No.104 2015年8月号

CONTENTS
§筑豊小児科医会のご案内・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
§小児科医会報告・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
§地域連携ささえあい小児診療・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
§飯塚病院月間診療のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
§筑豊小児科医会のご案内
8 月の筑豊小児科医会は規定により休会とさせていただきます。
■第 268 回
●日
時:2015 年 9 月 16 日(水)(18:45~)
●場
所:のがみプレジデントホテル
特別講演
「マイコプラズマ感染症
―診断、耐性菌、発症機構に関する最近の話題―」
医療法人 徳洲会 札幌徳洲会病院 小児科 小児感染症部長 成田 光生 先生
*意見交換会があります。
〈その他講演会のお知らせ〉
■平成 27 年度
第 3 回筑豊地域小児在宅医療研修会
●日
時:2015 年 9 月 17 日(木)(19:00~21:00)
●場
所:のがみプレジデントホテル
福岡市吉塚で小児在宅医療と日中のデイケア(レスパイト)を提供されている「小さな診
療所」の京極新治先生をお招きして、診療所レベルからみた小児在宅医療のお話をしてい
ただく予定です。
■平成 27 年度
飯塚病院小児虐待防止委員会(AI-CAP)主催特別講演会
●日
時:2015 年 9 月 18 日(金)(19:00~21:00)
●場
所:飯塚病院北棟 4 階
多目的ホール
「児童虐待予防のためのトリプル P」
トリプル P とは、Positive Parenting Program の略で、前向き子育てプログラムの略です。
親訓練プログラムのひとつで、オーストラリアのマットサンダース教授(臨床心理士)が
開発し、世界レベルで普及されている中、日本では 2006 年に導入されています。日本でも
第 1 人者である大河内美和氏(オーストラリア在住の臨床心理士)に虐待を視点に入れた
トリプル P のお話をしていただく予定です。
§小児科医会報告 (第 267 回、平成 27 年 7 月 9 日開催)
シンポジウム:「予防接種、発達障害支援、アレルギー対策が元気な子どもを育む地域を構築する」
大分大学 医学部 地域医療・小児担当 教授
是松 聖悟 先生
はじめに
平成 20 年 4 月、大分県は「おおいた地域医療支援システム構築事業」を立ち上げ、大分大学医学部が
1
運営を委託されました。医師への教育を介した地域医療の貢献を主目的に、小児科分野では同大学小児
科学講座に託され、是松聖悟先生(平成 3 年大分医科大学卒)が同年、地域医療・小児科分野の教授と
して就任されました。是松先生は地域の中核病院を定期巡回し、同病院に勤務する医師を指導、後方支
援しながら、地域住民のニーズや受療動向、地域中核病院小児科の診療体制、勤務環境整備を調査・分
析し、地域中核病院における専門医、学位取得のための卒業研修プログラムなどを開発されています。
地域医療に従事するメリットは、大学では経験できない感染症やアレルギー、発達障害などのコモン
ディジーズや予防接種などの予防医学を数多く経験できるだけでなく、地域の小児救急や時間外診療な
ど、その地域を任されているという責任感を培うことができると強調されました。今回の講演では、ア
レルギー対策、予防接種、発達障害の支援に関して地域でどのように取り組んでいるかを、大分県内の
各市町村の豊富なデータ等を含めて紹介して頂きました。その一部概要を紹介します。
○アレルギー対策
現在の日本で、子どもたちの 4 割弱がアレルギーを持つとされ、鼻アレルギーや喘息などアレルギー
マーチの根源は食物アレルギーとされている。食物アレルギーを制すればアレルギーを根治できるとい
っても過言ではない。食物アレルギーの問題点として、過剰な除去による栄養障害がある。微量元素欠
乏、特に亜鉛欠乏は DNA 合成に関与し、成長ホルモン欠乏や感染防御能低下に繋がる。鉄は母乳に移行
しにくいのに対し、亜鉛は高濃度に母乳に移行するため、母体の栄養状態も児の亜鉛欠乏に関与する。
さらに亜鉛は大脳の発育にも関与するため、WISC 等の発達検査で言語性 IQ と運動性 IQ の解離がみられ
るケースもある。
小学生以降になると食物アレルギーの頻度は、乳幼児期に比べ低くなり 1~2%程度になると言われて
いるが、地域の小学校で実施した調査では、医師の診断書があるのは 3 割程度しかなく、医師の診断書
を参考にする率の低い市町村では、食物除去を有する割合が高いことが判明した。食物の経口負荷試験
を実施し、食物毎に重症度を把握して個別的に対応することが肝要である。
誤食時の対応を学校側にアンケート調査したところ、大半の学校はアレルギー症状が出たとき、もし
くは誤食した時に、保護者に連絡すると回答した。しかしながら保護者が学校に来るのを待っているよ
うでは、アナフィラキシー時には間に合わない。医師の意見書の徹底、食物負荷試験での現状の把握、
学校でのアドレナリン自己注射(エピペン)の対策を今後さらに啓発していく必要がある。
○予防接種対策
小児の夜間救急の重症度は低く、多くは保護者の不安・心配による受診が大部分である。また感染症
で抗菌薬が必要な割合も 10%程度で、多くはウイルス性疾患である。また集団保育では 90%の乳児がヒ
