ISSN 2014 BULLETIN OF KURUME INSTITUTE OF TECHNOLOGY ‐ 2014 久 留 米 工 業 大 学 研 究 報 告 久留米工業大学 研究報告 第 号 No.37 [Paper] No.37 Improvement of Steering Effort Characteristics on Small Type Racing Car ……………………………………………………Takuma MAEDA and Kazunori MORI……… [論 Analysis on Spring and Damper Characteristics of Suspension with Bell Crank Mechanism ………………………………………………………………………………Kazunori MORI……… Fundamental Study of Waste Heat Recovery in the High Boosted MultiCylinder Diesel Engine ………………………………………………………………………Takuya YAMAGUCHI……… Effects of Excitation Phenomenon by a Radioactive Ceramics Catalyst on Engine Combustion ………………………………………………………………………Takashi WATANABE……… 文] 小型レーシングカーの操舵力特性の改善 …………………………………………………………前田 拓磨・森 和典……… ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 …………………………………………………………………………森 和典……… 高過給多気筒ディーゼルエンジンにおける排熱回生の基礎研究 …………………………………………………………………………山口 卓也……… エンジンの燃焼に及ぼす放射性セラミックス触媒による励起作用の影響 …………………………………………………………………………渡邉 孝司……… Research of Power Output Efficiency by Solar Photovoltaics System in Kurume City ………………………………………………………………………Yoshitami NONOMURA……… 久留米市における太陽光発電システムの発電効率に関する研究 …………………………………………………………………………野々村善民……… Verification of relationship of evaluation taste palatability and result using ranking algorithm of food with favorite taste …………………………………………………………………………………Shinichi ETOH……… 味の嗜好性評価結果と好みの味順位化アルゴリズムの順位結果との関係性の検証 …………………………………………………………………………江藤 信一……… Issues and Perspectives on the Career Education in The Central Council for Education s report on Future vision on Career Education and Vocational Education at school ………………………………………………………………………………Kenichiro HORI……… 「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(中教審答申)から みるキャリア教育の課題と展望 …………………………………………………………………………堀 憲一郎……… [List of Articles, Reports / Miscellaneous, Books and Presentations] …………………………………………… [論文,報告・その他,著者および学会講演]…………………………………………………………… [List of Master s Theses (2013)] ……………………………………………………………………………………… [平成 年度修士課程修了論文題目]……………………………………………………………………… 久 留 米 工 業 大 学 久留米工業大学研究報告 NO. MK 稲 加 杉 芦 森 背幅 .ミリ (森) 久留米工業大学研究報告 No. 久 留 米 工 業 大 学 小型レーシングカーの操舵力特性の改善 〔論 ― ― 文〕 小型レーシングカーの操舵力特性の改善 前田 拓磨* ・森 和典* Improvement of Steering Effort Characteristics on Small Type Racing Car Takuma MAEDA* and Kazunori MORI* Abstract Generally, in small-type racing cars, it is difficult to balance the vehicle dynamics capability and the steering effort characteristics because of the restriction of the vehicle specifications. By analyzing steering effort using a simple steering model and a mechanism analysis that uses 3D-CAD etc. on the vehicle with the double wishbone type suspension and the R&P type steering system, the researchers clarify a method that can coexist making the suspension/ steering geometry the target characteristics and achieving the decrease of steering effort. Key Words:Racing car, Vehicle dynamics, Suspension, Steering, Geometry, Steering effort .まえがき JSAE フォーミュラーカー(JSAE カーと記述する)は,オープンホイールタイプの小型レーシングカーの範疇に入 り,車両レイアウト上,サスペンションやステアリングのリンク長を短くせざるを得ないなどサスペンション/ステア リング・リンクのジオメトリを決定する際の制約が多く,目標とする走行性能を確保しつつ操舵力の適正化を図ること は克服すべき課題のひとつである. そこで,JSAE カーのダブルウィッシュボーン式フロントサスペンションに関して,ステアリングおよびサスペンショ ン・ジオメトリの観点から,目標のジオメトリ特性の確保と操舵力低減の両立を図る方法を検討したのでその概要を報 告する. .ステアリングの簡易モデルによる操舵力解析 ・ 記号の説明 本報の中で用いる主な記号とその説明の一覧を示す. :ステアリングホイール∼コラムシャフト部の減衰係数 :ピニオン・ギヤから伝達されるラックギヤ推力 :コーナリングフォース :ステアリングホイール操舵力 :タイヤ発生力による抵抗やラック軸受等の摩擦力 :ラック部の全推力 :コラムシャフト部の慣性モーメント :ステアリングホイール部の慣性モーメント ! !:キングピン軸回りの慣性モーメント :ピニオン・ギヤの慣性モーメント :ステアリングホイール∼コラムシャフト部のねじり剛性 :操舵力によるキングピン軸回りモーメント :ラック∼ピニオン・ギヤ部のねじり剛性 :セルフ・アライニング・トルク :タイヤ発生力によるキングピン軸回りモーメント :ステアリングホイール操舵トルク = :アシスト力,パワーステアリング装置が無い場合は * = :ステアリングホイールの直径 :ナックルアーム長 :ラック・ギヤ部の等価質量 :ラック・ギヤのピッチ円半径 (株)ヨロズ 平成 年 月 * 交通機械工学科 日受理 ― ― 小型レーシングカーの操舵力特性の改善 α ,α:ラック軸とサイドロッドのなす角 :ラック・ストローク β ,β:サイドロッドとナックルアームのなす角(トグル角) δ ,δ:タイヤ実舵角(トー角) #",#:キャスタ角 θ:ステアリングホイール操舵角 θ :コラムシャフト部の回転角 θ :ピニオン・ギヤの回転角 ξ ,ξ :キャスタ・トレール ξ :タイヤのニューマチックトレール η :リンク効率 η :ラック∼ピニオン・ギヤの伝達効率 添字: = は旋回外輪, = は旋回内輪 ・ 解析モデル 図 は,ラック・アンド・ピニオン(R&P)式ステアリング装置の解析モデルを示す.運動方程式は次式により表 される( ). "= − (" ! !) −" − (θ−θ ) ! " $ " "= (" !−" ! ) − (θ −θ) − (θ −θ ) $ ! " "=− − (θ −θ ) $ " = = +η − $#$ "= − ,! "= − #! $! $! ⑴ ただし, = θ .なお,キングピン傾斜角による持ち上げトルクは無視する. ドライバーの操舵力による旋回内外輪のラック軸力をそれぞれ η = , とすると,式⑴の第 式の右辺第 + 項では, ⑵ が成り立つ. サイドロッドに働く軸力を ! " # = cosα = sinβ ,この によってナックルアームの軸直角方向に働く力を とすると, の関係があり, = cosα sinβ ⑶ となる.したがって,キングピン軸回りのモーメント = = cosα sinβ = は η ⑷ で与えられる. ここで,記号の添字 は旋回外輪の場合 = ,旋回内輪の場合 = と記す.また,リンク効率を η = / とすると, 式⑶より η =cosα sinβ を得る. タイヤのセルフ・アライニング・トルクを ,コーナリングフォースを Fig. 1-1 Analysis model of R&P steering system とすると,タイヤ発生力によるキン 小型レーシングカーの操舵力特性の改善 Fig. 1-2 Section view of rack and pinion steering gear グピン軸回りのモーメント =( + ― ― Fig. 1-3 Side view of kingpin axis and tire は, ξ) cos !" ⑸ で与えられる. がタイヤ発生力のみとすると,式⑸を用いて ラック部の抵抗力 = η + ⑹ η と表される. ,δ =δ(− )と記すことができる.また,!",ξ ,α ,β トー角 δ は,ラック・ストローク の関数だから,δ =δ( ) は,ホイール・ストロークおよびラック・ストロークにより変化するため,サスペンションとステアリング・ジオメト リから導くことになる. 過渡操舵時の操舵力を求めるには,式⑴∼⑹を解かなければならない.しかし,この非線形連立微分方程式を解くた めには計算機を用いた近次計算が必要となり,対策案の検討に利用するには手法が煩雑すぎて見通しが立て難い.そこ で,操保舵力軽減策の方向性について見通しを良くするため,ある前提条件の下に上述の関係式を極力簡単化すること を試みる. 前提条件は,①緩操舵や固定舵の走行状態として,式⑴の角加速度,加速度および速度項は省略.②タイヤ実舵角が 小さいとして,δ =δ , = のように左右輪で異なる角度,力は同じ.③タイヤのスリップ角に対するコーナリング 特性は線形.④パワーステアリング装置は無しとする. この前提条件を式⑴∼⑹に当てはめて静力学的な関係を求める. 式⑴の第 ∼ 式より, = 式⑴の第 η = ⑺ 式と式⑹より, ⑻ cosα sinβ を得る.ただし, = = ,α=α =α ,β=β =β . さらに,式⑸より, = (ξ +ξ ) cos ! を得る.ただし, = = ⑼ ,ξ =ξ =ξ ,!=!!=!#. したがって,式⑺∼⑼により,操舵力 = は, (ξ +ξ ) cos ! cosα sinβ η ⑽ となる. ・ 計算結果 式⑽を用いて,各要素の主要寸法や取り付け角度等を変更したときの操舵力を計算した.主な計算結果を図 ∼図 に示す.図はそれぞれ,ナックルアーム長,リンク効率,キャスタトレールおよびキャスタ角を変数としたときの操舵 ― ― 小型レーシングカーの操舵力特性の改善 Fig. 2 Steering effort to length of knuckle arm Fig. 3 Steering effort to link efficiency Fig. 4 Steering effort to caster trail Fig. 5 Steering effort to caster angle 力の大きさを表す.また,対策前( 年度 JSAE フォーミュラカー仕様)のジオメトリで計算した結果を,図中に「現 状」として丸印で記している.なお,掲示した図の計算では,ステアリングホイール直径 = . [m] ,ニューマチッ ,R&P ギヤの伝達効率 η = . ,ピニオンギヤのピッチ円半径 クトレール ξ = . [m] イヤ横力はスリップ角 ° 時のコーナリングフォース値を用い = = . [m]とし,タ [N]とおいた. 簡易な解析モデルを用いた計算結果から,サスペンションおよびステアリング・ジオメトリの観点から操保舵力を低 減する方法として次のことが判った. ①ナックルアーム長 を長くする. ②リンク交差角である α を 度に,β を 度に近づける.レイアウト上は逆アッカーマン機構のジオメトリにすると都 合が良いが,リンク効率を向上させるためにステアリング・ジオメトリをパラレル・リンク機構に近づける.この場 合,タイヤのスリップが減少するため,操舵力低減に効果が期待できる. また,ステアリング機構は,サイドロッドを大幅に伸長できるセンター・テイクオフ方式を採用すると,レイアウ ト的に,またリンク効率向上にも好都合の場合が多くなり,さらにホイールアライメント変化を小さく出来るなどの 可能性がある. ③キャスタ・トレール ξ およびキャスタ角 !を小さくする.!を小さくすれば,ξ が小さく出来るが,図 より明らか なようにキャスタ角の効果は限定的である. しかし,図 に示すようなオフセット・キャスタ化を図ると ξ を小さくすることができる. .操舵力軽減のためのサスペンション/ステアリング・ジオメトリ ・ 具体的な操舵力軽減策 前章で示したような方策を実際の設計段階で検討する際は,タイヤを大きく操舵したときに周辺部品と干渉しないよ うにしたり,ステアリング OA ギヤ比やステアリング/サスペンション・ジオメトリなどとの関係を併せて考慮する 必要がある. 表 は,検討対象の 年度 JSAE フォーミュラカーの主な車両諸元を示す. JSAE カーは,狭い空間にステアリング装置を搭載しなければならないために,ナックルアーム長とリンク効率は特 に密接な相互関係があり,いずれかを変更するとラック取り付けの前後位置まで変更せざるを得なくなる.また,ラッ 小型レーシングカーの操舵力特性の改善 ― ― Table 1 Vehicle specification 車両諸元 全長[mm] 全高[mm] 全幅[mm] ホイールベース[mm] トレッド[mm]前/後 / 車両重量[kg] 車体前後配分 前/後 / Fig. 6 Offset caster ク取り付け位置にも制約があるため,相互干渉しないようにナックルアーム長とリンク効率を決める必要がある. そこで,レイアウトを検討した結果,対策案としてナックルアーム長を mm,リンク効率をパラレルリンク機構化 (α= ° ,β= ° )に設定する. また,側面図においてキングピン軸が車軸中心を通る一般的な構造では,キャスタトレールはキャスタ角により決定 される.操舵力を小さくする目的でキャスタ角を小さくすると直進安定性が低くなる可能性がある.そこで,キングピ ン軸を車軸中心からオフセットした配置とするオフセット・キャスタ化を図る.これにより,キャスタ角を変更するこ となく,キャスタトレールを小さくできる.ここでは,対策案としてキャスタトレールを mm に設定する. 操舵力の具体的な最終目標値は,現状から考えて約 図 %軽減できるように各数値を設定した. ∼図 は,それぞれナックルアーム長,リンク効率,キャスタトレールおよびキャスタ角に関する対策案の数値 と操舵力の大きさを示す.図中の「変更可能範囲」は,車両のレイアウト上,他の装置や部品と干渉しない寸法・角度 等の範囲を意味する. ・ Fig. 7 Measures by length of knuckle arm Fig. 8 Measures by efficiency of steering linkage Fig. 9 Measures by caster trail Fig. 10 Measures by caster angle サスペンション/ステアリング・ジオメトリの目標特性 操舵力低減案に加えて,車両運動性能を確保する観点から,以下の目標特性を満足するようにサスペンション/ステ アリング・ジオメトリを決定する. ① 旋回運動時おいて,路面凹凸や制動駆動を伴う場合の車体姿勢変化等による車両ステア特性の急変を防止したり, ― ― 小型レーシングカーの操舵力特性の改善 直進安定性を確保するために,ホイールストロークに対してトー角変化が起こらないようにする.具体的にはロー ルステア率を ② %とするか,この値に近づける. 高横Gを伴う旋回運動では,ポジティブ・キャンバ角で生じるキャンバスラストが原因でタイヤの横力を減少し ないようにすることが必要である.このためには,路面に対するタイヤの傾きを垂直に保つことで横力の減少を無 くすか,積極的にネガティブ・キャンバ化を図りタイヤ横力を増やすことが望まれる. 具体的には,高横G領域で影響が大きい旋回外輪側,つまりバウンド・ストローク側における対地キャンバ角を ° に近づけることを目標とする. その他,持ち上げトルクとスクラブ半径と関係が深いキングピン傾斜角の適正化,タイヤ横力に影響するタイヤ・ス カッフおよびロールセンタ高さなど検討すべき項目は数多いが,ここでは, 車両運動性能に最も大きな影響を与えるトー 角とキャンバ角変化特性に注目して目標を絞り込んだ. ・ 解析方法 ジオメトリ計算では ・ の対策案と ・ の目標特性を満足するように,まずは試行錯誤的に数多くのケースを計 算する必要がある.そこで,データの取り扱いが簡単で計算時間が短くて済む MATLAB 言語の機構解析プログラム( ) を用いる.各ピボット座標が目標特性に与える影響を把握しながら最良のピボット座標を絞り込み,ジオメトリを決定 する. 次に,その結果を基にして, D-CAD ソフト(Solidworks Motion 解析)を用いた詳細な機構解析を行う. 図 は,サスペンション/ステアリングのジオメトリ計算に用いた D-CAD 解析モデルで,ラック・アンド・ピニ オン式ステアリングを配したダブルウィッシュボーン式フロント・サスペンションを示す.アッパーアームの アーアームの 点,タイロッドおよびナックルアーム・ボールジョイントの 点,車軸の 点,ロ 点の合計 のピボット座標 によりジオメトリを計算する. 図 は,バウンド側およびリバウンド側に mm ストロークさせたホイールの部位を示す.計算ではホイールを上下 mm の範囲でストロークさせてアライメントの変化を調べる.アッパーアームボールジョイント,ロアーアームボー ルジョイント,車軸の 点の軌跡を求めて,キャンバ角,トー角,キャスタ角等の変化をグラフ化して調べる. Fig. 11 Calculation model of suspension/steering geometry ・ Fig. 12 Wheel stroke in suspension system 解析結果と考察 年度に製作された JSAE フォーミュラカーのジオメトリを現行ベースとして,対策案を検討した.この車両のキャ ンバ角(対車体)とトー角変化の計算結果を図 に示す.縦軸のホールストロークに関しては,+側はバウンド,−側 はリバウンドを表わしている.横軸のキャンバ角に関しては,+側をポジティブ・キャンバ,−側をネガティブ・キャ ンバとしている.トー角に関しては,+側をトーイン,−側をトーアウトとしている.旋回外輪側のキャンバ角は,目 標とする対地キャンバ角 度のラインから大きく離れていることがわかる.そこで, まずキャンバ角特性の改善から行っ た.バウンド時にネガティブ・キャンバ,リバウンド時にポジティブ・キャンバ化を図るために,アッパーアームをロ アアームに対して短くする必要がある.ここでは,アッパーアームの車体側の座標を変更してロアアームに対して mm 短く設定した( () ).この変更によるジオメトリを Case と呼ぶことにする.図 は Case の計算結果を示す.現行ベー 小型レーシングカーの操舵力特性の改善 ― ― Fig. 13 Characteristics of camber and toe angles (Base car) Fig. 14 Characteristics of camber and toe angles (Case 1) Fig. 15 Characteristics of camber and toe angles (Case 2) Fig. 16 Camber angle characteristics at rack strokes スに比べて対地キャンバ角 ° のラインに近づいたことがわかる. しかし,レイアウト上,アッパーアームの長さをさらには短くできないため,コーナリング時に重要であるバウンド 側を対地キャンバ角 ° のラインにできるだけ近づけることにする.キャンバ角特性はホイールストロークに対して直 線的な変化ではなく,曲線的な変化とするため,アッパーアームの車体側座標を mm 下げるように設定した.また, より目標値に近づけるため,初期キャンバ角を− .° 付けた. 次に,トー角変化はバウンド時にトーアウト,リバウンド時にトーインのアンダーステア特性である.トー角変化を 起こさないことを目標としているため,タイロッドの車体側座標を mm 下げるように設定した.以上の変更を織り込 ― ― 小型レーシングカーの操舵力特性の改善 Fig. 17 Proposed change of geometry Fig. 18 Characteristics of toe angle (Offset caster) Fig. 19 Camber angles at rack stroke 0 mm Fig. 20 Camber angles at rack stroke 20 mm Fig. 21 Camber angles at rack stroke 40 mm んだジオメトリを Case と呼ぶことにする.図 は Case の計算結果を示す.この図より,キャンバ角とトー角特性 が目標に大きく近づくことがわかる. また,操舵時のキャンバ変化についても調べた.図 はラックストロークを mm, mm とした時の,旋回外輪側 のキャンバ角(対車体)の変化を示す.タイヤを操舵すると,わずかではあるがキャンバ角変化が大きくなることが理 解できる. さらに,本報ではトー角とキャンバ角特性に的を絞り,ホイールセンタがキングピン軸上にある一般的なジオメトリ (オフセット無しと記す)と,キングピン軸がホイールセンタからオフセットした「オフセット・キャスタ」 (オフセッ ト有りと記す)を比較して考察する.図 は,これまで述べてきたジオメトリに関する変更部位をまとめたものであり, 最終的な対策案である. 図 は,オフセットキャスタ有りとオフセットキャスタ無しのトー角変化を示す.双方ともにトー角変化の目標特性 を満たしていることがわかる.厳密に比較すると, オフセットキャスタ無しよりもオフセットキャスタ有りのほうがトー 小型レーシングカーの操舵力特性の改善 ― ― 角の目標特性に近い結果を得た. 図 は,キャンバ角(対車体)変化を示す.オフセットキャスタ有りとオフセットキャスタ無しのキャンバ角特性は, ほぼ同じ結果となった. タイヤ操舵時のキャンバ角特性についても検討した.図 と図 は,それぞれラックストロークが mm と mm の 時のキャンバ角(対車体)変化を示す. つの図において,オフセット・キャスタ有りとオフセット・キャスタ無しを 比較すると,オフセットキャスタ無しのほうがオフセットキャスタ有りよりも目標特性に近いという結果を得た.また, ラック・ストロークが増加するのに伴い,オフセット・キャスタ有り無し共にキャンバ角変化が大きくなる.つまり, この対策案のオフセット・キャスタ化では操舵時のキャンバ角特性を大きく向上できないことが判明した. .ま と め ⑴ フロントサスペンションとステアリングの簡易な力学モデルを構築して操舵力軽減策の検討方法,および D-CAD 等を用いたサスペンション/ステアリング・ジオメトリ解析方法を確立した. ⑵ 小型レーシングカーにおいて,車両運動性能の目標性能確保と操保舵力軽減の両立は可能であることを明らかにし た.操舵力は計算上, 年度 JSAE フォーミュラカー仕様よりも約 %軽減することが可能であり,その対策案を 示すことができた. 文 献 ⑴ Mori,K., Maneuverability and Stability of Vehicle through Chassis Integrity Control, Vol.68, No.671 (2002), pp.172-179. ⑵ 森和典,“サスペンション・ステアリング幾何の計算法に関する考察” ,久留米工業大学研究報告,No. ( pp. ‐ . ⑶ 藤岡健彦,鎌田実,自動車プロジェクト開発工学( ) ,pp. ‐ ,技報堂出版. ⑷ 宇野高明,車両運動性能とシャシーメカニズム( ) ,pp. ‐ ,グランプリ出版. ‐ ) , ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 〔論 ― ― 文〕 ベルクランク機構を有するサスペンションの ばね・ダンパ特性の解析 森 和典* Analysis on Spring and Damper Characteristics of Suspension with Bell Crank Mechanism Kazunori MORI* Abstract The spring and damper characteristics of suspension systems have the key role for the maneuverability and stability as well as the riding comfort performance of a vehicle. Using a double wishbone type suspension with bell crank and pushrod as a model, this paper introduces a method for calculating suspension spring, shock absorber, anti-roll bar and pitting damper geometries using expressions derived directly from the kinematics of mechanism theory. Next, the authors derive expressions such as link lever ratio, spring constant converted into wheel center location, and roll stiffness by using the linear approximation functions obtained based on these calculation results and the balance equations of power derived from a dynamic model that simplifies bell crank surroundings. Finally, the authors clarify the relativity of these suspension characteristics and the geometries. Key Words:Racing Car, Suspension, Link Geometry, Bell Crank, Pushrod, Spring, Shock Absorber, Mechanism, Vehicle Dynamics .まえがき サスペンションのばねとショックアブソーバは,車両運動性能に大きな影響を及ぼす特性を有する構成要素である( ). オープンホイール・タイプのレーシングカーのダブルウィッシュボーン式サスペンションでは,ばねとショックアブ ソーバなどを車体に内蔵して空気抵抗低減を図るために,ベルクランクとプッシュロッドを用いる機構が多用されてい る( ).また最近はリヤ・サスペンションにプルロッド・タイプの採用が増えている. ベルクランクは,サスペンションのロアアーム(またはロアリンク)と連結されたプッシュロッド,ばね,ショック アブソーバおよびスタビライザ等の片側端が取り付けられており,ベルクランク回転軸に対するこれら片側端の取付点 の位置がサスペンション特性に影響することになる. 著者は,既にダブルウィッシュボーン式サスペンションと R&P 式ステアリングを例に取り上げて,サスペンション /ステアリング・ジオメトリに関して機構学の基本から論じた計算方法を示した( ).しかし,ベルクランク機構を有す るサスペンションのジオメトリに関する具体的な計算方法を記した文献等は見当たらないようである. ベルクランクとプッシュロッドを用いたダブルウィッシュボーン式フロント・サスペンションと R&P 式ステアリン グとを組み合わせた走行装置と車両運動性能との関連性について解析を進めているが,本報告は第一報として,計算解 析上の主要部となるサスペンションばね,ショックアブソーバ,スタビライザおよびピッチング・ダンパ(サード・ダ ンパ)のジオメトリについて,機構学理論から導出した数式を用いて直接計算する方法を示す. 次に,ホイールストロークとばね,ショックアブソーバ取付長の比(リンク・レバー比と呼ぶ)等について簡易な解 析モデルを用いて計算式を導出し,リンク・レバー比とサスペンション特性の関連性を考察する. * 交通機械工学科 平成 年 月 日受理 ― ― ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 .記号の説明 主な座標点と角度 AL:rear pivot of lower arm BL:ball joint of lower arm CL:front pivot of lower arm Ab:arbitrary point on bell crank rotational axis Cb:installation position (body side) of bell crank rotational axis Cb :installation position (bell crank side) of bell crank rotational axis Bb :installation position (bell crank side) of push rod EL:installation position (lower arm side) of push rod Bb :installation position (bell crank side) of shock absorber and spring EU:installation position (body side) of shock absorber and spring Bb :installation position (bell crank side) of stabilizer rod ST:stabilizer rod pivot (torsion bar stay side) θ :swing angle of bell crank γ :initial swing angle of bell crank ":total swing angle of bell crank ! ! "=γ +θ ! ! θ :swing angle of suspension lower arm T:rotational axis center of torsion bar for stabilizer (stay side) Tb:rotational axis center of torsion bar for stabilizer (body side) α :initial inclination angle of torsion bar θ :inclination swing angle of torsion bar !"