Nougyou Sanpo

地域アドバイザーの視点②∼九州・沖縄編∼
熊本県阿蘇市のトマト農家・斉藤さんの取組
JA熊本中央会のご担当者の方と一緒に熊本県
阿蘇市のトマト農家 斉藤信幸さんのもとを訪れ
ました。斉藤さんはもとより、息子の孝幸さん、研
修生の皆さんとお話させていただきました。
研修生を多く受け入れ独立させていく斉藤さん
の取組をご紹介します。
◇ ◇ ◇
斉藤さんは昭和43年に農業高校卒業後、家業
の農家を引き継ぎました。農業高校を卒業したも
のの、実際始めると分からないことばかり。そこか
ら
『農業技術大系』
(農文協)
を買い、10年かけて農
業技術を勉強したと言います。斉藤さんの理念は
「科学的根拠に基づいた栽培技術の確立」
です。
斉藤さんのトマト栽培では“うぃずOne”
という
システムを導入しています。全農では平成25年か
れ始め、
これまで10名の研修生を独立させてきま
農 業 で 稼 ぐ こ とので き る 人 材 を 育 成
科学的根拠に基づいた栽培技術確立
ら新たな栽培システムとして普及を推進していま
すが、斉藤さんは20年前からこのシステムを導入
しています。それも勉強し続けた農業技術があっ
てこそ導入できたもの。
「農業は研究職」であると
強く感じました。15年ほど前から研修生を受け入
した。研修生は、
日中は斉藤さんからノウハウを学
び、夜は『農業技術大系』で理論を学びます。斉藤
さんは研修生に父親のように接し、身だしなみや
礼儀もキッチリ教えます。地域から愛される人材
づくりを心がけています。
研修生も、斉藤さんと初めて話したときに
「この
師匠のもとであれば成功できるかも」
と感じ、実際
に研修に入ると確信に変わっていくと言います。
元研修生の方は「成功するポイントは良い師匠と
出会うこと」
とお話されていました。
一番を取るためのトマト作りを指導
夏秋トマトは10アール当たりの収量が50∼
500万円と開きがありますが、斉藤さんの畑では
470万円程度。独立した元研修生も皆さん400万
円台で、地域トップクラスです。
「適切に作ればおいしいものを安く大量に作る
ことができます。その“適切”の部分を数値と理論
をもとに教えることが大切。
ここは『一番を取るた
めの塾』ですよ」
と、斉藤さんは自信を持って話し
ます。
斉藤さんには
「農業を事業として捉え、稼いだ利
益からしっかり納税し、持続する真の地域貢献を目
指す―そういった人材をたくさん育てたい」
という
「信念」があります。現在熊本では、斉藤さんとJA、
自治体が一緒になり、技術や思いを若い世代に伝
え、夢を持って農業を始める若者を増やす活動を
積極的に展開しています。
(九州・沖縄ブロック 井上 順太郎)
斉藤信幸さん
(写真中央)
と研修生の皆さん
8・9月の雇用管理研修会・雇用管理改善相談会・事業説明会
求職者向けに初の事業説明会
●雇用管理研修会・相談会
実施予定日
時間
都道府県
内容
農業雇用改善推進事業の「雇用
8月 7 日(金) 13:30∼16:00
茨城県行方市
就業規則/法人化
管理研修会」
「雇用管理改善相談
8月19日(水) 10:00∼12:00
宮城県岩沼市
就業規則/人材育成 他
8月25日(火) 13:30∼15:30
大阪府大阪市
法人化/経営改善
8月27日(木) 13:30∼15:00
岡山県岡山市
法人化
8月31日(月) 14:00∼16:00
愛知県豊橋市
法人化/事業継承
9月 2 日(水) 14:00∼17:00
山形県山形市
就業規則/人材育成 他
9月16日(水) 13:00∼17:00
静岡県藤枝市
法人化/事業継承/就業規則
会」および「事業説明会」の8・9月の
開催日程が決まりました(7月22日
現在、確定分)。
また、
8月28日には、
求職者向けの「事業説明会」を大阪
市内で初めて開催します。
●事業説明会・相談会
実施予定日
時間
8月28日(金) 13:30∼16:00
都道府県
大阪府大阪市
内容
仕事としての
“農業”
を知ろう
発行元:株式会社 マイナビ 〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋一丁目1番1号 パレスサイドビル9F
TEL:03-6267-4375 FAX:03-6267-4376 E-mail:[email protected]
農業雇用改善推進事業ホームページ http://nougyou.koyou-kaizen.jp
Nougyou
Sanpo
厚生労働省委託事業 農業雇用改善推進事業
2015.08 Vol.3
農作業中の熱中症による死亡事故は平成22年
度以降、毎年20件以上発生。うち8割は70歳以
上の方が占めております。
日 ご ろ か ら ご 自 身 の 健 康 管 理 、ま た 体 力 に
合った作業をすることで、事故防止につながり
ます。健康と農作業事故等には十分気をつけ、豊
穣の出来秋を迎えましょう。
●熱中症予防ポイント
①天気予報と体調チェック
・
『高温注意報(予想最高気温35℃以上)』を確認
し、また体調がすぐれない時は作業を控える。
経営環境の円滑化にもつながり公的信用も得られます
●従業員を新たに雇い入れる場合の主な助成金
助成金名称
助成金額
特定求職者雇用開発助成金
(特定就職困難者雇用開発助成金)
対象労働者 1 名につき
60∼240万円
特定求職者雇用開発助成金
(高年齢者雇用開発特別奨励金)
対象労働者 1 名につき
60∼90万円
トライアル雇用奨励金
対象労働者 1 名につき
原則月最大4万円
