ラジコン電動マルチコプターを使用した近接画像からの水稲

ラジコン電動マルチコプター,SfMを使用した
近接画像からの水稲生育モニタリング
濱 侃 , 早崎 有香(千葉大学), 田中 圭(日本地図センター),
近藤 昭彦(千葉大学、CEReS)
3
米の等級と食味値
「お米の品質・等級」より
等級
1等米
2等米
3等米
整粒割合 水分含有 死米混入 着色粒混入 もみ混入
70%~ 12%~15% ~7%
~0.1%
~0.3%
60%~ 12%~15% ~10%
~0.3%
~0.5%
45%~ 12%~15% ~20%
~0.7%
~0.1%
米の等級と食味値
生産意欲の向上
農家のやりがい
一般財団法人 日本穀物検定協会より
食味値:100点満点(基準値60~65点)
近赤外線分析機で、「アミロース」「タンパク質」「水分」
「脂肪酸度(玄米)」の4つの成分を測定
6
RMAX・HSセンサ-を使用したSPAD値推定
向山ほか(2011)
Low
High
High
R²= 0.927
飛行高度
空間分解能
SPAD値推定精度
ダウンウォッシュ
High
Low
R²= 0.475
Low
7
リモートセンシングと農業
衛星・航空機モニタリング
多数
UAVモニタリング
研究数
>
ほとんどない
目的
目的
作付面積、作況、
収穫量調査
行政のため
分析手法
生育状況、品質、
収穫量調査
生産者のため
水稲の生育調整
• 追肥が主な生育調整である。
→追肥の前までに、生育調整の指標を示す必要
がある。
追肥
イネの生育ステージ(実教出版
「農業高校・作物」より
10
対象地 : 千葉県 農林総合研究センター
水稲試験場 (千葉市緑区)
千葉県農林総合研究センター
水稲試験場の方々たちの多大
なご協力
11
試験区詳細
観測方法
• 6月中旬(成長期)から9月初旬(登熟期)にか
けて観測(空撮)。
• RC電動マルチコプター
(JABO H601G – ヘキサコプター, Phantom2 – クワッドコプター)
• デジタルカメラ
(可視画像:RICOH社 GR, GoPro社 HERO3. 近赤外画像:BIZWORKS社 Yubaflex)
水田
15
16
17
18
19
NDVIの補正
0.9
HSカメラ(NH‐7)
(845, 665nm)
ハイパースペクトルカメラ(NH‐7)NDVI
0.8
0.7
0.6
y = 1.6263x + 0.3011
R² = 0.9071
0.5
0.4
0.3
0.2
近赤外カメラ
Yubaflex
0.1
0
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
近赤外カメラ(Yubaflex)NDVI
0.3
0.35
生育状況実測データとUAV観測データ
• 観測日は同じ
ではない。
→実測日に合わ
せて線形補間
22
5/9
6/21
24
7/2
25
7/16
26
刈り取り
8/20
倒伏
27
0.95
NDVI MAX
0.9
0.85
0.8
0.75
0
2
4
6
8
10
施肥量: 基肥+追肥(kg/10a)
コシヒカリ
ふさおとめ
ふさこがね
28
29
30
31
32
33
34
35
倒伏
36
出穂:Ⅰ期
成熟:
Ⅰ期 Ⅱ期
Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期
1
0.9
0.8
0.7
NDVI
0.6
0.5
0.4
○ ふさおとめ
◇ ふさこがね
△ コシヒカリ
0.3
0.2
0.1
0
21‐Jun 28‐Jun
1
2
3
5‐Jul
17
12‐Jul
20
23
19‐Jul
26
26‐Jul
28
2‐Aug
30
9‐Aug 16‐Aug
44
46
37
48
草丈(DSM)=任意の日のDSM ‐ 移植前のDSM
38
39
6/21
40
7/2
41
7/16
42
• ほぼ傾きが1の相関がある。
→切片の分だけ、補正を行うことで精度向上(草丈≧0.4m)
既存の生育推定手法の適用
(倒伏リスク、収量予測)
44
45
• コシヒカリは倒伏のリスク大
• 出穂前の草丈(稲の高さ)からリスクを評価で
きる
①幼穂形成期の草丈が、70cm以上
②出穂前13~14日の草丈が84cm以上
(県央農林総合事務所;水稲栽培管理情報,JA金沢市版より)
①or②のどちらか一方でも当てはまれば、リスク
エリアとする。
46
草丈はDSMを使用。
47
48
収量の予測
• 収量=0.7828×SR×NDVI‐2.04(T‐21.3)²+282
SR=登熟期間中の日射量
T=登熟期間の平均気温
NDVI(出穂期)
脇山ほか(2003)より
今回は最寄りのアメダス観測点(千葉)のデータを使用。
日射量データは無いため、日照時間より推定。
(桑形(2005)の推定式を利用)
収量の予測結果と実測値
900
実収量(g/m²)
800
• 予測収量は品種による差が大きい
Fusaotome (特にコシヒカリ)
1 : 1
Fusakogane
Koshihikari
700
600
500
400
400
500
600
700
予測収量(g/m²)
800
900
生育推定手法の考案
(草丈、倒伏リスク、LAI)
草丈の推定
• NDVI観測値をもとに、出穂までの草丈を推定
→同様に、草丈よりNDVIも推定できる。
1
y = 1.0780 x ‐ 0.1705 ふさおとめ
R² = 0.9279 0.9
0.8
ふさこがね
草丈(m)
0.7
y = 1.0652 x ‐ 0.1583 R² = 0.8782 コシヒカリ y = 1.1726 x ‐ 0.1691 0.6
R² = 0.9373 0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5 0.6
NDVI
0.7
0.8
0.9
1