ブ(インフルエンザ菌 b 型)と肺炎球菌を保菌しており、特に肺炎球菌の耐性化は 80%と言われている。
ヒブとプレベナーのワクチンの導入で、細菌性髄膜炎をはじめ重症の侵襲性感染症は激減してきている。
救急外来を受診する多くはウイルス性疾患であり、ウイルスに効果がある薬剤は、インフルエンザ、
水痘・帯状疱疹と単純ヘルペスの 3 疾患に限られているが、命にかかわる重篤なウイルス性疾患をワク
チンで予防できる疾患は 10 種類以上あり、ワクチンの有用性は明らかである。また、小児にワクチンを
打つことで高齢者を予防できる。(集団免疫効果)
是松先生は、県内の各市町村でワクチンキャンペーンの講演会を行う際、各自治体の市町村長と一緒
に講演し、ワクチンの無料化、医療費の無料化の実施を訴えてきた。その結果、子どもたちのために一
所懸命に行う市町村は子どもが増え、人口も増えてきたことから、ワクチンや小児医療施策が費用対効
果に大きく影響を及ぼしていることを強調された。
2
○発達障害対策
発達障害の子どもたちは全体で 5~6%の頻度で存在すると言われている。できる所とできない所の凸
凹が特徴とされているが、果たしてすべての人間にバランスのとれた能力が本当に必要であろうか。で
きない所だけをみて発達障害としているのでは、子どもたちの伸びる芽をつまんでしまう。できる所に
もっと着目してあげて、その子の個性をのばしていく必要がある。
薬物療法もあるが、本当にその子のためになるのか、薬を飲んで少し落ち着いたけど、発想が乏しく
なったという訴えもあり、その子の特性に合わせて検討する必要があろう。市町村で 5 歳児健診を積極
的に行い、発達障害児を地域で支援していく必要がある。医師が学校や施設訪問をすると教育委員会か
ら信頼を得られる。5 歳児健診で、発達障害が疑われる子どものよい所を見つけてあげることが健診の
目的であり、地元で支援していくことで町全体が子育てをしやすい環境になる。
おわりに
子どもを産み育てやすい地域作りのためには、病気になった時、時間外でもいつでも対応できる小児
救急医療体制の整備も重要だが、病気にかからないように家族や社会全体で予防を心がけることも大切。
是松先生の活動によって、予防接種率の高い市町村、任意予防接種の助成が行われている市町村では感
染症が減り、健診事業にも力を注ぐ自治体も増えてきたそうです。地域における小児医療、小児保健を
重点化させ、小児科医が憔悴するのではなく、達成感を持って地域医療に従事できる環境を整えること
は、地域社会にとっても、子どもとその家族にとっても有益な活動であると力強く語られました。食物
アレルギーと予防接種、発達障害の 3 点を地域の小児医療実践のよい指標として、各市町村の詳細なデ
ータを集め、中には論文化して高い評価を得た実績も示されました。まさに地域小児医療の真髄を語ら
れた素晴らしい講演でした。
§地域連携ささえあい小児診療
地域連携ささえあい小児診療スケジュール
■2015 年 8 月・9 月
8月
9月
9月1日 火
宮田病院
こどもクリニックもりた 森田 潤
9月2日 水
飯塚市立病院
8 月 11 日 火
荒木小児科医院
9月3日 木
津川診療所
8 月 12 日 水
飯塚市立病院
9月8日 火
飯塚病院 小児科
8 月 13 日 木
飯塚病院 小児科
9月9日 水
川崎町立病院
8 月 18 日 火
ささきこどもクリニック
佐々木宏和
9 月 10 日 木
くわの内科小児科医院
8 月 19 日 水
飯塚市立病院
9 月 15 日 火
あざかみこどもクリニック
阿座上才紀
8 月 20 日 木
やまのファミリークリニック
山野秀文
9 月 17 日 木
飯塚病院 小児科
岩元二郎
8 月 25 日 火
細川小児科内科医院
9 月 24 日 木
飯塚病院 小児科
岩元二郎
8 月 26 日 水
川崎町立病院
9 月 29 日 火
栗原小児科内科クリニック
栗原 潔
8 月 27 日 木
飯塚病院 小児科
9 月 30 日 水
飯塚市立病院
8月5日 水
川崎町立病院
8月6日 木
中村由季
荒木久昭
穐吉秀隆
岩元二郎
牟田広実
細川 清
中村由季
岩元二郎
甲斐丈士
牟田広実
津川 信
岩元二郎
中村由季
桑野瑞恵
穐吉秀隆
2015 年 8 月 10 日現在
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§飯塚病院月間診療のまとめ
●入院患者数
150人
《2015年6月》
●外来患者数
●新生児センター入院患者数
24人
1,751人
●分娩件数
●救命救急センター受診者数
914人
50件
●主要疾患数(退院患者数;124 人)
痙攣及びてんかん
新生児呼吸障害・心血管障害
高ビリルビン血症及び黄疸
その他
24
5
3
52
肺炎・気管支炎
急性上気道感染症
急性胃腸炎
●紹介件数 100件
17
4
2
低出生体重児
喘息
新生児感染症
(件)
① 飯塚医師会検診検査センター 7
② 飯塚市保健センター
ささきこどもクリニック
④ 有松病院
弥永内科小児科医院
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飯塚病院 〒820-8505 飯塚市芳雄町 3-83 TEL0948-22-3800(代) http://aih-net.com/
Vol.104 発行日/2015 年8月 10 日 発行/飯塚病院 小児科
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