●従業員のキャリアアップ・育成を図る場合の主な助成金
助成金名称
助成金額
キャリアアップ助成金
(正規雇用等転換コース)
1. 有期→正規:1人当たり50万円
2. 有期→無期:1人当たり20万円
3. 無期→正規:1人当たり30万円
企業内人材育成推進助成金
制度導入 20∼50万円
1名につき5∼15万円
●従業員の雇用環境の整備・改善を図る場合の主な助成金
助成金名称
助成金額
職場定着支援助成金
(中小企業団体助成コース)
実施費用の 2/3
職場定着支援助成金
(個別企業助成コース)
1.制度導入助成/各10万円
2.目標達成助成/60万円
高年齢者雇用安定助成金
1.「高年齢者活用促進の措置」
に要した費用の 2/3 の額
2. 対象者の人数 ×20 万円
※1と2を比較して少ない額を支給
※主に中小企業の内容を記載
農業においても各種助成金を適切に活用することで、
雇用環境や労働環境の改善を図ることができます。そ
のうち、雇用関係助成金の種類や活用の仕方を把握す
ることで、適切な活用を図ることができ、経営環境の円
滑化も図ることができます。
雇用関係助成金は、雇用保険に加入していることが
最低条件となります。受給のポイントとして雇用保険滞
納の場合は受給できないケースがあるほか、
① 会社都合で従業員を解雇していないこと
② 社会情勢によって名称や内容が変化することがあり、
常に最新の情報を得ることが必要
③ 不正行為に対してはその後3年間は受給できない
ケースがあるほか、刑事告訴される場合がある
④ 期限付きのものが多く計画的な申請が重要
⑤ 基本的に雇用関係助成金の併用は不可
̶などが挙げられます。
雇用環境や労働環境を改善するのに役立つ雇用関
係助成金として、
「 職場定着支援助成金」
( 個別企業助
成コース)
と
「キャリアアップ助成金」
(正規雇用等転換
コース)があります。 受 給 に お いて は 雇 用 保 険 加 入 が 最 低 条 件
雇用関係助成金を活用し雇用環境や労働環境の改善を!
現 場における 安 全 管 理の理 解を
農作業中の事故事例②
∼熱中症対策∼
職場定着支援助成金(個別企業助成コース)
農業では労務管理に苦慮している実態があります。雇用関
係助成金を活用するために就業規則を作成している法人も
・濡れタオルや保冷剤をくるんだタオルなどを
首筋に巻くなどして体温低下に努める。
・食事や睡眠は十分とる(前日のアルコールは控
える)。
②作業環境と休息
・日中の作業は涼しい場所で休憩をとる。
・ハウスや畜舎の換気を行い温度上昇を防止する。
・通気性の良い生地で涼しい服装にする。
・こまめに休息と水分をとる。
③作業時に注意する点
・朝夕の涼しい時間帯に集中して作業を行う。
・炎天下での作業は1人で行わず、掛け声をかけ
ながら作業をする。
・万が一に備え携帯電話を身に付ける。
●熱中症になったら・・・
・涼しい場所に避難しましょう。
・衣服を脱いで身体を冷やしましょう。
・水分・塩分を補給しましょう。
・症状が改善しない、体調に違和感がある場合は
遠慮なく救急隊を要請しましょう。
くり制度、
メンター制度それぞれ10万円の支給額で、目標達
成助成は定額で60万円の支給額となっています。
キャリアアップ助成金(正規雇用等転換コース)
ありますが、実態に沿っていないところも多いのが実情です。
農業においては、試用期間の2∼3ヶ月間では、全てのプロ
就業規則は、経営理念に基づき、従業員との信頼関係を築
セスを経験できないため、収穫作業で音を上げ離職するなど
きながら自立型社員を育み、人と社会を幸せにする
「魅力あ
のケースがあります。採用面接時に不安を感じられる場合は
る職場づくり」
を目指す土台であり、共通の行動指針です。経
入社時6ヵ月間の有期雇用契約を締結するという方法があり
営者の思いを伝えるツールであり、ルールブックでもあります。
ます。ただ、求人募集時に正社員への登用をするということ
雇用管理制度を明記した就業規則作成・更新を行うことが
を明記しないと応募は見込めません。
重要ですが、高度なノウハウが必要なため専門家へ相談する
求人条件に正社員登用等を明記するのであれば、就業規
ことが望ましいと言えます。
則にも有期雇用契約、無期雇用契約、派遣社員から正社員へ
「職場定着支援助成金」は、事業主が、雇用管理制度(評
の転換を行う制度があることを記載する必要があります。
価・処遇制度、研修制度、健康づくり制度、
メンター制度)の導
「キャリアアップ助成金」は、いわゆる非正規雇用の労働者
入等による雇用管理改善を行い、人材の定着・確保を図る場
などの企業内でのキャリアアップを促進するもので、正規雇
合などに受給できます。
用への転換、人材育成、処遇改善などの取組内容に応じ6つ
うち、個別企業助成コースでは、雇用管理制度整備計画の
のコースがあります。
認定を受け、
これに基づき、雇用管理制度を導入・実施した場
うち、正規雇用等転換コースは、有期契約労働者等を正規
合に支給される制度導入助成と、雇用管理制度の導入・実施
雇用等に転換したり、派遣労働者を直接雇用した事業主に助
の結果、離職率の低下目標を達成した場合に支給される目
成するもので、例えば、有期契約労働者を正規雇用にした場
標達成助成に分かれています。
合、
1名当たり50万円が支給されます。
制度導入助成の場合は評価・処遇制度、研修制度、健康づ
農業雇用改善推進事業の雇用管理研修会では、
セミナーテーマの中に
「助成金活用」
を盛り込んでいます。
各地の地域アドバイザーと相談しながら、同テーマでの研修会開催が可能です。