!!:total inclination angle of torsion bar !"!!=α +θ θ :torsion angle of torsion bar for stabilizer PS:installation position (torsion bar stay side) of pitching damper PB:installation position (body side) of pitching damper :length of bell crank rotational axis, distance from Cb to Ab :push rod length :installation length of suspension shock absorber and spring, distance from Bb to EU :length of stabilizer rod, distance from ST to Bb :installation length of pitting damper, distance from PS to PB :half length of stabilizer stay, distance from T to ST :stabilizer length, distance from Tb to T : coordinate of PS :swing radius of Bb : coordinate of PS :swing radius of Bb θ :angle between segment Cb Bb and segment Cb Bb θ :angle between segment Cb Bb and segment Cb Bb :swing radius of Bb ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 ― ― .理論計算式の導出 ・ 計算モデル 本報告で使用したサスペンション・ステアリングのジオメトリの計算方法,アーム類の記号は,全て文献⑶を引用し ているため,これらの詳細な説明は省略する.以下は,関係する項目のみを記す. 図 は,ベルクランクとプッシュロッドを用いたダブルウィッシュボーン式フロントサスペンションの概要を示す. ステアリング装置は R&P 式とする.座標系 は,車体に固定した基準座標系とする.原点 は,車両の正面図 において,車体の左右対称面を意味する中心線上に設定する. , , 軸は,それぞれ左,後,上方向を正とする. 図 は,ベルクランクを中心に,ばね,ショックアブソーバ,スタビライザなどの取り付け関係を表わしたイメージ 図である.この機構は,車両のピッチング振動を抑制するためピッチング・ダンパを取り付けたのが特徴である. Fig. 1 Double wishbone type front suspension with bell crank mechanism Fig 2 Installation relation of each parts around bell crank (Plan view) 図 は,ベルクランク,プッシュロッド,ばね,ショックアブソーバ,スタビライザおよびピッチング・ダンパの取 り付け点を表す記号を示す.また,計算に必要な主要寸法,角度を表す記号も併せて示す. ジオメトリの計算方法は,文献⑶に示されたダブルウィッシュボーン式サスペンションにおけるアーム類の遥動角や ボールジョイント,ホイールセンタ位置の計算方法・手順と同じである. ― ― ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 Fig. 3 Explanation of sign that shows pivot, length and angle ・ 図 ベルクランクとプッシュロッド ' は,座標変換で導出したベルクランク固定座標系と ,その導出過程の座標系およびオイラー角 α ,β , γ' を記す. ' ' ' ' 系は基準座標系 標[ を平行移動し,原点を点 Cb とした座標系である.したがって,任意点の基準座 ] ,部品座標系における座標[ ' !" ! "!" $ & " " % % & % !%& %$& & % ' "% #% #!%& %$ #& # $ # # $ $ ( $!% % $ ' '] ,および点 Cb の基準座標[ ]の間には, ⑴ の関係が成り立つ.また,式⑴より次式が得られる. !" ! " $ & "!"!% % %$& % & & % ' ## #!#!%$ %$ # $ ( $!$!% % ⑵ Fig. 4 Transformation of coordinate systems for bell crank ベルクランク上の任意点の位置関係が容易に計算できるように, ベルクランク上の 点が作る△CbBb Ab が座標系 の 系を回転させて新たな座標系に変換する. つの座標軸が張る平面上に存在するように座標変換を 行い,変換行列はオイラー角を用いて表す. まず, 系を 転させた座標系を 系を 軸回りに α 回転させた座標系を とする.次に とする.この時,ベルクランクの回転軸 CbAb が 軸回りに γ 回転させた座標系を 系を 軸回りに β 回 軸上となるように定める.さらに, とする.角度 γ は,プッシュロッド取り付け部 Ab が 上に位置するように定める.ここでは,γ を初期値,遥動角 θ とおくとき,全遥動角を γ =γ +θ とする. 軸 ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 ― ― 以上により,ベルクランクの部品座標系 で表される任意点を基準座標系に変換する式が得られる. ! " !" ! "!" ! " & ( # # # ( & %&"& % & % "&& %&& % "&& % & % & % & % & & % ) " # "" # $ $ ) & " & $ &"$ # # $ # "&$ # $ # "&$ & * %"& %"& * & % &" ! " ! "! " ⑶ !" ( & #"& #"& ( &# % & % &% & % & & ) &$ """&"#&% #% """&"#&"$&&# #% $"&& ) $"&& &#$ # $ # # $ * & %"& * %"& &# 式⑶において,!"#$&& #""&"#&"$&&とすると, !" ! " !" ( # & # % & % "&& % & & & % % ) &$ "!"#$&&# ## $"&$ $$ # * & %"& % ⑷ ただし, ! " " ! ! % & & ""& #"$ ( "&% ## ! $ '("& !( % &"&$ &"! & #( ! ( % &"& $ '("& ! " % &#& $ '(#& ! ( % & " ! $ "#& #"$ ) #&% ## ! &"#) &#! % &#& ! $ '(#& !( ! " & & % &$ $ '($ & !( & ! % & & & & "$&& #"$ * $ ## $ ( % &$ $ '($ ! &##* &! &% & & ! ! " ・点 Ab に関して: 系における点 Ab の座標は[ ! "! " !" ! #"& #!& % &% & %& & & % % " # "" # $ $ # !&$ # "&$ "& #& !$ %!& ]だから,式⑶より '& %"& これを展開してまとめると, ! "! " % &#& '& ( #!&!#"& % &% & % &"& $ '(#&$ !'& ( ## #$!&!$"&$ '("& ( % &#& '& $ %!&!%"& を得る.式⑸の第 , ⑸ 行目を取り上げると,α と β を求めることができる. ! # !#"& % &#& # !& $( '& " $ !$ $( % &"& #! !& "& # '(#& '& $ ⑹ ただし,点 Ab と点 Cb が初期値として基準座標系により与えられているならば, # # # #!&!#"&% $!&!$"&% %!&!%"&% '& #'$ "$ "$ ⑺ である. なお,点 Cb とべルクランク上の回転軸位置 Cb との距離を ' とするとき,点 Ab と Cb が同じ位置ならば, = ' で ある. 以降は,点 Ab と Cb が同じ位置として説明する. ・点 Bb に関して: 式⑶を置換すると, ― ― ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 ! " ! " / )# &!&") % & % & 0 )#$ #% "$)%"#)# # '!'")$ 1 )# (!(") ⑻ が得られる. したがって,点 Bb の初期位置が基準座標系で与えられたとき, ! " ! " / ! )# !)" &!)"!!&") % &% % & 0 !$ )# !)" # "$)%"#)# # '!)"!!'")$ 1 ! )# !)" (!)"!!(") 系に関する座標は,式⑻を用いて ⑼ となる. 式⑼より,回転半径 と遥動角の初期値 γ が計算できる. ! # # / )"#' !"0 ! )# !)" )# !)" $. " 0 ! )# !)" / ! )# !)" $( '(& % && !$ ) #! )# & & )" )" # ⑽ 式⑷を用いれば,遥動角が γ のときのプッシュロッドの点 Bb の基準座標は ! " ! "! " &!)" &") ! % & % &% & ) # "! # # $ # $ '") '!)" #$&) . )"$ (") (!)" ! と表される.式⑾の右辺の , , は,式⑽を用いて計算できる.また,座標変換行列 ⑾ γ はパラメータ θ の関数だから, は全て θ の関数となる.したがって,θ が確定すれば,点 Bb の基準座標を求めることが可能になる. プッシュロッドの一方の端部はロアアームに取り付けられており,ホイールストロークに応じてロアアームの遥動角 θ が変化すると,プッシュロッドを介してベルクランクの遥動角 θ が変化する. そこで,θ が与えられたとき,θ は近似解法を用いて計算する. 点 Bb とロアアーム側のプッシュロッド取り付け点 EL の初期位置をそれぞれ[ すると,プッシュロッドの長さ ] ,[ ]と は, # # # &!)"!!&#$!% '!)"!!'#$!% (!)"!!(#$!% $-* #'$ "$ "$ ⑿ である. 点 EL と点 Bb が変位したとき,この 点間の距離を (θ )とすると, # # # &!)"$ '!)"$ (!)"$ $-*,$ ')% ')% ')% ')% #'& !&#$' !'#$' !(#$' "& "& ⒀ で与えられる.そこで, +$ ')% ')% #$-*,$ !$-* = と定義すれば,(θ ) ⒁ を満足する θ を求める問題に帰着する. ここでは,Newton-Raphson 法を用いた近似解法の計算手順を記す. "#')!とおく.初期値は θ = ① ')$% でも可. ,' +& ')$% ,"" ,! ) #')$% を計算する. % ② ')$ ,' +& ')$% ,"" ,( "%が成立する場合は手順④へ進む.成立しない場合は, = + ')$ !')$% % ③( ε は近似精度に影響するため,できるだけ小さい値に設定しておく. ,"" % として終了. ④ ') #')$ なお,手順②の中で微分式の部分は次のとおり. +)$ ')% # *& *' *( &!)"!&#$% !)""$ '!)"!'#$% !)""$ (!)"!(#$% !)" $ *') *') *') # # # ' ( & !& " !' " !( $ % $ % $ % " " " ! ) # $ ! ) # $ ! ) # $ ' と置換して手順②へ戻る.定数 ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 ! " ! " &!*" ! + % & " " +"$&* % & # "* #* # # '!*"$ , *"$ +%* +%* (!*" ! ― ― ! " & & & '$ ()$ !) * !% * ! +"$&* % & & & #% $ ()$ & '$ ! !) * * +%* ! ! ! 以上より,θ の近似解が得られると,式⑾により点 Bb が確定する. ・点 Bb に関して: 点 Bb の初期位置が基準座標系で与えられたとき,部品固定座標系 ! " ! " / * !*# &!*#!!&"* % & % & 0 * !*#$ #$!"#$&*!# # '!*#!!'"*$ 1 * !*# (!*#!!("* ここで,点 Bb の部品固定座標系に関する座標を[ ]と記すと, sinθ cosθ に関する座標は,式⑷を用いて ⒂ 式⒂より, ! # # / *##' * !*#"0 * !*# $" 0 * !*# / $) ()%!# & '%!# *!*#! % *# *# # が得られる.なお,点 Bb は平面 ⒃ 上に位置するから = である. 以上より,点 Bb の基準座標は次式で与えられる. ! " ! "! " &!*# &"* & '%! $ *#) % & % &% & ## "!"#$&*# # '"*$ '!*#$ ()%!$ $ *#% ("* (!*# ! ⒄ ショックアブソーバのベルクランク側取り付け点は Bb であり,車体側取り付け点が EU だから,取り付け長 # # # &!*#!&#%% '!*#!'#%% (!*#!(#%% , "$ "$ $ . )* #' は ⒅ となる. ・ スタビライザ ・点 Bb に関して: スタビライザ用ロッドのベルクランク側の取り付け部であるピボット Bb の初期位置が,基準座標系で与えられたと に関する座標は,式⑷を用いて き,部品固定座標系 ! " ! " / * !*$ &!*$!!&"* % &$ % & 0 * !*$$ # !"#$&*!# # '!*$!!'"*$ 1 * !*$ (!*$!!("* ここで,点 Bb の部品固定座標系における座標を[ sinθ ⒆ cosθ ]と記すと, 式⒆より, ! # # / *$#' * !*$"0 * !*$ $" 0 * !*$ / $) ()%"# & '%"# *!*$! % *$ *$ # が得られる.なお,点 Bb は平面 ⒇ 上とすると = である. 以上より,点 Bb の基準座標は次式で与えられる. ! "! " ! " &!*$ &"* & '%" *$) % &% & % & ## "!"#$&*# # '"*$ '!*$$ ()%"$ *$% (!*$ ("* ! ・点 T および点 ST に関して: 図 は,座標変換で導出したスタビライザ部の固定座標系 θ を記す. と,その導出過程の座標系および回転角 α' , ― ― ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 系は基準座標系 を平行移動し,原点を点 Tb とした座標系である.したがって,任意点の基準 ] ,部品座標系における座標[ 座標[ !" ! "! " & # ) # ' ( % & % "&& %&& % & % & * " # # $ $ ' ( $ " & #$ # $ & + % ' ( % "& の関係が成立する.また,式 ] ,および点 Tb の基準座標[ ]の間には, より次式が得られる. !&" ! " ) #!#"& ' ( % & && % * ## # $ $!$"&$ ' ( & + %!%"& ' ( Fig. 5 Transformation of coordinate systems for stabilizer スタビライザ部の任意点の位置関係が容易に計算できるように, る.スタビライザ部の 点が作る△TbTST が座標系 の 系を回転させて新たな座標系に変換す つの座標軸が張る平面上に存在するように座標変 換を行い,変換行列は回転角 α ,θ を用いて表す. まず, 軸回りに α 回転させた座標系を とする.角度 α は,トーションバーの捩れ 軸と一致するように定める.ここでは,α を初期値,θ を遥動角とおくとき,全遥動角を α =α +θ とする. 軸 TbT が 次に 系を 系を 軸回りに θ 回転させた座標系を とする.この時,点 ST が平面 うに定める.θ はトーションバーの捩れ角を示している. で表される任意点を基準座標系に変換する式が得られる. 以上により,部品座標系 !" ! "! " ! " !" & ) ) # ' ( # # ' ( % & % "&& %&& % "&& % & & & & % % % * * ' ($ ## "# "!"&(&!!(&# ## $ $"&$ $"&$ ' ( $$ # & + + ' ( %"& %"& ' ( % また, ! " !" ) ' ( #!#"& % & % & * ' ($ # !"&(&!!(&# # $!$"&$ + ' ( %!%"& の関係がある.ただし, " ! " ! ! & % & ! # &'"(&& !' $ %"(&&& !"&(& #!$ ) "(&&% #% "! ' ( ' (#) $ # ! ' $ %"(&& # &'"(&& ! " $ %#! ! # &'#! !' % & !!(& #!$ + #!% ## $ ' (! "#+ ' ( ' $ %#! # &'#! ! ! ! " 上となるよ ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 点 T の初期値が基準座標で与えられているとき,式 ! " ! " ! %$!!%$( % & % & # "!&*(!"#*(!#!$ # &$!!&$($ ― ― より次の関係が成り立つ. "$( '$!!'$( ただし, ! " " ! ! % & "!&*(!## ! % ()!*( !) & '!*($ ! ) & '!*( % ()!*( ! " " ! ! % & "#*(!## ! #! $ ! " ! ! ! " 式 の右辺を展開すると ! " ! "! " ! ! %$!!%$( % & % &% & # "!&*(!#!$ ## # & '!*($ !"$( ) &$!!&$($ ()!*( "$( % "$( '$!!'$( が導かれる. したがって,式 の第 , 要素から, ! & !& & '!*( #! $! $( $) "$( " ' !' $% ()!*( # $! $( # "$( を得る. 式 より,点 T の基準座標は次のように表される. ! "! " ! " %$ ! % % & % $(& % & & & % % ## ""!&*(#!$ &$($ &$$ # "$( '$( '$ また,点 ST の基準座標は式 を用いて ! "! " ! " ")+ %$( %#$ % &% & % & & & % % & " # "" # &#$$ # &$($ !*( #*( !$ # '#$ "$( '$( と表すことができる. スタビライザのベルクランク側取り付け点は Bb ,スタビライザ・ステーへの取り付け点が ST だから,スタビライザ・ ロッドの長さ は # # # %#$!!%!($!% &#$!!&!($!% '#$!!'!($!% "#$ #'$ "$ "$ で与えられる. ・ ピッチング・ダンパ ピッチング・ダンパは,車両のピッチング振動を抑制すると共に,通常のショックアブソーバの補完的な役目を担う. このダンパの取り付け位置をスタビライザ用トーションバー軸上に設けた場合,ダンパは回転角 θ が発生するピッチ ング運動のときに作動する.しかし,スタビライザ・ステーにおいてトーションバー軸からオフセットさせて取り付け ると,回転角 θ が生じた場合,ダンパ減衰力の分力によりロール運動の動的挙動を抑制する効果が若干ではあるが見 込める. ピッチング・ダンパのスタビライザ・ステー側取り付けピボットである点 PS は,部品座標系 [ ] =[ 点 PS の基準座標は,式 ]と与えられたとする. を用いれば に関して, ― ― ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 ! "! " ! " ! & & % #$& % %)& % & & & % % ( ! # "! # + ' ' $ / ) #$$ / ) ! # #$$ # %)$ *#$ (#$ (%) と表すことができる. また,点 PS が基準座標の初期値で与えられている場合は,式 ! " ! " ! &#$!!&%) % &% ( % & # !!/)!# # + '#$!!'%)$ #$$ *#$ より, (#$!!(%) の関係がある. ピッチング・ダンパの車体側取り付け位置が点 PB だから,ピッチング・ダンパの取り付け長 は,次式で与えられ る. # # # &#$ !&#!% '#$ !'#!% (#$ !(#!% , "$ "$ $ #$ #' ベルクランクの遥動角 θ が与えられたとき,取り付け長 つまり, はスタビライザ・ロッドを介して θ と θ の関数となる. は左右各輪のホイールストロークにより変化するため, を求める際は次の 通りについて考える必要が ある. 〈Ⅰ〉左右輪のホイールストロークが逆相となり,その絶対値が同じ場合,ロール運動のみとして θ を求める.(θ = とする) (θ 〈Ⅱ〉左右輪のホイールストロークが同相となり,その絶対値が同じ場合,ピッチング運動のみとして θ を求める. = とする) 〈Ⅲ〉左右輪のホイールストロークの絶対値が異なる場合,ロール運動とピッチング運動が連成しているとして,θ とθ の 変数を求める. 〈Ⅰ〉∼〈Ⅲ〉の場合ともに,回転角 θ または θ を計算するためにスタビライザ・ロッド長 に着目する. 〈Ⅰ〉の場合: スタビライザ・ロッドの取り付け点 Bb と ST 間の距離を θ の関数として (θ )とおくと, # # # &$% $ '$% $ ($% $ "$%-"$ "$% "$% "$% "$% #'& !&!)$' !'!)$' !(!)$' "& "& で与えられる.そこで, . "$% "$% #"$%-"$ !"$% "$ "$% "$ = と定義すると,. を満足する θ を求める問題に帰着する.近似解 θ の導出には,式⒁において近似解 θ を求 めた手順①∼④と同じ方法を用いればよく,ここでは手順②の式のみを記す. -' . "$$% "& -"" -! ( "$$ #"$$% % . " & $% ' $ " ただし ( . "$% # "$ *& *' *( '$% !'!)$% $% "$ ($% !(!)$% $% &$% !&!)$% $% "$ $ *"$ *"$ *"$ # # # '$% !'!)$% ($% !(!)$% &$% !&!)$% "$ "$ '$ ! " ! " &$% ".0 % & *!$/) % & * ( # !!%)! # #!$ '$%$ , *"$ *"$ ($% "%) ! " & '"$ !% ()"$ ! !) % & *!$/) #% $ ()"$ !) & '"$ ! *"$ ! ! ! 以上より,θ の近似解が得られると点 ST および点 PS などが確定する.したがって,式 を用いれば〈Ⅰ〉の場合の が計算できる. 〈Ⅱ〉の場合: 〈Ⅰ〉の場合と同様な方法で θ を求める.スタビライザ・ロッドの取り付け点 Bb と ST 間の距離を θ の関数として (θ )とおくと,次式で表される. ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 ― ― # # # %#$ $ &#$ $ '#$ $ "#$+#$ #.(% #.(% #.(% #.(% #'& !%!($' !&!($' !'!($' "& "& そこで, #.(% #.(% #"#$+#$ !"#$ #$ = と定義すると, (θ ) を満足する θ を求める問題に帰着する.近似解 θ の導出には,前述の方法を用いればよい. ここでは近似解法の手順②の式のみを記す. +' #.($% #& +"" +! ) #.($ ##.($% % + # & $% ' . ( # ただし )% )& )' %#$ !%!($% #$ "$ &#$ !&!($% #$ "$ '#$ !'!($% #$ $ )#.( )#.( )#.( -$ #.(% # # # # & ' % !% " !& " !' $ % $ % $ % $ $ $ ! ( ! ( ! ( # $ # $ # $ ' ) # ! " ! " %#$ "-/ ) ) % & )!".( % & # # #!$ &#$$ , )#.( )#.( '#$ "$( ! " ! ! ! % & )!").( % ! !) & '".)( !% ()".)(& # $ )#.( ! % ()".)( !) & '".)( 以上より,θ の近似解が得られると点 ST および点 PS などが確定する.したがって,式 を用いれば〈Ⅱ〉の場合の が計算できる. 〈Ⅲ〉の場合: これまでの解析では,左車輪を基準に座標系を構成しており,右車輪に関しては,この座標系をそのまま利用する. そこで,左車輪側でトーションバーの捩れ角が θ ならば,右車輪側は−θ として計算することができる. 以下の各座標では,左車輪側と右車輪側を区別するために,座標値の添字に,それぞれ と を付ける. ◆左車輪側において 点 Bb が確定すると,式 より点 ST の座標は θ と θ の ドの取り付け点 Bb と ST 間の距離を 変数で表される.したがって,左車輪側スタビライザ・ロッ (θ ,θ )とおくと,次式で表される. # # # %#$*$ &#$*$ '#$*$ "#$*$ ##! #.(% ##! #.(% ##! #.(% ##! #.(% #'& !%!($*' !&!($*' !'!($*' "& "& =[ ]はホイールストロークにより決定される.また, " ! ! " ##! #.(% %#$* %#$ $ & % &% & "#$*## & # ! # ##! #.(% #"#$ $ #% &#$*$ $ . (% # $ # $ # '#$ $ ##! #.(% '#$* ここで,x と記すことができるから,式 を次のようにベクトル表記する. "#$*!"!($*( "#$ $ "#$*$ ##! #.(% ##! #.(% #( #( !"!($*( そこで, "#$ $ ##! #.(% ##! #.(% ##! #.(% #"#$*$ !"#$ #( !"!($*( !"#$ $ *$ と定義する. ◆右車輪側において 左車輪側と同様にして,右車輪側スタビライザ・ロッドの取り付け点 Bb と ST 間の距離を (θ ,θ )とおくと,次 式で表される. # # # %#$,$ &#$,$ '#$,$ "#$,$ ##! #.(% ##! #.(% ##! #.(% ##! #.(% #'& !%!($,' !&!($,' !'!($,' "& "& ここで,x する.また, =[ ]はホイールストロークにより決定されるが,前提条件により x とは異なるものと ― ― ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 " ! "! #-(& !##! %#$+ %#$ % & % % &% & $#$+$# &#$ % #-(& #-(& $$#$ % !##! !##! $# &#$+$ $ '#$ % #-(& !##! '#$+ と記すことができるから,式 を次のようにベクトル表記する. $#$+!$!("+) $#$ % "#$+% ##! #-(& #-(& $) $) !$!("+) !##! そこで, $#$ % , ##! #-(& ##! #-(& #-(& $"#$+% !"#$ $) !$!("+) !"#$ !##! " +% ◆左右車輪のまとめ 式 と式 をまとめて,s =[ る問題に帰着する.Θ =[θ 算手順は ]とおく.s は,θ と θ の 変数関数である.s = θ ]とおいて,近似解 Θ の導出には, を満足する θ と θ を求め 変数の Newton-Raphson 法を用いる.解法の計 変数の場合と同じである. =Θ = ① 初期値を Θ( ) とおく. # *"! * !" ' *( *( !"%& !"%& $!"%& # & "' ② !"% !! を計算する.ただし,式 の J はヤコビ行列であり,次式で表される. ! " , , $ $ " " ) ) , $, %")! " +& % ## $ #-(& & "$ $%$ , , $ " " + +$ #-(& #$ $# %#! $ ## $ #-( *"! *) "!が成立する場合は手順④へ進む.成立しない場合は, = + !"% !!"%& & ③) と置換して手順②へ戻る.定 数 E は近似精度に影響するため,できるだけ小さい値に設定しておく. *"! & ④ !"$!"% として終了. 以上より,Θ =[θ θ ] の近似解が得られると点 ST および点 PS などが確定する.したがって,式 を用いれば〈Ⅲ〉 が計算できる. の場合の .サスペンション特性について ・ リンク・レバー比とホイール端ばね定数 ・ ・ 力・トルク計算のための簡易モデル サスペンションの重要な特性の一つにホイール端ばね定数がある.これを導出するためには,ホイール端の変位(速 度)を入力として,サスペンションばねの変位,ショックアブソーバのピストン速度,およびスタビライザの捩れ角の Fig. 6 Simplified calculation model to analyze structure around bell crank ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 ― ― 各々を出力としたときの入出力の関係が必要となる.加えて,ホイール端に加わる力を入力として,サスペンションば ね力,ショックアブソーバ減衰力およびスタビライザの捩りトルクを出力としたときの入出力の関係も必要である. これら つの入出力の関係において,前者の変位・角度の関係を計算する方法は既に前章に記した.ここでは導出す る入出力関係の見通しをよくするため,計算で求めた関係を線形近似して用いることにする.また,後者の力・トルク の関係は,図 に示すような単純化した解析モデルを用いて導出する. において,リンク・レバー比 ρ は ρ= / ,角度は θ =α +α ,θ =α +α の関係がある. 図 ・ 図 ・ サスペンションばねについて のタイヤ上下力 とサスペンションばね力 の関係は次式で表される. +,! !/ &""!#' *!( ) *!!, ) *! #/ &&"!'' *", !+ $ 一方で,サスペンションばねの単体ばね定数を ,取り付け長の変化を Δ ばね定数を 式を式 ,およびホイールストローク変化を Δ と = Δ の関係がある.この つの についてまとめると, に代入して, -'+ $ とすると, = sΔ ,サスペンションばねによるホイール端 ) *!!, ) *! -0%. #/ &&"!'' *", 0 )* +,! / # %(' &""!#' *!( を得る. そこで,前章の計算結果をもとに Δ -'+ $ ≒ρ Δ の線形性を仮定すると,式 は次式で表される. ) *!!, ) *! -0 ##+/ &&"!'' *", +,! / &""!#' *!( ただし,ρ はサスペンションばねの取り付け長の変化とホイールストロークの比を示しており, これもリンク・レバー 比に相当する. なお,ショックアブソーバはサスペンションばねと同軸で取り付けられていることを前提としており,この場合の入 出力の関係は式 で表される. 次に,スペース効率向上を目的にサスペンションばねをコイル・スプリングからトーションバー・スプリングに置き 換えた場合について考える.トーションバーはベルクランクの回転軸に設けるものとする. タイヤ上下力 &* $ とベルクランク回転軸部のトルク +,! !/ &""!#' *"( ) *!! #, 一方で,トーションバーの横弾性係数を &* $ との関係は次式で表される. ,断面 次極モーメントを とすると, "# %*" * ,*( の関係がある. 式 と式 -'+1$ および = Δ の関係を用いて,トーションバーによるホイール端ばね定数 ) *!!# #"# "* %* , ( +,! / %(' &""!#' *", *( を得る.前章の計算結果をもとに θ ≒ρ Δ -'+1$ を求めると, の線形性を仮定すると,式 は次式で表される. ) *!! ##*"# %* , ( +,! / &""!#' *", *( ただし,ρ はトーションバーの捩れ角とホイールストロークの比を示す. ・ ・ スタビライザについて ロール運動時におけるタイヤ上下力 !0$ とスタビライザ・ロッド軸力 の関係は次式で表される. +,! !