2. 腫瘍性疾患に対する post FDG製剤PET

Nuclear
Medicine
Today
2015
Ⅱ 腫瘍性疾患における最新動向
2.腫瘍性疾患に対する
post FDG 製剤 PET
─ ‌FLT-PET(PET/CT)の有用性について
中條 正豊 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科放射線診断治療学教室
悪性腫瘍では糖代謝が亢進しているこ
とが知られている。ブドウ糖類似体である
18
F-fl‌uorodeoxyglucose(以下,FDG)を
用いて,糖代謝を非侵襲的にとらえる検
FLT-PET(PET/CT)の
臨床応用について
FLT 集積で評価した median overall
survival は奏功群では 12 . 5 か月で,非
奏功群は 3 . 8 か月であった 3)。また,再
発診断能について FDG-PET と比較した
査が FDG-PET(PET/CT)検査である。
腫瘍イメージング製剤としての FLT
メタアナリシスにおいては,統計学的有
FDG-PET(PET/CT)検査の有用性につ
への期待は,FDG と同様に悪性腫瘍の
意差は認められなかったものの,ROC
いては,
‌ 腫瘍の良悪性の鑑別や悪性腫瘍
病期診断や治療効果判定と考えられて
解析を用いて算出された area under
の病期診断,治療効果判定において多数
いる。近年,FLT を用いた腫瘍イメー
t h e c u r v e(A U C)の値が 0 . 8 5 と,
‌ FDG は炎
の報告が認められる 。ただ,
ジング検査の報告は増加傾向にあり,過
FDG-PET の 0 . 84 よりもわずかに優れて
症性病変にも集積することから,良悪性
去にその有用性について検討された疾患
いる結果であった 4)。
の鑑別や病期診断の判定が困難な場合が
群について概説したい。
1)
ある。
一方,悪性腫瘍は,その特徴として非
1.‌脳
‌ 腫瘍(glioma)
2.‌頭
‌ 頸部がん
1)病期診断
常に高い増殖能を有していることも知られ
1)病期診断
FLT-PET(PET/CT)における頭頸部
ており,
‌増殖時には DNA 合成や細胞膜合
FDG は脳への生理的集積を認めるた
扁平上皮癌の病期診断能を検討した報
成も活性化すると考えられる。これらの観
めに 脳 腫 瘍 の 検 出 は 困 難 であるが,
告は限られているが,FDG-PET の検出
点に着目して FDG 以外にも,核酸代謝を
FLT は脳への生理的集積を認めないの
能と比較した報告 5)では,すべての病巣
反映する 18 F-fluorothymidine(以下,
で,病巣の検出に優れている。glioma
は双方の検査にて検出されたが,集積度
FLT)を用いて腫瘍の良悪性の鑑別や悪
(W H O g r a d e Ⅱ〜Ⅳ)の検討では 2),
については,平均 FLT SUVmaxは5 . 7,
性腫瘍の病期診断,
‌ 治療効果判定につい
FLT-PET で 36 病巣中 26 病巣(72 . 2%)
平均 FDG SUVmax は 10 . 9 と,FLT が
て検討した報告も認められる。
が検出され,10 の非検出病巣は,8 病巣
有意に低値を示した(P < 0 . 001)
。
本稿では,
‌ 核酸代謝イメージング製剤
がgradeⅡ,2 病巣が grade Ⅲであった
また,FLT-PET/CT によるリンパ節
である FLT の臨床応用の現状と限界,お
が,grade Ⅳについてはすべて検出された。
転移の診断能を検討した報告 6)では,
よび今後の展望について紹介したい。
また,組織学的悪性度間においても集
感度は 100%であったが,特異度につい
〈0913-8919/15/¥300/ 論文 /JCOPY〉
積度に差を認め,平均腫瘍 / 正常比は
ては反応性リンパ節腫大への偽陽性集
g r a d e Ⅱで 1 . 7 3,g r a d e Ⅲで 3 . 5 1,
積の影響もあり,わずか 40%であった。
grade Ⅳで 11 . 63 であり,悪性度が高く
F L T - P E T / C T では,炎症の影響を
なるにつれて集積度が増加する傾向を示
FDG-PET/CT ほどは受けないと考えら
した。
れているが,頸部リンパ節への反応性集
2)治療効果判定
積については,FDG-PET/CT 同様に高
ベバシズマブを用いた glioma の化学
頻度に認められる傾向にある。われわれ
療法における FLT-PET による治療効果
が行った PET/CT による甲状腺がんの
判定を検討した報告では,化学療法開
リンパ節転移の評価においても,感度お
始 6 週間後の FLT 集積が最も overall
よび特異度は FLT では 50%と 90 . 7%で
survival に相関し(ハザード比:10 . 5)
,
あ ったの対して,F D G ではそれぞれ
INNERVISION (30・12) 2015 7