なにを好きになっちゃいけないのかなんて、なん レコードビジネスに戻って、また通常の形でリリースする のバンドを結成しても、ソロ活動をやっても、どこに で他人に言われなきゃならないのかって思う。ダイナソー ようになった。マーケティングをして、人々に音を聴いて 行っても、スマッシング・パンプキンズのことばかり言 Jr.とアクセプトの両方が好きでも、別にいいじゃないか。 もらうためにね。アメリカでは“ワン・アンド・オール われてきた。卒業すらさせてもらえないんじゃないかと トミーとは、92年頃に知り合った。会ったり話したりする (ウィー・アー)”と“ビーイング・ベージュ”をシング 思うくらいにね。だから再結成は、このバンドを自分ら ような友人なんだ。今回も不意に電話して、「キミがプレ ルで出したけど、あまり興味を持たれなかった。逆にヨー しいやり方で抹殺するためにしたようなものだった。で イしてくれると、うまくハマりそうな曲を作ったんだけ ロッパでは“ビーイング・ベージュ”は進歩的ということ も今になって突然、また自分の音楽が新鮮に感じられる ど、聴いてみない?」と言ったんだ。かなりクレイジーな で評価された。アメリカはこのバンドが後退することを望 ようになったし、アルバムの反応もすこぶるいい。心変 話だと思ったみたいだけど、デモを聴かせたら、すぐに理 んでいて、ヨーロッパは進歩することを望んでいる。アメ わりするのも難しくなってきたよ。 解してくれた。「とても気に入った。本当に素晴らしいア リカの一般大衆的には、ぼくたちはロックバンドというこ ̶現在、バンドの公式写真にはあなたひとりしか写って ルバムじゃないか。全曲でプレイしたいよ」と言ってくれ とになっている。ただのロックバンドだったことは一度も いません。ジェフ・シュローダー(g)もメンバーとして名 たよ。初めは、激しい曲だけやってくれるのかなと思って なかったのに。だからうるさいギターがなかったら、「ス を連ねているにも関わらず、です。バンド、そしてあなた いたけど、全曲プレイしてもらえることになった。今の僕 マッシング・パンプキンズらしくない」と言われるんだ。 に、なにがあったんでしょうか? は、映画監督みたいな感じなんだ。自分がやりたいプロ 不思議だよね。 問題というのは、ドラマがつきものだ。僕も精神科医に見 ジェクトを決めて、それに最適な人を探す。ツアーにも素 僕には挑戦が必要だね。心理的な部分でも。今、僕が てもらわないといけない問題を抱えているのに近いよ。で 晴らしいミュージシャンたちを起用している。マーク・ス 作っている音楽は、挑戦とは言えないんだ。むしろ新し も誰に対しても僕が言えるのは…このスマッシング・パン トーマー(ザ・キラーズ/b)とブラッド・ウィルク(レイ いメッセージ、喜び、または、なじみのある形の興奮を プキンズというバンドは僕が始めたバンドだし、僕の音楽 ジ・アゲインスト・ザ・マシーン)だ。ふたりとも、素晴 見つけ出すような作業だね。僕にとっては、スマッシン そのものだということ。音楽がある限り、ほかになにが起 らしい経歴と、素晴らしいバンドでプレイした実績があ グ・パンプキンズの音楽というのは、もはや斬新な体験 こっても構わないんだ。アルバムを作るために波乱万丈 る。その熱狂と興奮をもたらしてくれているんだ。今まで というよりとても親しみのあるものなんだ。進化的では あっても、それでいい。むしろそれが必要なんだ。 とはまったく違ったライヴになっているよ。 ないと思う。進化は音楽の他のところで起こっているよ ̶たしかに、スマッシング・パンプキンズというバンド ̶今年、もう1枚『DAY FOR NIGHT』というアルバム うな気がするね。すべてはもうやり尽くされている。 はビリーありきという側面はあると思います。でもひとり をリリース予定だそうですね。 ビートルズ、レッド・ツェッペリン、ニュー・オー で曲を作って、歌って、先頭に立って、イメージを作って 以前も『メロンコリーそして終りのない悲しみ』(95年) ダー、ザ・キュアーなんかが、すでにいろんなことを …というのは、すべての責任をひとりで負うことになりま で、2枚組のアルバムを出したことがあるけど、今の世の中 やってきた。それなのに、僕たちにはなにができるの すよね。ただでさえ、昔のメンバーの復活を望む声もある では2枚組を出しても、相当いいレヴューをされない限り か。すべてを受け入れて、いっしょくたにして、こね わけですし。 は、リスナーの興味は別のものに取られてしまうからね。 て、壊して、新しいエネルギーを作るというのが僕たち ステージに立って、こう言われる日がいつかは来るんだ。 制作のために費やした2年間の努力が、一瞬で水の泡になっ の考えだった。それは、しばらくはうまくいった。その 「どうしてもっと『ギッシュ』(91年)みたいな曲をやら てしまう。それなら、アルバムを2枚に分けてリリースした 間は、作った音楽を人に気に入ってもらえていた。いろ ないんだ?」ってね。それだったら92年とか94年とか、 方がいいと思ったんだ。でも、その分けるプロセスのなか んなものをつぶして、壊して、壊しまくって…最後には そのあたりのツアーを観ればよかったんだよ。今の僕に、 で、2枚目が予想以上に変わっていったね。分けてリリース 自分たちのことも壊してしまった。でも誰のための音楽 なにをしてほしいんだ? 当時のアルバムは当時プレイし することにした影響も受けているんだと思う。それぞれ独 も、ましてや老人のための音楽、ヒップスターのための た。でも今のアルバムは、過去にはプレイできない。そも 立した、2枚の別のアルバムみたいな感じだけど、繋がって 音楽なんて作るつもりは一切なかった。自分たちの音楽 そも昔のメンバーとは、連絡を取っていないんだ。それで もいる。説明するのが難しいんだ。もし2枚一緒に作ってリ を作ることがいつでも目的だったんだ。とはいえ、今で いいと思っている。ただひとり、ジミー(・チェンバレン リースすることにしていたら、『DAY FOR NIGHT』はよ も昔と同じくらいたくさんの曲を書いているよ。リリー /ds)には先日会ったよ。新作を聴いて、大いに支持して り『モニュメンツ・トゥ・アン・エレジー』に直結したも スしないだけだ。新作でも、80曲分くらいのデモを作っ くれた。アルバムについて、ツイートまでしてくれたん のになっていただろうね。 たんだ。それをここまで煮詰めた。僕は向こう見ずに だ。とてもうれしかったね。いい関係だなと思う。今、彼 ̶前作『オセアニア∼海洋の彼方』 (2012年)と新作、 なって、その瞬間を生きるのが好きなんだ。僕の最高傑 はジャズをやっているんだ。ジャズの方が、やっていて楽 そして『DAY FOR NIGHT』も、あなたが2009年にスター 作のなかには、おもむろにギターを手にとって、10分く しいらしい。一瞬一瞬がものを言う音楽だからね。以前か トさせた『TEAGARDEN BY KALEIDYSCOPE』とい らいで作ったものもある。まぁ、ソングライターとして ら何度も言っているけど、僕は昔の曲だけをやることに うアルバムプロジェクトの一部だそうですね。前作のイン はもう少ししっかりしないといけないと思うけどね。曲 は、興味がないんだ。とても退屈なことだと思うから。僕 タヴューで「これは毎月1曲、無料で配信リリースするとい がある程度できあがったら、いったん引いて、もっとい はぜんまい仕掛けのサルにはなりたくない。もしかした うものだけど、やはりアーティストとして、ここぞという いものにできるのか、違うアプローチはあるのかを考え ら、最終的には「ぜんまい仕掛けのサルしか観たくな タイミングでアルバムを出したいから、この形態を取って るんだ。そうした曲は確かにもっとよくなったから、い い」って言われるかもしれない。そうなったらずっと家に 06 April - May 2015 いる」とのことでしたが…。 いやり方なんだろうね。 いるよ。それでいいんだ。僕はステージで大声を上げるよ 『TEAGARDEN BY KALEIDYSCOPE』は、新しい、若 うなやつにはならない。そういう日々はもう終わったん い世代のオーディエンスを、従来とは違った形で探し出す 僕自身も意味は分からないんだ(笑)。あまり信じてもらえ だ。リスナーのみんながなにを望んでいるかは、いつも伝 のが目的だったんだ。シンプルな話だよ。レコードビジネ ないけど、本当にそうなんだ。僕が思いつくアルバムのタイ わってくる。新しい音楽を聴きたくなったら、そうだと分 スからは手を引いて、自腹で曲を作って、無料でリリース からせてくれるんだ。とてもシンプルなことだよ。それを する。新しい曲を聴いてくれる新しいリスナーを作ろうと ̶新作のタイトルの意味は? トル、たとえば『メロンコリーそして終わりのない悲しみ』 『サイアミーズ・ドリーム』 『マシーナ/ザ・マシーンズ・オ 無理やり実現させるつもりはないよ。 した。メディアによる宣伝に頼ることなく、ね。新しい ブ・ゴッド』などは全部、どこからともなく思いついたも ̶加えて驚いたのが、新作でドラムをプレイしているの オーディエンス層を築けたら、新しいチャンスを手にでき のを書きとめただけだし。いいタイトルなのか、悪いタイ が、モトリー・クルーのトミー・リーだということです。 るだろうと思った。そして無料で曲を配信したんだ。で トルなのかなんて全然考えない。タイトルはタイトルでし モトリー・クルーはあなたの世代…いわゆるグランジやオ も、ほとんど誰も聴かなかった。「聴いてみたけど、気に かないからね。 April - May 2015 07 IMAGINE DRAGONS THE CHEMICAL BROTHERS Latest stN News text by Yusuke Mochizuki / (C) SUMMER SONIC All Rights Reserved. PHARRELL WILLIAMS THE PRODIGY 回を重ねるごとに ジャンルの幅を広げる サマソニに向け、 今から予習スタート MANIC STREET PREACHERS MARILYN MANSON !! MEW ALL TIME LOW MARMOZETS ほかにもヒップホップ・シーンから ギターに、英国的な湿り気を帯びつ ディ・ミュージック(EDMにあらず) マックルモア&ライアン・ルイス、ポッ つ、エモーショナルかつぶっきらぼう を出自とするそのサウンドが、多数の プ畑からアリアナ・グランデやニコ& なヴォーカルは、グランジ/オルタナ エレクトロ系のアーティストたちをね ヴィンス、オリー・マーズ、14年ぶり ティヴロックはもちろん、現代のエモ じ伏せていく姿が目に浮かぶようだ。 の新作『ブラック・メサイア』を引っ提 バンドにも地続きのサウンドだ。しか 毎回おなじみのショッキングなステー げての来日となるディアンジェロ等を並 も今回は、1994年にリリースされた ジセットやヴィジュアルにも注目した べてみると、今年は例年以上にダンスや 彼らの代表作のひとつ『ホーリー・バ い。このタイミングでトラウマを植え ヒップホップ/ブラック・ミュージッ イブル』の完全再現ライヴを行うとの つけられる人もいるかも…? ク、それにポップス系のアクトが多い印 こと。これをバンドへの入り口とする そして、ヘッドライナーとして登場 象だ。こうした流れを受け、「今年はバ のもありだ。 するのが、ザ・プロディジーだ。なん ンドが少ないのか…」と思う人もいるか そして個人的に楽しみなのが、 と6年ぶりとなる新作『ザ・デイ・イ もしれない。だが、ご安心を。夏フェス ミュー。なぜ彼らが「デンマークの至 ズ・マイ・エネミー』が、ちょうど4 にピッタリなパンクバンド代表として、 宝」などという、言葉だけだと大仰に 月にリリースされるところ。発売に先 オール・タイム・ロウ、マーモゼッツが も感じられるキャッチフレーズととも 立って公開されているPVを観る限り、 登場することになっている。特にオー に紹介されるのか。それは必殺曲“ア 元々の出自であるレイヴ/クラブ・ ル・タイム・ロウはポップなメロディの ム・アイ・ライ? ノー”を聴けばわ シーンはもちろん、パンク/ハードコ 親しみやすさはもちろん、ライヴバンド かるだろう。光り輝くようなメロディ ア、ヘヴィロック、メタル系のリス としても定評のあるバンドだ。ただでさ と破壊的かつダイナミックなサウン ナー層をも巻き込むサウンドは健在。 え暑い体感気温を、さらに高めてくれる ド、そしてヨーナス(vo,g)の透明な まさに絶好のタイミングでの来日だ。 はず。 歌声が織りなす美しい世界観には、一 日本でのライヴも2009年のWarrior's 夏の一大イベントのひとつとして、も ためてここ数年を振り返ってみると、 りー・ぱみゅぱみゅ、はては華原朋美 ある。サマソニへの久々の出演がソロ ほかにも、UKロック界の重鎮であ 瞬で飲み込まれるしかない。シューゲ Dance Fest以来ということもあって、 は昨年や一昨年のような豪雪に見舞わ はや欠かせないものになったと断言で サマソニはかなり様相が変わってきた にTOKIOまでが出演する一方、アヴェ なうえに、今回はヘッドライナーだ。 るマニック・ストリート・プリー イザーやポストロックの流れを組んだ 本人たちの気合いも相当なものに違い れることこそなかったものの、地域に きる歴史の長さとなった。初回から皆 と思う。もちろんいい意味で、だ。と ンジド・セヴンフォールドやメガデ 申しわけないことに、個人的に彼がス チャーズ、デンマークの至宝と称され 清冽さだけでなく、プログレ等も飲み ない。クルーウェラやボーイズ・ノイ よってはかなりの雪害をうけたところ 勤賞という人もいるだろう。僕自身も いうのも、回を重ねるごとにロック系 ス、ゴースト、スイサイダル・テンデ テージに立った姿を見たことがないの るミュー、まだまだ新人ながらすでに 込むことで、どんどん複雑化、巨大化 ズといったダンス系アクトにマリリ もあったかと思う。雪の問題を別にし ここ数年は毎回足を運んでいるが、初 以外のアーティストも多数出演するよ ンシーズ等、メタル/ラウド系も充 でどうにも想像がつかないが、例年の 話題沸騰中のイマジン・ドラゴンズら していく彼らは、4月には新作『プラ ン・マンソンが並ぶソニックマニアを ても、なんだか年々冬の寒さが増して めて行った2005年が、もはや懐かし うになり、客層にも普段はライヴハウ 実。ほかにも、ロバート・プラント・ ロック系アクトとはまったく違う存在 が名を連ねており、ロックファンを置 ス・マイナス』のリリースも控えてい 調停するのは、まさにザ・プロディ いるようにも感じるのは気のせいだろ く感じられる。あの年はナイン・インチ・ ス等で見かけないような人が増えたの アンド・ザ・センセーショナル・ス 感をアピールすることだろう。そし いてきぼりにすることはない。また、 る。このタイミングでのライヴ、今か ジーだ。ただ、金曜日の深夜開催で、 うか…。というか、この原稿を書いて ネイルズ、スリップノット、ディー だ。2007年にはブラック・アイド・ ペース・シフターズやピクシーズと て、ケミカル・ブラザーズも、ジャン ロックとダンス・ミュージックをクロ ら待ちきれない。 明けた土日にはサマソニ本編というこ いる3月初頭の時点でも、多少、最高 プ・パープルにTHE MAD CAPSULE ピーズが、2009年にはビヨンセが、 いった大御所も名を連ね、メインアク ルを越えて愛されるアーティスト。 スオーヴァーさせたモードステップ ここまで、今年のサマソニはロック ともあり、体力のペース配分には充分 気温が上がってきたとはいえ、まだま MARKETSと超絶ヘヴィな初日、オア 2010年にはジェイZとスティー トとしてアークティック・モンキーズ ザ・プロディジーやアンダーワールド が、昨年に引き続き両極端な出演陣の バンドを盛り込みつつも、さまざまな に注意してほしい。 