1. 不明熱や炎症性疾患に対する FDG

Nuclear
Medicine
Today
2015
Ⅴ 非腫瘍性疾患における最新動向
1.不明熱や炎症性疾患に対する
FDG-PET の有用性
諸岡 都 / 窪田 和雄 国立国際医療研究センター放射線核医学科
不明熱(feverof
unknownorigin:FUO)
1.不明熱の定義
腫瘍との鑑別が紛らわしいことが臨床家
ス以外の炎症疾患に対する FDG-PET
たちを悩ませてきた。炎症と腫瘍との鑑
の使用についてはまだ未承認である。われ
別に努力し,ダイナミック撮像や遅延像
われは,将来的な保険適用をにらみ,現
の追加などが花盛りとなった。今では
在,先進医療 B「FDG-PET/CT の不明
18
F-FDG-PET で炎症,腫瘍の鑑別は厳
密には困難な場合も多い(特に時間の限
熱診断への応用〜ガリウム SPECT/CT
との比較研究〜(略称:JPET-FUO)
」
不明熱の定義および原因は,筆者が
られた検査の場合)という一定のコンセ
(研究代表者:国立国際医療研究センター
若かりし初期研修医の時に大変お世話
ンサスが得られている。しかし,不明熱
放射線核医学科・窪田和雄)として多
になった臨床支援・教育ツール“UpTo-
では炎症 / 腫瘍の鑑別よりも熱源探索に
施設共同研究を行っている。不明熱の
Date(2015 年版)
”1)には以下のように
有用と考えられるので,炎症にも腫瘍に
患者がエントリーされれば FDG-PET と
記載されている 。
も集積するその特性を生かしていると痛
ガリウムシンチグラフィを撮像し,熱源
● DEFINITION
感する。わからないがゆえに熱源を疑う
探索を行う。エントリー基準はかなり厳
・Fever higher than 38 . 3℃ on sev-
病変があるかどうか,もしあれば適した
しく,胸腹部 CT でも不明熱の原因が明
生 検 部 位を提 示できるということが
らかではない症例がエントリーされる。
FDG-PET の役割と考える。そして,国
現在,不明熱の原因探索が行われたも
2)
eral occasions
・Duration of fever for at least three
weeks
・Uncertain diagnosis after one week
of study in the hospital
● ETIOLOGY
内外ですでに FDG-PET の不明熱探索
ののうち,およそ 1 割が最後まで未解明
への寄与は一定の評価を得ている 3)〜 5)。
と言われており,先の UpToDate でも
今後の課題としては,各症例のフォロー
FDG-PET は期待を持って以下のように
アップをきちんと行うことで,FDG-PET
述べられている。
・Infections
で positive/negative であった症例が真
“…F-fluorodeoxyglucose positron
・Malignances
に positive/negative であったか,ガリ
emission tomography(FDG PET)
・Connective tissue diseases(e.g.
ウムより FDG-PET が有用であるかの検
appears to be very sensitive in identi-
証がさらに必要と考える。
fying anatomic sites of inflammation
vasculitis,rheumatoid arthritis)
これによると不明熱は「38 度以上の熱
で原因がわからないものが 3 週間以上持
2.保険について
and malignancy. This modality may
find a valuable palace in the evalua-
続し,1 週間以上の精査でなお不明なも
FDG は古くから知られている薬剤で
tion of FUO,but additional data from
の」である。原因は大別すると,①感染,
ある。2002 年に初めて保険適用となり,
a controlled prospective study dem-
② 腫瘍,③ 膠原病科的疾患(血管炎,
今では虚血性心疾患やてんかん,早期
onstrating efficacy are needed.”
リウマチなど)となる。
胃がんを除く悪性腫瘍が保険適用となっ
まさしく,いま,日本でわれわれが行
今まで,不明熱の原因探索には,詳
ている。2012 年には,心サルコイドーシ
おうとしていることである。多施設共同
細な問診に加え,採血や一般撮影をは
スに対しても保険適用となった。腫瘍
研究をはじめ,詳細は当センターホーム
じめとするさまざまな検査が行われてきた。
のみならず炎症性疾患にも FDG の有用
ページを参照していただきたい(http://
われわれは,FDG-PET が不明熱探索に
性が部分的に認められてきている。炎症
www.ncgm.go.jp/sogoannai/
貢献できるのではないかと考えている。
に対してはガリウムシンチグラフィが保
housyasen/kakuigaku/advanced/
従来,FDG は炎症にも集積が見られ,
険承認されているが,心サルコイドーシ
index.html)
。
32 INNERVISION (30・12) 2015
〈0913-8919/15/¥300/ 論文 /JCOPY〉