サルコペニアは根治的治療後の肝細胞癌の再発の危険因子となる

サルコペニアは肝細胞癌の根治的治療後の再発の危
険因子である Sarcopenia is a risk factor for the recurrence of hepatocellular carcinoma after curative treatment. Hepatol Res. 2015 Jul 29 【はじめに】 サルコペニアはもともと、高齢化や悪性疾患に伴った筋肉量と
強度の低下として提唱された概念である。本研究の目的は、根治
的治療後の肝細胞癌の再発にサルコペニアがどう関係するかを調
べることである。 【方法】 我々は、治癒切除やラジオ波焼灼療法を初めて受けた、連続し
た肝細胞癌の患者を、レトロスペクティブに分析した。肝障害の
原因や重症度が影響することを避けるために、被験者は C 型肝硬
変で Child‐Pugh クラス A の肝機能に限定した。第三腰椎レベルの
筋肉量(L3 骨格筋インデックス; L3 SMI)を CT 画像により計測し
た。サルコペニアは、以前に発表された、性別カットオフ値を使
用した。 【結果】 サルコペニアは 61/92 人(67%)の患者に認められた。患者の
平均年齢は 71.5 歳(47~84 歳)で、患者の基本的特性は、性別、
血清アルブミン値、プロトロンビン時間、糖尿病、および肥満度
指数を除き、サルコペニアとそうでない患者の間で同等であっ
た。 1、3、5 年後の再発率はサルコペニアの患者で 39.1%、
77.1%、81.7%、サルコペニアのない患者で 23.5%、59.5%、75.7%
であった(P = 0.03)
。多変量解析によると、サルコペニアと術前
AFP> 40 ng/mL が独立した有意な再発因子であった。 【結論】 サルコペニアは根治的治療を受けた肝細胞癌における再発の危
険因子である。 1
骨格筋量を評価した画像 BMI が同じ(23Kg/m2)患者の、第三腰椎レベルの水平断の CT 画像である。青色は骨格筋を示している。 左の画像はサルコペニアのない患者であり、L3 骨格筋指数(SMI)=63.7cm2/ m2。 右の画像はサルコペニア患者であり、L3 SMI=36.8 cm2/ m2。 男性 女性 L3 骨格筋指数の分布 L3 骨格筋指数の平均は男性 46.8 cm2/ m2、女性
40.5 cm2/ m2 であった。 サルコペニアは男性の方により多く見られた。 サルコペニアあり サルコペニアなし
累積再発率 患者数 根治治療後の再発までの時間曲線 サルコペニアのある患者はサルコペニアの
ない患者と比較して有意に短期間で再発し
た(P=0.03)
。 時間(月) サルコペニアなし サルコペニアあり 2
累積生存率 サルコペニアなし サルコペニアあり 患者数 根治療法後の全生存曲線 サルコペニアのある患者はサルコペニアのな
い患者と比較して有意に生存期間が短かった
(P =0.04)。 時間(月) サルコペニアなし サルコペニアあり BMI<25Kg/m2(N=73) BMI≧25Kg/m2(N=19) サルコペニアあり サルコペニアなし 累積再発率 累積再発率
サルコペニアあり サルコペニアなし 時間(月) 時間(月)
患者数 患者数 サルコペニアなし サルコペニアあり サルコペニアなし サルコペニアあり BMI 別の再発までの時間曲線 右の BMI≧25Kg/m2 の患者では、サルコペニアがあると再発率が高かった(P<0.01)。 その一方、左の BMI<25Kg/m2 の患者では、サルコペニアの有無による再発率の差はなかった。 3