SiCデバイスの品質と歩留りの向上に貢献する 業界標準になるべきSiC

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インタビュー
SICA88
SiCデバイスの品質と歩留りの向上に貢献する
業界標準になるべきSiCウエハー欠陥検査/
レビュー装置「SICA88」
レーザーテックは、SiCウエハーの表面と内部の欠陥を検出し、欠陥の種類を高
い精度で分類できる装置「SiCウエハー欠陥検査/レビュー装置SICA88(以下、
SICA88)」を発売した。SiCウエハーを供給するメーカーの品質管理や製品の
ランク付け、デバイスメーカーの生産技術開発やウエハーの受入検査などに欠
かせない、業界標準となる可能性を秘めた検査装置である。2015年10月に開
催されたSiCパワー半導体関連の国際学会「ICSCRM 2015」で製品発表し、
「早くもローム株式会社などをお客様として、4社から受注しました」
(レーザー
テック 第1ソリューションセールス部 部長の関 寛和氏)
という。
お問い合わせ
レーザーテック株式会社
〒222-8552 神奈川県横浜市港北区新横浜2-10-1 TEL:045-478-7337 URL:http://www.lasertec.co.jp/
※本記事は2015 年12月掲載「日経テクノロジーオンラインSpecial」
を転載したものです。 ※掲載記事の無断転写・転載を禁じます。 ※非売品 2015 Nikkei Business Publications,Inc.
©
新製品
インタビュー
SICA88
SiCデバイスの品質と歩留りの向上に貢献する
業界標準になるべきSiCウエハー欠陥検査/レビュー装置「SICA88」
SICA88)
」を発売した。SiCウエハーを供給するメーカーの品質管理や製品のラ
ンク付け、デバイスメーカーの生産技術開発やウエハーの受入検査などに欠かせ
ない、業界標準となる可能性を秘めた検査装置である。2015 年10月に開催さ
れた SiC パワー半導体関連の国際学会「ICSCRM 2015」
で製品発表し、
「早くも
ローム株式会社などをお客様として、4 社から受注しました」
(レーザーテック 第
1ソリューションセールス部 部長の関 寛和氏)
という。
レーザーテック
第 ソリューションセールス部 部長
い精度で分類できる装置「SiCウエハー欠陥検査 /レビュー装置 SICA88(以下、
関 寛和 氏
レーザーテックは、SiCウエハーの表面と内部の欠陥を検出し、欠陥の種類を高
図1 レーザーテックのSICA88を使ったSiCウエハーの検査例
左図は欠陥のマップと検出した欠陥を種類別に分類したヒストグラム、中図は表面検査で検出したウエハー表面の欠陥例、右図はPL 検査で検出したウエハー内部の欠陥例
エアコンや太陽光発電システムから鉄道まで、電源回路
ために欠かせない検査装置である。
し、レーザーテック独自の欠陥検出アルゴリズムで表面の
内部欠陥の検査には長い時間が掛かり、全数検査はほぼ不
欠陥を分別・判定できる機能を持っている。そして、これ
可能だった。既存の内部欠陥の検査には、PL 法、X 線回折、
欠陥と上手に付き合っていくことを前提として SiC デバイ
らの装置を利用して、どのような欠陥がデバイスの特性に
エッチピットを用いた方法などが使われ、150mmウエハー
スを開発・製造するためには、欠陥がないことを前提とし
どのような影響を及ぼすのか、産業技術総合研究所に置か
1枚を PL 検査する場合、一晩かかっていたのだ。
ハーの品質を向上し、
生産体制を増強することが急務になっ
た Siデバイス用とは別の視点から作られた検査装置が必須
れた技術研究組合 次世代パワーエレクトロニクス研究開発
SICA88 は、高感度の表面検査とBPD や SF の検査を
ている。
になる。
機構
(FUPET)
と共同でデータを蓄積してきた。
同時に実行し、しかも150mmウエハーを1時間で10 枚、
SiCウエハーの欠陥には、デバイスを動作不能にするも
その成果は SiC デバイスの生産性向上に大いに貢献し、
1枚当たり約 5 分で終えることができる。レーザーテックが
のもあれば、影響を及ぼさないものもある。キャロットや
国内のウエハーメーカーやデバイスメーカーのほとんどが
「手前味噌ですが、かなり画期的なスペック」
と言うのもうな
ただし、SiC デバイスの品質と生産量の向上は、それほど
トライアングルなどのようにウエハー表面に凹凸を伴うも
導入。海外でも Cree 社が複数台導入するなど SICA の活用
ずけるほどの飛躍である。これまで PL 検査を行う装置で
簡単ではない。ほとんど欠陥がないウエハーを使って製造
のもあれば、エピ膜内部の基底面内転移
(BPD)
や積層欠陥
が広がっている。今では、同じ目的で使われる検査装置の
は、ウエハー領域をステップ・アンド・リピートの動作で
するSiデバイスと異なり、現状の SiC デバイスは多くの欠