だ寒い。せめて今号が発行されるころ シスにウィーザー、カサビアンと初め ヴィー・ワンダーがヘッドライナーと にクイーン+アダム・ランバートが登 と並ぶ、テクノ∼ビッグ・ビートの代 間で奮闘してくれそうだ。ちなみにこ 方面からのアクトが取りそろえられて ざっくりとながら、今年のサマソニ には、もう少し過ごしやすくなってい て体験するアーティストばかりだった して出演したのも、記憶に新しい。ス 場し、メインステージのラストをビ 名詞のひとつ…という枕詞も、もはや のモードステップには、昨年フューネ いることはおわかりいただけたかと思 への出演がわかっているアーティスト てほしいところだ…などと、過ぎてい 二日目と、より音楽に深くのめり込ん テージも大自然に囲まれたガーデン・ シっと締めてみせた。ステージごとの 不要だろう。しかしながら、サマソニ ラル・フォー・ア・フレンドを脱退し うが、同時に「もっとヘヴィなバンド のなかから、いくつかをピックアップ く冬の寒さを嘆いてみたものの、時期 でいくきっかけを与えてくれたものだ ステージが定着し、楽しみ方も拡大し カラーもハッキリと分かれ、雑食性が には初登場にして、いきなりヘッドラ たパット・ランディ(ds)が在籍して はいないのか」という血気盛んな人も した。もちろん、まだまだ多数のアー としてはもう春だし、世間の目も次の …と、ついついノスタルジックになっ た印象だ。もともと都市型ロック・ 強まっていくなかでも、全体としては イン。野外のメインステージをクラブ いるので、ぜひ彼の雄姿を見てほしい いることだろう。であれば、前日の14 ティストが控えているし、開催そのも シーズンへと向かっている。今号が出 たりも。複数のステージに観たいバン フェスティバルとして始まり、利便性 ロック色が強かったように思う。 化させるアクトに期待したい。本誌を と思う。 日(金)の深夜に幕張メッセで開催さ のも4ヵ月以上先のこと。あっと驚く る直前、パンクスプリングが開催され ドがまたがっているせいで、どれかを が強みのひとつだったサマソニだが、 さて、8月15日(土) 、16日(日)に 読んでいる人にとって、こういった これらロック系のアクトのなかでも れるソニックマニアに足を運ぶといい。 ようなアクトや仕掛けが隠されていた たところだし、すでに夏フェスも出演 泣く泣くあきらめるという経験をした すでにロックという枠も、都市型とい 開催される今年はというと、まずヘッ アーティストたちはなじみがないかも 注目なのは、マニック・ストリート・ 「ダンス系のカラーが強いんでしょ?」 りするかも…? 今後も目を離さずに 陣の発表が始まっており、あちこちで のも、このときだった。今も過去の出 うイメージも脱却。日帰りが可能な都 ドライナーとして迎えられたのは、 しれないが、だからこそ、一度観てみ プリーチャーズ。結成29年というキャ という意見が聞こえてきそうだが、ま いてほしい。チケットはすでに先行予 話題が飛び交っている。今から準備を 演ライナップを見て「このライヴは最 市型の魅力はそのままに、より多様性 ファレル・ウィリアムスにケミカル・ るのもいいと思う。普段触れることが リアを誇る彼ら、ニューウェイヴ的な ずはライナップの確認を。なんといっ 約が始まっており、一般発売は5月30 始めておかなければ! ということ 高だった。こっちのステージはあきら のある充実したフェスとなったのだ。 ブラザーズ。ファレル・ウィリアムス なかなかないからこそ、新鮮な驚きが アプローチの作品もあることから、 ても今年の目玉は、マリリン・マンソ 日を予定している。こちらも忘れずに で、今年は例年よりも早くサマソニへ めたんだよな。あのときは知らなかっ ヘッドライナーを含め、今年の方向 は自身のソロ活動はもちろん、プロ あるはずだし、なによりヘッドライ UKロックと目されることが多いが、 ンだ。久々にストレートなヘヴィロッ いてほしい。 の予習をしておこうと思う。 たせいで、このバンドは見逃した」 性はどうか。すでに予想を立てている デュースワークでも活躍するヒップ ナーを飾るだけあって、ジャンルも時 もともとはザ・クラッシュの流れを組 クに回帰した新作『ザ・ペイル・エン 考えてみれば、サマソニことサマーソ 等、思いをはせることもしばしば。 人も多いはず。昨年はクラフトワーク ホップ∼R&Bの大物だ。サマソニには 代も超えて支持されているだけの実力 んだ、バリバリのパンクロックバン ペラー』も好調なマンソン様。インダ ニックも、今年で16回目の開催となる。 個人的な思い出話はともかく、あら からドリカム、BABY METAL、きゃ 2004年にもN.E.R.Dとして出演経験が を見せつけるに違いないのだから。 ド。ジャリっとノイジーでシャープな ストリアルおよびエレクトロ・ボ 08 いやいや、この冬は寒かった。東京 April - May 2015 April - May 2015 09 ボーナストラックやボーナ スCDを含めて全21曲。全編 にわたって普遍的なロック ダイナミズムが、愛する音楽 THE ANSWER オーセンティックなロックに対し 自然体で向かう姿勢が 刻み付けられた ジ・アンサーの5作目! text by Tsunetoshi Kodama translation by Mariko Kawahara & Keisuke Hiratsuka に対する思いと、今を生きる ̶“ラスト・デイズ・オブ・サマー”は濃密なグルーヴが印象的で、ライヴでプレイ の状況となるきっかけの作品だった(彼らはアルバム制作前、さまざまなことを自分た することでさらに長尺なものへと発展していきそうだよね。そもそもからしてインプロ ちで判断できるように新たなマネージメント、レーベルと契約)。いろいろ面倒くさいこ 的な要素があるし、ポールなんかはスイッチが入ったらかなり弾き倒しそう。 ともあったけど、それを乗り越えて気分一新。そこにはどんな場合でも俺たちを支持し ハハハ、とっくにそうなっているよ。アルバムでは4分半ぐらいに収められているけど、 てくれるファンの肯定的な反応があったし、俺たちもそんな声に応えたいという気持ち ライヴのリハではすでに10分を超えているからね。こういったインプロ的な要素を持っ があった。まあ、俺たちがやっているのは、週5日、9時から5時まで働いて納期に合わ た曲は毎晩のショウでまったく違ってくるし、そのうちポール以外はステージをはけ せてアルバムを作るって仕事じゃないからね(笑)。そういった意味では、今回はどデカ ちゃうなんてことがあるかもしれない。ライヴでやるのが楽しみな曲だよ。 いノイズを出して、とにかく楽しもうといったスタジオワークだった。4人の音の交わり ̶そんな中、 “ストレンジ・カインド・ア・ナッシング”はフォーキーな要素を持った が楽曲をどこに連れていってくれるのか、心を弾ませながらね。1stアルバム(2006年 佳曲で、コーマックのセンシティヴで人間臭い歌が心に響く。ループするギターのフ の『ライズ』 )をレコーディングしたときの感覚を取り戻したかのようだったよ。俺たち レーズも、曲をより印象的なものにしているよね。 はフルタイムのミュージシャンになれたことをうれしく思っているし、今なおグッドタ これはケルトの民族音楽からの影響を取り入れた曲。高揚感を促すロックンロールが続 イム・ロックンロールを愛し、そうした音楽を作る喜びを感じているんだ。レコーディ くちょうど真ん中ぐらいに、息抜きのできる曲があればなって入れたんだ。 ング中はスタジオでもそれ以外でも気分が高揚していて、パーティがずっと続いている ̶“ウィップラッシュ”はメロディアスでキャッチーさも持ち合わせているから、自分 みたいだった。そういった雰囲気は今回のアルバムにしっかりと刻み付けられている気 だったらシングル候補に推したいところだけど、どう? がする。そう、誰のためでもなく、自分たちが楽しむために作ったアルバムなんだ。 ああ、それはいい考えかも。ギターリフがリズミックなのは、ジェームス(・ヒート ̶確かに、和やかさの中にも熱気を帯びたレコーディング風景が目に浮かぶようなア レー/ds)が持ってきた曲だからなんだ。ライヴで演奏するのも楽しいし、メンバー全 ルバムだよね。各人のエモーションが協調とせめぎ合いを繰り返すとともに、バンドと 員がとても気に入っている曲さ。 してスケールの大きなロックダイナミズムを生み出す瞬間が生々しく刻み付けられてい ̶逆にiTunes等では“アイ・アム・ホワット・アイ・アム”が先行配信となっている るというか。ちなみに、いつごろ新作の制作をしていたんだろう。 けど、それってこの曲がイントロダクションとしてアルバムの世界観を伝えるのに最も うーん、ちゃんと制作に入ったのは、去年の6月の終わりから7月頭にかけてかな。その 適していると考えたから? 後はフェスシーズンに入って、週末はライヴをやって平日は曲を書くという日々が続 そうだね。ダイレクトなメッセージ性もあるし、新作の良い部分を切り取ったのがこの き、夏の終わりには7割ぐらいの曲が書き上がっていたよ。それでレコーディングに踏み 曲なんじゃないかな。これは一番始めに作った曲で、そもそものリフは前作のツアー中 切ったんだけど、それでも残りの曲はまだ完成と言える状態じゃなかった。とはいえ、 に携帯で録音しておいたんだ。俺たちにしては音と音の隙間がある曲だから、みんなが 俺たちはその場でのマジックや瞬間のひらめきを信じるほうなんだ(笑)。だからわざと 気分のまま自由に絡み合っている曲だって思うよ。 残したってところもあって、結果として良いものができたと思っているよ。 ̶そして本編最後を締めくくるのが、タイトル曲の“レイズ・ア・リトル・ヘル”。 ̶そんなアルバムのオープニングは、ファンキーなベースから始まる“ロング・リ 表題曲がラストというのも珍しいよね。 ヴ・ザ・レネゲイズ”。ギターリフが胸を激しくかき鳴らし、コーマックの歌声も歌い出 ストーナーロック調で、ダーティなグルーヴに合わせて頭を振って体を揺らすことので しから心をかき乱すようにエモーショナル。たかがだけど、されどなロックの含蓄を感 きる曲なんじゃないかな。アルバムタイトルは最初、 『LITTLE HELL』にしようと考えて じさせるとともに、ジ・アンサーのポジティヴなヴァイブを強く印象付ける曲になって いたんだけど、冒頭でも話したように楽しみながらできあがった作品だし、さすがにそ いるよね。 れはないなってことになったんだ。 確かに、メンバー全員が目一杯まで自己表現している曲だと思う。最初からベースとド ̶歌詞についても教えてもらえる? ラムがガツンときて、アンセム的なサビもある。俺たちは常に、曲にこういったシンガ OK!“ストレンジ・カインド・ア・ナッシング”は、途方に暮れた男の曲。結局、自分 ロングで心に訴えかけるサビを盛り込むことを心がけているんだ。曲の中にいろいろな 自身は誰でもなく、あくまでも自分なんだってことを歌っているんだ。 “ラスト・デイ 要素が混じり合ってもいるし、俺たちらしい曲だって気がする。歌詞は10年前に死んだ ズ・オブ・サマー”は季節の変わり目にたとえ、なにかを失い、また新たな始まりの予 俺の父親のことを歌っていて、あらかじめ言っておくと、みんなに「こんな父親がいて 感がするといった心情が綴られている。これらの歌詞はすべて自らの経験から生まれた 可哀想」なんて思ってほしいから書いたわけじゃないよ(笑)。逆に、彼がいたから今の もので、心から湧き上がってきた感情以外のなにものでもない。俺はなにかメッセージ 自分がいると肯定的な気持ちを表したかったんだ。 を発信するより、誰にでも起こる身近なことを歌って、リスナーや観客と心で繋がりた ̶“ジ・アザー・サイド”は、威風堂々といったイメージ。北アイルランドの風景が いんだ。 エモーションを伴って胸を ̶明日から『レイズ・ア・リトル・ヘル』を引っさげたツアーが始まるけど(取材は 目に浮かぶような感覚もあり、ライヴではアンセム的なサビのメロディをオーディエン ̶加えて、ボーナスCDも本編に勝るとも劣らない充実の内容。特に“ジ・アザー・サ 焦がす。ジ・アンサーの5th ツアー初日にあたる3月6日の北アイルランド、ベルファスト公演の直前に行われた)、 スが合唱するシーンが想像される。また、間奏とかのアイルランドっぽいアコギのフ イド”“ゴーン・トゥ・ロング”“ストレンジ・カインド・ア・ナッシング”のアコー アルバム 『レイズ・ア・リトル・ バンドの調子はどう? アルバムの曲はどれもライヴ映えしそうだし、新作に対する自 レーズもアクセントになっているよね。 スティックおよびアンプラグド・ヴァージョンは、本編収録のテイクとの比較で楽曲そ ヘル』。既発シングル等に関 信ありげなコメントも雑誌やウェブから散見できるから、オーディエンスがどんなリア そうだね。ポール(・メイハン)はいつも1曲に6∼7本のギターを使ってちょっとずつ のものの良さに焦点を当てたかったってことなのかな。 わってきたギレルモ“ウィル” クションを示すか楽しみだね。 違ったフレーズを考えてくるんだ。その違いをリスナーが聴いてくれるのも、俺たちに まあ、ボーナスCDは、あくまでもアルバムに入りきらなかった曲を集めたものに過ぎな マヤをプロデューサーに迎え、 そうなんだ。2週間前からリハを始めて、バンドの調子はとてもいいよ。メンバーも充実 とっては重要なポイントなんだ。 いよ。俺たちはどんな形でも書いた曲をお蔵入りにすることはしないんだ。シングルの スペインにある彼のスタジオ した気持ちでいるしね。きみも言うように、俺たちが自信を持ってリリースするニュー ̶続く“アリストクラート”はメンバーの家に行ってレコード棚を垣間見るような印 カップリングだったり、アルバムのボーナストラックに収録したりしてね。アコース アルバムだから、みんなの前でプレイできることにワクワクしているんだ。 象がある。たとえばレッド・ツェッペリンやフリーなんかのレコードを持っていないと ティック・ヴァージョンについては、楽曲自体の骨組み、それにいちばん近い状態に触 ̶これまでのリリースペースを見ると、約2年で1枚というのがジ・アンサーの間隔 言ったら、 「それは嘘でしょ?」みたいな。 れてほしいと思ったからなんだ。 だった気がするけど、今回は前作から約1年半といつもより少し短い。それっていうのは、 そうかもしれない(笑)。俺は14歳のころ、パール・ジャムやスマッシング・パンプキン ̶最後に、前作での来日は叶わなかったけど、新作はどうだろう? 前作のツアーを終えた直後から早く次のアルバムを制作したいと、いつも以上に制作意 ズ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンなんかを聴いて、 「このルーツは一体なんなん もちろん今回は行きたいと思っている。忘れられたくないし、それ以上に大好きな国の 欲が高まっていたってことなのかな? 前作でインタヴューしたときは、 『ニュー・ホラ だ?」と考えた。それで音楽を遡っていくうちに、レッド・ツェッペリン、さらにはブ ひとつだからね。いつもサポートしてくれる日本のファンのみんな、ありがとう! 新 イズン』というタイトルどおりブランニューな気持ちに満ち溢れた言葉が印象的だった。 ルースに行き着いた。聴いてきたバンドの音が色濃く出てしまうのは怖いことだけど、 しいアルバムもぜひ聴いてほしい。俺たちも日本に行けること、そしてみんなに会える そしてその思いがツアー終了までずっと続いていたとか。それともアルバムとしてあま やっぱり影響はどうしても表れてしまうんだろうね。