/ &""!#' *!( ) *!!, ) *! #/ &%!!$' *#, また,スタビライザのトーションバーの捩りトルクを +,!%$ &0$" !0$02( "# 0 %" $&* ,断面 次極モーメントを とすると, ― ― ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 の関係がある. 式 ,式 および = Δ の関係を用いて,スタビライザによるホイール端ばね定数 を求めると次のようにな る. .)1$ 前章 ' (!!* ' (! #1 $"# # &%!!$' &0 +#* " )*! & )*!%# %13%(+0 %*) &""!#' +!& 〈Ⅰ〉の場合の計算結果をもとに,θ ≒ρ Δ ・ .)1$ の線形性を仮定すると,式 は次式で表される. ' (!!* ' (! $$1"# &%!!$' &0 +#* " )*! & )*!% %13%(+0 &""!#' +!& ただし,ρ はスタビライザの捩れ角 θ とホイールストロークの比である. ・ ・ 前章 ・ ピッチング・ダンパについて 〈Ⅱ〉のピッチング運動のみの場合について考える.スタビライザ・ロッドの軸力 む車体側取り付け回転軸回りに生じるトルクを ,およびピッチング・ダンパ軸方向の力を により,点 Tb を含 とすると,次の関係が 成立する. )*!% !1%(+ & (/ $" (/ $!--&' 式 と式 !- $ より, " )*!% !1%(+ & -&' となる.式 !- $ に式 を代入すると " & )*!% )*! !%(+0 &""!#' +!& ' (!!* ' (! $-&'0 &%!!$' +#* が得られて,タイヤ上下力 と の関係が明らかになる. また,ピッチング・ダンパの取り付け長の変化を Δ Δ ≒ρ Δ ・ とすると,前章 ・ 〈Ⅱ〉の場合の計算結果をもとにして, の線形性を仮定することが可能である.ただし,ρ は定数とする. ロール剛性 サスペンションばねとスタビライザによるロール剛性をそれそれ φ , φ とすると, ! ! " " $", $ .),2 ,$"1$ .)12 " " で与えられる.ただし, はトレッド. したがって,全ロール剛性 φ は次式で表される. ! " 2 .),".)1' $" $$","$"1$ & " 式 , および式 より明らかなように,車体のロール剛性は,ばね単品の特性だけでなく,リンク・レバー比やベ ルクランク上のロッドおよびサスペンションばね取り付け位置等も大きな影響を及ぼすことがわかる.なお,式 辺において, ・ は式 で与えられるトーションバーの の右 に置き換えることができる. 考察 サスペンション機構を単純化した解析モデルを用いて,サスペンションばねとスタビライザによるホイール端ばね定 数をそれぞれ式 , と式 に示した.また,ショックアブソーバおよびピッチングダンパによるホイール端の減衰力 特性についても,式 と式 を用いてそれぞれ簡単に算出できる.これらの特性は,車両のバウンシングやピッチング 運動の解析では必要不可欠のものである. また,ホイール端ばね定数を単純な一定値として表すことができたため,ロール剛性も式 で求められることになる. このように,ベルクランク機構を有するサスペンションのばね,ダンパ特性およびロール剛性の計算式を明らかにし たので,車体姿勢変化の動的解析に留まらず,車両ステア特性の解析( () )も容易に可能となる. ただし,この方法は前提条件としてホイールストロークが小さい場合を想定しており,ホイールストロークが大きく なると単純化モデルが成立せず,ばねやダンパ特性の非線形性が強くなるために計算結果の信頼性は低下する.しかし, ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 ― ― 本来ベルクランク機構を有するダブルウィッシュボーン式サスペンションはレーシングカーに採用されることが多く, ホイールストロークも一般的な乗用車に比べて極端に小さいために,前提条件は妥当なものと考えることができる. ところで,これまではピッチング制御のためにピッチング・ダンパを用いる方式について述べた.しかし,このピッ チング・ダンパに替えて,スタビライザの車体側取り付け回転軸部をトーションバーとしてばね効果を持たせ,付け根 部にロータリ・ダンパ( )を用いれば,スペース効率を向上が図れてピッチング制御ための設計自由度も大きくすること が可能になる.この新方式の概要図を図 に示す.この場合のトーションバーによるホイール端ばね定数 を求めて おく. まず,トーションバーの捩り角とトルクの関係より, ".) ! &+ $"# または %! " $-/ &+ $ が成立する.ただし, は断面 式 , !$ および式 " "# %!" . ) $-/ 次極モーメントである. より, ' (!!* ' (! ".) #"# # &%!!$' %!, )#* & )*!% )*! $-/$&), &""!#' )!& が導出される.この式に, = *'+ $ Δ の関係を代入して κ を求めると, ' (!!* ' (! ".) #"# # &%!!$' %!, )#* & )*!%# )*! $-/$&), %(' &""!#' )!& を得る. 前章 ・ *'+ $ 〈Ⅱ〉の場合の計算結果をもとに,θ ≒ρ Δ の線形性を仮定すると,式 は次式で表される. ' (!!* ' (! ##.)"# &%!!$' %!, )#* & )*!% )*! $-/$&), &""!#' )!& ただし,ρ はトーションバの捩れ角 θ とホイールストロークの比である. ピッチング制御はフロントおよびリヤ・サスペンション双方の特性と密接な関係があるうえに,サスペンション・ジ オメトリによるアンチ・ダイブ効果等も無視できない( () ).このピッチング制御が車両運動性能に及ぼす影響を解析し てサスペンション特性の具体的な設計手法を明示することは今後の課題である. Fig. 7 Suspension mechanism using torsion bar springs and rotary dampers .ま と め ベルクランク機構を有するダブルウィッシュボーン式サスペンションに関して,サスペンションばねとダンパ特性の 解析が簡便に行えるような計算方法の検討を行い,以下の結果を得た. ⑴ サスペンションばね,ショックアブソーバ,スタビライザおよびピッチング・ダンパのリンク幾何について,機構 学理論を基にした計算モデルとそのアルゴリズムを構築した. ― ⑵ ― ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 ⑴の計算結果を基にして求めた変位・角度の入出力関係の線形近次式と,ベルクランク周りの構成を模した単純な 線形計算モデルから求めた力・トルクの入出力関係式とを用いて,サスペンションばねとスタビライザ各々のホイー ル端ばね定数,ロール剛性の計算式を示した.また,ショックアブソーバおよびピッチング・ダンパのホイール端に おける減衰力の計算式も示した. ⑶ ⑵で導出した式により,ばね・ダンパ単体特性のみではなく,レバー比やベルクランク上のロッドおよびサスペン ションばね等の取り付け位置もサスペンション特性に大きな影響を及ぼすことを明らかにした. ⑷ ピッチング制御に関しては,スペース効率や設計自由度を大きくする観点から,ピッチング・ダンパに替えてロー タリダンパとトーションバーを採用する方式を提案し,この新方式のホイール端ばね・ダンパ特性の計算式を示した. 本研究に関して,今後の課題としては次の内容があげられる. ・具体的な車両およびサスペンション/ステアリングに関する諸元データをもとに解析および設計計算を行い,本報告 で提案した計算方法の妥当性を示す. ・今回は力・トルクの入出力関係を簡易な計算モデルを用いて導出したが,このモデルは 次元モデルとして近次した ものである.これにより導出した計算式は,各種パラメータがどのようにサスペンション特性に影響を及ぼすかを検 討する際に直感的で把握しやすい利点がある.しかし,ベルクランクおよびリンク類を XY 平面(水平面)に対して 大きな角度で配置した際は,十分な計算精度が得られない可能性がある.精度向上のために,機構学理論を直接用い て力・トルクの入出力関係を 次元ジオメトリで導出する方法を示す. ・ベルクランクやリンク等は,全て剛体として取り扱ったが,実際は車体側取付け部を含めて柔性を有しており,サス ペンション/ステアリング系および車体の剛性を考慮したサスペンション特性の機構解析を行う. ・考察で取り上げたピッチング制御に関する解析 などである. .あとがき 本論文を執筆するにあたり,交通機械工学科 年の稲永基希君には D-CAD を用いた図の作成で協力をいただいた. ここに感謝の意を表する. 文 ⑴ ⑵ ⑶ ⑷ ⑸ ⑹ ⑺ 献 森和典, “走行系の統合制御を適用した車両の運動性能” ,日本機械学会論文集C編,Vol. ,No. ( ‐ ) ,pp. ‐ . 檜垣和夫,F 最新マシンの科学( ) ,pp. ‐ , 講談社. 森和典, “サスペンション・ステアリング幾何の計算法に関する考察” ,久留米工業大学研究報告,No. ( ‐ ) ,pp. ‐ . 森和典, “四輪操舵車の旋回運動時操舵応答性の解析” ,日本機械学会論文集C編,Vol. ,No. ( ‐ ) ,pp. ‐ . 藤岡健彦,鎌田実,自動車プロジェクト開発工学( ) ,pp. ‐ , 技報堂出版. 亘理厚,機械振動( ) ,pp. ‐ ,丸善株式会社. Donald Bastow, Geoffrey Haward and John P. Whitehead, Car Suspension and Handling (Fouth Edition) (2004), pp.158-162, SAE international. ⑻ 森和典, “うねり路走行時における車両旋回性能の解析(第 報:懸架系リンク幾何特性の影響) ” ,久留米工業大学研究報告, No. ( ‐ ) ,pp. ‐ . 高過給多気筒ディーゼルエンジンにおける排熱回生の基礎研究 〔論 ― ― 文〕 高過給多気筒ディーゼルエンジンにおける 排熱回生の基礎研究 山口 卓也* Fundamental Study of Waste Heat Recovery in the High Boosted Multi-Cylinder Diesel Engine Takuya YAMAGUCHI* Abstract In heavy duty diesel engine, waste heat recovery has attracted much attention as one of technologies to improve fuel economy further. In this study, he combined cycle of a diesel cycle and Rankine cycle is focused as the waste heat recovery technology of a diesel engine for heavy-duty commercial vehicles. And the effect of combined cycle on fuel economy was evaluated in single-stage turbocharging system and second-stage turbocharging system. As a result of estimation, the improvement in fuel economy by combined cycle was estimated 2.7% (single-stage turbocharging system) and 2.9% (2-stage turbocharging system), when heavy duty vehicle (GVW=24980 kg) was assumed to cruise at 80 km/h on high way. Key Words:heat engine, compression ignition engine, efficiency, fuel economy .はじめに ディーゼルエンジンは熱効率が高く CO の排出が少ない内燃機関である.近年,ディーゼルエンジンは地球温暖化抑 制およびエネルギーセキュリティーの観点から更なる燃料消費の改善が強く求められている.ディーゼルエンジンの更 なる燃料消費の改善策として,エンジンのダウンサイジング・ダウンスピーディングなどのエンジン本体の高効率化に 加えて,排熱エネルギの回生技術が注目され,メーカー,研究機関や大学などで盛んに研究されている( )∼( ). 近年,大型ディーゼルエンジンは機械損失の少ない低速域における高 BMEP 化を実現するために,従来の単段過給 システムに小型過給機を追加した 段過給システムの採用が試みられている( ).また,燃費低減と NOx の低減を両立 させるために,ハイプレッシャループ EGR システム(以下 HPL-EGR システム)およびロープレッシャループ EGR シ ステム(以下 LPL-EGR システム)の組み合わせが研究されている( ).既報( )では高過給ディーゼルエンジンからの排 熱の有効エネルギ解析を行い高過給ディーゼルエンジンンお排熱回生よる熱効率改善のポテンシャルを評価した.実際 にエンジンからの排熱を回収し有効仕事へ変換するためには,ターボコンパウンドや熱電素子,ランキンサイクルなど の排熱回生技術が必要とされる.本研究では,高過給ディーゼルエンジンからの排熱が過熱ランキンサイクルを用いた コンバインドサイクルにより排熱回生されたと想定した際の燃費改善の効果について予測検討を行う. .実験装置 ・ 研究用多気筒エンジン 実験に使用したエンジンの諸元を表 を搭載した排気量 . L の直列 は に示す.エンジンは最高噴射圧力 気筒エンジンである.図 MPa 仕様のコモンレール式燃料噴射装置 は単段過給システム仕様のエンジン概略図,また,図 段過給システム仕様のエンジン概略図である.単段過給システムおよび 段過給システムは,HPL-EGR システム と LPL-EGR システムを組み合わせたデュアルループ EGR システムを採用している.図 * 交通機械工学科 原稿受付 年 月 日 に示す 段過給システムは, ― ― 高過給多気筒ディーゼルエンジンにおける排熱回生の基礎研究 つの過給器を直列に配置している.容量の小さい高圧段過給器(以下 HP-T/C)は排気上流に設置され,容量の大き い低圧段過給器(以下 LP-T/C)は排気下流に設置している. HP-T/C と LP-T/C は,ともに無段階式可変容量式タービン(VGT)仕様である.また過給されたガスが高温になる ことが予測されるため,高圧段および低圧段の各コンプレッサの下流にインタークーラが装着されている.さらに HPT/C のコンプレッサ側とタービン側にそれぞれバイパス経路を設け,バルブにより高圧段コンプレッサおよび高圧段 タービンをバイパスさせ,LP-T/C のみで運転が可能なシステムとなっている. Table 1 Engine specifications Item Engine type Displacement cm Bore Stroke mm Max. engine speed rpm Injection system Nozzle mm Piston material Combustion chamber Compression ratio Swirl ratio EGR system Specifications DI inline 6 10520 122 150 2000 Common rail system (Max. Pinj=220 MPa) Minisac 0.173 8155° FCD Shallow dish 17.0 1.0 HPL & LPL EGR system Fig.1 Schematic of engine system (Single-stage turbocharging system) ・ Fig. 2 Schematic of engine system (2-stage turbocharging system) 動力・燃費・排出ガス測定装置 本実験のエンジンの動力性能は,東洋電機製の低慣性ダイナモメータを使用し計測した.燃料流量は,容積式燃料流 量計(小野測器製)で計測した.排気ガス分析は,CO,CO は NDIR,NOx は CLD,HC は FID を用いた.スモーク は司測定研 GSM‐ を使用した. ・ 燃料および潤滑油 供試燃料は低硫黄分の軽油(JIS 号,S 分 性状を表 ppm)を使用した.セタン価は .である.低位発熱量などの燃料の に示す.また,潤滑油は低サルファエンジンオイル(SAE W )を使用した. .実験条件 HPL-EGR システムと LPL-EGR システムを組み合わせた EGR システムを採用した単段過給システムおよび 段過給 システムの高過給ディーゼルエンジンにおける排熱の有効エネルギ解析および排熱回生による燃費改善の評価は機関速 度 Ne= ∼ rpm の全負荷条件で実施した.単段過給システムおよび 負荷の BMEP,過給圧および EGR 率の実験条件を表 に示す. 段過給システムの各機関速度における全 高過給多気筒ディーゼルエンジンにおける排熱回生の基礎研究 Table 2 Fuel properties for test Category Dinsity ℃ Kinematic viscosity Flash point Cetane index(JIS K Cetane number Distillation deg.C Sulfer Properties g/cm . ℃ mm /s . ℃ . ) . . IBP . % . % . % . % . EP . mass ppm ― ― Table 3 Experimental conditions at full load operation Category Elements mass % C H O N Components Saturates Vol. % Olefins Aromatics MonoDiTriGross calorific value kJ/kg Lower calorific value (Calculated) kJ/kg Properties . . − < . . . . . . Ne rpm Single-stage turbocharging BMEP MPa Pb kPa EGR rate % Second-stage turbocharging BMEP MPa Pb kPa EGR rate % . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .コンバインドサイクルによる排熱回生の効果予測 高過給ディーゼルエンジンにおける HPL-EGR クーラ,LPL-EGR クーラおよび排気タービン通過後の排気ガスの排 熱やインタークーラの給気の排熱を排熱回生するためには,ターボコンパウンドや熱電素子,ランキンサイクルなどの 排熱回生技術が必要とされる.本研究では図 の T-s 線図に示すような作動流体を水( )とする過熱ランキンサイクルと ディーゼルエンジンを組み合わせたコンバインドサイクルを排熱回生の技術として適用することを想定する.コンバイ ンドサイクルにより排熱回生を行ったと想定した場合の高過給ディーゼルエンジンの正味燃料消費率および正味熱効率 の改善効果をここでは予測検討する. Fig. 3 T-s diagram of Rankine cycle with superheating ・ 図 コンバインドサイクルのシステム構成 および図 は高過給ディーゼルエンジンにおけるコンバインドサイクルのシステム図を示す.本研究におけるコ ンバインドサイクルを利用した排熱回生の予測計算は,排気タービン通過後の排気ガスの排熱を回生するために,排気 タービン後流に仮想の熱交換器を設けるものとする.インタークーラおよび LPL-EGR クーラにおける排気ガスおよび 給気の温度は,既報よりタービン後流の熱交換器および HPL-EGR クーラにおける排気ガス温度よりも低いことがわ かっている( ).このため,単段過給システムの場合,インタークーラおよび LPL-EGR クーラにおける排気ガスおよび 給気排熱は過熱ランキンサイクルの作動流体の予熱に用いるものとする. 段過給システムの場合,LPL-EGR クーラ やインタークーラにおける排熱の有効エネルギは単段過給システムよりも小さいため,作動流体はインタークーラおよ び LPL-EGR クーラで予熱を行わないものとする.圧縮機で加圧された作動流体は,単段過給システムの場合,インター クーラおよび LPL-EGR クーラを通過する間に予熱され,排気タービン後流の熱交換器へ流入して排気タービンを通過 した排気ガスと熱交換を行うことで高温の過熱蒸気となる.また,過熱ランキンサイクルのサイクル効率向上を狙い, 熱交換器を通過し過熱蒸気となった作動流体は,排熱温度が最も高い HPL-EGR クーラに流入し高温の EGR ガスと熱 交換することで,より高温の過熱蒸気を発生させるシステムをここでは想定する.HPL-EGR クーラにおいて発生した 過熱蒸気は膨張機で膨張仕事を行った後に復水器へ流入させ飽和水に戻し,圧縮機で加圧したのちに再び熱交換を行う ために熱交換器,HPL-EGR クーラなどに導かれる. ― ― 高過給多気筒ディーゼルエンジンにおける排熱回生の基礎研究 Fig. 5 Schematic of combined cycle system (2-stage turbocharging system) Fig. 4 Schematic of combined cycle system (Singlestage turbocharging system) ・ コンバインドサイクルの基本運転条件 コンバインドサイクルの性能予測にあたっての基本条件を以下に示す. .周囲環境は大気圧 P = .復水器出口圧力は .kPa,大気温度 T = ℃( . K)とする. .kPa,復水器出口での作動流体の温度は ℃( . K)とする. .膨張機等のエントロピ効率は ηse= . ,圧縮機等のエントロピ効率は ηsc= . とする. .HPL-EGR クーラ,LPL-EGR クーラ,インタークーラおよび熱交換器の熱交換器効率は輻射熱などの放熱損失を 考慮し ηex= . とする. .膨張機出口における乾き度の下限値は .とする. コンバインドサイクルを用いた排熱回生による燃費改善の効果は,エンジンとして使用頻度の高い中速の Ne= rpm の全負荷を代表例として予測検討する.表 はコンバインドサイクルの過熱ランキンサイクルにおける過熱蒸気 の最高圧力 P ,最高温度 T ,復水器出口圧力 P と復水器出口温度 T を示す.また,図 はコンバインドサイクルの過 Table 4 Condition of Rankine cycle with superheating P MPa Single-stage turbochrging system 2-stage turbochrging system T ℃ P MPa T ℃ quality ηse ηsc ηex Pwf MPa . . . . . mwf kg/h . . . . Fig. 6 Temperature change of working fluid in combined cycle 高過給多気筒ディーゼルエンジンにおける排熱回生の基礎研究 ― ― 熱ランキンサイクルにおいて,作動流体(水)が HPL-EGR クーラを通過するまでの温度変化を示す.作動流体は圧縮 機で Pwf= .MPa まで加圧された後に単段過給システムの場合, クーラを通過するまでに EGR クーラ出口において ℃( ℃( .K)でインタークーラに流入し LPL-EGR .K)まで予熱される.その後,熱交換器および HPL-EGR クーラを通過し,HPL- ℃( .K)の過熱蒸気を発生させる.過熱ランキンサイクルにおいて発生する過熱蒸 気の質量流量 mwf は式⑴から求めた.ここで,ηex は熱交換器からの放熱損失などを考慮した熱交換器効率である.本 研究では熱交換器効率 ηex= . とした.h は熱交換器出口の過熱蒸気の比エンタルピ,h は圧縮機出口の作動流体(水) の比エンタルピ,Eex は仮想の熱交換器で失われる排気ガスの有効エネルギである.またコンバインドサイクルにおけ る膨張機出力は式⑵から求めた.ここで,lout は膨張機の仕事,lin は圧縮機の仕事,ηse および ηsc は膨張機および圧縮機 の等エントロピ効率である. )#%$ !$/ $ /# " % ! ! "$ &"!&# ( ) ( ' * $ % ! ! )#%! "&(' $!( , $! + .-"" ""% & , # " ・ 図 ( ) 排熱からコンバインドサイクル出力への変換効率 および図 は単段過給システムおよび 段過給システムの Ne= rpm の全負荷条件における熱交換器,HPL- EGR クーラ,LPL-EGR クーラおよびインタークーラにおける総排熱量,有効エネルギおよびコンバインドサイクルに おける膨張機出力の予測結果を示す.単段過給システムにおけるエンジンの総排熱量 .kW に対する有効エネルギ は .kW であり,有効エネルギ率は ε= .%である.エンジンに搭載された EGR クーラや熱交換器などで排熱さ れるガスの温度は,シリンダー内における燃焼ガスよりも低温であるため,エンジンの排熱から取り出すことが可能な 有効エネルギの割合は少ない.単段過給システムにおけるコンバインドサイクルの膨張機出力は .kW と予測され, エンジンからの総排熱量に対する膨張機出力の割合はとても小さい.一方, 総排熱量は .kW に対する有効エネルギは .kW である. 排熱量よりも多いが,これは 段過給システムにおけるエンジンからの 段過給システムの総排熱量は単段過給システムの総 段過給システムの全負荷が単段過給システムよりも高く,排気ガスの質量流量が単段過 給システムよりも多いためである. 段過給システムの有効エネルギ率は ε= .%であり,単段過給システムの有効 エネルギ率とほぼ同等である.また, 段過給システムにおけるコンバインドサイクルの膨張機出力は .kW と予測 される.ここで,エンジンの総排熱量からコンバインドサイクルの膨張機出力への変換効率を式⑶のようにエネルギ効 率 ηⅠと定義すると,単段過給システムは ηⅠ= .%, び 段過給システムは ηⅠ= .%である.単段過給システムおよ 段過給システムともにエンジンからの総排熱量は多量であり,その有効エネルギによるエンジンの熱効率向上への ポテンシャルは高いことが示される一方で,排熱をコンバインドサイクルによりエンジンの有効仕事に変換しようと試 みた場合,過熱ランキンサイクルにおける復水器での作動流体の放熱などのサイクル損失のためにエンジンの排熱から エンジンの有効仕事への変換効率が低くなることを示唆している.また,有効エネルギからコンバインドサイクルの膨 張機出力への変換効率を式⑷のように有効エネルギ効率 ηⅡと定義すると,単段過給システムの場合 ηⅡ= .%, 過給システムの場合 ηⅡ= .%である. Fig. 7 Waste heat, available energy and power of combined cycle (Singlestage turbocharging system) Fig. 8 Waste heat, available energy and power of combined cycle (2-stage turbocharging system) 段 ― ― 高過給多気筒ディーゼルエンジンにおける排熱回生の基礎研究 ηⅠ= Power of combined cycle Waste heat from engine ( ) ηⅡ= Power of combined cycle Total available energy ( ) エンジンの排熱が有する有効エネルギは単段過給システムの方が 段過給システムよりもわずかではあるが,膨張機 仕事に効率良く変換することができている.これは単段過給システムにおいて作動流体をインタークーラおよび LPLEGR クーラにおいて予熱した効果である考えられる.コンバインドサイクルの作動流体が排熱を利用し加熱され過熱 蒸気へと変化していくプロセスにおいて,排気ガスおよび給気からの排熱量や温度帯を考慮し,作動流体と有効な熱交 換が可能となるような排熱回生のシステムを構築することが重要であることを示している. ・ コンバインドサイクルによる燃費改善の効果 図 および図 は Ne= rpm の単段過給システムおよび 段過給システムの全負荷における排熱回生の効果を考 法則に基づき鶴島らにより提案された手法( 慮したヒートバランスを示す.ここで示すヒートバランスは熱力学の第 により算出した.単段過給システムおよび 段過給システムの Ne= 失は .%(単段過給システム)および .%( ) rpm の全負荷条件におけるエンジンの排気損 段過給システム)であり,冷却損失や機械損失などの他の損失と比 較し大きい損失である.この排気損失の一部は排気タービン仕事として有効に利用されるが,その残りは排熱として大 気に放出されている.排気タービン仕事に消費された熱量を除いた排気損失の有効エネルギの全てが理想的な排熱回生 により損失を伴わずに機械的なエネルギもしくは電気的なエネルギに変換されてエンジンの有効仕事となったと仮定し た場合,理想的な排熱回生はエンジンの有効仕事は単段過給システムにおいて .%, 段過給システムでは .%ま で改善させるポテンシャルを有している.しかし,過熱ランキンサイクルを利用したコンバインドサイクルによりエン ジンの排熱を有効仕事へ変換することを想定した場合,前述したように過熱ランキンサイクルにおける諸損失などのた め,エンジンの有効仕事へ変換される排熱は少ない.このため,コンバインドサイクルによるエンジンの有効仕事の改 善量は単段過給システムにおいて .%, 段過給システムにおいては .%ほどと予測され,コンバインドサイクルを 利用した排熱回生によるエンジンの最大有効仕事は単段過給システムでは .%, 段過給システムでは .%である と予測される. 図 および図 は単段過給システムおよび プである.単段過給システムおよび 段過給システムにおけるコンバインドサイクルによる燃費改善率のマッ 段過給システムともに機関速度 Ne= rpm の全負荷において燃費改善率は最 も高くなると予測され,この条件における燃費改善率は .%である.エンジンとして使用頻度の高い中速領域(Ne= ∼ 約 rpm)の全負荷における燃費改善率は単段過給システムおよび 段過給システムとも同等のレベルであり, %の燃費改善を期待することができる.部分負荷における燃費改善率は単段過給システムの方が よりも僅かに大きい.これはシリンダーからの排気エネルギが 段過給システム 段過給により排気タービン仕事として多く消費された ことに加え LPL-EGR クーラおよびインタークーラにおけるコンバインドサイクルの作動流体の予熱の効果が主な要因 と考えられる. 段過給システムの燃費改善率は全負荷条件においては単段過給システムとほぼ同レベルであるものの, 部分負荷における燃費改善率の落ち込みが大きい.一方,単段過給システムの燃費改善率は,BMEP= .MPa 以上の 負荷において %以上の燃費改善率を得ることができており, Fig. 9 Heat balance of high boosted diesel engine (Single-stage turbocharging system) 段過給システムよりもコンバインドサイクルによる排 Fig. 10 Heat balance of high boosted diesel engine (2-stage turbocharging system) 高過給多気筒ディーゼルエンジンにおける排熱回生の基礎研究 Fig. 11 Map of improvement of BSFC by combined cycle (Single-stage turbocharging system) ― ― Fig. 12 Map of improvement of BSFC by combined cycle (2-stage turbo charging system) 熱回生による燃費改善のポテンシャルが高いことを示唆している. 図 は東名高速道路と中央高速道路を組み合わせた燃費シミュレーション用ルートプロファイルを示す.また,図 および図 は,大型重量車(GVW= 給システムと kg)が上記のルートを時速 km/h 一定で高速巡航した条件における単段過 段過給システムのエンジンの運転時間頻度のシミュレーション結果を示す.図中における円の大きさは 運転時間頻度の大きさを示す. 