(SF)のようなウエハー内部にあるものもある。
「SICA88
中で 8 割を超えるシェアを占め、SiCパワー半導体の国際
スキャンしながら検査していた。SICA88 では、光学系と
陥を含むウエハーを使って製造していかなければならない
でこうした欠陥を精査すると、これまで同じキャロットに分
学会「ICSCRM 2015」
で発表された検査装置のデータを
TDI センサーを開発して連続的にスキャンを可能にし、検
からだ。結晶成長技術の進歩で、長年の課題だったマイク
類してきた欠陥の中にも、実はさまざまな種類があること
掲載した論文の全12 件のうち、実に10 件が SICAを使っ
査速度を高めた。
ロパイプなどの低減にはメドがたった。しかし、デバイスの
が分かってきました。そして、それぞれがデバイスの特性に
たものだった。
表面検査についても、SICA6X に比べてスループットを
特性に悪影響を及ぼす
「キャロット」
や
「トライアングル」
など
及ぼす影響が異なっているのです」
(関氏)という。欠陥の
と呼ばれるさまざまな微小結晶欠陥が残っている。
有無を検出するだけではなく、表面または内部それぞれに
SiC デバイスに対する期待は大きく、既に応用が始まっ
ある欠陥の種類を、高精度で分別できる検査装置が必要に
今回発売した SICA88 は、コンフォーカル微分干渉
(DIC)
微鏡で再観察する必要はない。
たショットキーバリア・ダイオード(SBD)
やジャンクション
なるのだ。
光学系による表面検査と、フォトルミネッセンス(PL)
検査
検出した表面や内部の欠陥は、高精度で自動識別する機
FET に加え、これからは MOS FETやバイポーラ動作する
デバイスを作る前にウエハーの特性に影響を及ぼす欠陥
を1台で実施できる検査装置である
(図1)
。従来は、専用の
能(ADC)
によって分別し、合否判定マップや表面のラフネ
デバイスの利用拡大が見込まれている。これらのデバイス
の存在やウエハー上での位置を把握できれば、デバイスの
検査装置を別に用意する必要があった、ウエハー内部の欠
スマップを作成して表示される。こうした迅速な検査を可
構造では、欠陥がデバイスの特性や歩留まりに及ぼす影響
品質と歩留まりを、効果的かつ効率的に向上させることが
陥を分別するための PL 検査も実行できる点が最も進化し
能にした SICA88 の登場で、SiCウエハーの全数検査に道
が顕著になる傾向がある。
できる。不良を起こす欠陥と起こさない欠陥をデバイスの
た点である。SF は SBD を初めとする様々なデバイスの特
が開いた。
デバイスメーカーにとっては、欠陥といかに上手に付き
製造前に分別できる点が、SiC デバイスの開発・生産にも
性を悪化させ、BPD は MOS FETや IGBTの動作に大きな
デバイスメーカーごとに、デバイス構造やプロセスは大き
合っていくかが、SiC デバイスの品質と歩留まりを向上させ
たらす SICA88 の最大のメリットである。
影響を及ぼすため、これからその重要度が高まる。
く異なる。このため、特性に影響を及ぼす欠陥の種類とそ
る上での鍵になる。SiCウエハーはとても高価である。ウ
ウエハーの表面にある欠陥を分別する装置に関しては、
SiCウエハーに含まれる欠陥の数や種類は、ウエハーそ
の影響の度合いは、メーカーごとに異なってくる。 SICA88
エハーに残る欠陥の種類を分別し、デバイスの特性や歩留
既にレーザーテックが決定版と呼べる装置を実用化してい
れぞれの個体差が大きい。このため、SiC デバイスの製造
を活用して、自社のデバイス構造やプロセスで、どのような
まりへの影響を見極めながら、より多くの良品を作り出す
る。2009 年に研究開発用の表面検査装置「SICA61」を、
現場では、高品質化と高歩留化を狙って、ウエハーを全数
欠陥が不良の発生につながるのか、知見を蓄積していくこと
ことが、製造コストの低減、ひいては SiC デバイスの応用
2011年には量産用の「SICA6X」を発売した。それぞれ、
検査したいという要求が高まっている。表面欠陥の検査は、
で、SiCデバイス事業の競争力も高まる。SICA88を活用し、
の広がりに直結する。SICA88 は、こうした要求に応える
ウエハー表面のナノレベルの凸凹を高コントラストで可視化
SICA6X によって、全数検査ができるようになった、しかし、
いち早く、こうした知見を集積していくことに期待したい。
での電力変換効率の向上や小型化を狙って、SiC デバイス
の実用化が始まった。今後は、電気自動車などへの搭載も
確実であり、その搭載は航続距離の延長などクルマの価値
向上に直結する。半導体業界には SiC デバイスとSiCウエ
結晶欠陥と上手に付き合い生産
SiCにはSiとは別の検査装置が必要
表面と内部の欠陥を一度に検査
2 倍に高めている。しかも画像のピクセルサイズはレーザー
顕微鏡レベルの1.75μmと高く、欠陥を検出した後に顕