とはいえ、自分たちのフィルター ことを楽しみにしているから! り作り込まず、楽曲に対するフレッシュな感覚をダイレクトに刻み付けることを意図し を通してジ・アンサーなりの音に昇華することで、影響を受けたバンドに対して敬意を たからこそリリースが早まったってことなのかな。 示すことにもなるんじゃないかって思うよ。 で録音。電話取材したコー マック・ニーソン(vo)の口 ぶりからも、快心作である ことがうかがえる。 10 その両方なんじゃないかな。それこそ『ニュー・ホライズン』は、俺たちにとって今日 April - May 2015 April - May 2015 11 そして、3年ぶりにリリースする3rdアルバム『イントゥ・ザ・ワイルド・ライ フ』でさらなる飛躍を目指した彼らがまずやったことが、プロデューサーを前2作の ハワード・ベンソンからジェイ・ジョイスに変えることだった。もちろん、ベンソン に不満があったわけではないと思うが、リジーいわく「未知の領域へ足を踏み出すに は」、これまでと違うアイディアやディレクションの持ち主とレコーディングする必 要があったということだろう。 ジェイ・ジョイスと聞いてピンと来る人はそんなに多くないかもしれない。前述し たエリック・チャーチをはじめ、カントリーを含むいわゆるルーツ系のアーティスト を手がけることが多いジョイスは時折、ケイジ・ジ・エレファントやスリーパー・ エージェントといったちょっとクセのあるロックバンドをプロデュースすることもあ るのだが、その2組に関してはデビュー前から力を貸して、バンドの成長に大いに貢 献してきた。どうやらバンドにその気があるなら、とことんつきあうタイプのプロ デューサーのようだ。 そこを見込んだのか。今回、ヘイルストームはニューアルバム『イントゥ・ザ・ワ イルド・ライフ』を作るにあたって、ジョイスとともにスタジオでライヴ・レコー ディングに挑戦している。 メタル界で最もセクシーな女性シンガーを擁するヘイルストームが 新作をリリース! 「文字通り、私たち4人が教会の中で輪になって、まるでステージでパフォーマンスし text by Tomoo Yamaguchi / photography by Jake Giles Netter ているようにすべてを一緒に演奏したの。4人全員が同じ波に乗れるまで、何度も何 度もプレイしなくちゃいけなかった。ライヴ・アルバムを作るのではなく、コンサー HALESTORM めたかったのよ」 じゃあ、ライヴのようなストレートかつエネルギッシュな作品なのかと言うと、決 してそうではない。もちろん、これまでどおり80年代のハードロック/メタルを基 調としてはいるものの、明らかに前2作と違う雰囲気の曲も含まれている。 2度のラウドパーク出演で、日本で にアクティヴ・ロック・チャートでナンバー1を記録。これは女性シンガーを擁する バムタイトルからも明らかだが、それについて言及する前に、ヘイルストームのこれ たとえば、ブラック・サバスを連想させる、おどろおどろしさが加わった“シッ ファン層を広げているヘイルストーム ロックバンドとしては初めての快挙だったそうだが、“ラヴ・バイツ”はさらにグラ までの歩みを振り返っておきたい。 ク・インディヴィジュアル”。たとえば、ポップとハードな魅力の差を1曲の中で大 だが、本国アメリカではすでにハード ミー賞ベスト・パフォーマンスのハードロック・ヘヴィ・メタル部門も受賞した。 バンドのスタートは1997年。当時13歳だったリジーと3歳年下の弟、アージェイ 胆に聴かせる“エイメン”。たとえば、浮遊感あふれるサウンドが印象的なスローナ バンドの看板シンガー、リジー・ヘイルは「前作で、考えられないような数々のマ (ds)がタレント・コンテストに出演するために結成したことがそもそもの始まり ンバーの“バッド・ガールズ・ワールド”。そういう新しい要素を自然な形で取り入 ない注目を集めているようだ。 イルストーンを打ち立ててきたわ」と振り返るが(以下、発言はすべてリジー)、踊 だった。ヘイル家は音楽一家だったようで、リジーとアージェイはそれぞれにギター れるには、前提としてそこにライヴのケミストリーとエネルギーが必要だったという きっかけは、2012年にリリースし るヴァイオリニストとして知られるリンゼイ・スターリングの“シャッター・ミー” とドラムを演奏し始める前、5歳のころからピアノを習っていたという。タレント・ ことかもしれない。だからこそ、シンセサイザーやパーカッションを使ったアレンジ た2ndアルバム『ザ・ストレンジ・ケ に、リジーがフィーチャリング・ヴォーカリストとして参加したことや、ロッキンか コンテストで3位に入賞したことで、バンド活動に本気になった2人は、地元ペンシル やアンビエントな音作りというギミックも、不自然にならずに曲に深みを加えている イス』収録のバラードナンバー“ヒ つワイルドな魅力を持つ全米ナンバー1カントリー・シンガー、エリック・チャーチ バニアのローカル・シーンで精力的にライヴを行い、99年、 『Don't Mess With The のだろう。 2010年、 2012年に日本最大 アーズ・トゥ・アス”がアメリカの人気 と共演したことで、ヘイルストームはさらに幅広いリスナーに自分たちをアピールし Time Man』というEPを自主リリース。その後、2003年にジョー・ホッテンジャー それを求めてジェイ・ジョイスを起用したのか、それともジョイスのアイディア 級のメタル・フェスティバル、 テレビドラマ『glee/グリー』でカヴァー ていった。 (g)、翌2004年にベーシストとしてバンドをサポートしていた父に代わって、ジョ だったのか。いずれにせよ、新たな領域に足を踏み出すという意味で、クセのあるバ ロック/メタル・シーンに収まりきら されたことらしい。ご存知、 『glee/グ 「突然、世界がヘイルストームの存在に気づいたっていう感じで、私たちは臆するこ シュ・スミスが加入した。 ンドとレコーディングしてきたジョイスの起用は大正解だったようだ。ちなみに、リ リー』は高校のグリー(合唱)部の青 となくそのマイルストーンを祝福したの。注目されたのは素晴らしいことだし、私た 現在のライナップが揃い、以前にも増してライヴ活動に邁進するようになったバン ジーのヴォーカルをレコーディングするときも、ジョイスはバンドの演奏と同じよう 春を描いたミュージカル・コメディ。 ちに自信を与えてくれたわ」 ドは、ライヴの評判を聞きつけてきたアトランティック・レコードと2005年に契 “伝説のヤングマン∼ウィー・アー・ヤ ハードロック/メタル・シーンの頂点を究めたこともうれしかったにちがいない。 約。翌2006年にライヴEP『One And Done』でメジャーデビュー。その後も精力 「もし、もう一度ここの部分だけやり直したいと思ったら、再びギターを肩にかけ、 ペンシルバニア出身の4人組、 ング∼”が全米ナンバー1ヒットになっ しかし、バンドに大きな自信を与えたのは、より幅広いリスナーから歓迎されたこと 的にツアーを行い、全米各地に自分たちの存在を浸透させていった結果、フーバスタ 曲の最初から最後まで再び全部を歌ったわ。ジェイに“もし完璧な音程が出ていない ヘイルストームの存在は、 たFUN.など、このドラマで曲が取り上 だったのだろう。デビューアルバムにひきつづき、ハワード・ベンソンのプロデュー ンク他を手がけ、モダンかつラウドなロック・サウンドを作ることに定評があったハ パートがあったら、そこだけあとで修正できるよね”と言ったら、彼はこう言った ここ日本でも熱心なハード げられたことをきっかけにブレイクし スの下、作り上げた『ザ・ストレンジ・ケイス』は売れ線を狙ったわけでも、ポッ ワード・ベンソンと作ったデビューアルバムはいきなり全米ハードロック・チャート わ。“だめだ。それは最初に君たちがやりたいと言っていたやり方とは違うだろ。も ロック/メタル・ファンの たミュージシャンは少なくない。 プ・サウンドになったわけでもなかった。それが前作を25ポイントも上回って、全 4位を記録。また、全米アルバム・チャートでも40位に食い込むスマッシュ・ヒット う一度最初から全部歌い直すんだ”って」 間では、 「あぁ、あの女性版 もちろん、ハードロック/メタル・ 米チャートの15位に食い込んだのだから、 「じゃあ、もっと多くのリスナーにアピー となった。 スポ根かと思わず突っ込みを入れてしまったが、「確かにハードだった。でも、こ スキッド・ロウね!」とすっ シーンにしっかりと軸足を置いた活動 ルしてみたい」「これまでやってきたこととは違うことにも挑戦してみたい」と思う パワフルな演奏とメロディアスな楽曲というふたつの魅力を兼ね備えた、80年代 かりおなじみだ。そんな彼ら が認められ、人気を伸ばしてきたから のは、旺盛な創作意欲と健全な上昇志向を持っているアーティストならあたりまえの のハードロック/メタルの影響が色濃いサウンドが、現代のロック・シーンにおい ことだ。リジーもそれをはっきり認めている。 て、ほかにない個性として受け入れられたことに加え、ヘイルストームにはリジー・ うな要素がこのアルバムから感じられるのだから」 ヘイルという稀代のヴォーカリストがいた。 ひょっとしたら『イントゥ・ザ・ワイルド・ライフ』におけるバンドの挑戦は、前 ラウドパークに出演して、 残していったインパクトが やはり大きかったのだと思う。 が通算3枚目のニューアルバム 『イントゥ・ザ・ワイルド・ ライフ』を発売。その内容に 迫る! 12 トで感じるようなケミストリーやエネルギーといった要素を、アルバムの中に封じ込 April - May 2015 こその“グリー効果”には違いないが、 『ザ・ストレンジ・ケイス』は全米ハー 「だからこのアルバムで、なじみがあるものをすべてを窓から投げだし、思うままに にライヴであることにこだわったそうだ。 の結果にはとてつもない価値がある」とリジーは満足している。 「なぜなら、私たちは妥協なんてしなかったし、そのおかげでライヴの興奮と同じよ ドロック・アルバム・チャートでナン 突き進んでみようと決心したわ」 そんな魅力を、精力的にライヴを行ってギミックに頼らないエネルギッシュなパ 2作のハードロック/メタル・サウンドとはちょっと違うという意味で、受け入れら バー1に輝いたばかりか、全米アルバ 4月15日に日本盤がリリースされる通算3作目のニューアルバム『イントゥ・ザ・ フォーマンスとともにダイレクトに伝えていったのだから、彼らが注目されないわけ れるまでに多少時間はかかるかもしれない。しかし、そうだとしても、「完璧な形 ム・チャートでも15位に食い込む大健 ワイルド・ライフ』は、前作の成功に刺激され、より大きなものになったバンドの創 がなかった。たちまちパット・ベネター、アン・ウィルソン(ハート)、そしてセバ で、最高の私たちというものを持ち込むことができた。このアルバムを作ることで、 闘を見せた。 作意欲と上昇志向が形になったものだと言ってもいい。 『ザ・ストレンジ・ケイス』 スチャン・バック(スキッド・ロウ)らと比べられながら、メタル界で最もセクシー バンドでいるっていうことは本当にマジカルなことなんだって再認識することができ そんな大健闘の引き金になった“フ の成功をステップに、より多くの人にアピールしてみたいと言っても、もちろん、よ な女性シンガーと謳われはじめる。リジーとバンドがその後、2010年にリリースし た」と語るリジーたちは、そんなことはこれっぽっちも気にせず、ここを新たな出発 リーク・ライク・ミー”と“ラヴ・バ り多くの人から受け入れられやすいものを作ろうとしたわけではない。それは、前掲 た2ndアルバム『ザ・ストレンジ・ケイス』によってさらなる飛躍を遂げたことは、 点として、さらなる挑戦を続けるに違いない。 イツ”という2曲のシングルは、とも のリジーの発言を象徴的に表現した『イントゥ・ザ・ワイルド・ライフ』というアル すでに書いたとおり。 April - May 2015 13 にしないから、とにかくいいものを作ろう”と言ってくれたんだ。それで決めた。電 話したときはまわりに友だちがいたんだけど、 “ロスに決まったぞ!”って大騒ぎに なったよ(笑)。で、彼といっしょにやることが決まって、あらためて彼が昔手がけ た作品を聴き直したんだ。KORNやリンプ・ビズキットはもちろん、グラスジョー やマシーン・ヘッド、アット・ザ・ドライヴ・イン…どれもクレイジーな作品ばかり で、これはすごいものになるに違いないと確信したよ」 ̶ロスが自分たちの自然な姿を引き出してくれたとのことですが、「自分たちには こんな一面があったのか」「こんなことができたのか」と気付かされることも多かっ たのではないですか? ライアム「たしかにそうだね。新作完成後、あらためて聴き直してみたときに、自分 で驚いたくらいさ。それだけ、ロスが俺たちを駆り立ててくれたんだと思う。曲をレ コーディングするごとに調子が上向いていって、とにかくバンドが仕上がっていくよ うな感じだった。最初にできた曲は“オール・ヘイル”だったんだけど、できあがっ たときに、まさかこんな曲ができるとは思っていなかったし、作品の方向性を決める 自信がついた。そこからどんどん激しく、クレイジーになっていったんだ」 ̶その“オール・ヘイル”ですが、昨年の3月に亡くなったグワァーのオーデラス・ ウランガス(vo)に捧げる歌詞になっていますね。作品全体としてヘヴィでパーソナ バンドのゼロ地点を見つけ出した新作とともに、 キャンサー・バッツが 堂々日本に帰還!! ルな題材とのことですが、やはりそういった身近なことを歌っているんでしょうか? ライアム「実はオーデラスが亡くなる前に作った曲だったんだけど、アルバムの制作 text by Yusuke Mochizuki / translation by Sachiko Yasue 中に、彼が突然亡くなったという知らせを聞いて、すごく驚いたのを覚えているよ。 それで、この曲は彼に捧げることに決めたんだ。彼だけではなく、ここ数年の間に親 しい友だちが立て続けに何人か亡くなってしまってさ。前作『デッド・セット・オ CANCER BATS トレスが溜まっていたのに、友だちが亡くなってもそこに駆けつけることができない ことが本当につらかったよ。だから一度立ち止まって、自分たちのまわりが今どう なっているのか、そしてこのバンドをやる意味とはなんなのかを見つめ直したかっ た。そんな思いが、このアルバムへと続いていったというわけなんだ」 ̶つまり『サーチング・フォー・ゼロ』では、タイトルどおり、バンドとしてのゼ ̶新作の『サーチング・フォー・ゼロ』 ていたのではないですか? とも、声だけでその情熱をグルーヴに変換して伝えることができるんだ。そのグルー を最初に聴いたとき、すごく驚きました。 ライアム「たしかに、そういったアンダーグラウンドな音楽からも多くの影響は受け ヴをどう楽器で表現するかは、すごく意識したし、研究したよ」 ロ地点がどこなのかを探しているんですね。 キャンサー・バッツは作品を重ねるご ているから、こうした方向に進むのは必然だったのかもしれないな。同時に、俺たち ̶それがライアムの渋い歌い方と相まって、より大きなグルーヴを生み出している ライアム「まさにそう。なかでも“トゥルー・ゼロ”は、自分にとって本当のゼロ地 とにどんどん激しく、アンダーグラウ も年を重ねてきたし、そういった激しくて深い表現もできるようになったんだと思う」 というわけですね。 点とはどこなのかを探す過程を表現しているんだ。でも、最終的にはポジティヴな方 ンドに潜っていくような印象を持って ジェイ「たしかに、たくさんの曲を書いて、作品を出して、ツアーをまわって、いろいろ ライアム「この泥臭い感じというのは、音楽に突き動かされて自然と生まれてきたも 向へと進んでいく曲になっているよ。すごくダークで激しいけど、このアルバムをリ いたものの、まさかここまで振り切っ なバンドと共演したのは大きいだろうな。