段過給システムは低速から高速域にかけての全負荷が単段過給システムよりも拡大し ていることから,エンジンのダウンスピーディング化(低速化)を狙い,シミュレーションにおける車両の終減速比を 単段過給システムよりも低い条件設定とした.単段過給システムにおいて km/h で車両が高速巡航した場合,Ne= rpm の低負荷域から高負荷域にかけて運転時間頻度が高い.一方, 段過給システムは車両の終減速比を低くしダウ Fig. 13 Route profile of fuel economy simulation Fig. 14 Time frequency of engine operation (Single-stage turbocharging system) Fig. 15 Time frequency of engine operation (2-stage turbocharging system) ― ― 高過給多気筒ディーゼルエンジンにおける排熱回生の基礎研究 Fig. 16 The effect of combined cycle on improvement of fuel economy ンスピーディングを図っていることから,運転時間頻度の高い機関速度が Ne= rpm に低下している.また, 段 過給システムは全負荷付近での運転時間頻度も単段過給システムよりも高くなっている. 図 は大型重量車が上記のルートを km/h 一定で高速巡航した際のコンバインドサイクルによる燃費改善率の予測 値を示す.この改善効果の予測値は単段過給システムにおいてコンバインドサイクルによる排熱回生を行わない場合の 燃費を基準としている.単段過給システムにおけるコンバインドサイクルによる燃費改善の効果は .%と予測される. 一方, 段過給システムの場合,単段過給システムのコンバインドサイクルによる排熱回生を行わない燃費に対し .% の燃費改善が予測されている.この 段過給システムの燃費改善の予測値は,コンバインドサイクルによる燃費の改善 効果に加えてエンジンのダウンスピーディング化による燃費の改善効果も含んでいる. 段過給システムにおけるコン バインドサイクルによる排熱回生のみによる燃費の改善効果は .%であり,単段過給システムよりも僅かに効果が小 さいが, 段過給システムによる全負荷域の拡大とダウンスピーディング化により燃費改善効果( .%)を伴うため, 単段過給システムよりも車両燃費を向上できるポテンシャルを有していることが推察される. .ま と め 高過給ディーゼルエンジンの実験結果に基づき,エンジンからの排熱を対象とした有効エネルギ解析およびコンバイ ンドサイクルを利用した排熱回生による燃費改善効果について予測検討し,以下の結果を得た. ⑴ 水を作動流体としたコンバインドサイクルを利用した排熱のエンジンの有効仕事への変換効率は低く,コンバイン ドサイクルによる排熱回生の燃費改善率は,エンジンとして使用頻度の高い中速領域(Ne= 負荷において単段過給システムおよび 段過給システムとも同等のレベルであり約 ∼ rpm)の全 %の燃費改善が期待することが できる.排熱の有する燃費改善の高いポテンシャルを十分に引き出す排熱回生システムの構築が必要である. ⑵ コンバインドサイクルのシステムを搭載した大型重量車(GVW= kg)が東名高速道路と中央高速道路を模 擬したシミュレーションルートを時速 km/h 一定で巡航走行したと想定した場合,単段過給システムはコンバイン ドサイクルにより .%の燃費改善を期待できる.また, 段過給システムは,コンバインドサイクルによる排熱回 生とダウンスピーディングによる機械損失の低減効果により排熱回生を行わない単段過給システムの燃費に対し .%の燃費改善を期待することができる. 参考文献 ⑴ Edwards, S., Eitel,J., Pantow, E., Geskes, P. and Luts, R., Waste Heat Recovery : The Next Challenge for Commercial Vehicle Thermomanagement , SAE Technical Paper 2012-01-1205 ⑵ Lats, G., Andersson, S. and Munch, K., Comparison of Working Fluid in Both Subcritical and Supercritical Rankine Cycles for Waste-Heat Recovery Systems in Heavy-Duty Vechicles , SAE Technical Paper 2012-01-1200 ⑶ Ringler, J., Seifert, M., Guyotot, V. and Hubner,W, Rankine Cycle for Waste Heat Recovery of IC Engines , SAE 高過給多気筒ディーゼルエンジンにおける排熱回生の基礎研究 ― ― Technical Paper 2009-01-0174. Teng, H., Regner, G and Cowland, C., Waste Heat Recovery of Heavt-Duty Diesel Engines by Organic Rankine Cycle Part Ⅰ: Hybrid Energy System of Diesel and Rankine Engines , SAE Technical Paper 2007-01-0537. ⑸ Teng, H., Regner, G and Cowland, C., Waste Heat Recovery of Heavt-Duty Diesel Engines by Organic Rankine Cycle Part Ⅱ: Working Fluids for WHR-ORC , SAE Technical Paper 2007-01-0543. ⑹ 茨木茂,遠藤恒雄,小島洋一,高橋和也,馬場剛,川尻正吾:ランキンサイクルを用いた車載用排熱回生システムの 研究,自動車技術会論文集,Vol. ,No. ,p. ‐ ( ) ⑺ T. Yamaguchi, Y. Aoyagi, H. Osada, K. Shimada and N. Uchida, BSFC improvement by Diesel-Rankine combined cycle in the High EGR Rate and High Boosted Diesel Engine , SAE International Journal of Engines, Vol.6, No.2, pp.1275 1286, 2013 ⑻ 福長聡;小林雅行;村山哲也;内田登:大型 段過給エンジンを用いた可変バルブ制御の効果−正味燃料消費率の改 善を目指した吸排気バルブ作動の最適化−,自動車技術会論文集,Vol. No. p. ‐ ( ) ⑼ 足立隆幸,小林雅行,橋本宗昌,村山哲也,青柳友三,鈴木央一,後藤雄一:高応答型過給機と HP-EGR および LP-EGR の効果的利用による高過給・広域多量 EGR ディーゼルエンジンの過渡性能の向上,自動車技術会論文集,Vol. ,No. , p. ‐ ( ) ⑽ 山口卓也,松村光晃:高過給・多量 EGR ディーゼルエンジンにおける排気エネルギの有効エネルギ解析,久留米工業 大学研究報告,No. ,pp. ‐ ,( ) ⑾ 日本機械学会蒸気表( ) ⑿ 鶴島理史,宮本武司,榎本良輝,浅海靖男,青柳友三:ヒートバランスによる壁面熱損失推定法と推定精度の評価, ( ) 日本機械学会論文集(B編) ,Vol. ,No. ,p. ‐ ⑷ エンジンの燃焼に及ぼす放射性セラミックス触媒による励起作用の影響 〔論 ― ― 文〕 エンジンの燃焼に及ぼす放射性セラミックス 触媒による励起作用の影響 渡邉 孝司* Effects of Excitation Phenomenon by a Radioactive Ceramics Catalyst on Engine Combustion Takashi WATANABE Abstract It is known that introducing an electric field, magnetic field, radiation, etc. to the flame advances the combustion characteristics of engines and boilers in such ways as increasing the size of the flame, shortening the combustion period, increasing combustion efficiency and reducing emissions. This study examines the results of previous experimental research on excitation of reformed fuel with the goal of finding practical effects of these combustion phenomena in terms of increasing fuel consumption, as well as the reduction of emissions and environmental load. Irradiation of the reformed fuel was achieved by passing it through gaps in a radioactive ceramic item containing Radium, Thorium etc. Results indicate that engine combustion improved due to a large amount of OH·CH radicals, which were generated in the field of combustion. Key Words:excitation phenomenon, combustion, engine, boiler, reformed fuel, OH·CH radicals, radiation, fuel catalyst .まえがき 第一次( )と第二次( )の相次ぐオイルショックにより,当時石油系燃料の高騰が段階的に続き自動車用燃 料のガソリン,軽油等の燃料消費率の低減が強く要求されていた.当時,久留米工業大学の内燃機関研究室にベンチャー 企業から持ち込まれたセラミックをガソリン機関とディーゼル機関の燃料改質に試用したところ,数パーセントの燃費 と排気ガス低減,特にディーゼル機関の排気黒煙の大幅な低減が見られ,その原因究明をすることにした. 「励起作用」とは原子や分子の再外殻にある電子が外部からの電場,磁場や放射線などのエネルギーによって,高エ ネルギーの軌道へ移行して,その後,安定状態に戻るが,このとき光,電子やイオンなどを放出することを言う.した がって,放射性希土類鉱石を用いて燃料を改質する方式は,励起作用の一つである. 以来, 年間に亘って実用化支援をする傍ら,燃費低減の原因について研究( )‐( )を実施してきた.本技術の応用改質 器は約 年前から国内外で徐々に認知され,大型トラックはもとより 年と 年に NEDO , 年度第一次エネ ルギー使用合理化支援事業の補助金申請が承認され, 隻の大型フェリーに採択された.さらに,本応用改質器は平成 ∼ 年度に国土交通省の「内航運行効率化・高度化調査事業」 ,「離島航路効率化・利便性調査事業」や「海上交通低 炭素化促進事業」にも採択され 隻余の船舶に補助金が給付された.このような技術の発明( )‐( )に基づく国内外の販売 実績と開発技術に際して,平成 年度発明協会関東地方発明表彰,発明奨励賞「セラミックの放射による内燃機関の性 能改良」( )を受賞することができた.筆者らはセラミックスを用いた空気触媒による励起作用については,すで に「エンジンの燃焼に及ぼす空気負イオンによる励起作用の影響( )」を公表しているが,ここでは必要に応じて空気触 媒と燃料触媒の励起作用について比較記述する. したがって,本技術の発明,開発,実用化に至る 年間のまとめとして,内燃機関や外燃機関の燃焼における励起現 象として捉え,実車台上試験を実施して効果を確認し,その原因について過去の実験結果,燃料着火性試験と噴霧燃焼 火炎可視化実験結果を基に考察をしたので報告する. * 久留米工業大学名誉教授 平成 年 月 日受理 ― ― エンジンの燃焼に及ぼす放射性セラミックス触媒による励起作用の影響 .燃焼に及ぼす励起作用 . 励起作用の歴史と概要 火炎が導電性をもっていることは公知の事実であり,シリンダ内の火炎速度の検出にはイオン電流が利用されており, 本技術の火炎速度の検出( () )にも応用した.燃焼に及ぼす励起作用については,火炎に電場を与えると火炎形状が変化 して燃焼速度も上昇することは, 年以降 年間に亘り多くの研究者によって観察,報告されてきたが,原理につい ては未だ完全に解明されていない.燃焼に及ぼす励起作用の歴史と研究の概要を表 ( ) 的な研究者は Malinowski et al. で, ( ( ) ) に示す.これらの研究の中で先駆 年に同心円管内の燃焼速度が電場の付与により増加することを示している. ,Calocate et al. ,や Kono et al.( )が,電場により予混合火炎の燃焼速度や噴流予混合火炎 以来,Guenault et al. ( ) の安定性を向上させた例を報告している. 」と 年に Asakawa( )が「火炎に電場を与えると燃焼が促進する. また,国内では に発表し,この効果は ( ) ”と呼ばれて当時,世界中に名をとどろかして有名である.さらに,浅川 は “ 年に“浅川効果” の現象をより解明し燃焼の場に電場をかけると火炎形状が変わり,燃焼速度も変化することを観察し,また,燃焼,熱 伝達,蒸発促進や植物の成長促進への応用についても詳述している.最近では 年に Fujita et al.( )が燃焼の場に磁 場を付与することにより火炎への酸素供給が増大し,全燃焼に要する時間が短縮することを示した.燃焼に及ぼす励起 作用は,ほとんどが電場と磁場の影響であり,ロシア,欧州と日本においての研究の概要はほぼ類似の現象である.す なわち,燃焼の場に電場や磁場を付与することにより,燃焼速度の増加,火炎面積の増加,予混合火炎の安定性の向上, 燃焼の促進,熱伝達の促進,酸素供給の増大や燃焼時間の短縮などが確認されている. 年に発表( )したのが最初であ ただし,燃焼の励起作用に放射性セラミックを用いた例は,著者の知る限り著者が る.著者は 年に放射性元素を含むセラミックを内燃機関の空気または燃料に接触させることにより,燃費率と排気 ガスの低減の可能性を実証し,このような現象を「燃焼における励起作用( )」と名付け,吸入空気に供するものを「空 気触媒」 ,および燃料に供するものを「燃料触媒」と名付けた.以来, 年間に亘り開発,研究を実施して実用化に成 功し,NEDO や国土交通省からも補助金の認定を得て社会貢献をするとともに,国内外で省エネ商品として広く認知 されている. Table 1 Overview of Research and History of Excitation Effects on Combustion 年代 研究者名 Malinowski( ) Guenault et al.( Calocate et al.( ( ) ) ) ( ) Kono et al. Asakawa( ) 燃焼速度の向上は電場の付与により火炎面積が増加し,これが見掛けの燃焼速度を増加さ せる. 磁場の付与により噴流予混合火炎の安定性を向上できる. 電場により煤粒子の生成を制御できる可能性がある. 火炎に電場を与えると燃焼が促進する. ( ( ) ) 燃焼の場に電場をかけると火炎形状が変わり,燃焼速度も変化することが観察された.燃 焼,熱伝達,蒸発促進への応用について詳述. 浅川勇吉 Fujita et al.( 研究の概要 電場により予混合火炎の燃焼速度が増加する. ) ( ) 渡邉孝司 磁場の付与により火炎への酸素供給が増大し,全燃焼に要する時間が短縮される. 放射性元素を含むセラミックを内燃機関の空気または燃料に接触させることにより,燃費 率と排気ガスの低減の可能性を実証し,このような現象を励起現象と名付けた. .励起作用の分類 燃焼に及ぼす励起作用の研究の歴史は電場や磁場について研究がほとんどであるが,他を含めた燃焼に及ぼす励起作 用の分類を表 に示す. . 遠赤外線 遠赤外線はセラミックス等を燃料タンクに投入して遠赤効果による燃焼の活性化と謳った商品は現在でもあるが,著 者の知る限り,その効能は期待できないと思われる.その理由として遠赤外線のエネルギーが . eV( = m)と 小さいことと,熱そのものを連続的に吸収しない限りエネルギーを放射できないことである. また,著者は過去に放射性希土類元素を含むセラミックスとそのバインダーであるセラミックスの両者を燃料タンク エンジンの燃焼に及ぼす放射性セラミックス触媒による励起作用の影響 ― ― Table 2 Classification of Excitation Phenomenon 名 称 * 方 式 特 色 エネルギー 電場・磁場 電場・電磁石,永久磁石(浅川効果) 遠赤外線 セラミック,各種鉱石類による電磁波 特定の放射体と波長で高効率加熱 効果 石英斑岩 トルマリン 希土類鉱石 トリウム,ウラン含有天然鉱石(セラ 放射線 , , 線放出に伴うマイナスイオ . eV(C-H 結 合 の 切 ミック) ン発生および燃料改質 断エネルギー) マイナス空気イオンおよび燃焼時における . eV(OH 基のエネル OH−基**の発生 ギー) 超音波 超音波発振回路 eV= . x − J 火炎に電場・磁場を与えると燃焼速度が増加 . eV* ( = m) 圧電(ピエゾ)効果と焦電(パイロ,ピロ) ‐ eV(静的) 効果によるマイナスイオンの発生 両効果が作用すると 万 eV 電気的に振動子を超音波で振動させて対象物 にエネルギーを与えてミクロンサイズの微細 粒状化が可能 ** C(炭素)−H(水素)分子結合を切断するエネルギーは . eV,OH 基のもつエネルギーは . eV に浸漬して実車走行とエンジンベンチ試験を行って,後者のセラミックスのみでは燃費の向上と排気エミッションの低 減は得られなかった経験がある.したがって,遠赤外線効果は全く無いとは言い難いが,あるとしても微々たるものと 解釈できる. . 石英斑岩 石英斑岩(トルマリン)はピエゾ・パイロ効果による空気負イオン放出効果で,静的な状態では 極電圧であるが,衝撃と温度付加により約 ∼ eV と低い分 万倍の分極電圧が生じて空気負イオンが大量に放出される.このトルマ リン粉末を含有する耐熱塗料をエンジンのシリンダ・シリンダヘッドや排気管に塗布することにより,空気負イオンが 吸入空気に付加されて燃焼時に励起作用を与える.この技術( () )は最近,舶用エンジンで実用化されている. . 希土類鉱石 希土類鉱石はトリウム,ウランの微弱レベル放射能元素を含む天然鉱石をセラミックスとブレンドしたものを吸入空 気に放射することにより,放射線の , , 線が空気に作用して空気負イオン化を促進するものである.この作用は 前述の石英斑岩と同じように空気負イオン発生のため,混合気形成の促進と燃焼時の OH・CH ラジカル(基)形成に よる燃焼速度を増加させ,燃焼時間を短縮して燃焼の促進化に寄与するものと思われる.空気負イオンの付加により燃 焼時間の短縮現象( () )は実証済みである. . 超音波 超音波は超音波発振回路を用いて電気的に超音波を発振させ,燃料をミクロンサイズに微粒化させて混合気形成を促 進することにより燃焼を改善する方法であるが, ∼ %の燃費改善の効果が認められた.しかし,加速時のように一 度に多量の混合気を要するときに応答性の遅れと,またガソリンエンジンに用いた場合に,ガソリン粒子同士の衝突時 の発熱により自発火する可能性があり,実用性は無いものと判断される. 空気負イオンを用いた石英斑岩や希土類天然鉱石などを用いた燃焼における励起作用は,電場,磁場と同様の現象を 生じることは明らかであり,燃焼時において共通の化学作用が発生しているものと予想され,今後もこの現象の解明が 課題である. .イオン化作用 最も単純な原子である水素,燃焼対象物の炭素,燃焼に不可欠な酸素及び酸素とともに空気を組成する窒素について, 外部からのエネルギー付加によるイオン化現象の例( )がある.イオン化する前の原子は原子核内の陽子とその外殻を回 る電子の数が同じで,陽子は正の電荷を,電子は負の電荷を有して通常は中立状態で安定している.この状態で外部か ら何らかのエネルギーが付加されると陽子の数は変化せず,最外殻の電子数が ∼ 個増加または減少することによっ ― ― エンジンの燃焼に及ぼす放射性セラミックス触媒による励起作用の影響 て各々負イオン(negative ion)や正イオン(positive ion)が発生すると学術的には定義されている.そのイオンの増 減の個数に対して各々 , , 価の負あるいは正イオンと呼ばれる. 水素はイオン化すると正イオンになり易く,窒素と酸素は負イオンになり易く,炭素は負イオンにも正イオンの両者 にもなり易いが,結果としてどちらにもなりにくい特徴を有する. なお,商業用として用いられている「マイナスイオン」 ,「プラズマクラスターイオン」や「ナノイー」は厳密には「負 の空気イオン(negative air ion) 」で学術用語の「負イオン」とは異なり,空気中の原子や分子がマイナスの電荷をもっ ている.逆に大気中に何らかのエネルギーが作用すると,気体の分子からマイナスの電荷をもった電子が放出されると 「プラスイオン(正の空気イオン),(positive air ion)」が生じる. したがって,その電子が他の分子に飛び込んだ時に「負イオン」が発生すると言われている.しかしながら,負イオ ンの正体,即ち,どんな物質から成るのかが確定されていない.また,正イオンと負イオンは不安定なので寿命は短く, 数秒以内に元の中立状態に戻るものと考えられている.これらのイオン発生の励起作用として水破壊(レナード)方式, コロナ・パルス放電方式や放射線物質方式等がある.このイオン化作用の内燃機関等への応用例は希土類元素による空 気触媒( )である. .OH 基および CH 基の生成メカニズム 燃焼火炎の反応帯では電子的に励起された中間生成物が一時的に形成されるが,特に OH 基と CH 基は励起状態で生 成され,OH 基は早い状態から生成され燃焼反応の支配的要因を果たして燃焼促進などの重要な役割を負っている( ). また,OH 基は寿命が長く,燃焼中に広く分布する特性( )を有すると言われている.OH 基と CH 基の炭化水素の燃焼 中における励起状態を式( )と式( ( CH+O =OH*+CO ・・・ )に示す. ) C +OH =CH*+CO ・・・( ) * :励起状態を示す 式⑴,⑵の反応速度は各々 CH 基と O 分子および C 基と OH 基の積に比例するから燃焼促進に寄与することになる. 本研究においてはセラミックの励起作用により燃焼時に OH 基や CH 基の生成が増加することにより燃焼が促進したも のと推測している. ,ウラン(U O )から放射される セラミックス燃料触媒(IPT)に極微量に含まれる希土類鉱石のトリウム(ThO ) 線, 線と 線による燃焼のメカニズムについて考えてみる.IPT は希土類元素から組成されるセラミックス触媒で, 極微量に含まれるトリウムとウランが主な励起作用をなしている.これらのセラミックスから放出される荷電粒子の 線, 線および電磁波の 線は,全ての物質にイオン化を引き起こし得るエネルギーを備えており,これらが燃料に作 用して燃焼を促進させているものと想定されるが,ただし,荷電粒子の 線についてはイオン化に対しては最も強力で あるが,紙 枚でも大幅に減衰する特性があるので空気触媒としての利用度は高いが,IPT のように管体中に入れると 遮蔽効果により燃料改質への効果は期待できない.したがって,電磁波で透過率の高い 線が燃料改質効果に対する影 響が主であると判断される. これらの燃料改質における OH 基の生成メカニズムを模式化したものを図 に示す.燃焼の場において微量の過酸化 物が,燃焼速度を大きくすることは公知の事実であるが,内燃機関のように急激な爆発的燃焼の場合には,過酸化物の 代表的な主成分は OH 基と CH 基である.炭化水素(CnHm)は通常,燃焼時に熱分解を受けて C と H に分解し,O と の酸化により H O と CO になるが,当然ながら %の完全燃焼はあり得ない.したがって,熱分解時に OH,CH 基 を可能な限り多く形成し,燃焼効率を上げて燃焼時間を短縮することにより,等容度を増して熱効率を上昇することが, 結果として燃費低減につながる. したがって,図 に大気圧下で − に示すように 線と 線が微量でも照射されると式⑴に示すように燃料の H 原子が遊離し,燃料中 mol ほど溶解している O が酸化剤として作用し,遊離した H と反応して OH 基が生成される.この 燃料中に溶解している O の存在に関しては,放射改質した燃料を数日間放置すると改質効果がなくなるという経験か らも,このメカニズムが立証できる.なお,当然ながら OH 基の生成は燃料中に溶解している O のみならず,燃焼室 内の空気中の O との反応も考慮される. この現象として燃料中に溶解している微量の空気の酸素原子(O)がイオン化を起こして燃料の水素原子(H)と結 合して OH 基となり,これが燃焼を活性化するものと想定される.なお,この場合,逆に水素原子(H)がイオン化し て酸素原子(O)と結合して OH 基を生成することも考えられる.このような OH,CH 基発生による燃焼促進現象は エンジンの燃焼に及ぼす放射性セラミックス触媒による励起作用の影響 ― ― Fig. 1 OH, CH Radicals Generation Mechanism 燃焼工学において認められている.ただし,これらの現象は現代の測定技術によって実証することは困難であるが,本 研究室でガソリンエンジンによる火炎速度測定結果によればセラミックス触媒を用いることにより,空気触媒( ) (IPS)使用時と同様に火炎速度が ∼ %短縮して排気ガスエミッションと燃料消費率が低減することが確認された. したがって,セラミックス触媒を用いると OH 基の発生により燃焼が急速になって燃焼時間を短縮し,その結果,燃焼 効率が向上して燃焼後期に発生する黒煙(スモーク)とパティキュレート(DPM)を著しく低減し,また排気エミッ ションと燃料消費率の低減を招くものと考察される. .空気触媒と燃料触媒における励起作用 本技術の励起作用は希土類鉱石のトリウム(ThO ) ,ウラン(U O )の微弱レベル放射能元素を含む天然鉱石を SiO , Al O などのセラミックスとブレンドしたものを用いており,その組成と放射レベルを表 , に示す.この微粉末を ステンレス薄板に糊付けした可撓性シートを空気触媒(IPS)といい,これをエンジンの吸気管内に円筒形にして設置 して用いる.この空気負イオンによるエンジンへの励起作用については,すでに公表済みである( ).また,微粉末を直 径 mm の粒状成形後に約 媒(IPT, FC‐ K で焼成したものを管体に詰めて,燃料パイプ間に設置して用いるものを通過式燃料触 )と称し,これらの外観を図 に示す. Table 3 Material Composition of Rare Earth Ore Substance Content (wt%) Substance Content (wt%) Substance Content (wt%) F . CaO . Pr O . Na O . Fe O . Nd O . MgO . Kr . Sm O . Al O . Pb O . Cd O . SiO . YO . PbO . PO . . SO KO . ZrO . ThO . La O . UO . GeO . Table 4 Radioactivity of Rare Earth Ore Substance Th ( Ra) U ( Ra) Radioactivity (Bq/g) .± . .± . . 空気触媒と燃料触媒の線量当量と安全性 空気触媒についての線量の詳細についてはすでに報告( )しているが,ここでは通過式燃料触媒の線量当量との比較と して参考までに図 に示す.なお,空気触媒については IPS を円筒形に丸めたもの(図 左上)と丸めないフラット ― ― エンジンの燃焼に及ぼす放射性セラミックス触媒による励起作用の影響 Fig. 2 Passing Fuel Catalyst (IPT: FC-400 etc.) Fig. Effect of Radiation Dose of Ion Power Sheet Vertical Direction to Flat Center (180 260) Fig. Effect of Radiation Dose of FC- 400 on Distance Fig. 3 Radiation Dose of Air and Fuel Catalyst 状(図 左下)にして測定した.これらの測定値は密閉した無風状態の部屋( 分間の平均値とした.その結果,FC‐ × × mH)で測定し,線量当量は の直接接触空間線量率は , 線とも室内空間線量率の約 数倍であるが, cm 離れると同様に室内空間線量率と同一レベルに下降する.FC‐ 設置)の空間線量率は,直接接触と比べて , 線とも ∼ を燃料タンク内に挿入した場合(タンク外壁に Sv/h 減少して室内空間線量率 . ∼ . の約 倍で, 距離 cm 以上離れると室内空間線量率に減少する. 通過式燃料触媒は希土類鉱石を主成分としており,図 は共に ∼ Sv/h であり,仮に IPT を皮膚に に示したように放射線の最大線量当量は表面上で 線と 線 年間密着したとすると . mSv/h× h× = .mSv/y の吸収 線量となり,国際放射線保護委員会(ICRP)の定める職業人年間許容線量基準レベルの mSv/y 以下となる.したがっ て,通過式燃料触媒から cm 離れると 線と 線は室内と同一レベルの .∼ . Sv/h 以下となり,実用上は問題な い.一般的に Sv/h 線量レベルの放射線を被爆しても健康に異常をきたす恐れは,ほとんどない( ) ( , ) と言われている. .燃料触媒による改質燃料の燃焼への影響 空気触媒と燃料触媒の燃焼への影響については,これまでに ASTM 蒸留試験,ガスクロマトグラフィー,火炎伝播 速度測定,ベンチ性能試験及び実車走行試験など数多くの実証試験を実施して,その効果の確認を試みたが,燃料触媒 については,ASTM 蒸留試験,火炎伝播速度測定,ガスクロマトグラフィー,燃料着火性試験,単室定容燃焼装置を 用いた火炎の可視化分析やベンチ性能試験を実施して,燃料改質による励起作用の決定的な解明( )を空気触媒と比較し て実施した. エンジンの燃焼に及ぼす放射性セラミックス触媒による励起作用の影響 ― ― . 空気触媒と燃料触媒による火炎伝播速度比較測定 空気触媒と燃料触媒は,両者とも燃焼時間を短縮する効果が燃焼改善に寄与しているものと推測されるので,両触媒 を側弁式ガソリン機関( )(ホンダ G )に用いて火炎ギャップ法により,点火プラグからの距離における燃焼火炎伝播 速度を基礎燃料と比較計測した.その結果を図 後期とも火炎速度が通常運転時より約 に示すが,このグラフから明らかに負イオン発生により初期,中期と ∼ %上昇していることが理解できる. 空気イオンの負イオン化による燃料微粒子との吸着作用は,混合気燃焼過程において微小粒子(数 m 以下)である 燃料粒子を吸着しやすくして,かつ,正イオンよりも負イオンの吸着速度が速くなることは周知の事実である.したがっ て,燃料粒子の拡散速度と移動が大きくなるために点火,または自発火後の初期,中期火炎速度が速くなり,急激な燃 焼へ移行する.さらに,燃料の熱分解時の OH ラジカル類(負イオン)生成が,より燃焼を活性化させているものと考 えられる. 即ち,最大燃焼圧力がより上死点近くに移行する(等容度が高くなる)ため,ピストン行程による仕事量が相対的に 上昇して燃焼を改善するものと考察される.また,燃焼火炎伝播速度と最大燃焼圧力の上昇によって燃焼効率は高くな り,不完全燃焼や未燃焼ガスの発生が抑制され,これらに起因する CO,HC および黒煙などのエミッションが ∼ % 程度急減し,当然ながら燃料消費率も ∼ %低減することを確認( )している.なお,燃料触媒についても同様の計測 を実施したが,ほぼ近似の結果が得られた. Fig. 4 Flame Propagations Velocity by Air & Fuel Catalyst Fig. 5 Single-Chamber Constant Volume Combustion Device . 燃料触媒を用いた改質燃料の燃料着火性試験 燃料触媒による改質燃料の特性を確認するため,国際燃焼期間会議(CIMAC)と英国エネルギー学会で公認されて いる燃料着火性の標準試験装置(FIA‐ )を用いて JIS 号軽油と改質燃料の着火性比較試験を実施した.