Essential 7章(転写、複製) まとめプリント

Essential
7章(転写、複製)
まとめプリント
セントラルドグマとは?
DNA からmRNA へ転写され、tRNA を介してタンパク質へと翻訳される.
あらゆる細胞で、この DNA→RNA→タンパク質という流れで遺伝情報が働く、という根
本的な原理のこと.
~DNA から RNA へ~(転写)
1個遺伝子から多数の同一 RNA、その各 RNA 分子から多数の特定のタンパク質が合成さ
れる→DNA から直接タンパク質を合成するよりも、はるかに効率良くタンパク質生産可能
また、遺伝子ごとにタンパク質の必要量に応じて、効率の調節も可能
・DNA と RNA の構造の違い(塩基や糖など化学的な違いははじめの方の章参照)
DNA…細胞内では必ず二重らせん
→遺伝情報の保持のみが目的で、安定性を求める
RNA…折りたたまれて様々な形に
→複雑な形がとれ、構造的機能以外に触媒機能をもつものもある
・転写産物としての RNA
鋳型となる DNA 鎖と完全に相補的だが、はるかに短い
・RNA の合成
◎RNA ポリメラーゼにより転写される
◎1個の RNA の合成終了前に次の RNA 合成が始まる
◎RNA ポリメラーゼはプライマー無しで合成開始可能
◎RNA はすぐ分解されるので約1万塩基対に1回と RNA ポリメラーゼのミスの頻度は
高め
・RNA の種類
m(メッセンジャー、伝令)RNA…元の遺伝子のコピーで、タンパク質合成を指令
t(トランスファー、運搬)RNA…特定のアミノ酸をリボソームへと運び、タンパク質
合成のアダプター的役割
r(リボソーム)RNA…リボソームを構成
・転写の開始、終結のシグナル
① RNA ポリメラーゼは DNA 上のプロモーター(開始点)と強く結合
② DNA 二重らせんをほどきながら進み、一方の DNA 鎖を鋳型として転写が行われる
③ ターミネーター(終結シグナル)に出会うと転写終了
cf.細菌では、RNA ポリメラーゼ内のシグマ(σ)因子がプロモーター配列を認識
・転写の特徴
◎複製同様、5’→3’方向のみ
◎プロモーターは遺伝子の前にしかないため、DNA の内、遺伝子を含む部分のみ転写
される
◎DNA の遺伝子間の、遺伝情報を持たない部分をスぺーサー領域と呼ぶ
・RNA プロセシング…①RNA キャップ形成②ポリアデニル化③スプライシング
※①②はmRNA になる RNA のみ、③はその他の RNA も
細菌→DNA は細胞質中にあり、転写と同時に翻訳も進行
真核細胞→DNA は核内にあり、核膜孔から運び出される前に RNA プロセシングがなさ
れる必要があり、転写中から開始
① RNA キャップ形成…mRNA になる RNA の5'末端に、メチル基を持つグアニンが付
加される(転写中から)
② ポリアデニル化…転写終了直後のmRNA3’末端において、特定の塩基配列が除去さ
れ、代わりにアデニン反復配列(ポリ A 尾部)が付加される
① 、②の役割→・mRNA 分子の安定性を高め、核外への輸送を補助する
・mRNA であることの目印
③ スプライシング…DNA の遺伝子部分では実際にタンパク質を指定するエキソン(=
発現配列)がイントロン(=介在配列)によって分断されており、このイントロンを除去
・スプライシングのしくみ
◎イントロン中に除去の目印となる短い塩基配列が存在
◎イントロンの除去は『投げ縄』構造の形(Essential p239 図 7-16.A 参照)
◎スプライソソームによって行われる
◎スプライソソームとは…核内低分子(snRNA)とタンパク質の結合で出来る核内低分
子リボ核タンパク質(snRNAs、スナープスと読む)が中心となる、巨大複合体
・タンパク質合成の多様性の増大
◎DNA 内に多くのイントロンが存在することで、異なる遺伝子のエキソン間での組換え
促進→有用な新たな遺伝子の出現を加速させる
◎組換えの結果、タンパク質の多くは、ドメイン(4 章参照)のパッチワーク構造