バンドとして成長した結果だと思いたいね」 のだと思う。そしてそれを自然に表現することができたのも、ロスのおかげなんじゃ リースして、またツアーができるということそのものが、すごくポジティヴなことだ てくるとは思っていませんでしたよ。 ライアム「以前ならほかのバンドの真似事になってしまうような部分があったかもし ないかな。実は先日受けた別のインタヴューで“今回は初めてカナダ人っぽい歌い方 と思うしね。それを気付かせてくれたのもロスなんだ。彼も長いキャリアのなかで、 公演を行ったキャンサー・ ライアム「たしかにこれまでよりも激し れないけど、今はメンバーそれぞれがプレイヤーとして、俺もヴォーカルとして表現 をしているね”と言われたんだ。今まではそうでもなかったけど、今回はすごくカナ 人の死を何度も目の当たりにしてきた。“その悲しい気持ちも分かるけど、お前たち バッツ。シーンの底辺から くて深い作品になったと思う。今回は できるだけの自信がついたからこそ、ここまで踏み切ることができたんだと思う」 ダらしさを感じるってね。たしかに俺のアイデンティティはカナダだから、俺らしい は曲を作ることができるじゃないか。誰もお前たちを止めていないし、動き続けるこ のし上がってきたバンドの ロス・ロビンソンにプロデュースして ̶たとえばブラック・サバスだったり、ブルー・チアーをはじめ、ブルースをメタ 歌い方ができているということだと解釈しているよ。本当の自分の感情を、ナチュラ とができるはずだ”と背中を押してくれた。だからアルバムのサウンドはヘヴィで 地力を見せつける、強烈な もらったんだけど、その影響も大きい ルへと発展させた70年代前後のバンドからの影響が感じられます。とはいえ、それ ルかつピュアな形で表現できたということなんじゃないのかな。だからこそ生々しさ ダークで激しいし、ネガティヴなオーラもあるかもしれないけど、そこから這いあ ライヴだった。その彼らは5 かもしれないな。歌詞の題材もヘヴィ を真似するのではなく、キャンサー・バッツなりのハードコアなフィルターに通して も出ているんだと思う。ロスはミュージシャンにほかのことを考えさせず、自然体に がって、ポジティヴな方向に進むことを祝福する作品でもあるんだ」 枚目の新作『サーチング・ だったり、パーソナルなことだったり から表現した印象です。 させるのがうまいんだ。俺が自分らしい歌い方をできるようになるまで、何度でも付 ̶新作でさらに深い方向に進んだわけですが、キャンサー・バッツはこれまで、そ も多いんだけど、ロスはそういった事 ライアム「まさにその通りだと思う。このバンドを始めてから数年のころは、どの き合ってくれた。俺をすごく奮い立たせてくれたよ」 れこそターボネグロからブリング・ミー・ザ・ホライズンまで、知名度やキャリアに 柄を、虫眼鏡で拡大しながら表現して シーンが自分たちにフィットするのか、自分たちのスタイルはなんなのか、なにがで ジェイ「まぁ、俺たちは自分たちの生まれたカナダという国が好きだし、カナダ人ら 関係なく、いろいろなバンドと共演してきましたよね。これができるバンドというの いくような感じなんだ。俺たち全員が きるのかを模索する時期だったんじゃないかな。もちろん方向性が定まってなかった しさを出させてくれたんだろうな(笑)」 はそうそういないと思うのですが、なぜだと思いますか? 3月6日、5年ぶりにして初 のヘッドラインとなる来日 フォー・ゼロ』をリリース したばかり。これがまたさら に重量感と泥臭さを増した 14 ン・リヴィング』のツアーはそれまでにないくらいハードだったから、ただでさえス フォーカスしたいと思っていたことを、 というわけではなく、若くて発展途上だったんだ。それがこうして10年経って、あ ̶ロスの名前が何度も出てきますが、彼がキャンサー・バッツを手がけるのはとて ジェイ「自分たちでもそう感じることは多いんだけど、俺たちはメタルのなかではパンク 作品になっているのだ。来 的確に引き出してくれた。だからこそ る程度自分の居場所を確立し、スタイルというものがわかるようになると、今度は自 も意外でした。彼はしばらくプロデュースそのものをやっていなかったようですが、 バンドとして扱われて、パンクのなかだとメタルバンドと見られるみたいでさ(笑)。実 日時、ライアム・コーマイ ここまで激しくなったと思うんだけど、 分の原点がどこにあるのか、なにを聴いて育ったのかを振り返る余裕ができた。そう どんな経緯で決まったんですか? 際、まわりからそう言われることは多いし、俺たち自身も自覚しているよ。だからいい アー(vo)を中心に、ときお 君を怖がらせるようなことにならなく するとブラック・サバスやレッド・ツェッペリン、初期メタリカにAC/DC、ビース ライアム「もともと、ロス自身もまたヘヴィなバンドをプロデュースしたいと思って、 意味で、どこにもフィットしないんじゃないかな」 りジェイ・R・シュワーツ てよかったよ(笑)」 ティー・ボーイズとか、それこそ9歳くらいから聴いてきた音楽が、今の音楽にどう まわりの人に、いいバンドはいないかと相談していたみたいだよ。そんなとき、 “カナ ライアム「どんなバンドとも対バンができるのは、誰が相手でも自分たちのやり方を アー(b)も参加する形でイン ̶とはいえ、メンバーは以前からコ 影響しているのか、いかに好きなのかを再確認したんだ。それを踏まえて、新作に生 ダにいいバンドがいて、アルバムを近いうちに作るらしいぞ”と、誰かに俺たちのこ 変えないからかもしれない。たとえばセットリストを、今日は今風のバンドといっ タヴューを行った。 ンヴァージやニューロシスといったバ かすことを意識したよ」 とを教えられたらしいんだ。で、ちょうど同じ時期に俺もロスの電話番号を知り合い しょだからと、そのファン層に合わせたものに変えたりはしない。もしかしたら、そ ンドのTシャツを着ていたし、もとも ̶たしかに経験を積んだとはいえ、ブルースの独特のリズムやグルーヴを表現する から入手した。それで電話したんだけど、10分も話さないうちに、彼にやってもら のせいでつまらなくてビールばかり飲んでいる客もいるかもしれないけど、あくまで とアンダーグラウンドなサウンドが好 のは難しいですよね。作曲やレコーディングは、難しくありませんでしたか? えたら最高だと思えたよ。やりたいことや方向性…ただのメタルアルバムや、過去に 自分たちでいることを大事にしているんだ。まぁ、最終的にはみんなが楽しんでヘッ きだったんですよね。この方向性に進 ジェイ「昔のブルースのグルーヴというのは、ヴォーカルによるものが大きかったん 誰かがやったような作品は絶対に作りたくないと、意見が一致した。 “君たちの最も ドバンギングしてくれれば、それでいいのさ(笑)」 むことを、バンドとして以前から考え じゃないかと俺は思う。たとえばサン・ハウスなんか特にそうだよ。楽器の音がなく いいところを引き出したい。君たちがシーンにおいてどんな立ち位置にいるのかも気 ジェイ「そう、俺たちはヘッドバンギングが大好きだからな(笑) 」 April - May 2015 April - May 2015 15 経験上、楽屋で酒を飲みたくなる雰囲気の方が、いいライヴになるんです。絶対にしく じれないと思ってあれこれ考えているよりも、ちょっと飲んで楽しくやろうぜくらいな 方が、お客さんの表情もくだけてくる気がします。そういうのがロックバンドとして必 要かなという感じがしますね。いいことも悪いことも、なにかしらアクシデントが起こ るのがライヴだと思うから。同期も入っているけど、僕らはそれ以上に人間味のあるバ ンドになりたいです」 ̶歌詞では英語も日本語も両方使っていますし、曲によっては英語っぽく聴こえる日 本語の歌い方があったり、歌詞に顔文字が出てくるのが笑えました。 hamaken「 “In the noise”ではすごくディスな感じのことを歌っているんですけど、 僕としては本気でディスるよりも、鼻クソほじりながらおちょくる感じの方がパンクな んですよね。それをどうやって出そうかと考えたんですけど、歌詞はこれでメロディに ハマっているから変えられない。じゃあ歌詞カードを見たときにどういうテンションな のかわかるものがあればいいなと思って、顔文字を入れたんです」 ̶そして“Broke as shit”は、ドヤ顔が浮かぶ感じの歌詞で(笑)。 焼きついたシリンダーをオーバーホールし、 さらなる馬力を得たAIR SWELLの新作が 登場! 高だ” “私が女王”みたいな詞をバンバン使う。日本でもそれがあっていいんじゃな text by Yusuke Mochizuki photography by Taka Konuma いかと思ってやりました。これもおちゃらけて歌っているんですけど、外国人の友だ hamaken「日本人って謙虚な人が多いですけど、アメリカのアーティストは“俺は最 ちにはめちゃくちゃウケましたね(笑)」 ̶そうやって遊び心を見せつつも、シリアスな曲ではビシっと引き締めていて、結果 AIR SWELL hamaken「そこは頭を柔らかくしていきたいと思っていて。ひとつのことしかやらな いというこだわりもかっこいいけど、僕はジャンルにこだわらず、単純にかっこいいと 思ったものを打ち出していきたいという気持ちがあります。自分がそのときに感じた気 分をそのまま詰め込んだ方がおもしろいし、いろんなパターンの曲ができる。そして人 間味のある作品になるだろうなというのがあって、そうしています」 ̶アルバムタイトルの『MY CYLINDERs』にはどんな意味が? ̶まずはバンド結成からこれまでの ろん、もろにロックにしようと思って作る曲もありますけど」 hiromitsu「hamakenの作る楽曲には、AIR SWELL節みたいなものがあるんですよね。 経緯を教えてください。 ̶昨年の10月に、前ベーシストが脱退しましたね。その後hiromitsuさんをサ あとから入る人間としては、その決められたルールのなかでどう破天荒なことをするか hamaken「バンド自体はもう9年目にな ポートに迎え、先日正式に加入したわけですが、なぜhiromitsuさんに声をかけ というおもしろさがありました。たとえばシンプルな曲ではひたすらダウンピッキング hamaken「シリンダーって、バイクや車のエンジンの心臓部にある重要な部品なんで りますね。最初はインキュバスとかに たんでしょう? で弾くとか。基本的にはギターのニュアンスに合わせるイメージでやっていますね。曲 す。 “エンジンが焼きついた”ってよく言いますけど、それはエンジンの中のシリン 影響を受けた音楽をやっていたんです。 hamaken「hiromitsu君は10年くらい前からの知り合いだし、かっこいいベーシスト のセクションによってはバスドラムのキックに音を乗せるような感じのときもあるし。 ダーが焼きついたということ。そうなったら一度全部をバラしてシリンダーをオーバー 3ピースバンド、AIR 当時はSNSもあまり普及していなかっ なんです。実は前ベースの脱退も、1年半くらい前からあった話だったんですよ。だん ニュートラルというか、バンドを構成するいろんな歯車をひとつに結ぶのがベースだと ホールして、もう一回組みこむ。そうすれば新品同様のエンジンになってまた走り出す SWELLのニューアルバム たので、ライヴ後にアンケートをお客 だんその脱退する日が近づいてくるなか、たまたまツイッターで、hiromitsu君が当時 いう信条があるので」 んですよ。つまり前のベースが抜けて2人になったときに、このバンドは一度焼きつ 『MY CYLINDERs』が、素 さんに配っていたんですよ。それを家 やっていたTHE CHERRY COKE$を脱退すると知り、じゃあダメもとで…と声をかけ ̶新作の曲は以前よりも、研ぎ澄まされているように感じました。 いた。それをオーバーホールしてまた走り出そうぜという曲が、最後の“My に帰って見てみたら“インキュバスみ たら、快諾してくれたので、それでお願いしました」 hamaken「たしかにシンプルには作っていますね。ただ構成よりも、細かいフレーズ Cylinder”なんです。アルバムタイトルが『MY CYLINDERs』と複数形なのは、今回 たいでかっこよかったです”っていう ¨ ̶hiromitsuさんはTHE CHERRY COKE$を脱退したとはいえ、RADIOTSとHEYT とか、同期の音の使い方にこだわったので、それが大きいと思います。それとメロディ 収録した8曲すべてがシリンダーだと思っているから。ジャケットは、ガラクタの中に 意見があって。そう書かれたことはう もやっていますよね。よく引き受けたなと。 ラインですかね。A、B、サビとあったとしたら、セクションごとに雰囲気をガラっと ツギハギだらけだけどピカピカの鉄のハートがあるというイメージをデザイナーに伝え れしかったんですけど、よく考えてみ hiromitsu「そうですね(笑) 。ただ去年、気持ち的に休んでいた部分があったんですけ 変えたいんですよ。曲を作る上で自分のなかにその美学があるから、それを意識して て作ってもらったんですけど、何回も壊れて、何回も拭いて繋ぎ合わせて動くようにし 同期による味付けありと、 ると、インキュバスとインキュバスっ ど、そのときにやっぱり自分は動いていないとだめだなと思って。常に頭をまわして、 やっていますね」 ているんだろうなっていう、使い古した感じがほしかったんです。そのシリンダーの部 多彩な要素を独自の感性で ぽいバンド、どっちを聴くかといったら 家でもライヴのことを考えて、時間があればYouTube等で音楽を観てっていう感じで ̶曲のなかのセクションだけでなく、曲単位でも雰囲気がガラッと変わっていく 分を自分たちのハートにたとえています」 シンプルかつラウドにまとめ インキュバスを聴くだろう、と(笑) 。 やってきたんですけど、休みだと真っ白になっちゃう。自分にとって、音楽は休みなが から、先読みができないんですよね。すごく独特のバランス感覚だと思います。 ̶hiromitsuさんが入ってからライヴはやってきましたが、正式なメンバーになって あげた、パワフルなロック それで自分がやっていることが二番煎 らやるものではないな、と思ったんです」 hamaken「インキュバスの件があって、じゃあどんなことをやるかというときに、 のツアーはこの4月が初めてですよね。 アルバムだ。メンバーチェン じになってしまうと思って、もっと違 ̶正式メンバーになることを前提としたサポート起用だったんですか? ハードコアでもミクスチャーでも、パンクでも歌ものでも、だれとでも一緒にできるバ hiromitsu「ほかのバンドのツアーに誘ってもらって遠征はしましたけど、そういうと ジを乗り越え、ひと皮もふた うことをやろうと決めたんです。自分 hamaken「正式に入ってほしかったんですけど、ほかにもバンドをやっているのに、こち ンドを作ろうという話をしましたからね。単純にメロディさえよければ、どんなアレン きにみんなで泊まったり、ライヴ後に飲みに行ったり、演奏以外のところでどう楽しめ 皮もむけたバンドの姿が封じ のなかでこだわりやルールをもってや らから正式に加入してくれと言うのは筋が違うと思って。だからまずサポートでお願いし ジでもハマるだろうというのがあったし。それに僕らは前のベースのときから、メン るか、どうフュージョンできるかって大事だし、演奏にも関わってくると思うんです。 り始めたのが、少しずつ今の形になっ たんですけど、しばらくやっていくなかでhiromitsu君から“本気でやりたい”と言っても バー全員の音楽の好みが違ったんです。それも、今の形を作る上ではよかったんじゃな それはこれまでに感じているので、楽しみですね。