この実験 条件は軽油を即時で実施しているが,改質軽油に際しては , , 日とセラミックス燃料触媒を浸漬したとき,燃料 ― ― エンジンの燃焼に及ぼす放射性セラミックス触媒による励起作用の影響 Table 5 Ignition Combustion Characteristic Test Result of Reformed Diesel Fuel by FIA-100 試験項目 Control Fuel 着火遅れ(ID) dP= .bar msec . Reformed Fuel Progress Rate % . . 燃焼終了(EC) msec . . . 全燃焼期間(EMC) dP= .bar msec . . − . 主燃焼期間(MCP) dP= .bar msec . . . FIA セタン価(FIA CN) ROHR Index dP= .bar . . . J/msec . . − . . . ROHR 最大時間 msec 後燃え期間(ABP) msec . . . . 容器を大気開放にしたままで実施しており,これでは軽油の低沸点成分が蒸発しており正確な比較は不可能であるが, この試験結果を表 に示す. 改質燃料の着火性について主要な項目を JIS 号軽油と比較すると,着火遅れ(ID)は JIS 号軽油の . msec に 対し改質燃料が . msec と . %の短縮で,燃焼終了(EC)は同様に . と . msec で . %の短縮,全燃焼期 間(EMC)は . と . msec で . %の延長,主燃焼期間(MCP)は . と . msec で . %の短縮,FIA セタ ン価(FIACN)は .で同一値,熱発生率(ROHR Index)は .と .J/msec で . %の減少,熱発生率(ROHR) 最大時間は .と .msec で . %の上昇,最後に後燃え期間(ABP)は . と . msec で .%の短縮であった. 以上より,着火遅れは改質燃料が 号軽油より僅かに . %の短縮であるが,これは改質燃料を大気開放で放置したた め低沸点成分の蒸発が影響して少なくなったものと思われる.この低沸点成分の蒸発は全燃焼期間の . %の延長,FIA セタン価の同一値,熱発生率の . %の減少なども少なからず影響したものと思われる.これに反して改質燃料の注目 すべき点は,燃焼終了の . %短縮,主燃焼期間の . %の短縮,熱発生率(ROHR)最大時間の . %の延長,さら に後燃え期間の .%の短縮であり,これらの結果から改質燃料が燃焼時間の短縮,熱発生率の最大時間の延長による 燃焼改善効果や後燃え期間の短縮による黒煙,PM の発生抑制などによる燃焼効率改善,熱効率上昇や燃費低減に影響 を及ぼしていることが立証できる. したがって,後者のメリットは前者のデメリットと相反しているが,前者の改善率は負もしくは極く僅かで改質燃料 管理に課題があったことがその原因と見られ,大局的には後者の改善率の大きさから改質燃料の改善効果が立証されて いる. . 燃料触媒を用いた改質燃料の噴霧燃焼火炎写真( 燃料着火性試験に引続き図 ) に示す単室定容燃焼装置を用いた励起作用による改質A重油の燃焼火炎の可視化比較分 析を実施して,従来以上に燃料改質の励起作用の原因解明により近づくことができた.単室定容燃焼装置は温度 ( K ℃) ,雰囲気圧力 .MPa,酸素濃度 %,噴射ノズル . mm 単孔ホール型,燃焼容器内の火炎を噴射から燃焼 終了まで高速度ビデオカメラで撮影した.A重油燃料について放射線物質の浸漬( 時間)有りと無しについて比較測 定した.その観察結果を図 , に示す. 放射性物質(セラミックペレット)の浸漬有無について噴射開始時の の火炎長さを時系列(msec)で示した図 同じで, ms から噴射終了の ms と消炎までの ms により比較すると,噴射してから自己着火するまでの時間は噴射後 ms と ms までは火炎長さと先端部の膨らみはほぼ同であるが, ∼ ms は浸漬有りが無しと比較して .∼ . mm( .∼ .%)の火炎長と火炎の横方向の膨らみも大きく,燃焼中期の ms から噴射終了時の ms は同様に . ∼ .mm( .∼ .%)と最も著しい火炎の成長が認められた.また,燃焼後期の ∼ ms では同様に .∼ . mm( .∼ .%)で次いで火炎成長があり,特に噴射終了後においても火炎成長が著しいことが観察できる.消炎 に至る ∼ ms では同様に .∼ .mm( .∼ .%)の火炎成長と消炎時に至っても,浸漬有りが無しと比 べて最後まで燃焼を促進していることが理解できる.自己着火から消炎に至るまでの全時間については,浸漬有りが無 しと比べて平均火炎長さは .mm で同成長率は .%となる.以上から浸漬有りによって噴霧燃焼をより促進してい ることが理解でき,これは放射線による励起作用が影響していることに,より可能性の高い推定を支持できる. なお,本可視化分析は高温,高圧中の雰囲気に単孔ホールノズルを用いて噴射して火炎の成長を可視化したもので, 実機関のような予混合燃焼火炎とは異なり拡散燃焼火炎なので火炎の成長を観察するのが目的で燃焼時間を考察するも のではない.よって実機関の燃焼においては空気流動を付加した予混合燃焼と拡散燃焼の組み合わせであるので,改質 燃料を用いればより燃焼は促進し,燃焼時間が短縮することが予想される. エンジンの燃焼に及ぼす放射性セラミックス触媒による励起作用の影響 ― ― Fig.6 Visualization of Spray Combustion Flame by Reforming the Presence or Absence A-heavy Oil Fig. 7 Flame Length from Injection Start . 燃料触媒を用いた改質燃料の実機燃費試験 燃料改質器の実機性能を確認するため,財団法人日本自動車研究所(JARI)にて出力と燃料消費率についてセラミッ クス燃料改質有無の比較試験を実施した.供試機関は ストローク単気筒,φ × , . L,ε= .の DI ディー ゼルエンジンで燃料は JIS 号を用いた.その試験結果の rpm の出力と燃料消費率を図 rpm の部分負荷による出力向上率と燃料消費率の改善率を表 に示す.表 の ,及び rpm と rpm についての表示は,燃料噴射 量 mg/st 未満は通常走行でほとんど使用されないので表示範囲外とし,改質前後の近似曲線式を積分して両者の面積 を比較して表示した.したがって,セラミックス燃料改質による で燃費改善率は各々 . と . %を示し, rpm と rpm の出力向上率は各々 . と . % rpm での出力向上率と燃費改善率におけるセラミックス触媒の著しい 効果が認められた. . 燃料触媒を用いた改質燃料の実機性能試験 燃料改質器(PT‐ )の有無による排気ガスを含むエンジン性能への影響について,供試エンジンは ストローク ― ― エンジンの燃焼に及ぼす放射性セラミックス触媒による励起作用の影響 Fig. 8 Output & Specific Fuel Consumption Test at 1600 rpm Table 6 Rate of Output Improvement and Fuel Economy Improvement at 1280 & 1600 rpm Engine Speed rpm Output Improvement Rate % Fuel Economy Improvement Rate % . . . . Fig. 9 Engine Performance Test with Reformed Gas Oil at 1600 & 2200 rpm エンジンの燃焼に及ぼす放射性セラミックス触媒による励起作用の影響 ― ― Table 7 Engine Performance Test with Reformed Gas Oil at 1600 & 2200 rpm 測定条件 × 装着後 rpm 平均燃費率 A* 平均燃費率 B* 燃費改善率 A* 燃費改善率 B* g/kW・h g/kW・h (%) (%) . . − − . . − − . . ( . ) ( . ) . . ( . ) ( . ) 平均 BSHC (低減率) g/kW・h (%) . − . − . ( .) . ( .) 平均 BSCO (低減率) g/kW・h (%) . . . ( .) . ( .) 平均黒煙濃度 Smoke(低減率) BSN (%) . − . − . ( .) . ( .) *A:低負荷域の *B:低負荷域の 気筒,φ 基礎(装着前) 機関回転速度 と と kPa を含む値を示す. kPa を削除した値を示す. , . L,ε= .の DI ディーゼルで,燃料は JIS で部分負荷試験を実施した.その結果を図 は で は rpm で . %, .g/kWh, rpm で と表 号を用い,エンジン回転速度は .g/kWh,装着後で同様に .と .g/kWh を示し,燃料改質による改善率 rpm で . %となった.ここで,平均燃費率を実車で使用頻度の少ない低負荷域の .g/kWh,装着後で同様に .と .g/kWh を示し,燃料改質による改善率は rpm で . , rpm で .%, 装着前の で .%, .g/kWh, rpm で rpm で . %, rpm で ∼ %高くなったことも考慮される.排気煙濃度(BSN)は平均で示すと装 rpm で . に対して,装着後は同様に . と . を示し,燃料改質による低減率は rpm で .%となり, rpm で . g/kWh, 改質による低減率は kWh, で と rpm の方が改善率は高くなった.この理由は励起作用による燃焼改善効果に加えて燃焼時間の短 縮よる充填効率(ηc)が両回転速度とも 着前の rpm に示すが,装着前の全負荷域における正味燃費率(BSFC)の平均 kPa の値を削除すると,装着前の実用負荷域における正味燃費率(BSFC)の平均は . %となり, と rpm の方が低減率は高くなった.排気ガスの全負荷域の平均 BSHC は rpm で . g/kWh に対して,装着後は同様に . と . g/kWh を示し,燃料 rpm で .%, rpm で .%となった.また,平均 BSCO は装着前の rpm で . g/ rpm で . g/kWh に対して,装着後は同様に . と . g/kWh を示し,燃料改質による低減率は rpm で .%となった.以上から rpm rpm での燃費改善率と排気ガス低減率におけるセラミックス触媒 の著しい効果が認められた. .燃焼における励起現象の考察 石油系燃料の主要な成分は飽和炭化水素(アルカン)であるため「放射線照射による燃料の改質」は下述の「アルカ ン放射線化学( )」をモデルとして捉えることができる. ⑴ 物質に放射線を放射すると多段階で原子・分子へのエネルギー付与やエネルギー移動が生じる. ⑵ 水溶液や有機物に放射線を当てた場合,物質は吸収したエネルギーにより励起作用やイオン化を起こす.このよう に付与されたエネルギーは, 次電子,数ナノ秒の寿命を持つラジカル(基)などの活性種,あるいはイオンを介し て放射線化学反応を起こす. ⑶ 最初のイオン化・励起作用により高い励起作用の活性種が生成されるが,これらは内部転換や緩和過程により速や かに最低励起状態のラジカルカチオン(正イオン)や最低励起状態により安定した状態へ移る. 火炎速度の向上と燃焼時の OH,CH 基の生成が,燃焼時間の短縮に寄与しているものと考察される. 以上により,燃料に放射線が照射されるとイオン化や励起状態が発生し,これらは活性化されているために活性基が でき,燃料の燃焼が促進し易くなるものと考えられる. .ま と め ⑴ 燃焼火炎が導電性を持ち,火炎に電場,磁場をかけると火炎形状が変化して火炎速度が速くなることは公知の事実 ― ― エンジンの燃焼に及ぼす放射性セラミックス触媒による励起作用の影響 であり,著者はこの現象を励起作用と呼んでいるが,セラミックスによる励起作用は吸入空気と燃料の両者に対して 同様に燃焼改善に寄与できることが実験的に明らかとなった. ⑵ セラミックスを用いた燃料触媒による励起作用により,燃焼時に水酸化(OH) ,炭水素(CH)ラジカルの多量発 生による火炎速度の向上により,燃焼を活性化し,燃焼時間の短縮に寄与して燃焼改善に至っているものと考察され る. ⑶ このようなラジカル発生が燃焼を促進して火炎成長を促して噴霧燃焼の燃焼時間を短縮させることにより,出力向 上,排気ガスと燃費低減に寄与していることを実験的に立証することができた. ⑷ この燃焼促進作用は従来の複数の実証実験に加えて,燃料着火性の標準試験装置(FIA‐ )を用いて軽油改質燃 料の着火性比較試験及びA重油の定容燃焼装置で火炎の可視化比較実験により確定的に実証することができた. ⑸ セラミックスの励起作用による燃焼活性化までのプロセスは未解明であるが,これらの励起作用を与えることによ り燃焼活性化と火炎速度増加による燃焼時間の短縮が,ピストン行程による仕事量が相対的に上昇して,出力向上, 排気ガスと燃費低減に寄与していることを実験で立証することができた. 最後に本研究の解析実験等に惜しみないご協力を賜った,㈱フェニック,東洋ゴム工業㈱材料研究室,㈱商船三井技 術部技術研究所および財団法人日本自動車研究所に深甚の謝意を表する. 参考文献 ⑴ ⑵ 渡邉孝司:自動車技術会,日本機械学会共催第 回内燃機関シンポジュウム講演論文集,P ( , ) T. Watanabe:Improving the performance of International Combustion Engines Using Radiated Fuel with Ceramic Containing Radium and Thorium,久留米工業大学知能工学研究所報告,第 号,P ( , ) ⑶ 渡邉孝司:燃料改質シート及びその製造方法,日本国特許,第 号( ) ⑷ 渡邉孝司ほか:セラミックの放射による内燃機関の性能改良,日本国特許,第 号( ) ⑸ T. Watanabe: FuelReforming Sheet and Method of Manufacture Thereof, US Patent 6, 200, 537 B1( ) ⑹ 渡邉孝司:マイナスイオンによる内燃機関の燃焼改善,日本機能性イオン協会記念講演 p ‐ ( ) ⑺ 渡邉孝司ほか:マイナスイオンシートによる内燃機関の省エネと環境負荷低減,日本機能性イオン協会第 回研究発 表会,pp ‐ ( ) ⑻ 渡邉孝司ほか:マイナスイオンシート,セラミックペレットを用いたボイラー等の省エネ効果,日本機能性イオン協 会第 回研究発表会,pp ‐ ( ) ⑼ 渡邉孝司ほか:マイナスイオンシートによる内燃機関の省エネと環境負荷低減,日本機能性イオン協会懸賞論文,pp ‐ ( , ) ⑽ 渡邉孝司ほか共著:内燃機関の燃焼改善におけるマイナスイオンの応用「空気マイナスイオンの科学と応用」 ,イオン ,pp ‐ ( , ) 情報センター(丸善) ⑾ 渡邉孝司:マイナスイオンによる自動車などの燃費向上研究,第 回韓・日遠赤外線シンポジウム講演集,(社)韓国 遠赤外線協会・日本遠赤線応用研究会,pp ‐ ( , ) ⑿ 渡邉孝司:エンジンの燃焼に及ぼす空気負イオンによる励起作用の影響,久留米工業大学研究報告,第 号,P , ( ) ⒀ A. E. Malinowski:J. Chimie. (U.S.S.R), 21, p 469, ( ) ⒁ E. M. Guenault & R. V. Wheeler: 2, p 195, ( ) ⒂ E. M. Guenault & R. V. Wheeler: 2, p 2788, ( ) ⒃ H. F. Calocate & R. N. Pease: Ind, Edn. 43, 1, p 2726, ( ) ⒄ M. Kono, K. Imamura. & S. Kumagai: pp.1167-1174, ( ) ⒅ Yuukichi Asakawa: vol.361, No.1557, pp 220-221, May 20, ( ) , ) ⒆ 浅川勇吉: 伝熱研究 , , ,p ( ⒇ O. Fujita et al.: (in print), ( ) 小林清志,荒木信幸,牧野 敦共著:「燃焼工学」 ,理工学社,p ( , ) 水谷幸夫:「燃焼工学」 ,森北出版,pp ‐ ( , ) 渡邉孝司:エンジンやボイラーの燃焼における励起現象の一考察,日本機能性イオン協会会報誌, ,Vol. , pp ‐ ( , ) 佐藤満彦:「放射能は怖いのか」 ,文春新書 ,P ( , ) 近藤宗平:「低線量放射線の健康影響」 ,P ,近畿大学出版局,( ) , ) 日本放射線化学会編「放射線化学のすすめ」 ,学会出版センター,pp ‐ ,pp ‐ ,pp ‐ ( 太陽光発電システムの発電効率に関する研究 〔論 ― ― 文〕 久留米市における太陽光発電システムの発電効率に関する研究 野々村善民* Research of Power Output Efficiency by Solar Photovoltaics System in Kurume City Yoshitami NONOMURA* Abstract The purpose of this study is to clarify the relationship between the output efficiency and solar radiation by solar photovoltaics systems. Three parameters were calculated using the measured values from a solar photovoltaics system situated on the roof of Building No.3 at Kurume Institute of Technology. The three parameters are: output efficiency η, conversion efficiency ηpcs , and the rate of fine weather Swp . Findings indicated that even after three years of operation, the solar photovoltaics system s output efficiency η was approximately 0.095, and that the amount of power generated by the solar photovoltaics system was constant. Key Words:Solar Photovoltaics , Power Output Efficiency, Solar Radiation, Rate of Sun .緒 言 太陽光発電システムは,大規模産業用から住宅用として日照条件の良い地域で広く普及している.特に,住宅に太陽 光発電システムが設置される場合,計画時の発電量はカタログに掲載された発電効率を用いて算出している.しかし, 日射量と発電量の関係を示す実測結果に関する研究発表は,ほとんど無い状況である. 久留米工業大学では, 年 月, 号館屋上において太陽光発電システムが設置され, 年 月から太陽光モ ジュール面の日射量と各種発電量が計測されている.太陽光発電システムのアレイの設置状況は良く,ここで計測され る発電量に関わる各データは久留米市周辺における代表値であるものと考えられる.そこで,本研究は,久留米市にお いて設置後から 年以上経過した太陽光発電システムの発電量と日射量の関係を明らかにすることを目的とする. .記号の説明 以下に,本論文で扱う記号の一覧を示す. * 時間あたりの積算日射量,実測値 [kWh·m− ] Eh : Ea :アレイの表面に当たる積算日射量 [kWh] Ea = Eh × Aa Ey :積算日射量の実測値 [kWh·m− ] Ex :可照時間の積算日射量,計算値 [kWh·m− ] Ndc :晴れの日数 [Day] Ndp :解析対象期間の日数 [Day] Swp :晴天率 [%] Aa :アレイの受光面積 [m ] Am :太陽光モジュールの受光面積 [m ] Ppv :モジュールから出力される Ppcs :パワーコンディショナーから出力される 建築・設備工学科 平成 年 月 日受理 日照時間が可照時間の %以上となる日数 Swp = Ey ÷ Ex ! . Ndc × Ndp Aa = × Am 時間積算電力量 [kWh] 時間積算電力量 [kWh] ― ― 太陽光発電システムの発電効率に関する研究 Ppcs Ppv ηpcs :変換効率 [−] ,直流電流から交流電流に変換する効率. ηpcs = η :発電効率 [−] , Ppcs とアレイに当たる日射量の比率 η= Ppcs Eh × Aa .研究方法 ・ 表 太陽光発電システムの概要 に,本研究で扱う太陽光発電システムの構成部品を示す.アレイの設置場所は,久留米工業大学の ある.設置場所の緯度は .[deg]であり,経度は 号館屋上で .[deg]である.アレイの受照面は概ね南向きであり,アレ イの傾斜角度は [deg]である. なお, 号館屋上における日照条件は良く,建物の周囲には,太陽光を遮る地形地物は無い.そのため,晴天時には 一日中,太陽光が各モジュールに当たる. 表 No. 太陽光発電システムの構成部品 部品の名称 アレイ( 枚の太陽光モジュール) モジュールのメーカーと型式:KYOCERA SPG 気象測定装置(精密日射計,温度計) パワーコンディショナー(写真 を参照) 太陽光発電計測監視装置(KYOCERA KC-ES -H) 図 写真 太陽光発電システムの設置場所(久留米工業大学) 気象測定装置 写真 パワーコンディショナー( 号館屋上) 太陽光発電システムの発電効率に関する研究 写真 ― ― に,気象測定装置の設置状況を示す.日射計の設置角度はモジュール面の角度と同じ, [deg]である.温 度計は日射遮蔽筒の中に入れ,その設置場所はモジュールの下部である. ・ 太陽光モジュールの仕様 アレイの設置場所は,久留米工業大学の × )である.表 号館屋上である.アレイを構成する太陽光モジュールの設置枚数は に,モジュールの仕様を示す.モジュールは京セラ社製の SPG である.モジュール 光面積 Am は, . m であり,アレイの受光面積 Aa は . m である.モジュールの製造年月は この SPG 枚の受 年 月である. の太陽電池モジュールの変換効率のカタログ値は, . ( .%)である. 表 型式 製造番号 製造年月 公称最大出力 モジュール変換効率 公称開放電圧 公称短絡電流 公称最大出力動作電圧 公称最大出力動作電流 最大システム電圧 面積と寸法 公称質量 ・ 枚(= 太陽光モジュールの仕様 SPG XCA . W .% .V . A .V . A V . m = . m× . m .kg 場所:久留米工業大学 号館屋上 太陽光発電計測監視装置について 久留米工業大学の 号館屋上に設置されたアレイから出力される電力に関するデータなどは,気象測定装置で計測さ れた外気温と日射量と共に,太陽光発電計測装置 KC-ES -H により記録される. この KC-ES -H の設置場所は, 統計時間を ・ 号館の地下室である.KC-ES -H の測定周波数は Hz である.なお,本研究では, 時間として,各種の発電量を算出した. 統計データの解析方法 ここでは,KC-ES -H から出力した統計データの解析方法を以下に示す.太陽光発電システムの設置年月は 月であり,統計データの出力開始年月日は, 区切って統計時間 年 月 日である.本研究では,以下のように 時間のデータを解析した.なお,原因不明であるが, 年 月から 年 年 つの解析対象期間に 月 日まで計測デー タは KC-ES -H に未記録である. ・caseA: 年 月 日∼ 年 月 日 ・caseB: 年 月 日∼ 年 月 日 ・caseC: 年 月 日∼ 年 月 日 ・caseD: 年 月 日∼ 年 月 日 .実測結果 発電効率 η について ・ 号館屋上に設置された太陽光発電システムの発電量の経年変化を明らかにするために,図 に示すように,各年度 の発電効率 η を算出した.発電効率 η は,パワーコンディショナーから出力される積算電力量 Ppcs [kWh]とアレイに 当たる積算日射量 Ea [kWh]の比率である. Ea は,精密日射量で測定した日射量[kWh·m− ]とアレイの受光面積[m ] を乗じたものである.なお,写真 図 に示すように,パワーコンディショナーはアレイ下部の屋外に設置されている. の⑴に示すように,caseA の発電効率 η は, . である.この発電効率 η は, Ppcs と Ea から求めた近似直線 の傾きである.実測で得られた発電効率 η が約 . とした場合,メーカーのカタログ値 η= . に比べて,約 %低 くなる. 実測で得られた発電効率 η が,カタログ値に比べて低くなる原因を以下に示す. ― ― 太陽光発電システムの発電効率に関する研究 図 太陽光発電システムの発電効率 η ・本システムのアレイの設置方向が概ね南側であり,受照面の角度が [deg]である.そのため,アレイに当たる 日射量が太陽光の法線面における場合に比べて小さくなる. ・アレイの屋外露出の期間が 年以上である.アレイ設置後から今まで,各モジュール面の清掃は,一度も行ってい ない状況である.また,各モジュール表面には,ホコリおよび鳥の糞などが付着している.そのため,汚れが付着 したセルに当たる日射量は遮られ,システム全体の発電量が低下しているものと思われる. 次に,図 の⑵に示すように,caseB では η= . の⑷に示すように,caseD では,η= . ,図 の⑶に示すように,caseC では η= . となる.図 となる.以上から, 年以上経過した場合であっても,太陽光発電システ ムの発電効率 η は約 . であり,経年変化による出力は概ね一定であることが判った. 年 ・ モジュール面の汚れについて 写真 に,久留米工業大学 号館屋上における太陽光モジュール表面の汚れの状況を示す.撮影した年月日は, 月 日である.多くのモジュールの表面には,鳥の糞など汚れが付着していた.このように,モジュール表面には. 発電量の低下を招く汚れが常に付着している状態である.つまり,モジュールにホットスポット現象が生じる恐れがあ 写真 モジュール表面における汚れの状況( 年 月 日に撮影) 太陽光発電システムの発電効率に関する研究 ― ― ることが判った. なお,モジュール表面の一部に汚れが付着した箇所は抵抗体となる.この箇所に電流が流れた時に,熱が発生する. ホットスポット現象は,モジュールに電流が流れ,この時,不具合のセルが高温となることである.このホットスポッ ト現象が何度も繰り返されることで,セルの損傷が進行する. また,太陽光モジュールには,不具合のセルが生じた場合に,モジュール全体の発電量の低下を防ぐために,バイパ スダイオードが装着されている.このバイパスダイオードによって,ホットスポット現象の発生を防ぐことができる. ・ 変換効率 ηpcs について パワーコンディショナーに組み込まれている電気回路に,コンデンサーがある.このコンデンサーの劣化がシステム 全体の性能低下となる.そこで,変換効率 ηpcs の経年変化を明らかにすることで,パワーコンディショナーの不具合が 発見できる.図 に, つの解析対象期間の変換効率 ηpcs を示す.なお,変換効率 ηpcs はパワーコンディショナーから 出力される積算電力量 ηpcs [kWh]とアレイから出力される積算電力量 Ppv [kWh]の比率である. 図 の⑴∼⑷に示すように, ステムの性能は, 年 つの case の変換効率 ηpcs は,約 . である.以上から, 図 ・ 号館屋上の太陽光発電シ 月 日以降から概ね同じであることがわかる. 変換効率 η の経年変化 久留米市における晴天率 Swp について 本論文で用いた太陽光発電計測装置 KC-ES -H は,アレイ面における積算日射量 Ea を計測している.本論文の解析 対象期間の違いによる天候を明らかにするために,晴天率 Swp を算出した. Swp は,晴れの日数 Ndc と解析対象期間の 日数 Ndp の比率である. Ndc は,一日当たりの積算日射量の実測値 Ey と可照時間の積算日射量 Ex の比率が .以上と なる日である. 本論文では,可照時間の積算日射量 Ex は,水平面を対象として,汎用の流体数値シミュレーションソフトの ― ― 太陽光発電システムの発電効率に関する研究 解析対象期間の説明 ・caseA: 年 月 ・caseB: 年 月 ・caseC: 年 月 ・caseD: 年 月 図 日∼ 日∼ 日∼ 日∼ 年 年 年 年 月 月 月 月 日 日 日 日 久留米市内における晴天率の経年変化 FlowDesigner を用いて算出した. 図 に つの解析対象期間の晴天率 Swp を示す.caseA,caseB と caseC の Swp は,約 [%]∼約 [%]であり, 各年で大きく変動することがわかった. 年 月以降,caseD の晴天率 Swp は,約 [%]である. 以上から,各 case の晴天率 Ex は約 [%]∼約 [%]に変動した場合であっても,太陽光発電システムの発電効 率 η は約 . の一定値であることがわかった. .結 語 本研究の目的は,太陽光発電システムの発電量と日射量の関係を明らかにすることである.そこで本研究は,久留米 工業大学の 号館屋上にある太陽光発電システムの実測値を用いて,発電効率 η,変換効率 ηpcs ,および晴天率 Swp を 算出した.以下に得られた知見を記す. ① 太陽光発電システムが設置運用を開始して, 年 月 日以降から,太陽光発電システムの発電効率 η は約 . であり,経年変化による出力は概ね一定であることが判った. ② アレイの設置後からモジュール表面の清掃は一度も行っていない状況である.そのため,発電量の低下を招く汚 れが常に付着している状態であることが判った. ③ パワーコンディショナーによる電力の変換効率 ηpcs は,約 . であり, 年 月 日以降から概ね同じである ことが判った. つの解析対象期間の晴天率 Swp は,約 [%]∼約 [%]であり,解析対象期間の違いにより, Swp は変動 ④ することが判った.なお, 年 月以降の Swp は,約 [%]である. 今後,モジュール面におけるホットスポット現象の有無について,調査する予定である.また,モジュール面の清掃 を行い,発電効率 η の変化について確認する予定である. 謝 辞 本論文の作成に当たって,久留米工業大学工学部 建築・設備工学科の学部生の井上尚弥君,杠 和洋君,柴山和幹 君,財満祐吾君に多大な協力を得ました.ここに記して謝意を表します. 文 ⑴ 献 京セラ株式会社,http://www.kyocera.co.jp/solar/es/prdct/module/detail.html, 年 月 日,京セラ株式会社の 太陽電池モジュールの HP ⑵ 資源エネルギー庁,http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/ohisama_power/tv/#vol ‐ , 年 月 日,ホットスポット / /post‐ . html, 年 月 日,気象庁の気象・ ⑶ 気象庁,http://econeco.sakura.ne.jp/kurashitokisyo/yougo/ 天気の用語 味の嗜好性評価結果と好みの味順位化アルゴリズムの順位結果との関係性の検証 〔論 ― ― 文〕 味の嗜好性評価結果と 好みの味順位化アルゴリズムの順位結果との関係性の検証 江藤 信一* Verification of relationship of evaluation taste palatability and result using ranking algorithm of food with favorite taste Shinichi Etoh Abstract This paper will present the results from an experiment and investigation of taste palatability using a questionnaire conducted on the general public at Kurume institute of Technology. Using the results of a questionnaire, the researchers designed a food-ranking algorithm that can rank foods according to an individual s favorite tastes. The algorithm uses ELO rating to give a quantitative visualization of the food ranking based on scores of preferred or not preferred stated by the individual. This paper will also discuss the relationship between the two results. Key Words:Taste palatability, Ranking algorithm of food, standard deviation, ELO rating .