草丈の推定:実測値と推定値
1
RMSE = 0.049 m
実測草丈(m)
0.8
0.6
ふさおとめ
0.4
ふさこがね
0.2
コシヒカリ
0
0
0.2
0.4
0.6
推定草丈(m)
0.8
1
コシヒカリの倒伏リスク推定
• 草丈での推定手法に基づきNDVIを用いて推定。
①幼穂形成期のNDVIが、0.74以上
1
②出穂前13~14日のNDVIが0.86以上
0.9
0.8
草丈(m)
0.7
コシヒカリ
0.6
y = 1.1726 x ‐ 0.1691 R² = 0.9373 0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5 0.6
NDVI
0.7
0.8
0.9
1
LAI(葉面積指標)の推定
・NDVIからのLAIを推定する手法がリモートセンシ
ングではよく用いられる。
→衛星画像からの推定
・LAIは地表面の状態を示す、データの1つで
フラックスモデル、バイオマス推定などのインプッ
トデータとしても重要
• NDVIとLAI実測データとの相関関係からLAI推定
モデル(回帰式)を構築した。
56
 指数近似や対数近似を使用した回帰分析。
1<LAI<7が対象。
7
7
3.1416 x
y = 0.0439 e
y = 0.2743 e5.5064 x
R² = 0.9563 ふさおとめ
R² = 0.5054 Fusaotome
y = 0.0184 e6.5028 x
y = 0.1867 e3.5734 x
ふさこがね
Fusakogane R² = 0.9540 R² = 0.6802 5.4301 x
y = 0.0470 e4.1460 x
コシヒカリ
Koshihikari y = 0.1203 e
R² = 0.9587 R² = 0.8358 y = 0.0405 e5.5805 x
全体
R² = 0.9438 6
5
LAI
4
3
2
1
0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5 0.6
NDVI
0.7
0.8
0.9
1
7
6
RMSE = 0.693
実測LAI
5
4
3
ふさおとめ
2
ふさこがね
1
コシヒカリ
0
0
1
2
3
4
推定LAI
5
6
7
0.95
NDVI MAX
0.9
NDVI
• 生育状況の差が詳細に観測された。
0.85
→栽培条件の違いが明瞭に見えた。
0.8
(品種・移植時期・施肥量)
0.75
1
・施肥量調整などの実利用の可能性
0
2
4
6
8
0.9
施肥量: 基肥+追肥(kg/10a)
0.8
→品質向上・環境負荷(窒素問題)の軽減
コシヒカリ
ふさおとめ
ふさこがね
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
10
Rice variety
・ Yubaflex(近赤外カメラ)のNDVI値が低い。
○ Fusaotome
△ Koshihikari
→一定の割合で低いため補正はできる。
1
3
17
23
26
30
44
48
59
1200
100
1100
90
1000
80
ふさおとめ
ふさこがね
コシヒカリ
70
※白抜きは整粒粒比
50
900
800
700
60
600
40
500
30
400
20
0.75
0.8
0.85
NDVI MAX
0.9
0.95
60
整粒粒比(%)
収量(g/m²)
NDVIの最適値の検討
• 稲丈を高い精度で観測することができた。
問題点・課題
全体的に実測値に比べて低い値を計測したもの
が多かった。
→DSMと地上観測の草丈の観測方法の差
稲の状況の差(風や、たわみ)、 草丈と草高
1
1
0.9
0.8
Y=1.0025X+0.135
R²=0.8227
0.9
0.8
0.7
実測値 (m)
実測値(m)
0.7
0.6
0.5
0.4
0.5
0.4
0.3
0.3
0.2
0.6
RMSE=0.135(m)
0.1
0.2
RMSE=0.072(m)
0.1
0
0
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
DSM 値(m)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
DSM 値(m)
草丈と草高
Plant length and plant height
草丈
草高
62
木村ほか(2014)より
• 草丈、倒伏予測、LAIともに精度は高い。
• LAIは草丈の推定などと比較して、推定精度
が劣る。
→作成した回帰式の問題。
実測データは一部を刈り取ったもので計測。
草丈推定
1
6
RMSE = 0.049 m
0.8
LAI推定
7
RMSE = 0.693
0.6
0.2
4
3
ふさおとめ
ふさこがね
2
ふさこがね
コシヒカリ
1
コシヒカリ
ふさおとめ
0.4
実測LAI
実測草丈(m)
5
0
0
0
0.2
0.4
0.6
推定草丈(m)
0.8
1
0
1
2
3
4
推定LAI
5
6
7
• 栽培条件の異なる区画ごとに生育状況の差が
NDVI観測結果に現れている。
⇒施肥管理に利用可能。草丈、LAIの推定が可能
• DSMでは誤差数cmで、草丈を計測できた。
⇒倒伏予測が可能(コシヒカリ)
• 収量予測では、品種ごとに予測モデルを構築する
必要性が示唆された。
• 以上のように、RCマルチコプターでの観測は、
データ品質も良く、観測だけでなく観測結果をもと
に、モデルの検証や構築を行うことができる。
RCマルチコプター(UAV)観測の利点
• 今回は簡便な方法であるが、生育状況の違
いが確実に観測されていることを確認した。
• 確立された計測方法をもとに、モニタリングを
継続し、観測事例を積み重ねる。
• 推定モデルの向上のため、複数日で実測
データと同時観測を行う。