いっしょに出てくれるバンドよりも ていった感じですね。ただ今はむしろ、 らえたので、改めて正式にお願いしました。うまいベーシストも、かっこいいベーシスト いかなと思います」 僕らが一番楽しまなきゃいけないし、出てくれるバンドがいいライヴをやっているのを あまりロックらしくしようともしてい もたくさんいますけど、アーティスティックな面も持ち合わせている人って、なかなかい ̶hiromitsuさん自身は、自分が入ったことによって、AIR SWELLにどんなことをも 見て、僕らももっといいライヴで返さないといけないし」 ないんです。3ピースのバンドだと、必ず ないんですよ。そういった部分でもやっぱりhiromitsu君だなと思いますね」 たらしたと思っていますか? hamaken「hiromitsu君とは去年の11月からずっといっしょにやってきて、いい空気感 歪んだギターの音が入ってくるから最 ̶新作の楽曲制作において、hiromitsuさんが加入して初の作品ということは意識し hiromitsu「ロック感っていうのは意識していたのかな。大きく言って、ロックバンド が生まれていますからね。逆に、新曲が増えたことでやる曲が変わるけど、こればっか りはやってみないとわからないですよね」 晴らしい。メタリックなリフ あり、パンキッシュな疾走感 あり、フックの強いメロあり、 込められている。hamaken ( v o , g )と h i r o m i t s u (b,cho)に語ってもらった。 16 的にバラエティ豊かな作品になっていますね。 April - May 2015 終的には必ずロックになるし、自分の ましたか? らしさというか」 なかの引き出しもロックが大部分を占 hamaken「ベーシックな部分はAIR SWELLじゃなきゃダメだと思っていたので、さほ hamaken「ライヴを観てもらったら伝わると思いますね。hiromitsu君によって、圧倒 hiromitsu「バンドって生き物じゃないですか。ツアーの初日とファイナルを、同じラ めている。だから逆にロックらしくな ど気にしていなかったですね。ベースも、僕はすごく簡単な音だけを打ちこんで、あと 的にライヴ感が強くなりましたから」 イヴには絶対にしたくない。ツアーをやっていくことでバンドも曲も育っていくだろう いもの…たとえばクラブっぽいサウン のフレーズは全部hiromitsu君にお任せする形で。不器用なベーシストだったらガチガ ̶hiromitsuさんみたいにステージで酒を飲みながらガンガンやるっていうのは、 し。初日からガッチリできて、ファイナルもそのレベルでできるよりは、だんだん上げ ドやR&Bっぽい歌い回しを作って、 チに作り込んでから曲を渡していたと思うんですけど、hiromitsu君はいろんな楽器を 今はあまりいないタイプですよね。 ていきたい。そこもバンドのおもしろいところですから、お客さんに感じてもらえたら ロックに乗せるのが多いですね。もち やっているから、器用だろうしできるでしょ、みたいな感じでしたね(笑)」 hiromitsu「僕がライヴハウスに出始めのころは、それが当たり前だったから(笑) 。 と思います」 April - May 2015 17 局面や、その瞬間になにも考えず、 地震を日本で経験したことを、俺 を思うと、今も心が痛むよ。あの けていますよね。楽曲の短さ、わ きなドラマ性のある楽曲作りに長 ト・リメインズは、短いながら大 それにしても、オール・ザッ ̶ 建物から出なきゃマズイ!﹂とみ ろうと思っていた。でも﹁すぐに 分かっているだろうし、大丈夫だ どう対処したらいいのか、みんな ど、日本は地震が多い国だから、 座っていた。大きな地震が来たけ 俺たちの気持ちは、今も被災した かりやすさというのは、やはりこ んなが騒ぎ始めた。急いで階段を 人たちのもとにある。あのとき、 だわっている部分なのでしょう 降りて外に出てみたら、たくさん うのは、すべて必然なんだ。だか か? らこのアルバムのタイトルは﹁な 集中力のあるリスナーばかりでは の人たちが困惑している様子だっ こういった経緯からも、日本 ̶ た。非現実的な感じがしたよ。 のファンはオール・ザット・リメ ないからね。曲を簡潔にして要点 に共感できるように意識してい てくれるし、駅や空港で、ファン る。﹁このパートは本当に必要な がサインや写真をもらおうと待っ インズに強い思い入れがあるよう とはいえ、ラストの〝クリ ̶ てくれている。アメリカやヨー に感じます。 ティシズム・アンド・セルフ・リ ロッパではありえないよ。本当に のか﹂﹁これで本当に伝わるの アリゼイション〟は7分に達する、 忠誠を誓ってくれている日本の 日本にはできるだけすぐ行きたい バンド至上最長の曲ですよね。 ファンの前でプレイするのはとて か﹂といつも考えているよ。不要 俺たちの意図を超えた曲だね。こ も光栄だし、恐縮することもある と思ったものは、すぐに取り除い れはもともと、エンジニアがピア くらいさ︵笑︶。 よ。どの国よりも温かく迎え入れ ノの曲はどうだっていうアイディ いましたよね。 日本大震災が起こった際、東京に あ な た た ち は 20 1 1年 に 東 ̶ いたらこの形になっていたんだ。 自然とものごとが進んで、気がつ 計画があったわけではなかった。 ライしてみただけで、特になにか アを提案してきたんだ。それにト てしまうんだ。 を分かりやすくして、みんなが曲 俺たちはサウンドチェックを終え この曲をオープニングに持ってき の曲を自分たちが気に入るかどう て、渋谷クラブクアトロの楽屋で M Aメ タ ル / メ タ ル コ ア を きすると、ひとつの物語が終わっ かということだけだった。バンド 作品タイトル﹃ジ・オー ̶ るべくしてなったことを受け入れ たちは忘れることがないだろう。 たような印象になるだろ? ピア ノの曲で始まり、それに似た曲で ダー・オブ・シングス﹄は、 終わらせることで、全体に共通し リメインズ。新作﹃ジ・オー ヴィでアグレッシヴな作風 たフィーリングを与えてくれてい これまで行き来してきたヘ とメロディアスな作風がひ るんだ。 壮大かつドラマティックな とつに結実した感がある、 かと思えば、次に〝ノー・ ̶ き、意表をつきますよね。 とができるということを、曲順で ︶が取材に応じてく ノック〟というヘヴィな楽曲が続 ンテ︵ 作品だ。フィリップ・ラボ かなり極端な方向性を示したと思 も見せたかった。アンセミックな れた。 新作﹃ジ・オーダー・オブ・ ̶ ロックらしいものをプレイしなが うけど、俺たちにはいろいろなこ はどうですか? 〝バイト・マイ・タング〟で ̶ らも、それとは別にへヴィな曲も は、中盤でいきなりジャズ/ 同時にプレイしているんだ。 気分だと思うよ。今回はいろいろ フュージョンっぽいパートに入っ じゃなくて、メンバー全員が同じ ムがこうして形になったことを喜 あ れ は オ リ ︵ ・ ハ ー バ ー ト /g ︶ ていきますよね。 今回プロデューサーに起用し ̶ が書いたんだ。オリは多彩なプレ としてみんなが受け入れられるも い。今回、意識していたのは、そ GOJIRA イ が で き る し 、 音 楽 理 論 に も 強 彼は作曲でも力を貸してくれたし、 めて一緒に組みましたね。 の な ら そ れ で O Kだ っ た し 、 な に か特定の曲を狙って書く必要もな これまで、歌詞は俺がすべてひと りで書いてきたから大きな挑戦 かった。俺たちはミュージシャン だし、自分たちが気に入ったもの リー・ウォント・エンド・ウェル〟 ダー・オブ・シングス﹄の意味を を作るべきなんだ。 はピアノから展開していく、壮大 がなくともメッセージが伝わって あのとき被災地にいた人々のこと いると考えて、インストゥルメン 教えてください。 とか進化、命に対する愛情といっ 人生では、選択できることが少ない アンダーグラウンドなものなの。 ト・ショー・オン・アース〟は、 二度目のヴォーカル脱退を 地球上でどんな進化が起こってい タルになったの。〝ザ・グレイテス ス〟もそうね。アルバムタイトル た共通したテーマがある。〝ザ・グ はダーウィンの﹃種の起源﹄にあ レイテスト・ショー・オン・アー テーションくらい。それがフィン 大規模なショウをやれるように ランドとは絶対的に違うところね。 なったのはウィズイン・テンプ トウィッシュ。新作﹃エン るかを表現した曲。だからこんな に長いのよ︵笑︶。冒険的って言っ る記述なの。 最後にナイトウィッシュが日本 ̶ 新作はオーケストレーション ̶ を訪れたのは2013年ですよね。 を取り入れた重厚かつ豪華な作風 命というものは、限りない形で ト・ビューティフル﹄で はそのままに、よりポップな要素 やってくるものが最も美しいとい ︶は、 は、進化というものはいろいろと う意味なの。ダーウィンの本に バーでしたが、やはり正式メンバー あのときのあなたはサポートメン てもらえるのはうれしいわ。 が増したように思いました。 そのタイトルに込めた意味は ̶ は、生命の進化や化学と ツォーマス・ホロパイネン︵key ︶ やマルコ・ヒエタラ︵b/ 心境は? ラ イ ヴ 盤﹃ オランダではメタルシーンはとても リームなジャンルだってことね。 うのは、メ タ ル が メ イ ン ス ト フィンランドがクールだなって思 あったのでは? ことで、カルチャーショックも フィンランドのバンドに参加する に在籍していたあなたですが、 つてはアフター・フォーエヴァー もともとオランダ出身で、か ̶ ことに、ワクワクしているわ。 世界とシェアしてツアーもできる う。新作を誇りに思うし、作品を と気心が知れたのもよかったと思 る前にツアーを経験し、メンバー やっとという感じ。アルバムを作 ジオ作は今回が初めてだから、 ﹄は出したけど、スタ STORYTIME SHOWTIME, としてアルバムリリースを迎えた となりましたね。メンバーの一員 加 し 、 20 1 3年 に 正 式 メ ン バ ー バーとしてナイトウィッシュに参 201 2年にサポートメン ̶ ︵ ︶が語った。 したフロール・ヤンセン トを経てバンドに正式加入 なんでしょう? というから驚きだ。サポー いったテーマを扱っている ドレス・フォームズ・モス ニック・メタルバンド、ナイ フィンランドのシンフォ 意図的だったのでは? ろ﹂ということを意味している。 とっさに反応するしかなかったと text by Yusuke Mochizuki / translation by Tomohiro Moriya いう場面もある。人生の結果とい スケール感、メロディ、ダイナミズム…すべてを強化したオール・ザット・リメインズの勝負作!! て〝クリティシズム・アンド・セ ALL THAT REMAINS ルフ・リアリゼイション〟で幕引 text by Yusuke Mochizuki / translation by Sachiko Yasue / photography by Ville Juurikkala のひとつ、オール・ザット・ 新生ナイトウィッシュのアルバムは、地球の生命の進化を綴った一大叙事詩!? 大きく盛り上げた重鎮バンド NIGHTWISH 乗り越え、新体制となった な曲ですよね。この導入はかなり 1曲目〝ディス・プロバブ ̶ るよ。 だったけど、結果には満足してい 歌詞を書くのも手伝ってくれたんだ。 等をプロデュースした人物で、初 にラム・オヴ・ゴッドや たジョシュ・ウィルバーは、過去 んでいるんだ。 と新しいことも試したし、アルバ とにかく興奮している。俺だけ シングス﹄をリリースして、気分 vo アルバムを作るとき、あまり先々 形を変えながら脈々と続いていく そ、今のバンドの姿を観てほしいと として作品をリリースしたからこ そうね。やっとバンドとしてひと のことまで決めないタイプなの つになれたという喜びは大きい いう気持ちが強いのでは? ちは大昔、すべて同じものから始 ことや、すべては繋がっていると まって、それが歴史のなかで分岐 いうことが書かれているわ。私た も、テンポがどんどん変わる曲も わ。実は最近、日本に行く可能性 がいくつかある。でもヘヴィな曲 あるし、プログレッシヴな曲もあ を探り始めたところなのよ。初め かった。前回が私にとって初めて したり形を変えたりしていったって。 の日本だったんだけど、本当に気 それが、このアルバムの何曲かの 〝ジ・アイズ・オブ・シャー ̶ に入ったの。だからぜひまた行き る。とても多彩で、決して一色だ バット・グラ〟から、ラストの〝ザ・ たいし、バンドとしても前向きに けのアルバムではないの。ただ、 グレイテスト・ショー・オン・ て日本に行ったときはとても楽し あなたも歴代のナイトウィッ ̶ アース〟へと続いていく流れは圧 インスピレーションになったの。 シュのヴォーカリストほど、オペ かったのは、曲に求められていな 今回、私がオペラ的な歌い方をしな るように感じました。 いのよ。 〝ジ・アイズ・オブ・シャー 実 は 、 そ の 2曲 は 互 い に 関 係 が な みですよね。 さになります。すごく冒険的な試 アルバム全体の三分の一以上の長 を楽しんでもらいたい。早くみん ると思う。だからみんなには新作 さはあるかもしれないわね。 ラ的な歌唱を多用せずに、より聴 かったからなの。私は曲を自分なり バット・グラ〟は、﹁アフガンの少 検討しているから、きっと実現す 巻ですね。合わせると に解釈して、導かれるままに歌って 女﹂と呼ばれていて、 ど、今回は求められなかったという の表紙を飾った子の写真から、 ショナル・ジオグラフィック﹄誌 うかを表現していて、本当は歌詞 子どもたちがどんな苦しみを味わ を受けて書いたの。戦争において ツォーマスがインスピレーション だけのこと。曲が求めさえすれば、 そうするつもりよ。 ありますか? をつけるはずだったんだけど、言葉 作品全体に共通するテーマは ̶ ティフル〟や〝エラン〟には、科学 〝シャダー・ビフォー・ザ・ビュー なにライヴを観てもらいたいわ! いるから。もっとオペラ的に歌って 年に﹃ナ ほしいという意見もよく聞くけれ 分を越え、 きやすく、わかりやすく歌ってい リスナーがとっつきやすいポップ ︵ 笑 ︶。 た し か に 今 回 、 ポ ッ プ な 曲 vo 19 April - May 2015 April - May 2015 18 30 85 vo 今年1月下旬、アスキング・ 意思を反映したものだし、だから ソロっていうのはあくまで個人の からの影響って、実はほとんど受け していたし、ヘヴィメタル的な音楽 それにクラシックもしばらくプレイ 日本ではいつも素晴らしい時間を まさに今、検討しているところだよ。 の予定はいかがですか? とても情熱的だ。だからスケジュー 過ごしているし、日本のファンは ルの調整がつけば、近い将来、日本 てないんだ。 そうなんですね、だからこそ ̶ へ行けるようにと考えているよ。 なったんだ あなたのヴォーカルスタイルは他 ︶が、新バ ンド、ウィ・アー・ハー つまり、ブルーノやジェフ、 ̶ のメタルコアバンド、またはあな リストと比較しても傑出してアー いところだけど、強いてあげると そうだな、すべての曲って言いた 曲はどれですか? 本作でもっともお気に入りの ̶ ティスティックでユニークなのだ するならば、多分〝ラヴ・フォー・ 代のヴォーカ その通り! それぞれが楽器を手 代といった幅広いロッ なと確信できました。それに今作 たと同世代である にして一斉に音を鳴らした瞬間、 は もしれないけど、音楽面に関する 後押ししてもらった部分はあるか でよりアグレッシヴになるために 彼らとの出会いによって、行動面 容だったので。 