はじめに 一般消費者の「おいしさ」への欲求は,時間を追うごとに増加しており,その欲求を満たすべくあらゆるメディアが その情報を提供・配信しているのが現状である.その情報は文字や画像,動画などであり,それらによって一般視聴者 はイメージによって「おいしさ」を授受し,食の消費行動を活発化させている.食品を提供する食品メーカー,食品流 通,食品小売業などの食品関連企業では,提供する食品の開発に注力することはもちろんのこと,それらに関する情報 提供も盛んに行なっている.材料に使われる素材の情報やその食品を食するシーンをイメージできる CM,言葉,フレー ズなど工夫を凝らし,CM などのメディアによって配信することの重要性を意識している. 一方,「おいしさ」という感覚は主観的評価にあたり,味覚で感じる味,嗅覚で感じる香り・匂い,触感(触感)で 感じるテクスチャー,視覚で感じる見た目・色合い,聴覚で感じる音といった五感に由来する感覚だけでなく,これま での食生活,体調,気分,時間といった情報も加味された総合的な評価の中で「おいしさ」を判断していると考えられ る.このような背景もふまえ,学術的研究においても人の食品に対する嗜好性の関する研究は多く行なわれているが, 評価法の一つである官能評価等の評価手法では,パネルの体調・気分・環境の影響,再現性などの問題点から,定量的 なおいしさの評価は難しい ‐ ). 著者は,これまでの研究において,好みの味を持つ食品の順位化に関するアルゴリズム「順位化アルゴリズム」を提 案した ).これは,ある食品カテゴリーの中から二つの商品をピックアップ・表示し,これまでの試飲経験とイメージ より,パネルがより好みの味を持つ食品であるという優劣判断を判定・回答することで,点数化され,それを積算する ことによって順位を導き出すアルゴリズムである.このアルゴリズムに市販の緑茶,コーヒーなどの嗜好性の強い食品 を用いて, 名近いパネルを対象に実証実験を行ない,パネル個人の好みの味を持つ食品の順位を視覚化することに 成功した.一般消費者が食品アイテムを購入する際に,無意識に参照しているであろう様々な評価に対して,「好みの 味」という基準から選択するよう簡単な二者択一法による回答手段を取ることにより,その順位を抽出できることが可 能となった. 本研究は,「順位化アルゴリズム」の実証実験にて得られた順位結果と,その実証実験の際に収集した味の嗜好性に 関するアンケート結果を用いて,市販の緑茶に対するイメージからあらわれる嗜好性評価と順位との関係性を導き出す. * 情報ネットワーク工学科 平成 年 月 日受理 ― ― 味の嗜好性評価結果と好みの味順位化アルゴリズムの順位結果との関係性の検証 「順位化アルゴリズム」を用いて導き出された市販の緑茶の順位と,「濃さ」 ,「爽快感」 ,「甘味」 ,「渋み」といったお 茶の味を表現する際に用いられる単語が,どのように関係しているかを検証する.これによって現代社会における「お いしさ」のイメージ提供と順位化アルゴリズムによる結果との関係性を知るきっかけになるのではと考える. .好みの味の食品の順位化アルゴリズム まず好みの味を持つ食品の順位化アルゴリズムについて述べる. つの食品アイテムに対しての好みの味の優劣をパ ネルが判断し,それを積み重ねることで最終的に順位化されるアルゴリズムである ).この順位化アルゴリズムでは, 単純に 食品間の優劣による定性的な評価として処理するのではなく,優劣による点数付けを行ない,最終的に定量的 な数値として食品の順位化を行なうアルゴリズムである.その算出に Elo Rating を用いている. 初期設定として,各食品アイテムに 点を割り当て,それから 食品アイテム間で好みの味という基準で優劣をつ けることで,食品アイテムの点数が変動する.これを他のアイテム間でも算出し,積算することによって最終的に複数 の食品アイテムの点数が算出され,順位化される. 式⑴に Elo Rating における確率の算出式を示す. " #$$% % # $"$!%!$!$"% """ ! #!! ( ) (B) が優れた味だった場合の確率,RA(B)は食品アイテム同士の比較前の点数を示す.優劣がつ EA(B)は食品アイテム A いた段階で,EA および EB が算出され,次の式⑵を用いて,食品アイテムAの比較後の点数が算出される. R A = RA + K( SA EA ) ( ) R A は評価後の食品アイテムの点数,K は係数,SA は優劣判定による結果(優の場合: 本研究において K= ,劣の場合: )である. とした.二食品間で,好みの味という基準で優劣をつけることで,その食品の点数がそれぞれ変 動するものである. 図 に順位化アルゴリズムを組み込んだプログラムを示す.Microsoft の Visual Basic Editor を用いて具現化を行なっ た.今回,緑茶を食品カテゴリーとして選択し,そのカテゴリー内から つの食品アイテムの画像を準備した(実際の プログラムではモザイクのない状態で表示する) .本プログラムの動作は,まず食品カテゴリー内の食品アイテムから ランダムに 品ピックアップし,図 のように PC 画面に表示する.パネルは,「Aが好き」もしくは「Bが好き」の どちらかを選択し,ボタンをクリックする.選んだ食品アイテムを「優」 ,選ばれなかった食品アイテムを「劣」とし, アルゴリズム内の Elo Rating を用いて算出を行なう.ただし,AもしくはBの食品アイテムを食したことがない場合 が考えられるため,「Aを飲んだことがない」もしくは「Bを飲んだことがない」のボタンを設け,該当する場合には こちらをクリックする.本研究では飲んだことない食品アイテムは,アルゴリズムとしてどの食品アイテムよりも劣る と仮定し,自動的に劣判定を加えることで,その食品アイテムがふたたび評価画面に現れないようにする.これで,一 つの組み合わせが終了となり,次の二食品アイテムの組み合わせがランダムに画面上に現れ,同じステップで優劣判定 を行なう.今回のプログラムにおいて, 食品アイテムを用いているため,合計 回の優劣判定が行われる. 回の優 劣判定が終わったのち,Elo Rating の算出結果から, の順位化アルゴリズムにおいて,市販緑茶 食品アイテムの順位が導き出されることになる.表 は,今回 アイテムの名称とメーカーである.実際は名称も明記する形で順位化アル ゴリズムに組み込まれている. 表 5 items in green tea available using the experiment 名称 図 Program witn ranking algorithms メーカー 緑茶A ㈱伊藤園 緑茶B コカ・コーラカスタマーマーケティング㈱ 緑茶C サントリーフーズ㈱ 緑茶D ㈱伊藤園 緑茶E キリンビバレッジ㈱ 味の嗜好性評価結果と好みの味順位化アルゴリズムの順位結果との関係性の検証 ― ― .味の嗜好性評価に関するアンケート 先述の好みの味を持つ食品の順位化アルゴリズムの実証実験と並行して,パネルにそれぞれの緑茶に対するイメージ を つの言葉「濃さ」 ,「爽快感」 ,「甘味」 ,「渋み」から,どの程度,強弱を感じているかのアンケートを実施した. 図 にアンケート調査表の抜粋を示す.このアンケートは上記の順位化アルゴリズム実施前に行なった.また Microsoft の Visual Basic Editor を用いて調査票を作成した.アンケート調査では性別・年齢・職業について,また各 食品アイテムに対しての味の嗜好性を 感」 ,「甘味」 ,「渋み」に関して, 段階評価で回答してもらった.図 に示す緑茶の調査票では,「濃さ」 ,「爽快 段階評価を実施した.さらに「市販の緑茶を購入する上で考慮する点」との問いに 「味」「香り」「価格」「メーカー」「パッケージ」「その他」といった回答を準備し,購入する際に基準にしている点を 聞き出した.また「あなたがお茶を選ぶ上で注目している味は?」との問いに「苦味」 ,「酸味」 ,「旨味」 ,「甘味」 ,「塩 味」 ,「渋味」 ,「その他」といった回答を準備し,味についてのアンケートも設置した. 図 Questionnaire survey for panel taste palatability .実験調査および結果 前述のアルゴリズムを組み込んだプログラムを用いて, 年 月 日から 月 日にわたり,久留米工業大学キャ ンパス内にて実証実験調査を行なった.今回のアルゴリズムプログラムを体験したパネル数は総勢 のうち, 種類の緑茶の中で,飲んだことのないお茶が つ以上あったパネルに関しては,今回の実証実験の統計に沿 わないと判断し除外した.よって残った 名の結果をもとに検証した. 名のパネルの属性を図 ルのうち,男女比はほぼ : 名であった.そ に示す. 名のパネ , 代以下が %を占めた.これは平日の大学キャンパスにおいて実施したため,この ような傾向となった. 図 Results of property in 75 panels (distinction of sex, age, job) .味の嗜好性評価と順位化アルゴリズム結果の関係性 図 に 名のパネルが,市販の緑茶を購入する上で考慮する点についての回答結果および緑茶の味で注目している味 についての回答結果をそれぞれ示す. 割のパネルが,緑茶を購入する上で「味」を考慮しており,また味として, 「旨 味」と「苦味」に注目して緑茶の味を判断しているという結果となった.これらの結果は,後述する順位と関係性があ ― ― 味の嗜好性評価結果と好みの味順位化アルゴリズムの順位結果との関係性の検証 図 Results of property in 75 panels (Criteria of choosing teas, taste) ると考えられる. 表 に 名のパネルによる順位化アルゴリズムの結果と,各緑茶の Elo Rating の平均と順位のばらつきを示す.今 回,最も好みの味を持つ緑茶として出力されたのは緑茶Bで, %以上のパネルが 位となっている.緑茶Dと緑茶E に関しては,飲んだことがないと答えるパネルも複数みられた. 表 Results of Average of Elo rating and count for ranking 順位(人) 緑茶B 緑茶C 緑茶A 緑茶E 緑茶D Elo Rating 平均 . . . . . 位 位 位 位 位 今回, 名のパネルがイメージをもとに,「濃さ」 ,「爽快感」 ,「甘味」 ,「渋み」に対して の集計結果および分散・標準偏差を表 段階評価を行なった.そ に示す.特徴的な点は,緑茶DおよびEは標準偏差が大きく,特に緑茶Dの「濃 さ」 ,「渋み」に対しての評価は大きく分かれた結果となっている.さらに緑茶Dの「甘味」に対する評価の平均は . と最も低い結果となった.これは緑茶Dの銘柄の中に「濃い」といったキーワードが入っている点,またペットボトル のパッケージも深緑を主体としたものを使用している点,加えて味も全体的に強い設計がなされている結果,多くのパ ネルには緑茶Dに対して「甘味」といったイメージは持っていないことになったと考えらえる. 表 Results of questionnaires of taste palatability (75 panels) 緑茶A 緑茶B 緑茶C 緑茶D 緑茶E 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 平均 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 分散 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 標準偏差 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 表 Results of questionnaires of taste palatability (50 panels of green tea B on No.1) 緑茶A 緑茶B 緑茶C 緑茶D 緑茶E 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 平均 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 分散 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 標準偏差 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 味の嗜好性評価結果と好みの味順位化アルゴリズムの順位結果との関係性の検証 表 Results of questionnaires of taste palatability (11 panels of astringency ) 緑茶A 緑茶B 緑茶C 緑茶D 緑茶E 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 平均 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 分散 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ― ― 表 Results of questionnaires of taste palatability (28 panels of bitterness ) 標準偏差 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 緑茶A 緑茶B 緑茶C 緑茶D 緑茶E 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 平均 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 分散 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 標準偏差 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 次に,順位化アルゴリズムの結果,最も好みの味を持つ緑茶として緑茶Bが出力されたパネル 名の嗜好性評価の結 果(表 )をみると,緑茶Bの「濃さ」 ,「渋味」の評価が高く,標準偏差も低い.「濃さ」と「渋味」を多くのパネル が強く評価しており,これによって緑茶 B が支持され,多くのパネルの順位化アルゴリズムの結果につながったとい える. 一方,緑茶の味で注目している味の回答で「渋味」と回答しているパネル 名の嗜好性評価の結果(表 )をみると, 緑茶Bの「渋み」の評価がどの結果よりも高く,標準偏差も低い点と先の結果を考慮しても,緑茶Bの「渋さ」は特徴 的であることがわかる. 名のパネルのうち 名は緑茶Bが最も好みの味をもつ緑茶として出力されており,渋味の印 象とつながっている. また緑茶の味で注目している味の回答で「苦味」と回答しているパネル 名の嗜好性評価の結果(表 )をみると, 緑茶Dの「爽快感」 ,「甘味」の平均がかなり低くなっている.先述にあるように,緑茶Dはネーミング,パッケージ, そして味と,他の緑茶と比較して特徴的な設計がなされている 結果,「爽快感」 ,「甘味」といった評価が低い結果に結びつい たと考えられる.注目している味によって,各緑茶の評価に特 表 Results of questionnaires of taste palatability (28 panels of green tea D on No.5) 徴がみられた. 今回の順位化アルゴリズムによって,支持されなかった緑茶 は緑茶Dであった.その緑茶Dが最も低い順位となっているパ ネル 名の嗜好性評価の結果(表 緑茶A )をみると,緑茶Dの「濃 さ」 ,「渋味」の評価が最も高くなっている.これより「濃さ」 , 「渋味」の評価の高いことが,緑茶Dの順位が低かった要因に 緑茶B なったと考えられる. 嗜好性及び味に対する注目する点に関するアンケートと順位 化アルゴリズムによって導き出された順位との関係性を見るこ 緑茶C とによって,それぞれの評価と順位に変化が見られた.緑茶の 味の印象・イメージによって,選択が変わることが容易に考え られる.今回,イメージによって嗜好性アンケートと順位化ア 緑茶D ルゴリズムを回答してもらったが,味による評価に対して影響 がどの程度あったか難しいところである.その大きな要因とし て,今回用いた緑茶は主要飲料メーカーの主力緑茶商品であり, 味の設計に注力しているのはもちろんだが,イメージ戦略とし 緑茶E 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 濃さ 爽快感 甘味 渋み 平均 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 分散 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 標準偏差 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ― ― 味の嗜好性評価結果と好みの味順位化アルゴリズムの順位結果との関係性の検証 てのネーミングやパッケージ・CM 等への注力がなされていることは言うまでもない.特に CM に関しては,映像とフ レーズといったイメージづけしやすいメディアであるため,それらが消費者のイメージに対して影響あることは十分に 考えられる.実際に今回の実験においても,回答するパネルによっては,CM でのフレーズを口にしながら回答する者 もおり,その影響力は強いものであると感じた. 緑茶Bについては,その CM の中で「急須で入れたお茶」といった味の表現というより,おいしいお茶をイメージ しやすいフレーズが使われており,より一般消費者のイメージづけに大きな影響があると考えられ,結果, 名中 名 のパネルが好みの味を持つ緑茶として選択したことになった.また緑茶Dについては,「濃い」といったネーミングが 使われ,さらにそれに合わせた特徴的な味とパッケージカラーが用いられている点があった.これは今回の順位化アル ゴリズムにおける「好き」 ,「嫌い」の判断・評価,さらにはそもそも購入する際に手に取ることなく「飲んだことがな い」パネルが多かったといった結果が現れたと考えられる. .ま と め 本研究において,順位化アルゴリズムを用いて緑茶 アイテムの順位とパネルの持っている嗜好性イメージの回答を もとに,その関係性を導き出した.パネルの嗜好性によって選ばれる緑茶に対して,いくつかの特徴がみられた.緑茶 Bに対する印象と順位との関係性,緑茶Dに対するイメージと順位との関係性,また注目している味毎に評価に与えて いる影響などを見ることができた. 今回,順位化アルゴリズムと嗜好性のイメージの関係性を導き出すことは出来たが,データ抽出の際にパネルの年齢 の偏りがあったことは否めず,一般的な傾向として捉えているとは言えない.さらにパネルの年齢の平均は 歳前後で あり,その年齢層の緑茶に対するこだわり・興味も少ない可能性もあり,そうなるとより CM やパッケージといった 味以外の要因によるイメージの影響はあったと考えらえる. このような結果を踏まえ,商品の銘柄等を伏せた試飲による順位化アルゴリズムが必要であると考えらえる.今回の イメージによる順位化アルゴリズムと新たに銘柄を伏せた試飲による順位化アルゴリズムの結果を比較・検証すること で,一般消費者のイメージの影響,試飲を通じた本当に好みの味を持つ商品の抽出が可能となることが考えられる.さ らにこのアルゴリズムはスマートフォン・タブレットなどを活用したユビキタス化が容易にでき,それによってさらに 食するシーン,体調,時間などのパラメータによる順位の変化もとらえることができる. それらが一般化されることによって,食品業界における新たなユーザー評価,商品開発の新たな指標となりうるもの になると期待できる. 謝 辞 本アルゴリズム実現に際し,プログラム化,アンケート調査にご協力いただいた久留米工業大学情報ネットワーク工 学科の草牧すずかさん,甲野ひかりさん,村山真智子さんに感謝致します.また研究にご協力いただいた㈱味香り戦略 研究所に感謝致します.本研究は JSPS 科研費 文 ⑴ ⑵ ⑶ の助成を受けたものです. 献 相良泰行,“食感性モデルによる「おいしさ」の評価法” ,日本食品化学工学会,Vol. ,No. , ‐ , . 山口和子,高橋史人,“食品の嗜好に関する研究(第 報) ” ,調理科学,Vol. ,No. , ‐ , . 大富あき子,田島真理子,“現代の女子大学生の食物に対する嗜好と味覚感受性の関係について”,日本家政学会誌 Vol. ,No. , ‐ , . ⑷ 江藤信一, “好みの味の食品の順位化アルゴリズムの構築と味の嗜好性の視覚化の可能性” ,久留米工業大学研究報告, No. , ‐ , . 投稿論文の作成について 〔論 ― ― 文〕 「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」 (中教審答申)からみるキャリア教育の課題と展望 堀 憲一郎* Issues and Perspectives on the Career Education in The Central Council for Education s report on Future vision on Career Education and Vocational Education at school Kenichiro HORI* Abstract Globalization, as well as the industrial structure and forms of employment in Japan, have placed today s youth in a position from which it is difficult to see a future career path. The first purpose of this article was to review the Central Council for Education s report on the Future vision on Career Education and Vocational Education at school . The second purpose was to review literature that argues the relationship between the youth career formation and the career education in higher education. Results indicate that there are some problems with youth career formation and the career education in universities. The first problem is a change of the employment structure including the increase in part-time and contract employees. The second problem is a change of the discourse about abilities expected in society in the future. The third problem is identifying what conditions are important in the career education for today s youth. Key Words:Career Education, Vocational Education, Hypermeritocracy, Generic Skills, Higher Education. .はじめに グローバル化や我が国の産業構造や就業形態の大きな変化とともに,現在の若者は将来の職業生活の在り方,すなわ ちキャリア形成の道筋を非常に見通し辛い状況に置かれている.そのような状況において,ニートや早期離職者の増加 など学校を卒業しても円滑に社会生活へと移行できない若者の問題が指摘されている.本論文では,特に大学から社会 への移行に伴う問題に焦点をあてながら,中央教育審議会より平成 年に出された答申「今後の学校におけるキャリア 教育・職業教育の在り方について」( )をベースに関連するこれまでの研究報告等も含めながら,大学におけるキャリア 教育の課題と展望を概観していく. まず, 章では「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(答申)において,現代の若者の キャリア形成にどのような課題があると考えられているのか,その全体像の概略を紹介する.続く 章では,わが国の 産業構造・就業構造の変化が若者のキャリア形成に及ぼした影響について,雇用形態の変化,職業にかかわる能力開発 の変化,職業に必要な能力の向上といった点から検討する. 章では, 章で検討した職業に必要な能力の向上の問題 をもとに,職業に関する教育の課題を特にハイパー・メリトクラシーと教育の職業的意義の観点から検討する. 章で は前章までの課題や問題点,研究知見を整理し,「まとめ」として,今後の大学におけるキャリア教育の在り方や大学 生のキャリア形成について述べる. . 「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(中教審答申)から見る課題の概略 現在の若者の社会的・職業的自立をめぐる様々な課題を受け,中央教育審議会では,平成 年 月,「今後の学校に おけるキャリア教育・職業教育の在り方について」の諮問を受け,平成 年 月その答申( )をとりまとめた.以下にま ず,同答申においてどのような課題や社会的背景などが現代の若者のキャリア形成に影響していると指摘されているの * 共通教育科 平成 年 月 日受理 ― ― 投稿論文の作成について かを概観する.同答申によれば,「学校教育と職業や人材育成との関連は,我が国において,時代の変遷の中で繰り返 し議論されてきたように,非常に重要な課題」であり,「特に近年,『若者の社会的・職業的自立』や『学校から社会・ 職業への移行』を巡る様々な課題」が指摘されている.また,その背景にある主たる原因として次の四点が挙げられて いる.第一に「産業構造の変化,就業構造の変化等,社会全体を通じた構造的な問題」である.第二に「子どもたちが 将来就きたい仕事や自分の将来のために学習を行う意欲が国際的にみて低く,働くことへの不安を抱えたまま職業に就 き,適応に難しさを感じている」という問題である.第三に「子どもの進路選択において,保護者が進路や職業に関す る情報を十分に得られず,また,学校における進路指導が,大学進学を第一としたものに偏っている」など「職業に関 する教育に対する認識の不足や,ある時点での専門分野・職業分野の選択がその後の進路を制限するという消極的な固 定観念」の問題である.第四に「子ども・若者の変化として,職業人としての基本的な能力の低下や職業意識・職業観 の未熟さ,身体的成熟傾向にも関わらず精神的・社会的自立が遅れる等」の発達上の課題である. 以下の章では上記のような問題を踏まえながら,特に産業構造・就業構造の変化が若者のキャリア形成にどのような 影響を及ぼしているのか,また,そこで求められるキャリア教育の在り方という点について同答申の内容に触れながら, 関連する研究知見等も紹介しつつ概観していく. . 「わが国の産業構造・就業構造の変化」と若者のキャリア形成との関連について まず,「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」 (答申)( )の内容から見ていく.同答申では, 産業構造の変化からの視点と就業構造の変化の視点から問題が指摘されている.産業構造の変化として,第一に従来か ら言われていることではあるが,産業別就業者数が第一次産業や第二次産業の就業者が主体であった状態から第三次産 業の就業者が主体となる状態へ大きく変化(第三次産業の全体の就業者に占める割合は平成 年時点で %にまで増加 し,一方第二産業の就業者の割合は昭和 年には %を占めていたものが平成 年時点では %へと減少)した点が挙 げられている.また,企業の規模の視点から見ても,中小企業の占める割合が約 .%であるのに対し,大企業は約 .% であり,従業者の割合で見ても中小企業での勤務者の割合が約 %を占めるのに対し, 大企業での勤務者の割合は約 % であることが指摘されている.このことは,大学生を中心として,若者が学校卒業後の進路を考える場合,その多くが 大企業への就職を希望し,我が国の企業の大半である中小企業を避ける傾向があることとの間でミスマッチが生じてい る背景となっているとされる. このような産業構造の変化と若者の就業との関連について,本田( )( )は,サービス経済化と非正規労働力需要 ( ) の増大という視点からまとめている.本田 によれば 年代初頭まで第二次産業の労働者比率が一定水準を維持してお り,それが若年者を正社員として雇用する上で大きな貢献を果たしてきたとされる.しかし, 年代半ば以降,第二次 産業比率が減少し,第三次産業が増加したことにより,同産業の非正規労働力への依存度が高いという特性から,労働 市場全体における非正規労働者の割合の増加につながったという.また,本田( )はそのような非正規雇用の増大が特に 大企業において顕著にあらわれていることを指摘している.それによると 年から 年までの間に新規学卒者の採 用をもっとも抑制し,それにかわるパートタイム労働者など非正規雇用を大きく増加させたのは,従業員数 の大企業においてであり, 年と 年で比較すると,パートタイム労働者の割合は約 人以上 倍にも達している.それに より,もっとも良好で安定的な雇用の場である大企業への就業機会が制限されたことが指摘されている.その結果実際 の就職状況を見ても, 年頃から従業員 数 人以上の企業への就職率が,高卒・大卒いずれについても低下し,従業員 人未満の企業への就職率が増加していることも示されている.このような本田( )による指摘は,「今後の学校にお けるキャリア教育・職業教育の在り方について」(答申)( )における「学生が大企業への就職を希望することによりミ スマッチが生じている」というという見方だけでなく,就業構造の変化といった問題が背景に深くあることを示唆して いる.これに関連し,次にもう一度同答申にもどり,そこで就業構造の変化の問題をどうとらえているのかを見ていく. 同答申( )においても,平成 年以降平成 年にかけて若年者の雇用情勢が非常に厳しい状況にあったことを指摘しつ つ,新規学卒者が正規雇用の職に就業する機会が減少し,非正規雇用が増加していることが指摘されている.また,そ のような状況を受けた対策として,キャリアカウンセリングや就職支援を行う者等による新規学卒者の相談支援の強化 や,雇用意欲の高い中小企業と新規学卒者等のミスマッチ解消に向けた取り組みの強化,経済団体への新規学卒者・未 就職者のための採用枠の学大や追加求人の提出,早期の採用選考活動の抑制への要請など様々な支援策が進められてい ることが述べられている. しかし上記のような就業構造の変化を経た現代の若者の就職をめぐる現実は非常に厳しい(大内・竹信, 佐々木, ( ) ;森岡, ( ) ;水島, ( ) ( ) ( ) ; ) .大内・竹信 が指摘するように,就職活動を必死に頑張っているにも 投稿論文の作成について ― ― かかわらず「産業の空洞化や産業構造の転換のなかで,ほしいと思う従来型の仕事の数が全体的に減っている」ことが 「学校から社会への移行」を困難にしており,それに非正規雇用の増加が追い打ちをかけている状態にある.また,そ のような状況であれば当然,「企業の労務管理への批判や,非正社員を増やし続ける雇用の規制緩和路線への反対運動 がでてくるはずが,それがさほど盛り上がらないのは,そういう構造が変化していること自体が教えられていない」こ とに原因があり,また「やってもダメだという諦めの構造」が若者の中にあると述べている.さらにその結果,限られ た「狭い枠に自分だけは入ろうとして,押しあいへしあいの競争」を強いられ,もしもそこから落ちこぼれると「自分 がダメだったからだと」という自己否定へと追い込まれてしまうと言う. また,佐々木( )も我が国の構造変化により拡大した格差の問題の視点から,特に庶民層・貧困層に属する若者の就職 活動や労働環境について,さまざまな事例を基に議論を展開している.