◎細胞の種類、発生段階に応じてスプライシングのやり方が異なり、異なるmRNA が合
成される→同じ遺伝子から異なるタンパク質が合成可能(=選択的スプライシング)
~RNA からタンパク質へ~(翻訳)
・コドン(mRNA の連続した3個のヌクレオチド)1つが、1つのアミノ酸を指定
※逆に、1つのアミノ酸を指定するコドンは複数存在.コドンは4×4×4=64種類(終
始コドンを除けば61種類)、アミノ酸は20種類
・コドンに対応するアミノ酸は、tRNA に結合して運ばれてくる
・アミノ酸:コドン=1:複数の対応となる理由
→アミノ酸とコドンの対応は、コドンのはじめの2個の塩基配列では正確だが、3個目
は正確でなくても良い(揺らぎを許す)
・tRNA とアミノ酸の結合
→アミノアシルtRNA 合成酵素による
各アミノ酸ごとに合成酵素が異なるため、tRNA は対応するアミノ酸のみと結合
・mRNA によるタンパク質合成指令の解読
→リボソーム(リボソームタンパク質とrRNA から成る大型の複合体)で行われる
・リボソームの構成:大サブユニット、小サブユニットが1個ずつ組み合わさっている
大サブユニット…アミノ酸間のペプチド結合形成
小サブユニット…tRNA をmRNA のコドンに結合させる
cf.tRNA の役割は、ポリペプチド鎖末端に正しくアミノ酸を付加すること
・翻訳の際のリボソーム上での動き(Essential p252 図 7‐31 参照)
① リボソームには A、P、E3つの結合部位が存在
② ポリペプチド末端にくっついたtRNA が P 部位と結合している時、新たなtRNA は隣
の A 部位に結合
③ アミノ酸どうしが結合すると、2個のtRNA の結合部位が P、A から E、P にスライ
ド
④ E 部位と結合している RNA が遊離し、また新たなtRNA が A 部位に結合
→以上が反復され、ポリペプチド鎖が伸長していく
P‐A 間でのアミノ酸の結合はぺプチジル基転移酵素が触媒
・リボソームはリボザイムの一種
リボザイム…触媒活性をもつ RNA 分子
・タンパク質合成の開始
①細菌、真核細胞に共通な特徴
◎mRNA の翻訳は AUG コドンから開始
◎AUG コドンに対応するtRNA(即ち、UAC アンチコドン)は必ずメチオニンと結合
②真核細胞に固有の特徴
◎メチオニンと結合したtRNA は翻訳開始因子とともにリボソームの小サブユニッ
トと結合した状態で、mRNA に結合…(*)
◎mRNA 上を移動し、AUG に出会うと開始因子の一部が遊離し、代わり大サブユ
ニットが結合してリボソーム完成
◎(*)はmRNA5'末端キャップ構造(RNA プロセシング参照)が目印なので、mRNA
がもつタンパク質情報は1種類のみ
③細菌に固有の特徴
◎細菌のmRNA には5'キャップ構造無し
◎代わりの目印は AUG の数塩基上流のリボソーム結合配列
→mRNA の5'末端以外からも翻訳可能
→mRNA 上に複数のタンパク質情報がある場合が多い(=ポリシストロニック)
・タンパク質合成の終結
◎終始コドン(UAA、UAG、UGA)が目印
◎終結因子なるタンパク質の働きにより、タンパク質はリボソームから遊離
・タンパク質の立体構造形成
シャペロン(正確かつ効率的な折りたたみの補助を行う、4章参照)との結合もリボソー
ムでのタンパク質合成中に行われる
・ポリリボソーム(ポリソーム):1本のmRNA 分子に、約 80 ヌクレオチド間隔で複数のリ
ボソームが結合した状態
→ポリリボソームの存在により、タンパク質合成効率 UP
細菌では RNA プロセシングが無く転写中から翻訳が始まるため、さらに効率が良い
・真核、原核細胞のタンパク質合成の違いの利用
→抗生物質…多くが、元は菌類が細菌に生存競争で勝つために用いた毒素
・タンパク質分解…プロテアーゼが担う
真核細胞では①リソソームでの分解
②細胞質でのプロテアソーム(複数のプロテアーゼから成る)による分解
→ユビキチンが目印