どの、実にアメリカンロックな内 ロット﹄は少々驚いてしまったほ の、今回の﹃ウィ・アー・ハー ロックのエッセンスがあったもの あなたからと思われるアメリカン デスティニー﹄︵ 2013年︶にも と比べて﹃フロム・デス・トゥ・ A Aの 初 期 メ タ ル コ ア ・ サ ウ ン ド 的影響はありますか? というのも、 そういった人たちから受けた音楽 ちとの交流もあるあなたですが、 など、いろんなミュージシャンた のジョナサン・デイヴィス KORN プライズ出演していましたよね。 ヴェイル・ブライズのショウにサ だ。ベンは自分のやりたいことを g ︶と僕の意見が合わなかったん たんだけど、ベン︵・ブルース/ 音楽面の方向性について話してい そ の と お り だ よ 。 A Aの 4作 目 の んですよね? はとてもポジティヴなものだった も伺いたいのですが、今回の脱退 差 し 障 り な け れ ば A Aの こ と ̶ んでもらえたらって思っているよ。 るんだ。日本のファンにもぜひ楽し いほどの素晴らしさを味わってい たけど、演奏するたびに信じられな る た め、 一つひとつステップを登っ メンバーと一 緒 に な っ て 具 現 化 す いあいだ、僕が愛してきた音楽を まに純粋に楽しんで作ったよ。長 したって感じかな。自分の心のま にあった大切なものを一気に解放 ありがとう。長い間僕の心のなか 能な作品だと思います。 クンロールファンにもアピール可 で寝る! それだけだよ︵笑︶。 ロックンロールし続けて、べッド ください。 いはバンドとしての目標を教えて では、最後にあなたの、ある ̶ ルース的要素も込めたから。 なパーティソングだし、それにブ ザ・ナイト〟かな。ハイエナジー 代や まるで奇跡が起こったっていう感 直接的な影響はないかな。という バムのサウンドをソリッドにし は自分たちを名曲を持つロックス け取られ方をするものだ。俺たち どんな曲だって人によって違う受 アロスミスなどが好きだったんだ。 ンズやジョニー・キャッシュ、エ ン在籍時の楽曲が再録できて、本 たと思っているけど、ジャスティ どれも基本的に入れられてよかっ 演などが決まっていますが、来日 すでに欧米各地でのフェス出 ̶ 〝デヴィル・オン・マイ・ショル と共演した新曲 Jean-Ken Johnny 貫こうとしたし、僕はベンの望む て、俺のスタイルを加えた。今で 方向性を受け入れられなかったと たところと逆に全然変わっていな もそれを続けている。みんなで良 のも僕はもともと、ロックンロール いところを挙げると? やブルースから影響を受けていて、 変わらなかったのは、エネルギー い曲を作りつづけたいんだ。 いうのが理由だよ。 とポジティヴさだろうな。むしろ ﹃グレイテスト・ヒッツ?﹄ キャリア初のベストアルバム とは違うものになっていったんだ。 は初代ヴォーカリスト、 増したくらいさ。変わったのはダン MAN WITH A MISSION ﹃グレイテスト・ヒッツ?﹄ ̶ 通の野郎どもが作った曲が、君に ターだなんて考えていない。﹁普 ステッド〟は﹃プレイメイト・オ べて気に入っているよ。〝ウェイ 歌ってギターも弾いているし、す 当に満足しているんだ。自分で 戻ってしまうんだけど、彼らと過 ら俺は演奏後、疲れてホテルに 意気投合したんだ。いつもだった 一昨年のサマーソニックで彼らと がついているんですか? ごすのは楽しかったよ。そしたら しみに! 年間戦いつづけ ボ曲、それぞれの未公開曲も収録。お楽 決定! 2バンドによる共作楽曲やコラ とゼブラヘッ ※MAN WITH A MISSION ドによる5曲入りスプリットEPが発売 も楽しかったんだぜ︵笑︶。 在ってことを言いたいんだ。撮影 てボロボロになったけど、まだ健 クールだろ? にを意味しているんですか? バー全員がケガしているけど、な ちなみに、最新写真でメン ̶ ンは9割方終わっているんだ。 けど、曲作りとプリプロダクショ ジオに入るかで決まると思うんだ リリース時期は未定で、いつスタ も進めているそうですね。 すでに新曲のレコーディング ̶ なんてクールなことだよね。 まとまった。彼らと一緒にできる それがいつの間にかこういう形で かと、話を持ちかけてくれてね。 彼らから、いつかなにかやれない ブ・ザ・イヤー﹄からのお気に入 の ̶MAN WITH A MISSION での﹃グレイテスト・ヒッツ?﹄ 違うものだったりするかもしれない。 選曲には満足していますか? ̶ 俺たちがヒットソングだと思って とってのグレイテスト・ヒッツで き、彼らはちょうどシンガーを探 りの曲だね。 あったらうれしいな﹂という意味 していた。奴らとプレイしてしっ なんだ。 というタイトルには、なぜ﹁?﹂ ことはもちろんだけど、音楽性も ンドじゃなくて、音楽的にポジ くりきたけど、それがどうなるの も、誰かほかの人からしてみれば ︵・パルマー/g ︶と俺が加わった 年代後半はファン クの要素があったけど、グレッグ あると思う。 ︵・バーグドルフ/前g ︶がギタリス フィーリングがあったけど、殴り ティヴなもので動いている。そう か全然わからなかったし、 text by Tomoo Yamaguchi translation by Tomohiro Moriya の Jean-Ken Johnny を ダー〟も収録されていますね。 籍時の楽曲の再録に加え、 幼いころからローリング・ストー ところで、先日はブラック・ ̶ じだね。 的だったということですね。 そしてブライアン︵・ウィー ル作でデビュー。メタルコ アのイメージを覆すクラ リカンロックンロール誕生 シ ッ ク ハ ー ド ロ ッ ク &ア メ にこやかかつ丁寧に答えて の背景や、AA脱退理由を、 くれた。 アルバム﹃ウィ・アー・ハー ̶ ムですね。今のお気持ちはいかがで ロット﹄が本当に素晴らしいアルバ けですが、興奮しています? すか? あなたの新章が始まったわ もちろん、とても興奮しているよ。 すのを待っていたし、どんな未来 長い間、作業を続けてきて機が熟 にしているよ。 が待っているのか、とても楽しみ 調べたところ、あなたはソロ ̶ よね。そしてやがてバンドに変 活 動 を 20 1 1年 に は じ め ま し た して? わっていきましたが、これはどう ヴ面においても自分自身を違った はじめは音楽的にもクリエイティ 形で表現したいと思っていて、ブ コーディングをしていったんだけ ど 、や が て ジ ェ フ︵ ・ ジ ョ ー ジ / g ︶も加わった。そしたら、それ 50 ジャスティン・マウリエロ在 ぞれのクリエイティヴィティや愛 40 祝結成20周年!! ゼブラヘッドのベストアルバム 『グレイテスト・ヒッツ?』が登場! フィーチ ャ ー し た 新 曲 も 収 スト盤の話に加え、マッ 録と、聴きどころ満載。ベ 周年を迎えたバンドの くらいからエネルギーが増して、 ト と し て 変 化 を 見 せ た 20 0 4年 成 ティ・ルイス︵ /g ︶に結 パンクロックに接近していった。 かかったり股間を蹴り上げたりす 今も尋ねてみた。 メンバーが変わっているとは ̶ るようなサウンドに変化していっ 初期はレイドバックしたクールな 周年を迎えられるバンドっ け、 いえ、途切れることなく活動を続 たんだ。 決意させたものはなんだったんです ど、ゼブラヘッドはなぜそれがで てそうそういないと思うんですけ か? ゼブラヘッドに入れば自分は マッティにゼブラヘッド加入を ̶ きたと? なにができると考えていた? ソロアルバムを作ろうとしたと もってことと、みんなが心底楽し き、ベン︵・オズモンドソン/ 俺たちがいたって普通の野郎ど ちは楽しみながら一生懸命、音楽 手伝ってくれたんだけど、そのと b︶とエド︵・ユーダス/ んでいるからじゃないかな。俺た を作り続けている。あれしろ、こ やって俺らが楽しんでいることを プレイしている今でもわからない ︶が れしろって政治的に動いているバ 共感してもらえているんだと思う。 ところがある。ゼブラヘッドは クールでパワフルで、暴走機関車 れが楽しいし、今でも変わらな みたいに止めようがないんだ。そ い。俺がゼブラヘッドに持ち込ん な。オーディエンスに魅力的に映 けられていることは重要なことだ までの彼らのものとは違ってい だのは俺の作曲スタイルで、それ た。このバンドの最初の2枚のアル 周年を迎え マッティ … 結成 ̶ と思っているよ。 らないバンドもいる中で、長く続 ピールできているんじゃないか 年も ティ豊かなオーディエンスにア だからこそ、俺たちはヴァラエ ds 10 は加入してから 年ですが、成長し ZEBRAHEAD 90 情、情熱もあって、だんだんソロ 20 ヴァー/b︶と出会ったのは運命 ワースノップ︵ ﹁ チ ー ム を 組 も う ぜ ﹂っ て こ と に text by Aya Miyahara / photography by Travis Shinn ら電撃脱退したダニー・ アスキング・アレクサンドリアを脱退したダニーによる新バンドが早くもアルバムを発表! アレクサンドリア︵ AA︶か WE ARE HARLOT ロットとしてセルフタイト vo ルーノ︵・アグラ/ ︶と一緒にレ ds 21 April - May 2015 April - May 2015 20 20 vo 10 20 20 20 前味噌な話だが、グラインドハ 日に ウスが音楽面のプロデュースで 関 わ り 、昨 年 8 月 a-nation 年催されるたびにその名や意 リープハイプがそれだ。転換DJとし とク lynch. 現在、 10-FEET の京都大作戦、 G-FREAK 崎市東扇島東公園特設会場で行われる。 言って差し支えないだろう、神奈川県川 義を広く、そして深く知られ、 て出演させてもらったこともあり、自 の GUNMA ROCK FESTIVAL 、 FACTORY 取材をしたこともある。 もはや今現在のロックシーンにおい 分にとっては謝意の絶えないイベント の TOKI ROCK NIIGATA 、 Northern19 チャーの芽生え、隆盛の第一歩を思わ 安床 BROTHERS 、ジミー・ウィルキ なんである。 せる瞬間だった。 ンズ、ポール・リュック・ロンシェッティ て欠かすことができない DEAD POP の出演ライダー陣と、 賜物でもあった。 ジャンルに止めることなくバリエー 規模を拡大し、出演陣の顔ぶれもワン にそびえ立つ壁など︶を主題に、毎年 はもちろん、もっと規模を大きくし、 ジャンル間の壁をさらに崩していくの 取材で、 MAH ︵ ︶が﹁2015年は i AGAINST﹄i発売直前の対面 ︵ www.deadpopfest.com ︶ 。昨年、新 にもいろんな意味で突き抜けてくれる がその意義的にも、出演陣の顔ぶれ的 そうしたなかでも DEAD POP FESTiVAL になっていると言っても過言じゃない。 ある。ちょっとしたブーム、トレンド フェスティバル開催が百花繚乱状態に など、バンド先導によるイベント/ の THICK FESTIVAL SECRET 7 LINE 。 SiM の主導イベントで20 FESTiVAL 言うまでもなく、夏には全国津々浦々 ション豊かにしてきたことは、もはや 野外かなんかでやりたいですね﹂と ことを大いに期待したい。 その DEAD POP FESTiVAL が今年も 組みだったことから、最初は正直、手 でさまざまなイベントやフェスティバ 説明するまでもないだろう。自分はこ 語っていたが、それはついに現実のも 10年に渋谷 club asia で初開催されて 探り状態が続いたけど、フタを開けて ルが数多開催される。しかしそのなか のイベントに、重要な機会を何度も提 のとなる。イベントから完全にフェス 、 SECRET 7 LINE 、 THE Northern19 みたらなんとやらの、好結果だった。 において、この EXTREME ROCK は絶 供してもらった。名前しか聞いたこと 終了した。これまでに前例のない、ま いかにも夏らしい雲ひとつない晴天。 対ほかに類を見ないまったく独自の祭 がなかったバンドを、このイベントで 開 催 さ れ る こ と が 決 定 し た そこから間断なく降り注がれる強烈な 典であり、その独自性が完全に突き抜 以来、 ﹁壁を壊す﹂ ︵=音楽ジャンル間 陽射し。それを思いっ切り全身に浴び けているんだから、ワクワクする。今 ミニ作﹃ ながら世界最大級のバーチカルランプを、 ころか、勢いとライヴの本数は増すば ボーランド︵リンプ・ビズキット︶が が参加して、ゲストとしてウェス・ ロディを歌い上げ、ヘヴィなリフやブ 基盤としつつ、ポップで合唱必至なメ らしいポップで明るめのメロ REBIRTH いない街〟。こちらは ANGRY FROG ︵有島博志︶ 日米名うてのライダーたちがときに滑 日 テ ィ バ ル 化 し 、 7月 ︵日︶の2日間にわたり、彼らの地元と 日︵ 土 ︶、 初めて観て強く惹かれ、以降音源を聴 かりで、今も 都道府県を全制覇する き漁ってヘッドラインライヴを観たり、 リーズのひとつとして ZEPP TOKYO ︵有島博志︶ 夏も期待大だ! そして、そんなライダーたちをバック に、ストリートヴァイブを強く放つ ロックバンド、パンクバンドたちが炎 天下、熱いプレイとパフォーマンスを 披露し、見せどころ、聴かせどころを 連発/連打した。そのすべてがウソ偽 りのないリアルであり、その三者三様 の絵が見事に重なり合い、超強力な視 覚効果となって自分を直撃した。途中 何度、背筋がゾクッとし、テンション が上がったことか。そしてそれは間違 いなく、アクションスポーツとロック のクロスオーヴァーという、欧米には あってあたり前、しかしながら日本で 12 ロックがひとつの到達点を迎えてお 年の間に一気に盛り上がったラウド テップはもう古い!﹂と発言。ここ数 公演を行った際、 MAH ︵ ︶が﹁2ス ︵ /g ︶はバンド結成にあたっての構想 リーモ・コアと表現する。池田直樹 彼らは自らの音楽性をポップ・スク ため、走り続けている。 ちをきっかけに、それまでに触れてこ そのときに強調していたのが﹁自分た というのがイメージ﹂と語っていた。 ギターを弾いたらどうなるんだろう … の、 roku ︵b︶は はマストドンや SikTh ものとして機能している。また、池田 アなサウンドは、多くの人に開かれた レイクダウンも盛り込んだポップでコ だ。どちらの楽曲も、バンドのキャリ た歌詞も、さらに板についてきた印象 られている。日本語と英語を織り交ぜ ディながら、ひねりと工夫が散りばめ 47 り、これからはバンドの生き残り争い ヴァレンタインと ATTACK ATTACK! 延長線上にブレット・フォー・マイ・ として﹁ SUM 41 と ELLEGARDEN の 03年頃の、ごく初期のスクリーモを てほしい﹂ということ。たしかに20 なかったジャンルの音楽に興味を持っ U︵ ︶の特異なヴィジュアルも﹁ア のファンとのこと。それに BAT CAVE 違った形で新しい側面を見せるものに アをしっかりと踏襲しつつ、それぞれ 様相を呈するかわからないが、ムーブ メントに乗って出てきたバンドではな イアン・メイデンのエディみたいな、 ドを占ううえで重要なステップとなる のかはまだわからないが、今後のバン なっている。この次の作品がどうなる のは間違いないだろう。 マスコット的なキャラがいるとおもし バー自身が深く掘り下げた音楽ファン 本作をリリース後、長かった 都道府県 ろいと思って﹂のことらしい。メン であり、受けた影響をしっかりと自分 得させるだけのものができるのだ。あ はもちろん、耳の肥えたリスナーも納 るからこそ、音楽を聴き始めのキッズ たちのフィルターを通して表現してい 公演は対バン形式 CLUB QUATTRO 渋谷 TSUTAYA O-WEST 。昨年の渋谷 シリーズを迎える。