その中で近年言われるブラック企業の問題に疑 問を投げかける一方,大学のキャリア教育等に対しても,そこで「正規雇用」を目指すことを学生に強く促したとして も,「ブラック企業も正規雇用だから,就職できても自殺するかウツになる可能性がある.…雇用絶対数不足であれば 意味がない. 」とし,大学等のキャリア教育が「一∼二割の勝組のみを対象とした」ものであると批判している.この 点に関して児美川( )( )も大学等でのキャリア教育を含む「現在の就活システム」が「若者たちを『体制内馴化』 させる」ものとなっており,「既存の労働市場秩序や社会秩序に歯向かわせずに,それを受容させる強力な装置として 機能し」 ,その結果「若者たちは,最初から現在の就活にも,いまある偏った働き方にも疑問を持たないように巧妙に 『社会化』されている」と指摘している.また,その一方就職活動に乗れない若者,就活をあきらめている若者も,実 は「現在の就活が体現している価値秩序を『内面化』し,そういうものとして承認している」ため,「自己責任原則に 基づいて,乗れないのは自分のせいであると考えて」おり,そのことが「就活への反抗」が「非正社員への順応」とな り,現状の若者の労働環境をめぐる問題を温存する方向へと働く結果になってしまっていることが指摘されている.な お,このような我が国の構造変化を踏まえて,どのようなキャリア教育が望まれるかについての議論の詳細は,また後 の章で検討していく. 雇用構造の変化が若者の雇用環境にどのような影響を及ぼしているかという問題にもう一度立ち戻ると,森岡( )は, 近年の若者の就職難は単に「内定率」の問題としてのみではとらえられず,雇用の質の点からも考える必要性を訴えて いる.それによれば,本田( )と同様,大学生の企業志向は大企業から中小企業へシフトしており,それ自体は悪いこと ではないとしつつも,企業の労働条件は,大企業と中小企業の別を問わず,全般的に悪化していると指摘する.さらに 言えば,非正規雇用の増加に伴う正規雇用の減少が,大学生の就職難の主原因であり,「学生自身の大企業志向が強い ために,採用意欲の旺盛な中小企業との間で「ミスマッチ」が生じている」という答申にもあるような「ミスマッチ」 論では,「今日の学生の就職活動における「椅子取りゲーム」的状況は説明できないと批判している.また,水島( )は, このような雇用環境の悪化が「ブラック企業かもしれないけど,正社員だし.就活はもう疲れました」というような女 子大学生の声を生んでいるという.すなわち,非正規雇用が拡大する中,若者たちは自分の内定先企業の労働環境が劣 悪であるかもしれないと知りながらも,正規雇用というだけでそこへと流れていくようになってしまっているというこ となのである. 確かに答申において示された対策の中には早期の採用活動の抑制など一部評価される(児美川( ), )ものも少な ( ) からずあるが,正規雇用の減少と非正規雇用の増加といった現象は同答申 にもあるように景気動向によって一時的に 生じた現象ではなく,継続的な構造変化として生じていることから,大内・竹信( )が指摘するように,それに由来する 雇用の不安定さや労働環境の悪化,それをできるだけ回避したいという学生とのミスマッチは本質的には解消されず, その結果が若年者の早期離職等の問題にもつながっていると考えられる.また,ミスマッチとはいうものの実際には本 田( )や森岡( )が指摘するように中小企業への就職率は増加しているのであり,ミスマッチは就職それ自体というよりも, 新規学卒者が求める労働環境や条件と実際に企業が提供する労働環境や条件との間で生じているという可能性が高く, 企業の労働環境や労働条件が改善されることが,本質的には必要だろうと思われる.しかしながら,そのような産業構 造や経済政策それ自体の議論は,本論文のキャリア教育や職業教育といった観点からは逸れるため,ここでは再度その ような社会状況下でどのようなキャリア教育・職業教育が必要かという点に議論を戻したい. その点に関連して答申( )では,「職業にかかわる能力開発の変化」と「職業に必要な能力の向上」という つの問題 を指摘している.「職業にかかわる能力開発の変化」とは働くうえで必要な知識,能力やスキルをいつ,どのように獲 得していくかというプロセスの変化のことである.同答申( )では新規一括採用と終身雇用のような長期雇用の形態を前 提とした企業内教育・訓練を通して,職業に必要な専門的な知識・技能を育成していくことがかつては一般的であった が,正規雇用の減少,非正規雇用の増加からくる正規雇用者の労働時間の増加によって企業内教育や訓練にさくことの できる時間が減少したことや,企業の経営状態の悪化からくる人材育成へのコスト圧縮圧力の増加などにより企業内教 ― ― 投稿論文の作成について 育・訓練の動機づけが低下していることが指摘されている.この点は柳井( )( )や本田( )( )においても指摘 されている.特に本田( )は企業の職業教育訓練実施率や企業の労働費用に占める教育訓練費の推移に注目し,それらが 振幅はありつつも低下する傾向にあることを指摘している.このような企業内教育・訓練という我が国のキャリア形成 上の特徴に関して,岩田( )( )は,長期雇用と新規学卒者の定期一括採用という我が国の従来の雇用形態の中で, 企業が従業員を採用するあたり何を重視するかが欧米と大きく異なることに着目し,我が国の人的資本形成の特徴を論 じている.岩田( )によれば,欧米では,その人物が採用予定のポストにおいて何ができるか=そのポストでの職務遂行 能力=実力が問われるとされる.それに対し,日本では欧米のようなジョブ(職務)に応じた採用は一般的ではない. 言い換えるならば,米国では「職業→企業」選択がなされるのに対して,日本では「企業→職務」選択という形態が一 般的である(宗方・渡辺, )( ).さらに本田( )も指摘するように「日本の正社員は担当する職務=ジョブの範囲や 量が明確でなく,企業という組織に所属する=メンバーであるということのみについて雇用主と雇用契約を結んでいる 場合が大半」であり,「ジョブなきメンバーシップ」という原理が支配しているとされる.そこでは,日本の正社員は 「配置転換やローテーションにより,それまでとは異なる部署で異なる仕事に従事させられることが日常茶飯事」であ り,「自分が担うジョブ」が「不明瞭であるだけでなく,長期的に見ても一貫したものでないということ」が大きな特 徴とされる.そのような日本的状況において岩田( )は,企業が「学部での専門教育よりは社内教育や OJT(on-the-jobtraining) ,さらには組織内での幅広い経験をより一層重視」する結果,採用時に「潜在可能性としての『能力』 」をよ り重視するようになったと指摘する.つまり,ジョブによらない採用である以上,採用後どのような職務を担当するこ とになるのか明確でない以上,採用時に重視されるのは特定のジョブ(職務)に限定されない,より一般的で抽象的な 能力とならざるを得ないのである.苅谷( )( )はこの点を「訓練能力」と「学歴」との関連性という視点から論じ ている.苅谷( )によれば,そのような「潜在可能性としての能力」=「訓練能力」が重視される社会にあっては,「学 歴や学校歴が,訓練能力のシグナル」と考えられ,それにより「訓練費用の多寡」を予測できると考えるからこそ,学 歴・学校歴を採用の選抜基準として用いることに合理的な意味があったのだとされる.このような我が国の人的資本形 成上の特徴からくる影響は,我が国の社会経済的状況が大きく変化したにもかかわらず,いまだに新規学卒者の採用に 従来の形そのままではないにせよ残存している. では,現在の我が国社会においてどのような能力が新規学卒者に求められているのだろうか.まず,「今後の学校に おけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(答申)( )の内容に立ち戻り検討する.同答申( )にある「職業に必要 な能力の向上」とは「科学技術の進展や急速な技術革新,経済・社会の急激な変化と多様化・複雑化・高度化,グロー バル化,情報化等を受け,職業に必要な知識や技能が高度化している」ことを指す.その中で新規学卒者に求められる 能力が大きく変化するのは想像に難くない.では,どのような能力が求められるのであろうか.これからの社会で求め られる能力としてどのようなものが想定されてきたのか,経済団体や各関係省庁,中央教育審議会などの提言や答申を 一部引用しつつ見ていく.まず,経済団体連合会が 年に提出した「創造的な人材の育成にむけて―求められる教育 ( ) 改革と企業の行動―」 から創造的な人材の要件について述べられた部分を以下に引用する. 「創造的な人材の要件 今後のわが国社会において求められる,創造的な人材とは,自己の責任の下に,主体的に行動する人材で あり,こうした人々の能力を最大限伸ばすことができるような環境を整えていくことが求められる.さらに, 独創性を持つ人材をいかに見いだし育成していくかも重要である. 主体性 創造性の根本は,個人の主体性にある.これは,他者の定めた基準に頼らず,自分自身の目標・意思に基 づいて,進むべき道を自ら選択して行動することである. いろいろな問題への対応に際しても,知識として与えられた解決策を機械的に適用するのでなく,既存の 知識にとらわれない自由な発想により自力で解決する能力が求められる. 自己責任の観念 その一方,個人の自由で主体的な選択が,野放図とならずに,社会的意義,価値を持つものとするために は,個人一人ひとりが選択に伴う責任を引き受けることが必要である.選択とは,もう一つのものを捨て去 ることであり,自己責任とはいくつかの選択肢の中から自分の判断で選びとることである. 個人が主体性と自己責任を確立することは,他者の主体性を尊重する社会性の涵養や,社会規範・倫理に 関する意識を高めることにもつながる. 独創性 投稿論文の作成について ― ― それぞれの人材が持っている創造性を引き出すことに併せて,科学・技術や,芸術・文化などさまざまな 分野で世界をリードできる高い独創性をもった人材を発掘,育成していくことも重要である. 各界で真に独創的で卓越した人材たりうるか否かは,潜在的な素質や才能に左右される面も大きいものと 考えられる.そこで,このようなとくに優れた素質や才能を持った人材を早期に見出し,これを集中的に育 成していくことも,今後の課題として求められる. 」 続いて,同じく日本経済団体連合会が 年に提出した「 世紀を生き抜く次世代育成のための提言−「多様性」「競 争」「評価」を基本にさらなる改革の推進を−」( )から「産業界の教育界に対する期待」に関する部分を以下に引用す る. 「現在,企業は内外の企業との熾烈な競争の中にあり,特に,知恵で競い合う時代になっている.こうした 中,産業界は以下の 第 つの力を備えた人材を求めている. に「志と心」である.「志と心」とは,社会の一員としての規範を備え,物事に使命感をもって取り組 むことのできる力である.顧客への対応や関係企業との関係をはじめ,事業活動を推進していく上で,誠実さ や信頼を得る人間性,倫理観を備えていることが不可欠である.また,仕事をはじめ様々な形で社会に貢献し ようという意欲,目標を成し遂げようとする責任感や志の高さなども求められる.最近の若者の傾向として指 摘されている,自分から果敢に挑戦する意志や情熱に欠けていること,物事に対する好奇心や夢がないことな どの問題を解決していかねばならない. 第 に「行動力」である.「行動力」とは,情報の収集や,交渉,調整などを通じて困難を克服しながら目 標を達成する力である.自らの目標達成に向けて,周りの人々,時には外国の人々と議論し理解してもらうた めには,高いコミュニケーション能力が必要である.そのためには,意見の違う相手と意見を戦わす訓練を経 験しておくこと,自国の文化を十分理解した上で,異文化を理解する能力を磨くことなどが不可欠である.最 近の若者の多くは,「知識・情報は与えられるもの」 「仕事はマニュアルどおり行うもの」という姿勢が染み付 いており,進んで行動する力の養成が必要である. 第 に「知力」である.「知力」とは,深く物事を探求し考え抜く力である.各分野の基礎的な学力に加え, 深く物事を探求し考え抜く力や論理的・戦略的思考力さらには高い専門性や独創性が求められる. 「正解が一 つでない問題」あるいは「解明されていない問題」を大学生に考察させようとすると,思考が止まってしまう という指摘もある.自分の知識を総合し発展させる思考訓練を早い段階から行うことが必要であろう. 社会は,多様な人々が存在し,それぞれの分野で活躍することで活力が生まれる.したがって,すべての生 徒・学生に,この つの能力を完璧に満たすことを期待している訳ではない.しかし,どのような分野に進も うと,それぞれ最低限の水準が満足されなければならない.そのうえで,これら つの力がどのようなバラン スをとるかは,各人の個性であり,その多様性が社会の活力をもたらすことになろう. 」 他にも関連するものとして,厚生労働省が が 年に報告した「若年者の就職能力に関する実態調査」( )や経済産業省 年に提唱した「社会人基礎力」( )などが今後の社会で働くうえで必要になる能力観について提言している.それ ら一連の能力観の提言について共通する流れを本田( )( )はハイパー・メリトクラシーという概念を用いながら論 じている.そこでは,まず,メリトクラシーとハイパー・メリトクラシーの対置,また近代社会とポスト近代社会との 対置に基づいて議論が展開されているのだが,そもそもメリトクラシーとは,近代以前の社会における生まれや身分が 社会経済的地位を決定するという「属性主義」に対して,近代社会での生まれや身分ではなく,その個人が何ができる かという能力や業績に基づいてその社会経済的地位が決定される「業績主義」の原理を指す.しかしながら,上記で見 てきたような新しい「能力観」が求められつつある背景には,現代社会(ポスト近代社会)における産業構造の変化に よって,これまでのメリトクラシーがうまく機能しなくなっているという問題があるという.本田( )によると,そのよ うな社会の変化を受けて,メリトクラシーが変質し,いわば「ハイパー・メリトクラシー」と呼ぶべきものへと変容し たとされる.この「ハイパー・メリトクラシー」とは,社会的位置づけを決定するうえでの「手続き的公正さという側 面が切り捨てられ,場面場面における個々人の実質的・機能的な有用性に即して個々人を遇するという,『業績主義』 が本来もっていた意味が前面に押し出された」状態にあることを指す.その結果,そこで求められる「業績」は,(例 えば,個々の職務に応じて求められるような)個々人のもつ能力の一部・一側面に限定されず,全人格的な能力が求め られるようになったということである.それを踏まえ,近代社会=メリトクラシーのもとに求められる能力(=近代型 ― ― 投稿論文の作成について 能力)と,ポスト近代社会=ハイパー・メリトクラシーのもとに求められる能力(ポスト近代型能力)の違いについて 本田( )は論じている.それによると,「近代型能力」とは「主に標準化された知識内容の習得度や知的操作の速度など, いわゆる『基礎学力』としての能力」であり,それゆえ,「試験などによって共通の尺度で個人間の比較を可能とする」 とされる.また,それは「与えられた枠組みに対して個々人がどれほど順応的にふるまえるか」を測定しており,「同 質性の高さ」をベースとした「集団に対する協調性」が求められる.それに対して,「ポスト近代型能力」とは「個々 人に応じて多様でありかつ意欲などの情動的な部分を多く含む能力」とされ,「既存の枠組みに適応することよりも, 新しい価値を自ら創造すること,変化に対応し変化を生み出していくことが求められる」 .また,対人的な面では「相 互に異なる個人の間で柔軟にネットワークを形成し,その時々の必要性に応じてリソースとして他者を活用できるスキ ルを持つことが重要になる」という.このような「ポスト近代型能力」の特質は,上記で紹介したような経済団体の提 唱する能力観や各省庁が提唱する能力観と非常によく一致する.つまり,上記の提言等でも主体性や独創性,意欲やコ ミュニケーション能力,柔軟な思考力など「ポスト近代型能力」の重要性が訴えられてきたのである.そして,これら が近年就職活動において大学生に求められる能力として強調されてきたのである.しかし,「ポスト近代型能力」は「近 代型能力」にとって代わるわけではなく,従来の「近代型能力」に加えて求められるようになったという点には注意す る必要がある.この点は,「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」 (答申)にある「社会的・ 職業的自立,社会・職業への円滑な移行に必要な力」の要素(図 )に非常によく表れている. ただし,本田( )の指 摘にあるように,企業の採用担当者の中で,従来型の「近代型能力」を重視する割合は低下し,「ポスト近代型能力」 の重要性が年々上昇していることからわかるように,ハイパー・メリトクラシー化は各種提言の抽象的な話のなかにと どまらず,現場レベルにも浸透してきていると言える. 専門的な知識・技能 キャリアプランニング能力 課題対応能力 自己理解・自己管理能力 人間関係形成・ 社会形成能力 論理的思考力 創造力 意欲・態度 勤労観・職業観等の価値観 はんよう 基礎的・汎用的能力 基礎的・基本的な知識・技能 図 「社会的・職業的自立,社会・職業への円滑な移行に必要な力」の要素 では,実際の就職活動においてそのような「ポスト近代型能力」はどのように評価されているのだろうか.現場視点, すなわち企業の採用面接で企業は何を評価しようとしているかという視点から行われた研究として岩脇( 山( ( ) )( )や小 ( ) ) を紹介したい.岩脇 は,企業が描く理想の人材像と実際に就職していく若者とのズレに着目し,就職活 動に成功した学生と成功しなかった学生との違いが,企業の面接時の評価のどのような差異を反映したものであるのか を検討している.その際,まず企業の面接担当者がいかなる基準で志願者の評価を行っているのか,その評価基準の分 析を企業の面接担当者への調査をもとに行っている.その結果,面接担当者は第一に,面接において評価される事項の 内,志願者の「人間的魅力」「社風に合うか」「志望度合」など「入社・勤続可能性」にかかわる事項を,志願者の表情 や態度,声の張りなどの「非言語的情報」を指標として,「一緒に働きたいか」「好感が持てるか」という点から判断し ていたことを示した.第二に志願者の「理解力」「論理的思考力」「表現力」など「相手の意図を理解し自分の意図を論 理的に分かり易く伝える力」と志願者の「対人能力」「社交性」などの「他者に働きかけ良好な人間関係を形成する力」 を会話が円滑に違和感なく進むかといった「言語操作」の指標から判断していたことを示した.第三に「自分の強みと 弱みを理解できている」「素の自分を見せられる」などの「自分自身を客観的に理解し他者へ飾ることなく提示する力」 を「なぜそうしたのか」「その時どう感じたのか」など掘り下げた質問を繰り返しても回答が滞らないことから判断し ていたことを示した.さらに志願者の「能力」と「入社・勤続可能性」を「発言内容」の指標からも判断していたこと が示された.この時の「能力」とは「課題達成に必要な能力」「価値観」「知識・技術」などを指す.一方,「入社・勤 投稿論文の作成について ― ― 続可能性」には「会社への関心」「志望度の高さ」「業界や会社の事業内容・仕事内容を理解していること」「キャリア ビジョンが明確で本人がやりたいことと会社の事業内容とが合致すること」などが含まれることが示された.さらに岩 脇は,このような分析から見出された面接担当者の評価基準を実際の就職活動を終えた大学 年生が面接で話したエピ ソード(経験談)にあてはめ採点した場合に,就職活動に成功した学生と成功しなかった学生とで違いが生じる評価基 準が何かを検討した.その結果,「チームワーク」や「リーダーシップ」 「人間関係構築力」などの「対他者コミュニケー ション能力」では両者の能力に違いが見られたが,「創造力」「計画性」「実行力」「貫徹力」などの「課題達成志向」に おいても,また,「主体性」「客観能力」などの「自己コントロール能力」においても両者の間で有意な差が見られない ことが示された.この結果からは企業が描く理想の人材像の行動と実際に内定を得て就職していく若者との行動の間に は,一致する点とズレる点がともにあることを示した. 続いて面接時の企業の採用基準の問題に焦点をあてたもう一つの研究である小山( )を見ていきたい.小山によれば, 学生が「採用基準が明確でない」と感じているのに対し,企業側はそのように考えていないという乖離があるという. そこで採用試験の面接に着目し,企業側のデータに基づきなぜ企業の採用基準が不明確になるのかを検討している.そ れによると,なぜ企業の採用基準が不明確になるかについて つの仮説があると述べている.第一は学生が無能である からだとする「学生無能仮説」である.第二は企業が意図的に採用基準を隠しているからだとする「企業悪玉仮説」で ある.第三は採用基準を有効に伝えるツールがないからだとする「伝達ツール欠如仮説」である.第四はそもそも採用 基準である評価項目自体が曖昧だからだという「評価項目問題仮説」である.しかし,小山の考察によれば, 「学生無 能仮説」については,たとえば「コミュニケーション能力」が企業により強く求められているということは学生も十分 に承知しており,学生が無能で採用基準を理解できていないということではないと仮説を否定している.また, 「企業 悪玉仮説」についても,就職情報サイトの情報や自社の HP などでさえ「求める人材像」を明らかにする場合もあり, 企業が意図的に隠蔽しているとは考えづらいと否定している.また,「伝達ツール欠如仮説」についても,上記と同じ ようにインターネットが普及した現代では考えづらいとしている.残る「評価項目問題仮説」については支持される可 能性があるとした上で,企業の採用基準があいまいになる背景には「採用基準の拡張」「採用基準の境界変動」という つの要因があることを示した.ここでは前者のみを取り上げるが,この「採用基準の拡張」とは実際の面接にあたっ ては,あらかじめ用意された評価基準以外の要素も拡張的に評価対象にせざるを得ないということを意味する.つまり, 学生が「求められる能力」について十分理解した上で対策を練り,話す内容を準備してくる(その上その内容は志願者 同士の間で非常に類似性の高いものになる傾向もある)以上,面接担当者はその内容をそのまま学生の能力を反映する ものとして額面通り受けとり,合否の判断を行うことができなくなった結果,どの志願者にも共通して準備された評価 基準以外の細かな指標へも注意の範囲を拡大することで志願者間の差異を見出そうとするということなのである.それ により学生としては,「準備された評価基準」には無難に応答できたはずなのになぜか不合格だったという印象が生じ, 「企業の採用基準が不明確だ,わからない」と感じさせられているのである. このような岩脇( )や小山( )の研究知見を上で見てきた現代社会で求められる能力観の議論と照らし合わせ考えると次 のようなことがいえると考える.第一に産業構造等の変化とともに求められる能力が「近代型能力」から「ポスト近代 型能力」へとそのウェートが推移し,その強い圧力は就職活動を行う学生にとっていやが上にも対応せざるを得ない問 題となっているといえる.第二にその上で,若者が「学校から社会へと移行」する際に問われる能力自体は,「ポスト 近代型能力」それ全体ではない.あるいは,その「ポスト近代型能力」に若者が対応しようとすればするほど,そこか ら企業の採用基準はずれていき,学生は就職活動において不全感を感じることになる.第三にこのことは「ポスト近代 型能力」が本来持つとらえどころのなさを増幅させ,にも関わらずその獲得を強く要求されるという袋小路へ若者を追 い立てているといえる.では,このような状況の中でキャリア教育にはどのようなことが求められているのかについて 続いて検討したい. . 「職業に関する教育」と若者のキャリア形成との関連について 学校教育とキャリア形成との関係について,「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(答 申)( )から,「学習と将来の仕事との関連に関する子どもの意識」と「学校教育と仕事や職業に必要な力の育成との関 係」の問題を見ていく.まず前者に関しては次のような記述がある. 「我が国の子どもたちは,他国と比べて,将来就きたい仕事や自分の将来のために学習を行う意識が低いこ とが明らかになっている.このことから,学校教育においては,子どもたちが自らの将来に対する夢やあこが ― ― 投稿論文の作成について れを持ったり,将来就きたい仕事等を思い描いたりしながら,これらとの学習との関連や,学習の意義を認識 して,意欲的に学習を進めていく気持ちや態度につながるよう,働きかけていくことが課題であると考えられ る. 」 この点に関して,本田( () () ( ) ) は「教育の職業的意義」という視点から論じている.「教育の職業的意義」とは教育が 将来の労働力の質を高めるうえで,どの程度有意義であったかを指すと考えられる.例えば,受けた教育が将来の職務 遂行上必要となる能力を高めるような効果があったかどうか,また,働く当事者が自らの受けた教育を仕事をする上で 「役にたった」「意義があった」と感じられているかということである.従来の大学では総じて,教員は個別の学問的 専門分野に関する知識を学生に対して一方向的に伝えることに重きを置き,学生はそれらの学問的知識を踏まえて自ら 『真理を探究する』存在であることが前提とされてきた( ).その結果,学生個々人の卒業後の生活や仕事において「大 学知」がいかなる具体的意義や意味をもつか検討されずにきた経緯がある.このことは,学校教育を受けた人々がその 「教育の職業的意義」を感じているかに関する各種調査の検討からも支持されている( ).それによると日本の若者が感 じる学校教育の職業的意義は低く,むしろ学校を同年齢集団と過ごす場としてしか認識していないと指摘されている( ). また,大学教育のみにしぼった各調査の検討を通しても,学生が主観的に感じる大学教育の職業的意義は(専門・技術 職につながるような学部・学科を除いて)全体的に低く,大学教育を「仕事」関連よりも「人格」(的成長の場)と結 びつけてとらえる傾向があることが示された( ).このような認識は従来の日本の雇用構造,すなわち個々の職務に応じ た職務遂行能力よりも訓練可能性としての潜在能力で,採用・不採用が決まり, 終身雇用を背景にその後の企業内教育・ 訓練により実務能力を高めていくという雇用構造のもとでは,自然な帰結であったのかもしれない.しかし,「高度成 長期の社会において通用していた『企業は大学教育に多くを期待しておらず,入社後の社内教育と実務上の経験や実践 で人材を伸ばしている』 ,『昔から大学生は勉強しておらず,それでも卒業後社会で十分に活躍してきた』といった認識 は転換することを迫られている」( )中で,どのようにして「教育の職業的意義」を高めていけばよいかは,今後のキャ リア教育・職業教育を考える上で重要な課題の一つであるといえる. 次に「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(答申)( )から,「学校教育と仕事や職業に必 要な力の育成との関係」について見ていく.以下に関連する部分を一部引用する. 「……仕事や職業に必要な力を学校教育の中でどのように育成するのかが十分明確にされていないことも,学 校教育と社会・職業との関連を考える上で一つの課題であると考えられる.……働くことへの不安を抱えたま ま学校から職業へ移行したり,社会や職場への適応に難しさを感じたりしている若者の存在がうかがわれ,学 校教育の中で,仕事や職業に必要となる力が十分に育成できていないのではないかとも考えられる.このため, 仕事や職業に必要な力がどのようなものであるか,また,それを学校教育の中でどのように育成するのかを明 らかにし,取り組んでいく必要がある. 」 上記の記述からは,「学校教育と仕事や職業に必要な力の育成との関係」に関して次の つの課題があることが見て 取れる.その一つは「仕事や職業に必要な力は何か」という問題であり,もう一つは「そのような力をどう育成すれば よいか」という問題である.前者については前章である程度検討を行ったので,ここでは後者の問題を中心に検討した い. ここでいう「仕事や職業に必要な力」とは答申でいえば図 に示された各要素を含むような力であり,広い意味で考 ( ) えれば,本田 でいうところの「近代型能力」の上に「ポスト近代型能力」を積み上げたもの,あるいは「社会人基礎 力」( )や「ジェネリックスキル」( )といわれるような力のことだと考えて差し支えないだろう.これまで見てきたよう にそのような能力の捉え難さ,客観的測定の難しさの問題や,実際の採用場面で本当にそれらの能力の有無や高低によ り評価が行われているのかといった問題があるにせよ,そのような能力を育成しようという取り組みは年々増加してい る.以下にその例を見ていく.吉原( )( )は愛知学泉大学の「社会人基礎力」育成の取り組みについて調査を行っ ている.それによると同大学では,平成 年度に「社会人基礎力」の育成・評価事業のモデル校に採択されたことから, 産学連携プロジェクトの体制を整え,「企業や自治体から提供された課題をもとに,学生が学部教育で身につけた知識 教育を活用しながらチームで解決していく実践型の授業」が採用された.その中で個々の学生は「お弁当開発」などに 取り組み,そのプロジェクトの事前・中間・事後・修了時のそれぞれで各学生は自分の行動の“振り返り”を行い,そ れに対するフィードバックを企業担当者と担当教員から面接を通して受け取った.そのようなプロセスを通して学生自 身の「社会人基礎力」の成長の実感が育ったとされる.このような「社会人基礎力」の育成の取り組みは,他の事例も 投稿論文の作成について ― ― 合わせて「『社会人基礎力を育成する授業 選』実践事例集」( )という形で取りまとめられている. このような取り組みには一定の効果があるにせよ,現在のキャリア教育には,それを批判したり,問題点を指摘した りする声も多い.児美川( )( )はこれまでのキャリア教育の問題点として次の 点を指摘している.第一に,キャ リア教育推進が学校現場からではなく,トップダウンで強引に進められたこと.第二に,若年雇用問題の深刻化への対 応という性格が濃く,本来の雇用構造や労働市場の改革がなおざりにされてしまったこと.第三に,少なくとも当初は 若者の勤労観の未成熟や就業意識の甘さに焦点が向けられ,職業的知識・能力の獲得という観点が軽視されたこと.第 四に,これまでのキャリア教育が若者に既存の労働市場への適応を迫り,労働法教育など抵抗の側面を教えてこなかっ たこと.第五に,キャリア教育をすすめるための財政的・人的支援は,研究指定校等の一部に限られてきたこと.第六 に,(特に中学において)職場体験やインターンシップの実施等に偏ってきたこと.以上のような問題を指摘しつつも 他方で児美川はキャリア教育はやはり必要であると述べている.そして,キャリア教育をこれまでのように「職業・労 働への準備教育,そのための意識教育といった狭い範疇」でとらえるのではなく,「人生の諸ステージにおいて引き受 けることになる『役割』を遂行できるための準備をする教育」 ,「将来のライフキャリア全体への準備教育」として位置 付ける必要があると述べている. また,児美川( )や渡邊( )( )は,特にこれまでのキャリア教育が「若者に既存の労働市場への適応」を迫ってき た点を批判し,「対抗的キャリア教育」( )や「就活のオルタナティブ」( )を提唱している.すなわち,限られた正規雇 用への道や労働市場や労働環境の歪みへ半ば強迫的に「適応」するのではなく,多様でオルタナティブな生き方=キャ リアを選んでいくこともできる術を若者が身につけることができるようなキャリア教育の提案である. 一方,本田( () )もハイパー・メリトクラシー化を背景とした現在のキャリア教育を批判し,教育の職業的意義を高め るために,「柔軟な専門性」を形成していくような教育の編成,また, 「適応」と「抵抗」の両面から教育の職業的意義 を高めていくような取り組みの必要性を訴えている.ここでは特にそのキー概念である「柔軟な専門性」とは何かを見 てみたい.本田によれば,そのような専門性とは「個々人が社会の中で,特に仕事に関する面で,立脚することができ る一定範囲の知的領域のこと」であり,「理念や原理原則という高次のレベルから,個別具体的な概念や実践的ノウハ ウ,スキルのレベルにいたる複数の層から成り立っており,それらの各層に含まれる知的要素はある程度の体系性」を 持つとされる( ).また,その専門性が狭い範囲に限定されるものではなく,まず何らかの専門性を選択した後も,そこ から関係の深い隣接領域へと徐々に拡張し,さらにより一般性・共通性・普遍性の高い知識の獲得へと進んでいくとい う意味で「柔軟な」膨らみを持つ専門性であるとされる( ).