最後の東京公演は、 公演をもって、やっと本当のファイナル・ ツアーが、5月の東名阪でのワンマン だったし、彼らにとってこの規模の会場 並々ならぬ気合をもって臨む だ ろ う 。 でのワンマン公演は初めてのこととなる。 が潜んでいることがわかるはずだ。 今年、 聴いてみると、ラウドロックのなかに、 その彼らが﹃ BRAVE NEW WORLD ﹄ にふさわしい1年となることを、期待 結 成 5 周 年 を 迎 え た。それを記念する シングル﹃ LOVE YOU ﹄だ。値段は今 回も前シングル﹃ EMILY ﹄同様、ワン ﹄に対し、今回はあらゆる EMILY コイン。しかし販路限定だった ﹃ ショップでの入手が可能だ。 いきなり壮大なシンセによる幕開けが まずはタイトル曲の〝 LOVE YOU 〟だが、 意表を突く楽曲だ。メロディもいつに なくセンチメンタル。これまでの方向 性から極端な変化はないものの、明ら かにネクストレベルへとリーチせんと していることがわかる。 年代の欧米 だ。そしてカップリングの〝僕だけが していようじゃないか。 ︵望月裕介︶ は ANGRY FROG REBIRTH で切り拓いた世界から、また次の地平 の一手が、3月 日にリリースされた へと歩みださんとしている。その最初 をはじめとしたさまざまな要素 J-POP らためて﹃ BRAVE NEW WORLD ﹄を 47 く、地道な活動で足場作りをしてきた ANGRY バンドが生き残っていくのは間違いな い。そういう意味で、この は見事にサヴァイブ FROG REBIRTH していくだろうと、僕は思っている。 そもそも、シーンに躍り出るときか ら、特殊な存在だった ANGRY FROG 。というのも、デビューミニ REBIRTH ﹄は完全な自主リリース MUSIK だったのだ。それもライヴ会場での手 作﹃ 売りや通販だけでなく、自分たちで ディストリビューターに持ち込み、全 国のCDショップに流通させた。結果 ﹄は1万枚以上出荷され 的に﹃ MUSIK るという実績を打ち立てる。レーベル からのバックアップも、メディアへの インタヴュー露出も、PVもなにもな しにここまでの数字を記録するのは、 異例どころの騒ぎではない。完全にバ ンドの実力で勝ち取った結果だ。そし てその実績を持って、次の﹃ Dance in ﹄からはレーベルと契約し、 the dark 活動していくこととなった。その後の ﹄や初のフルアルバム シングル﹃ EMILY これを読んでいる人ならばすでにご存 vo の 音 楽 番 組 を 意 識 し た P Vも 見 も の 60 ﹄での活躍は、 ﹃ BRAVE NEW WORLD 知だろう。途中で何度かメンバーチェ ンジが起こったが、活動が停滞するど 25 ではないだろう。今後シーンがどんな だけ が始まると感じているのは、 MAH vo vo 昨年 月、 SiM がツアーファイナルシ はなかなか育まれなかったクロスカル 11 vo DEAD POP FESTiVAL 度もクライマックスを作り上げた。 走し、またときに大技小技を噛ませ何 ら出演バンド陣の力演の GAME SHOP 、 TOTALFAT 毎 さに前代未聞のイベント、そして取り は、大成功のうちに EXTREME ROCK で催された i s l a n d resort stage 15 手 12 23 April - May 2015 April - May 2015 22 EXTREME ROCK ANGRY FROG REBIRTH がら最後には、これぞドゥノッツと思わ スターさながらのスリルを味わわせな げたミクスチャーロック/クロスオー 所で今からちょうど 年前に産声をあ 州シリコンバレー、サンノゼ。この場 高い場所、北カリフォルニア やアメリカでもっとも地価が ともあり少々トーンダウンしていたの 活動も個々のプロジェクトが忙しいこ ト﹄ ︵2010年︶以降途絶え、バンド リースは﹃プロジェクト・コンフリク 知られるバンドだ。残念ながら作品リ りに、 年から約4年間在籍したオリジ だったマイケル・ローワン︵g ︶の代わ だらけのなか、もの静かで弟的存在 が埋める。ワイルドな風貌のメンバー 人で元 Lica-Sto のショーン・ボイルス ダンスロック、フォークと、曲ごとに の5人組ドゥノッツが、久しぶりに動き せる大満足の1枚。英語バージョンの日 念と情熱の熱血漢、インゴ・ 出した。前作﹃ウェイク・ザ・ドッグ﹄ バーロックバンド、インソレンスを覚え さまざまな表情を見せ、ジェットコー ︵ 2 0 1 2年 ︶ を 発 売 し て か ら は 主 に 本リリースに合わせ、 GrindHouse 、 ノールマン︵ ︶率いるドイツ ヨーロッパを拠点に活動を続けてきた をさせてきたが、今年はかつて日本の せいか、日本のファンにさみしい思い ﹂にて5年ぶりとなる再来日公演 ONE 世界的に一躍人気バンドになって以降、 ︵2001年︶で が手を組んだ﹁ FOUR unite ﹃レヴォリューション﹄ TOKYO 、池袋 TOWER RECORDS 来日公演を数多くこなすに留まらず、 ているだろうか。メジャーデビュー作 そこからさらに月日が流れ、メンバー 在で観客を熱狂の渦へ巻き込んでいた。 サンノゼではまさに地元の雄のような存 うために集結。筆者も足を運んだが、 災の被災者へチャリティーライヴを行 ことを知らず、2011年の東日本大震 だが、彼らの日本に対する愛情は留まる 元のライヴに出演も決定し、先月か め た 6人 体 制 で 再 始 動 。 4月 に は 地 リスト、イッチー・ザ・キラーを含 大会DMCでも健闘するターンテーブ ツインヴォーカルに、世界最大のDJ じみのマーク・ハーマン&メッカ1の を果たしている。といったわけで、おな ナルメンバー、ジョーイ・ルイズが復活 20 0 0年 代 前 半 、 ポ ッ プ パ ン ク ・ もに、ドゥノッツはその存在をあらた 傑作と言っても差し支えない新作とと 誌あるいはウェブでチェック! 最高 ア ー 。ま た 、同 年 に は KINGSX ファンとの間に作り上げた絆を今一度、 を5月 日に行う。さらなる詳細は本 2008年には 10-FEET と、日米をツ 構成 に 変 化 が あ っ た 。 ま ず は 20 ブームを追い風にロックシーンに現れ 強いものにする年になりそうだ。 1 0 - F E Eの T たドゥノッツは輸入レコード店の店頭 平和記念公園を表敬訪問するなど、日 〟をシングル発売し、長崎の TAKUMA チ脱退の穴を、メンバーとは長年の友 日系の凄腕ドラマー、ケヴィン・ヒグ ベーシスト、ポール・ペリーが復帰。 が募りまくり! のこと。待望の新作リリースに期待 ! おいて夢物語にすぎないと言われてき も、かつて日本のロック界に ロントマン、スポークスマンへと成長 を視野に入れた活動をするバンドのフ タヴューを掲載した。彼が完全に世界 前号に Crossfaith の Koie ︵ ︶のイン のスゴさに感動する。本誌 Crossfaith 日 は 近 い 。 そ ん な 彼 ら が 4月 向かっていると聞くし、完全復活の は衝撃的だったものの、日々快方に ︵g ︶が病気療養中という一報 Kazuki いう活動をしているのは彼らだけだ。 てきた。ロック界を見渡しても、こう 洋楽ロックの普及・拡散にも尽力し ︵宮原亜矢︶ 本との関わりを積極的に持つことでも 〝ピ ー ス・ノ ッ ト・ボ ム めてアピールすることになるはすだ。 GrindHouse たことを堂々やり遂げ、実績を残して していることを実感し、りりしく思え キャリア初であり、今日までの活動 ︵山口智男︶ から徐々に人気に火がつき、3枚目に あたる﹃アンプリファイ・ザ・グッド・ タ イ ム ス ﹄︵ 2 0 0 2 年 ︶ で 日 本 デ ビュー。たちまち多くのロックファン から大歓迎されると、ポップパンクに 収まりきらないサウンドをアピールし ながら来日も重ね、しっかりとファン ベースを作ってきた。前作が本国 チャートで6位というバンド史上最高 のチャートアクションを残したことも あって、2013年、2014年と主に ヨーロッパをツアーしてきた彼らは今年 2月、 枚目となる新作﹃ Karacho ﹄ を発売。今のところドイツ語バージョン ﹄に CARAJO! のみの発売だが、英語バージョンによ る日本盤はタイトルも﹃ 日に から発売されることとなった。 recordings 変 わ り 、5 月 ドイツにある絶叫マシーンの名前から つけたと思しきタイトルを持つその新作。 きている。海外をコンスタントにツ た。これぞ正真正銘の日本を代表する パン ク や メ タ ル は も ち ろ ん 、 ス カ 、 ︵g ︶、そしてランディの親友だったル アーし、訪れた国々でちゃんと評価を ロックバンドだ。 ﹁ツアーばかりしてい ∼ DVD﹃ ACROSS THE FUTURE の総括を意味するドキュメンタリー Crossfaith ディ・サーゾ︵b/元クワイエット・ 得て、ファン層を築いているのだ。海 るんで、正直、定住となる場所は必要 も、この oldrain ライオット︶などによる〝クレイ 外をツアーする ま …さに言うが易し、 ない﹂。こんなセリフを吐けるバンド はオジー・バンド加入以前に結成した クの素養に裏打ちされた陰影のあるギ ジー・トレイン〟。トムはランディの 外に出るには、金も労力も時間もかか やるが難し。日本のロックバンドが海 期オジー・オズボーンのパート タープレイで伝説的な存在のラン プレイに迫るとともに、自身のカラー クワイエット・ライオットの楽曲をカ ディ・ローズ。 年3月 日、全米ツ を加味。サージのマッドマンぶりも心 ノー〟 〝クレイジー・トレイン〟といっ 注 目 は や は り 、 サ ー ジ︵ ヴァー。異才への思いを体現している。 の土俵になかなか乗せてくれないとい る。それ以上に敷居が高いのが、現地 はその間、とにかく突っ走ってきた。 大阪で結成されてからほぼ 年。彼ら は実に限られる。 である。 喫できるわけだ。お勧めの映像作品 体現してきたことを映像で観られ、満 ︶、 ト ム た名曲を共作するとともに、クラシッ アー中での飛行機事故によって 歳の 日に 若さで亡くなった彼のトリビュートア ︵g ︶らの〝ミスター・クロウリー︵死 うこと。欧米はその傾向が強い。かつ シングル、ミニ作、フル作といった作 ツアーでは欧米の若手バンドを呼び寄せ、 ︵有島博志︶ 発売する。彼らがこれまでに実践し、 の番人︶ 〟も、凄みのある歌声に、ラン 品群をタイムリーな時期に出し、国内 に日本発売された。 ランディは、米﹃ローリング・ストーン﹄ て自分は日本のロックバンドが現地で c o l d r a iや n はもとより世界各国を巡演した。国内 それだけに余計、 微塵になった瞬間を何度も目撃した。 ライヴを演るもまったくウケず、木端 カヴァーだ。 ディを彷彿とさせるセンシティヴ&エ にその後のシーンに与えた影響は大き い。日本でも 年代当時、そのプレイ に憧れてギターを手にしたロック/メ タル少年が多く、少年っぽさを残す ルックスや悲劇的な最期も相まり、死 後 年を経てなお絶大な人気を誇って いると言えよう。 そんな中、今作にはサージ・タンキアン モレロ︵レイジ・アゲインスト・ザ・ ︵システム・オブ・ア・ダウン︶、トム・ マシーン︶、アレキシ・ライホ︵チル ドレン・オブ・ボドム︶、チャック・ ビリー︵テスタメント︶、ガス・G︵オ ジー・オズボーン・バンド/ファイ アーウィンド︶らが参加。それぞれに ユニットを組み、ランディが関わった オジーの﹃ブリザード・オブ・オズ∼ 血塗られた英雄伝説﹄ ﹃ダイアリー・オ Crossfaith 36 80 ブ・ア・マッドマン﹄の楽曲、さらに ︵兒玉常利︶ モーショナルなフレーズが交錯する名 ∼すべての始まり﹄を The Beginning 22 vo 誌が選ぶ﹁史上最も偉大な100人の vo 19 ギタリスト﹂で 位。メタル系を中心 25 25 82 vo 10 ナーとして〝アイ・ドント・ 11 23 ルバム﹃ランディ・ローズ・アルティ pic by Patrick Runte 憎い。また、チャック︵ ︶、アレキシ INSOLENCE 27 メット・トリビュート﹄が、3月 日 c 10 featuring らプリプロダクションを開始したと 今 とのコラボした反戦ソング TAKUMA vo 14年 月に約7年ぶりにオリジナル 95 20 信 初 33 25 April - May 2015 April - May 2015 24 DONOTS RANDY RHOADS TRIBUTE GrindHouse e MagaNIVzERin RY SA YEAR SPECIAL 15th AN 揺サブラレタノハ 年代後半∼ 年代 イッタンデス。ダケド思イッキリ心ヲ ス。最初ハハードロックカラ入ッテ ヲヤロウト思ッタキッカケモ洋楽デ 音楽ノ出発点ハ洋楽デシタ。バンド サレテイタ。カトイッテトッ散ラカッ 感情ガ1枚ノ作品ニワカリヤスク注入 テソレダケジャナク、モット多角的ナ ヴァーナガイマシタケド、スマパンッ フォーカスシタバンドトシテ、ニル ヲ受ケマシタ。純度ノ高イ怒リヲ ク・クラプトンも好きで。その後、姉 た。父親は歌謡曲も好きだけどエリッ ブルースとかソウルとかを聴いてい ル、ブラックミュージックが好きで、 で流れる洋楽でした。母親が昔のソウ 音楽を聴きはじめたきっかけは、家 も含めて飽きない作品です。 ルーツでもあるので。そういうところ は少々ブルース調。ブルースはボクの 〟 がったし、 〝 Who Would've Thought ですけど、この作品のおかげで幅が広 と出会った直後はパンク小僧だったん ゴメイテイルコトダッタリ。ヨリリア タンデス。感情ダッタリ、世ノ中ニウ 現実味ヲ帯ビテイルナトイウ感ジモシ ナッテ。異質ナモノデアルト同時ニ、 憶ガアリマスネ。トテモ異質ナモノダ ロンナモノガ詰マッテイルト感ジタ記 ル数学的ナシンプルサトハ裏腹ニ、イ 的ニ言エバ明ラカニヒップ。目ニ見エ クテ。イイ意味デヨリシンプル。楽器 テカラソレヲ聴イタトコロ衝撃ガ大キ ジ。アル程度音楽ヲ知リ、土壌ガデキ 初頭ノオルタナギターロックヤグラン サヲツギ込ムトコロモ、カナリ影響ヲ シテイタリ。無駄デハナイ情報量ノ多 モアレバ、悲シカッタリ、ドコカ達観 ノ作品ニ激シイ怒リヲ表シテイルモノ モノスゴク影響ヲ受ケテイマス。1枚 ジャナイ表現ノ仕方トイウモノニハ、 続ケテイルト思ウンデス。イチ方向 的概念ヲブチ壊シテクレル作品ヲ作リ デスネ。スマパンッテ、スベテノ音楽 リーム﹄ヲ絶対ニ聴ケ!﹂ト言イタイ チ ニ ハ ﹁ 2枚 目 ﹃ サ イ ア ミ ー ズ ・ ド 頃邦楽ロックヲ中心ニ聴イテイル人タ テイルンジャナク、リアルニ響ク。日 ないですけど、衝撃的でした。歌詞も いたとき、もう完全に脳天に稲妻じゃ 番ビビっときた。ランシドを初めて聴 ろ聴いていったなかで、ランシドが一 すね。で、パンク系のバンドをいろい 代的にそれがカッコいいと思ったんで て、曲の速さに驚きました︵笑︶。年 だったから、聴いた瞬間﹁速っ!﹂ かされた。当時はブルースとかが好き ﹄ ︵ 年︶を聴 ﹃ MAKING THE ROAD おり、その影響で姉からハイスタの とかのコピーバンドをやって HEARTS が大好きだからです。 ドの作品でレゲエと出会い、ランシド 音楽をやっているかというと、ランシ 入っている。ボクがなんで今こういう の作品にはそういうのがいっぱい SiM までしゃぶりつくすというか。特に たい。好きなバンドの好きな作品を骨 とか、そういう楽しみ方もしてもらい みよう、ああ原曲はこんな感じなんだ んとかっていう曲なんだ、よし聴いて の先輩が Hi-STANDARD や THE BLUE ボクたちの曲を聴き、これは誰のな クニモ身近ナ歌詞トカ、自分タチノ感 イ。彼ラノオクターブ奏法ノ重ネ方ガ 受ケマシタ。アトハ単純ニギタープレ 初めて知った。不満だったり若いヤツ デカくて、こういうのもあるんだって なサイケロックがあったり。ハイスタ ニューウェイヴっぽかったり、不思議 カビリーみたいな感じだったり、 いろんなジャンルの曲があるから。ロ ちろんあるんですけど、それ以外にも 選んだのは、レゲエ色が強いことはも ﹃ライフ・ウォウント・ウェイト﹄を 発散させてくれるような感じがして。 詞として存在し、思春期のもやもやを らの気持ちを代弁するようなものが歌 情ト同調スルモノッテ、ケッコウアリ スマッシング・パンプキンズノ存在 ナト思イマス。 タ目カラ見テモ一番ウケタ理由ナノカ ルヨネッテイウ同調性トイウノガ、ハ ソレガリアルデ。ミンナソウ思ッテイ エゴッポク聴コエルンデスケド、逆ニ タ。内省的デアルトドウシテモ個人ノ 好キデスネ。 99 マシタケド、ソレガモット色濃カッ 80 ハデカカッタデスネ。数多バンドガイ RANCID ルナンジャナイカトイウ感ジヲ受ケタ 90 気ガシマスネ。 年代、 年代ノロッ 80 70 ルナカデ、一際異彩ヲ放ッテイル印象 April - May 2015 26 『LIFE WON'T WAIT』 (1998年) MAH (SiM) Jean-Ken Johnny (MAN WITH A MISSION) 洋楽の ススメ THE SMASHING PUMPKINS 『SIAMESE DREAM』 (1993年) OUT OUT NOW OUT NOW 4.22 OUT NOW AIR SWELL アポカリプティカ 『MY CYLINDERs』 OUT NOW OUT OUT 4.29 4.15 キャンサー・バッツ 『シャドウメイカー』 『サーチング・フォー・ゼロ』 元THE CHERRY COKE$ほかのhiromitsu(b)を 約5年ぶりの新作。あくまでもオリジナル収録全 カナダはトロント出身のハードコアバンドの5作目 正式に迎えてのAIR SWELLの新フル作。音源と 12曲中7曲の音源を聴いての判断だが、鍵は の新作。もともとメタル、パンク、ロックンロー しては前ミニ作『All Lead Tracks』 (2014年)より 2014年のツアーにも帯同したフランキー・ペレ ル、サザンロックなどさまざまな要素を貪欲に取 1年9ヵ月ぶりとなる。もちろん、彼らの名は前か ス(vo)の存在だと思う。小気味好くシンガロ り込み、独自のサウンドへと昇華させていた彼ら ら見聞きしていた。音源も初フル作『RIMFIRE』 ングな“コールド・ブラッド” 、1曲それだけで劇 であるが、今作でも世の中やシーンのトレンドな メタルコア第一世代のオール・ザット・リメインズ 2度の来日経験がある、北アイルランド出身の 新ミニ作『Returners』が出たばかりだという 80∼90年代を基調に、時折70年代にもさかの (2012年)とミニ作『ART OF PSYCHO』 (2013年) 的なメタルオペラを展開する“シャドウメイ どどこ吹く風。全編にアンダーグラウンド臭が立 の7作目は、激烈なメタルコアとアンセミックな ロックンロールバンドによる5枚目。AC/DC直系 のに、東京に活動基盤を置くFFTHが早くも新音 ぼるハードロックはそれだけで個性的だが、それ を聴いていたが、これまでライヴを観たことがな カー”、米ルーツ音楽をアポカリプティカとして ちこめ、野蛮で暴力的なサウンドが渦巻く1枚と メロディック曲を併せ持つ、集大成的な作風と 下にある、そのアティテュード、アプローチ、サ 源を発売。ライヴ会場限定販売の1曲入りのシン が懐古調に聴こえないのは紅一点のリジー・ヘイ かった。で、2月にようやく観ることができた。 昇華したとでも評したい“ホール・イン・マイ・ なった。ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイ なった。個人的に煮え切らないと感じる時期も ウンドはまったくブレを知らず、ヒヨらず、流さ グルだが、4月に始まり5月、6月と3ヵ月連続で ルのパワフルなヴォーカルがあればこそ。ラウド しっかり定点をもち、持ち得るすべてを短時間で ソウル”。バンドはこれまでも曲に応じてゲスト ンのマット・タックたちと結成したアックスワウ あったけれど、激しさも柔らかさも振り切らせ、 れることもなく、今作でも見事なまでに貫かれて リリースする。クレイジーな同期をふんだんに パークに2度出演歴がある4人組の3作目。バラード 一気にリリースし、観る者を巻き込んでいく、そ ヴォーカルを迎えてきたが、今作では1枚を通し ンドでも獣のようなスクリームを披露していたラ 新たな可能性を提示したこの作風には、素直に拍 いる。大先輩格のAC/DCとともに、不変の美学 まぶし、ゴステイストも少し散りばめたカッコ も堂々と歌い上げるその歌声を聴くためだけでも、 のライヴパフォーマンスは観応えがあり、楽しめ てフランキーがリードヴォーカルを担当。さらに イアム・コーマイアー(vo)だが、あちらはサウ OUT 手を送りたい。 を見事に体現する。 いいナイスチューンだ。 手に取る価値はある。 た。実はそのライヴの直後に、今作を聴いた。ラ はアレンジにも参加し、第5のメンバーとしてバ ンドがモダン寄りだったのに対し、こちらはとこ DATE ウドロック、ヘヴィロック、グランジ/オルタナ ンドに新風を送り込んでいる。実際、ヴォーカル とんオールドスクール。アックスワウンド経由で ティヴロック、メロディックパンク、ポップ、エモ 曲の軸にあるのは彼の情感的な歌声だし、作品全 本作にたどりついた人はプレイボタンを押す前に などの音楽的要素を思いっ切り吸い込み、絶妙な 体として風通しの良さは印象的。持ち前のモダン 覚悟した方がいいかもしれない。とはいえ、その バランス感覚で編み込んだサウンドに豊かに表情 なヘヴィネスとクラシックの融合も、よりソリッ 強烈な泥臭さは、一度ハマってしまえば最高の快 を変えていく楽曲群、そしてhamaken(vo,g) ドなベクトルへ向かったダイナミズムとともに、 感をもたらしてくれるだろう。本誌が出るころに のエモーショナルな歌唱法の三つ巴はギラリと輝き、 フラットな自由度を増した感が強い。プロデュー は5年振りとなる来日を果たし、日本において初 ひとえにカッコいい。説得力、求心力がある。迷 スは、フー・ファイターズ等で知られるニック・ となるヘッドラインショウを成功させているはず わず聴くべし! ラスクリネクス。あらためてその可能性を示し だが、これを機に日本での評価も高まることを期待。 オール・ザット・リメインズ OUT NOW IMPORTED INNOVATOR RECORDS:INNO-2007 トゥルーパー・エンタテインメント:QATE-10071 ユニバーサルミュージック:UICN-1074 (有島博志) ユニバーサルインターナショナル:UICN-1072/3 (松並慎一郎) ナイトウィッシュ (有島博志) Garimpeiro Records:GR-47 (山口智男) ワーナーミュージック・ジャパン:WPCR-16417 OUT OUT OUT 4.22 4.1 4.15 ペリカン IMPORTED OUT NOW スマッシング・パンプキンズ 7YEARS TO MIDNIGHT 『アークティカ+ザ・クリフ』 「Story of Hope」 『NOVEL』 『Historia EP』 3代目シンガーのフロール加入後、初となる新作。 インスト中心のポストメタル代表格によるライヴ メンバーチェンジを経ての初音源。目がくらむほど 音楽を通して幸せを伝えるという意味を込めた 高い歌唱力と表現力、力強さを兼ね備えたメタル 盤と新EPの2枚組。まずライヴだが、大ぶりの のシンフォニックなアレンジはそのままに、メタ “幸福模索Screamo”を提唱する仙台の5人組。 ディーヴァとバンドとの相性は抜群で、圧倒的 斧を振りかざすようなヘヴィチューンで攻め立 リックな要素が減退。高度なテクニックをいかん 疾走感あふれる演奏もさることながら、紅一点シ な存在感を放ちながら重厚で壮大なシンフォ てる様は、まさに圧巻だ。もう1枚は既発曲 なくぶち込んだ楽曲は複雑な構成で情報量も多い ンガーm!saの、ラウドシーンでは極めてユニーク ニックメタルに新たな輝きを加えている。特に “ザ・クリフ”にヴォーカルを加えたヴァージョン ながら、あくまで伸びやかなヴォーカルを主軸と な繊細な歌声に惹かれる6曲を収録した1st EP。 地球誕生から未来までをテーマにした24分にも や、パターン違いのリミックス、ほかに新曲も したポストハードコア作として、絶妙なバランス その彼女が一転、激しいグロウルを聴かせるラス 及ぶ最終曲は圧巻の出来だ。 収録と充実の内容。 を保持している。 トナンバーは衝撃の一言。 (松並慎一郎) 『リヴィール』 『イントゥ・ザ・ワイルド・ライフ』 GrindHouse recordings:GHRCD-1018 『エンドレス・フォームズ・モスト・ビューティフル』 フューチャー・リーダーズ・オヴ・ザ・ワールド ヘイルストーム 『HOLLOW NIGHT』 OUT NOW (兒玉常利) OUT NOW FEAR FROM THE HATE 『レイズ・ア・リトル・ヘル』 (望月裕介) た快作だと言えよう。 (有島博志) ジ・アンサー 『ジ・オーダー・オブ・シングス』 (望月裕介) (望月裕介) (山口智男) MADBALL 『モニュメンツ・トゥ・アン・エレジー』 ユニバーサルミュージック: 『HARDCORELIVES』 デイメア・レコーディングス:DYMC245 Garimpeiro Records:GR-43 Garimpeiro Records:GR-41 DVD付デラックス・エディションUICN-9027、通常盤UICN-1070 3月1日に初来日公演を行ったF.L.O.W.による 壮大なプログレサイケ路線にトラッドフォークの ニューヨークハードコアの代表格の4年振りと 新作。ニルヴァーナやアリス・イン・チェインズ 影響も加えた前作『オセアニア∼海洋の彼方』と なる通算8作目。ストリートに根ざしたヒップ といった90年代のグランジ/オルタナを2000年 比べれば、こじんまりしてしまった印象は否めな ホップ譲りのグルーヴとメタリックなヘヴィリフ 以降のニューメタルで再解釈したような、ヘ いものの、轟音ギターとメランコリックなメロ が刻まれるモッシーでタフな不変のハードコアサ ヴィながらメロディアスな作風だ。うるさく鳴 ディの組み合わせを軸にバンドが持つ魅力を凝縮 ウンドは、衰えるどころかむしろ強靭さを増して るギターやドッシリとしたリズムを聴けば、メ したこちらのほうが歓迎されるかもしれない。 いる。ファスト∼ミドルテンポを自在に行き交う ンバー全員がしっかりとしたテクニックを持っ 13年のサマソニで復活をアピールしたビリー・ タイトなプレイに加え、フレディのヴォーカルも ていることがよくわかるが、すべてがフィル・ コーガン率いるスマッシング・パンプキンズの再 切れ味抜群。ボートラを含めた17曲約36分間、 テイラーのややハスキーなヴォーカルを引き立 結成後3作目となるアルバム。サマソニに帯同して 拳でめった打ちするかの如く攻めたてる極悪なア てるために機能しており、ごまかしのない歌もの いた女性ベーシストと若いドラマーが抜け、 ルバムだ。ハードコアというと、危ない、怖いと に仕上がっている。 “Can't Go”や“Our ビリーとジェフ・シュローダー(g)に加え、なんと いったイメージを持つ人もいるかもしれないが、 Secrets”といったダークさの強い曲が多いが、 トミー・リー(ds)が全曲で参加。前作よりも明 本作を聴き、シンガロングすれば、真の意味での “Killing Blow”のようなポップさを垣間見せる らかにロック色の濃い楽曲にパワフルなビートを ハードコアとはなにかを感じることができるので 瞬間や、温かみのあるアコースティックギター 加えている。簡潔にまとめられた曲の数々は前作 は? ストイックなまでに自らのスタイルを貫き とともにとつとつと語りかけるような曲もあり、 からの反動と考えられるが、 “ラン・トゥ・ミー” 通し、シーンに君臨し続ける彼らの姿勢もそれを カラーの幅広さも充分。とはいえ、楽曲展開や や“ドリアン”に加えられたビリーによるエレ 体現している。なお、テラーのスコット、H2Oの テンポ等、極端なことは一切やっておらず、それ ポップ/ニューウェイヴ趣味とあいまって、彼ら トビー、ウォールズ・オブ・ジェリコのキャンダ らをフィルの熱っぽくパワフルな声がまとめあ のディスコグラフィー中、最もポップな作品に イス、ニュー・ファウンド・グローリーのチャド げていく。派手さや目新しさはないかもしれな なった。年内にリリースする次回作はよりパーソ といったハードコア界隈ではおなじみのメンツに いが、王道とも言える方向を取ることでバンド ナルな作風らしい。その七変化もまたスマパンの 加え、元WWEの人気レスラーCMパンクがゲスト の実力を浮き彫りにさせた快作だ。 魅力のひとつだ。 参加。 Let (望月裕介) (山口智男) (松並慎一郎) スーマック ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル:SICP-4373 April - May 2015 ゼブラヘッド 『ウィ・アー・ハーロット』 IMPORTED FILTER 『グレイテスト・ヒッツ?』 『THE SUN COMES OUT TONIGHT』 現在オールド・マン・グルームやマミファー等 メタルコアの王道アスキング・アレクサンドリア パンスプに参戦したゼブラヘッドの初ベスト盤。 リチャード・パトリック率いるフィルターの6作目。 で活躍するアーロン・ターナーの新バンドがデ に別れを告げて、ダニー・ワースノップが挑んだ 祝・結成20周年の意味合いもあり、ジャスティン ヘヴィなインダストリアルロックをベースにしつ ビュー。初期のアイシスを思わせる、長い時間 のは、自らのルーツであるロックンロール。激情 在籍時の曲のヴォーカルパートを、現ヴォーカル つも、アコースティックサウンドを生かしたアメ をかけて殺気だったリフと咆哮でじっくりとな 的ながらも古き良きロックの渋みや色香を放つバ のマッティ・ルイスが歌い直している。新曲 リカンロック的側面も見せる彼ら。キャッチーな ぶり殺しにするかのような超絶ヘヴィなスラッ ンドサウンドと、20代半ばとは思えない貫禄の “デヴィル・オン・マイ・ショルダー”にはMWAM メロディは健在だが、ピアノの弾き語りによるバ ジ/ポストメタルに回帰しており、シーンの先 ダニーの歌声のはまり具合に、もはやAA脱退を のJean-Ken Johnnyがゲスト参加。けっこう ラードなど新境地もあり、よりバリエーション豊 駆者たる実力を見せつけている。 惜しむ声すら上がらない。 濃い内容だ。 かなサウンドに。 (宮原亜矢) (有島博志) (松並慎一郎) BNB LABEL:BNB002 PROFOUND LORE RECORDS:DYMC-242 28 OUT NOW 4.1 ウィ・アー・ハーロット 『ザ・ディール』 (望月裕介) GrindHouse recordings:GHRI-1006 OUT OUT NOW ワーナーミュージック・ジャパン:WPCR-16357 ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル:SICP-4384 WIND-UP RECORDS:60150-13350-2 April - May 2015 29
© Copyright 2024 ExpyDoc