さらに,このような「柔軟な専門性」を個々人が身に着け ることが,ハイパー・メリトクラシー化の圧力に抵抗する手段を与え,若者個々人は職務に関わる専門的な領域におい てのみ「ポスト近代型能力」への要求に応えれば良く,すべての場面や人に対して「ポスト近代型能力」を証明する必 要はなくなるという( ). .ま と め ここでは,これまでの議論を整理し,今後のキャリア教育の課題を述べていきたい.まず,大学生の「学校から社会・ 職業への移行」には,次のような問題があることが示された.第一に非正規雇用の増加などの産業構造の変化にともな う「雇用構造の変化」の問題である.第二に社会で求められる(就職の際に求められる)「能力観」(あるいはそれをめ ぐる言説)の変化である.第三にそれらを背景として進められてきた現在のキャリア教育への批判である.教育という 視点から再度整理するならば,教育がある種普遍的にもつ既存の文化や規範への同調圧力の問題を考えなければならな いだろう.つまり,教育は若者を既存のコミュニティの成員に育てるために行われる性格をもつが故に,キャリア教育 という文脈の中でも既存の雇用構造や労働環境への適応を個々人の意思や欲求と切り離した形で強いる傾向も持ってし まうのかもしれない.しかし,「対抗的キャリア教育」や「就活のオルタナティブ」という考えは,そのような教育の 性質に反する形でキャリア教育がなされる必要があることを示唆している.そのようなことが「学校教育」という枠組 みの中で可能なのか,あるいは「学校」という枠にとらわれずに,コミュニティのなかでの「教育」という枠に拡張し た中でキャリア教育をとらえていくべきなのか今後検討していくことが重要だと考える. また,「能力観」に関しては,状況普遍的な抽象化された形での能力(たとえばコミュニケーション能力のような) を教育するという意味をどのように捉えるかという点が重要だと考える.言い換えるなら,「ポスト近代型能力」それ 自体が不必要だとか無意味だとかいうことではなく,「就職のために」そのような能力の獲得を学生に強いることの是 非,あるいはそもそも「学校教育」という枠の中でそれが可能なのか,また,仮に可能だとしてもそれをどのように測 定・評価するのかという問題である.この点に関しては,現在さまざまな取り組みがなされているところであり,その ― ― 投稿論文の作成について 成果を詳細に検討していきながら今後のキャリア教育の在り方を考えていく必要があろう.本田のいう「柔軟な専門性」 の形成を中心とした教育課程の編成はそれへの答えの一つになりうるかもしれないが,ともすると本田の本来の主張と は異なり,狭く限定された専門教育への志向となってしまう恐れもある.例えばそれが行き着くところまで行き着いた 姿が「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議(第 回) 」における冨山( )の主張に 表れている.そこでは,一部の学生のみが「ポスト近代型能力」を身につけるための教育を受けグローバルな社会での 活躍を期待される.一方,残りの大半の学生は「ポスト近代型能力」の教育を受けずに,特定のジョブに特化した「専 門的」教育のみを受けローカルな社会に生きるという.そのような教育の姿が果たして望ましいもので,今後の我が国 の教育の目指していくべき方向といえるのかについて慎重に考える必要がある.また,ここでは,職業選択を行う個人 の内面の意思決定プロセスの問題については検討してこなかった.しかし,職業選択における意思決定に関する心理学 的研究は豊富にあり,その中には現代の変化の激しい見通しを立てにくい不確実な労働環境への対処という視点をもっ た理論もある( ).本研究で見てきた議論を踏まえ,そのような理論から今後のキャリア教育を考える新たな視点を得て いく可能性についても今後検討していきたい. .謝 辞 本研究は JSPS 科研費(若手研究B)課題番号 の助成を受けたものです. 文 献 ⑴ 中央教育審議会,“今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申) ”( ) . ⑵ 本田由紀,“若者と仕事「学校経由の就職」を超えて” ( ) ,東京大学出版会. ⑶ 大内裕和,竹信三恵子,“ 「全身就職」から脱するために” ,現代思想,Vol. ,No. ( ) ,pp. ‐ . ⑷ 佐々木賢,“就職しないで生きるという選択岐” ,現代思想,Vol. ,No. ( ) ,pp. ‐ . ⑸ 森岡孝二,“悪化する若者の雇用環境と大学生の就活自殺” ,現代思想,Vol. ,No. ( ) ,pp. ‐ . ⑹ 水島宏明,“ 「もう,ブラックでもいい」という隘路から抜け出すために” ,現代思想,Vol. ,No. ( ) ,pp. ‐ . ) ,pp. ‐ . ⑺ 児美川孝一郎,“対抗的キャリア教育の〟魂〝” ,現代思想,Vol. ,No. ( ⑻ 柳井修,“キャリア発達論:青年期のキャリア形成と進路指導の展開” ( ) ,ナカニシヤ出版. ⑼ 本田由紀,“教育の職業的意義―若者,学校,社会をつなぐ” ( ) ,ちくま新書. ⑽ 岩田龍子,“学歴主義の発展構造”( ) ,日本評論社. ⑾ 宗方比佐子,渡辺直登,“キャリア発達の心理学”( ) ,川島書店. ⑿ 苅谷剛彦,“大卒就職の何が問題なのか:歴史的・理論的検討” ( ) ,pp. ‐ ,苅谷剛彦,本田由紀編“大卒就職 の社会学” ,東京大学出版会. ⒀ 経済団体連合会,“創造的な人材の育成にむけて―求められる教育改革と企業の行動―” ( ) . ⒁ 日本経済団体連合会,“ 世紀を生き抜く次世代育成のための提言−「多様性」「競争」「評価」を基本にさらなる改革 の推進を−”( ) . ⒂ 厚生労働省,“若年者の就職能力に関する実態調査” ( ) . ) . ⒃ 経済産業省“社会人基礎力に関する研究会「中間取りまとめ」 ”( ⒄ 本田由紀,“多元化する「能力」と日本社会―ハイパー・メリトクラシー化のなかで” ( ) ,NTT 出版. ⒅ 岩脇千裕,“理想の人材像と若者の現実―大学新卒者採用における行動特性の能力指標としての妥当性” ,JILPT Discussion Paper Series ‐ ( ) ,労働政策研究・研修機構. ⒆ 小山治,“なぜ企業の採用基準は不明確になるのか―大卒事務系総合職の面接に着目して”( ) ,pp. ‐ ,苅谷 剛彦,本田由紀編“大卒就職の社会学” ,東京大学出版会. ⒇ 本田由紀,“日本の大卒就職の特殊性を問い直す”( ) ,pp. ‐ ,苅谷剛彦,本田由紀編“大卒就職の社会学” , 東京大学出版会. 中央教育審議会,“予測困難な時代において生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ(審議まとめ) ”( ) . 濱名篤,“学士課程のアウトカム評価とジェネリックスキルの育成に関する国際比較研究” ,平成 ‐ 年度科学研究費 補助金報告書( ) . ,濱名篤, 吉原惠子,“愛知学泉大学における「産学連携プロジェクト」−「社会人基礎力」育成の取り組み−”( ) “学士課程のアウトカム評価とジェネリックスキルの育成に関する国際比較研究”,平成 ‐ 年度科学研究費補助金報 告書,pp. ‐ . 経済産業省,“ 「社会人基礎力を育成する授業 選」実践事例集”( ) . 投稿論文の作成について 児美川孝一郎,“今,ここにあるキャリア教育へ” ,教育,No. ( ) ,pp. ‐ . 渡邊太,“就活からの脱落―異なる教育実践のために” ,現代思想,Vol. ,No. ( ) ,pp. ‐ . 冨山和彦,“我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性”( 的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議(第 回)配布資料. 渡辺三枝子,“新版キャリアの心理学−キャリア支援への発達的アプローチ” ( ) ,ナカニシヤ出版. ― ― ) ,「実践 論文,報告・その他,著者および学会講演 ― ― 論文,報告・その他,著者および学会講演 ( . . ∼ . . ) 機械システム工学科 論 文 氏 名 松田 益本 本田 鶴夫 広久 嗣男 松田 益本 鶴夫 広久 大学名・学部名 (学外共著者の場合) 題 目 発表誌名(巻号) 年 月 WC 基超硬合金とステンレス鋼との接合 久留米工業大学研究報告 No. . 筋電図を使用した機器制御システム構成 に関する検討 久留米工業大学研究報告 No. . (株)黒木工業所 学 会 講 演 氏 名 林 平野 巨海 佳彦 貞三 玄道 大学名・学部名 (学外共著者の場合) 題 目 散乱光法を利用した粘弾塑性体の変形解 析法 学会等の名称 日本物理学会第 州支部会 年 回九 月 . 交通機械工学科 学 術 論 文 氏 名 大学名・学部名 (学外共著者の場合) T. Yamaguchi Y. Aoyagi H. Osada K. Shimada N. Uchida (新エィシーイー) (新エィシーイー) (新エィシーイー) (新エィシーイー) 山口 青柳 長田 島田 内田 卓也 友三 英朗 一昭 登 (新エィシーイー) (新エィシーイー) (新エィシーイー) (新エィシーイー) 片山 丸茂 鈴木 硬 喜高 宏典 日本大学 生産工学部 日本工業大学 工学部 題 目 発表誌名(巻号) 年 月 BSFC improvement by Diesel-Rankine SAE International combined cycle in the High EGR Rate Journal of Engines Vol., and High Boosted Diesel Engine No. . 高過給ディーゼルエンジンのコンバイン ドサイクルによる燃費改善の研究−ラン キンサイクルによる排熱回生について− 自動車技術会論文集 第 巻第 号 . 追突事故・ニアミス時のドライバ対応行 動の事後的診断手法の開発 計測自動制御学会論文集, Vo . 渡邉 孝司 池田 秀 梶山項羽市 松村 光晃 エンジンの燃焼に及ぼす空気負イオンに よる励起作用の影響 久留米工業大学研究報告 No. . 森 和典 サスペンション・ステアリング幾何の計 算法に関する考察 久留米工業大学研究報告 No. . 原 和雄 完全流体力学の誤謬 久留米工業大学研究報告 No. . 山口 松村 卓也 光晃 高過給・多量EGRディーゼルエンジンに 久留米工業大学研究報告 おける排気エネルギの有効エネルギ解析 No. . ― ― 論文,報告・その他,著者および学会講演 中村 金次 研究随想:「自動車整備技術における振 久留米工業大学研究報告 動・騒音問題」(整備士養成課程の取り No. 組み) . 学 会 講 演 氏 名 東 大学名・学部名 (学外共著者の場合) 大輔 片山 目 「異なる巡航速度の自動車燃費に及ぼす 向かい風の影響」 硬 T. Yamaguchi Y. Aoyagi H. Osada K. Shimada N. Uchida 題 (新エィシーイー) (新エィシーイー) (新エィシーイー) (新エィシーイー) 学会等の名称 自動車技術会 会 年 春季大 月 . Rider s Characteristics Influencing 国際会議の基調講演 Handling and Stability of Motorcycle, Keynote Speech for Symposium of Bicycle and Motorcycle Dynamics Symposium of Bicycle and Motorcycle Dynamics . BSFC improvement by Diesel-Rankine SAE World Congress combined cycle in the High EGR Rate and High Boosted Diesel Engine (U.S.ADetroit) . 建築・設備工学科 学 術 論 文 氏 名 大森 山口 洋子 知恵 西山 徳明 池鯉鮒 大学名・学部名 (学外共著者の場合) 北海道大学・高等観光 学研究センター 北海道大学・高等観光 学研究センター 悟 大森 別所 洋子 匠 満岡 誠治 熊本大学 大学院 題 目 鹿児島県奄美市赤木名における生業と空 間構成 発表誌名(巻号) 年 月 日本建築学会計画系論文 集,NO . フロート式水流発電のデモンストレー 久留米工業大学研究報告 ション運転 No. . 阿蘇カルデラ内に立地する農村集落の屋 敷地の空間構成に関する研究 日本建築学会九州支部研 究報告・計画系 . D・ストウの教育論におけるクラスルー ム,運動場,ギャラリーと我が国への移 入 久留米工業大学研究報告 No. . 学 会 講 演 氏 名 大森 洋子 満岡 誠治 大学名・学部名 (学外共著者の場合) 題 目 The Cultural Landscape of Ontayaki Village 学会等の名称 陶芸の里と景観に関する 国際セミナー(韓国釜山 市東儀大学 西村貞訳述「小学教育新篇」を通した英 日本建築学会大会 国小学校建築の我が国への移入英国にお ける小学校建築に関する計画史的研究 (Ⅲ) ,建築計画Ⅰ,学術講演会梗概集 年 月 . . 論文,報告・その他,著者および学会講演 満岡 誠治 著 D・ストウの教育論におけるクラスルー ム,運動場,ギャラリーと,我が国への 移入・英国における小学校建築に関する 計画史的研究その ― ― 日本建築学会研究報告会 書 大学名・学部名 (学外共著者の場合) 氏 名 大森 洋子 阿蘇の町並み・集落景観調査報告書 阿蘇市世界遺産推進室 大森 洋子 九州北部豪雨災害 季刊まちづくり 号 . 「キーワード構築法−らくらく文章作成 術−」 株式会社ブクログ . 平戸島飯良の集落景観調査報告書 平戸市教育委員会 . 池鯉鮒 大森 悟 洋子 題 目 発行所等の名称 筑後地方の被害状況 年 月 情報ネットワーク工学科 学 術 論 文 氏 名 田口浩太郎 小田まり子 河野 央 小田 誠雄 新井 康平 松田 益本 本田 鶴夫 広久 嗣男 松田 益本 鶴夫 広久 大学名・学部名 (学外共著者の場合) 題 目 発表誌名(巻号) 年 現職 ネットソフト(株) 知的障害児のための CG アニメーション 教育シ ス テ ム 情 報 学 会 羽衣国際大学 を用いた教育支援ソフトウエアの開発 ジ ャ ー ナ ル( 巻 号) , pp. ‐ 福岡工業短期大学 佐賀大学 月 . WC 基超硬合金とステンレス鋼の接合 久留米工業大学研究報告 No. . 筋電図を使用した機器制御システム構成 に関する検討―市販ゲーム機への生体信 号の接続と,リハ支援機器への活用につ いて― 久留米工業大学研究報告 No. . (株)黒木工業所 学 会 講 演 氏 名 河野 央 小田まり子 秋山 侑也 大学名・学部名 (学外共著者の場合) 羽衣国際大学 (株)ジェイフィット 題 口唇動作の数理モデルによる ニメーションの自動生成 年 月 . 相 互 検 査 な し の 最 適 highly structured 電気関係学会九州支部第 自己診断可能システム中の最長有向道長 回連合大会 とシステムの再帰的構成法への有向道の 応用 . 保正 清明 久留米工業大学名誉教授 清水 麻記 NPO 法人ミュー ジ ア The traveling exhibition ム研究会 Coral Stories with us NPO 法人ミュー ジ ア ム研究会 学会等の名称 DCG ア 日本デザイン学会第 回 研究発表大会 朱雀 吉田 江藤 信一 Michael KING 目 Whale and Asian Educator s Conference 2013 in 海の中道海浜公園マリン ワールド . ― ― 論文,報告・その他,著者および学会講演 田口浩太郎 小田まり子 河野 央 小田 誠雄 羽衣国際大学 知的障害を持つ肢体不自由児のための教 育支援ソフトウエアと入力機器の開発 電子情報通信学会福祉情 報工学研究会 . 福岡工業短期大学 報告・その他 氏 河野 名 大学名・学部名 央 題 目 設計・制作 映像技術とアートの世界 発表・発行所等の名称 年 主催:久留米市 協力:九州大学大学院芸 術工学研究院 月 . 教育創造工学科 論 氏 文 名 大学名・学部名 (学外共著者の場合) 題 目 発表誌名(巻号) 月 G.Oomi S.Higashihara Kyushu Univ. K.Suenaga Tohoku Univ. K.Saito K.Takanashi NIMS,Tsukuba S.Mitani Pressure-induced Giant Magnetoresistance in Fe/Cr Magnetic 中村 文彦 Electric-field-induced metal maintained J. Physical Society by current of the Mott insulator Ca2RuO4·Scientific Reports 中村 文彦 Electric-Field-Induced Insulator-Metal J. Physical Society Transition in Ca2RuO4Probed by X-ray Absorption and Emission Spectroscopy 中村 文彦 CurrentInduced Gap Suppression in J. Physical Society the Mott Insulator Ca2RuO4 中村 文彦 Anisotropic uniaxial pressure response of the Mott insulator Ca2RuO4 Physical Review B Thermal and Magnetic Properties in Ce1-xErxAl2 Intermetallic Compounds Physical Society, Vol. . Effect of Pressure and Ion Beam Irradiationon the Giant Magnetoresistance of Fe/Cr Magnetic Multilayers IEEE Transaction of Manetism . G.Oomi M.Ohashi H.Miyagawa T.Nakano V.Sechvsky T.Komatsubara T.Komatsubara Kyushu Univ. Kyushu Univ. Niigata Univ. Charles Univ. Tohoku Univ. Tohoku Univ. G.Oomi T.Yayoi T.Nakano K.Saito K.Takanashi S.Mitani K.Kohno K.Sagara Kyushu Univ. Niigata Univ. Tohoku Univ. Tohoku Univ. NIMS,Tsukuba Fukuoka Univ. Kyushu Univ. Physical Society, Vol. 年 .6 論文,報告・その他,著者および学会講演 G.Oomi M.Ohashi H.Miyagawa T.Nakano V.Sechvsky I.Satoh T.Komatsubara Kanazawa Univ. Kyushu Univ. Niigata Univ. Charles Univ. Tohoku Univ. Tohoku Univ. Magnetic Phase Diagram of Ce1-xErxAl2 intermetallic compounds, J.Phys.Soc.Jpn ― 第 回高圧討論会 . 学 会 講 演 大学名・学部名 (学外共著者の場合) 氏 名 題 目 学会等の名称 年 月 中村 文彦 Electric field induced Mott transition in Workshop on Frontiers Ca2RuO4. the 3rd Super-PIRE REIMEI of Condensed Matter Physics 巨海 玄道 高圧下における希土類金属・化合物の電 子物性 第 回希土類討論会 . 巨海 玄道 全入大学における物理基礎教育の展開と その背景 第 回物理教育研究大会 . 巨海 玄道 Effect of Pressure and Ion Beam Irradiationon the Giant Magnetoresistance of Fe/Cr Magnetic Multilayers, 3rd ISAMMA . 巨海 玄道 High Pressure Studies of Condensed 国立台湾大学 Matters Having Novel Electronic States, (国立台湾大学理学部の劉教授の招待に よる) 巨海 玄道 巨海 理学部 . 物理教育学会九州支部設立までの歩み 物理教育学会九州支部 . 玄道 大学全入時代の物理学一般教育―その背 景と実践― 第 回九州地区一般教育 研究 . 巨海 猪飼 玄道 秀隆 大学全入時代の物理学一般教育―その背 景と実践― 第 回九州地区一般教育 研究協議会 . 巨海 玄道 全入大学における物理基礎教育の現状と 展開Ⅱ 年日本物理学会秋季 大会 . 巨海 原田 中田 林 平野 平島 安田 近藤 玄道 翔平 智大 佳彦 貞三 隆夫 信彦 宏章 圧力技術を用いた落ち葉ペレット材の創 製―竹材への応用 日本圧力学会第 回高圧 討論会 . 巨海 中田 原田 玄道 智大 翔平 落ち葉ペレット材の合成圧と熱伝導 日本圧力学会第 回高圧 討論会 . 巨海 玄道 久留米工大における物理駆け込み寺の試 み 物理学会九州支部講演会 . 平野 貞三 散乱光法を利用した粘弾塑性体の変形解 析法 日本物理学会九州支部講 演会 . 八女市役所 八女市役所 八女市役所 ― ― ― 論文,報告・その他,著者および学会講演 中村 文彦 国際会議招待講演: Mott transition in Ca2RuO4 under non-equilibrium conditions FIRST-QS2C 中村 文彦 モット絶縁体 Ca RuO の金属化はなぜ 日本物理学会九州支部例 起こるのか 会 . 巨海 玄道 (招待講演)複合極限下における 関電子物性 熊本大学理学部大学院 . 井出 立石 純哉 知也 キツネノマゴの花色による訪花昆虫相の 違い. 日本生態学会第 回大会 . 井出 純哉 オンブバッタの配偶における体サイズの 影響 第 回日本応用動物昆虫 学会 . 著 WS on Emergent Phenomena of Correlated Materials 強相 . 書 大学名・学部名 (学外共著者の場合) 氏 名 題 目 巨海 上床 酒井 中西 野田 玄道 美也 健 剛司 常雄 巨海 玄道 複合極限下における物性測定装置開発と 高圧力の科学と技術,第 それを用いた特異な電子状態を持つ物質 巻 の電子物性の研究.(高圧力学会賞受賞 記念論文) . 井出 純哉 ベニシジミのメスのセクシャルハラスメ 日本応用動物子雲集学会 ント回避行動.むしむしコラム・おー (公式サイトコラム) どーこん . 万人の基礎物理学(改定版) 発行所等の名称 年 月 学術図書出版 . 東京大学 有明高専 東京電機大学 共通教育科 論 氏 堀 文 名 大学名・学部名 (学外共著者の場合) 憲一郎 題 目 知識と経験との重ね合わせを推奨する講 義は,学生の“学び続ける力”の形成に 寄与するか 発表誌名(巻号) 日本教育工学会論文誌 巻 号 年 月 . 学 会 講 演 大学名・学部名 (学外共著者の場合) 氏 名 題 目 学会等の名称 年 月 野田 常雄 Cooling of compact stars with color Kyoto Meeting 京都大学 superconductivity 原子核理論グループ主催 . 野田 常雄 Cassiopeia A 中性子星の熱進化のモデル 化 日本天文学会 年会 年秋季 . 山田 久美 終の逍遥:ソローの歩いたケープ・コッ ド 日本ソロー学会全国大会 . 論文,報告・その他,著者および学会講演 ― 野田 常雄 ハイブリッド星におけるカラー超伝導と 核子の超流動の冷却に対する影響 日本物理学会九州支部第 回支部例会 . 野田 常雄 Cooling of the compact star in Cassiopeia Kyoto Meeting W京 A 都大学原子核理論グルー プ主催 . 野田 常雄 カラー超伝導状態のクォーク物質が中性 子星の冷却に及ぼす影響 . 野田 常雄 Thorne-Zytkow 天体形成時の中性子星 日本天文学会 年春季 =巨星相互作用 年会特別セッション . 野田 常雄 Thermal Evolution of Compact Stars イタリア・フィレンツェ, with Color Superconducting Quark ガリレオガリレイ記念理 Matter , The Structure and Signals of 論物理学研究所主催 Neutron Stars, from Birth to Death . 著 氏 堀 中性子星核物質研究会 書 名 憲一郎 大学名・学部名 (学外共著者の場合) 題 目 発行所等の名称 APA 心理学大辞典の翻訳者の一人とし 培風館 て参加. 年 月 . ― ― ― 論文,報告・その他,著者および学会講演 平成 年度 修士課程修了論文題目 修士論文 エネルギーシステム工学専攻 氏 名 標 題 主論文指導教員 大久保喬史 太陽光発電モジュールの発電量とエネルギー変換効率 Power generation and energy converseion rate of a solar module 井上 曽 日射量の変化に関する研究 池鯉鮒 クローラロボットを用いた Java プログラミング環境の開発 山本 日升 床波 真 利明 副論文指導教員 池鯉鮒 悟 悟 井上 利明 俊彦 田代 博之 電子情報システム工学専攻 氏 名 飯田 標 題 主論文指導教員 副論文指導教員 洋亮 口唇動作における時系列変化の一般化によるCGアニメーション表現 河野 央 吉田 清明 田口浩太郎 知的障害を持つ肢体不自由児のための教育支援ソフトウェアの開発 小田まり子 河野 央 自動車システム工学専攻(一般課程) 氏 名 標 題 主論文指導教員 副論文指導教員 井手 尚也 地面効果を利用した小型航空機の空力デザイン 東 大輔 原 和雄 川上 義朝 クリーンディーゼル機関の低温燃焼におけるヒートバランス解析 原田 節男 山口 卓也 田中 幸志 回転式コンクリート型枠のコンパクト化に関する研究 井川 秀信 原田 節男 中島 優太 信号機のない横断歩道の集団と単独の警戒心 片山 硬 渡邊 直幸 中島 卓也 空力抵抗と揚力を同時に低減する自動車リアデバイスの研究 東 大輔 井川 秀信 前田 拓磨 JASE フォーミュラカーのサスペンション/ステアリング・ジオメ トリ設計に関する考察 森 和典 久保 省藏 特別報告 自動車システム工学専攻(一級自動車整備士養成課程) 氏 名 大内田貴章 標 顧客満足度(CS)に対する整備士の役割 題 主論文指導教員 森 和典 副論文指導教員 渡邊 直幸 研究報告編集委員会 委員長 森 委 田代博之 機械システム工学科 原 交通機械工学科 員 事務局 和典 和雄 交通機械工学科 吉住孝志 建築・設備工学科 松田鶴夫 情報ネットワーク工学科 久保省藏 教育創造工学科 小林敬二 学術情報センター(図書館) 森 学術情報センター(図書館) 文子 久留米工業大学研究報告 第 号 BULLETIN OF KURUME INSTITUTE OF TECHNOLOGY No 37 BULLETIN OF KURUME INSTITUTE OF TECHNOLOGY 平成 平成 年 年 編集兼 発 行 月 月 日印刷 日発行 久留米工業大学研究報告 編 集 委 員 会 〒 ‐ 久留米市上津町 ‐ TEL( ) ‐ URL http://www.kurume-it.ac.jp 印刷所 ㈱昭和堂 〒 ‐ 福岡市博多区東比恵 ‐ ‐ TEL( ) ‐ Printed Published Editor March March Editorial Committee for Kurume Institute of Technology Bulletin 2228-66 Kamitsu-machi, Kurume-shi, Fukuoka-ken, Japan. 830-0052 TEL (0942) 222345 URL http://www.kurumeit.ac.jp Printing Showa-do Ltd. 4-2-19 Higashi-Hie, Hakata-ku, Fukuoka-shi, Fukuoka-ken, Japan. 812-0007 ISSN 2014 BULLETIN OF KURUME INSTITUTE OF TECHNOLOGY ‐ 2014 久 留 米 工 業 大 学 研 究 報 告 久留米工業大学 研究報告 第 号 No.37 [Paper] No.37 Improvement of Steering Effort Characteristics on Small Type Racing Car ……………………………………………………Takuma MAEDA and Kazunori MORI……… [論 Analysis on Spring and Damper Characteristics of Suspension with Bell Crank Mechanism ………………………………………………………………………………Kazunori MORI……… Fundamental Study of Waste Heat Recovery in the High Boosted MultiCylinder Diesel Engine ………………………………………………………………………Takuya YAMAGUCHI……… Effects of Excitation Phenomenon by a Radioactive Ceramics Catalyst on Engine Combustion ………………………………………………………………………Takashi WATANABE……… 文] 小型レーシングカーの操舵力特性の改善 …………………………………………………………前田 拓磨・森 和典……… ベルクランク機構を有するサスペンションのばね・ダンパ特性の解析 …………………………………………………………………………森 和典……… 高過給多気筒ディーゼルエンジンにおける排熱回生の基礎研究 …………………………………………………………………………山口 卓也……… エンジンの燃焼に及ぼす放射性セラミックス触媒による励起作用の影響 …………………………………………………………………………渡邉 孝司……… Research of Power Output Efficiency by Solar Photovoltaics System in Kurume City ………………………………………………………………………Yoshitami NONOMURA……… 久留米市における太陽光発電システムの発電効率に関する研究 …………………………………………………………………………野々村善民……… Verification of relationship of evaluation taste palatability and result using ranking algorithm of food with favorite taste …………………………………………………………………………………Shinichi ETOH……… 味の嗜好性評価結果と好みの味順位化アルゴリズムの順位結果との関係性の検証 …………………………………………………………………………江藤 信一……… Issues and Perspectives on the Career Education in The Central Council for Education s report on Future vision on Career Education and Vocational Education at school ………………………………………………………………………………Kenichiro HORI……… 「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(中教審答申)から みるキャリア教育の課題と展望 …………………………………………………………………………堀 憲一郎……… [List of Articles, Reports / Miscellaneous, Books and Presentations] …………………………………………… [論文,報告・その他,著者および学会講演]…………………………………………………………… [List of Master s Theses (2013)] ……………………………………………………………………………………… [平成 年度修士課程修了論文題目]……………………………………………………………………… 久 留 米 工 業 大 学 久留米工業大学研究報告 NO. MK 稲 加 杉 芦 森 背幅 .ミリ (森)
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