平成27年度 湖南市教育方針 - 湖南市学校教育ネットワーク

平成28年度
湖南市教育方針
【はじめに】
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子どもの育っている環境
先の大戦から70年以上がたち、高度経済成長をへてICT化とグローバル化が進む
中で、国内経済の安定と充実が図られている今日、子どもたちは豊かで便利な社会環境
の中で生活をしています。
しかしながら、この社会環境は、無言化・二極化・個別化・少子高齢化・情報化・核
家族化などと名付けられ、また格差社会が懸念され、より一層子どもの貧困問題が浮上
するなど、子どもたちは「豊かにはなったが、子どもの成長にとっては決して恵まれた
環境ではない社会」の中で生活していると言わざるを得ません。
2
28年度の基本方針
このような環境の中で明日を担う子どもを育てるため、「楽しくて力のつく湖南市教
育」を標榜し、「子どもの夢と志を育て、『生きる力の根っこ』を太くする」をスロー
ガンに掲げます。
「生きる力の根っこ」とは自尊感情であり、自分への信頼とともに、他をも信頼する
人間関係を構築する人間が将来の湖南市を支えます。そのため、「自尊感情・学びの礎
育成プロジェクト事業」の取組を基盤とした「学力向上プロジェクトによる学力保障」、
「こころの教育の推進による仲間づくり」、「地域との協働によるふるさと意識の醸成」
を取組の三本柱として、子どもたちをきめ細かに守り育む教育を推進します。
現在の教育において育てるべき力としている「生きる力」は、これからの変化の激し
い時代にあっても、思いやりのある豊かな心を持ちながら、自ら考え自ら行動し、たく
ましく未来を切り拓くことができる力に他なりません。
具体的には、目の前にある課題から逃げることなく、周りの仲間と相談しながら、力
を合わせ困難を切り拓いていける「何とかしようとする態度」と「何とかできる力」を
育てることが必要です。「何とかしようとする態度」と「何とかできる力」を育てるた
めのキーワードが、「学力保障・仲間づくり・ふるさと意識」です。
そのためには、学校・家庭・地域が力を合わせて子育てにあたることが大切です。湖
南市においては、学校教育だけで子どもを育てるのではなく、学校支援地域本部やコミ
ュニティ・スクールとの協働を子ども育ての基本とします。
このことは、「学校を核としたまちづくり(=スクール・コミュニティ)」につなが
り、まちづくり協議会との連携・協働が必須となります。
まちづくり協議会や市長部局との連携も図りながら、厳しい家庭環境に置かれた子ど
もたちを支える「家庭教育支援」も重視して取り組みます。
また、「市教委は指針(ベクトル)を示す。実践は各学校が工夫する」を合い言葉とし、各
学校の自由な発想を生かした取組ができるようにします。
さらに、教育委員会の各部署が縦割りで事業を行うのではなく、各部署の連携にとど
まらず、市長部局との連携も重視し、各事業が充実する取組の仕方を工夫します。
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【重点項目】
1
学校教育の推進
~小中連携から、小中一貫へ~
(1)「確かな学力」を身につけるための取組
・「学力とは何か」という問題については、様々な立場から多様な議論が展開されてき
ました。その結果、学校教育法の改正によって第 30 条2項が加えられ、学力の重要な
三つの要素が示されました。すなわち、
①
基礎的な知識及び技能
②
課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力
③
主体的に学習に取り組む態度
が「学力の3要素」です。
・各学校での基礎基本を鍛える共通実践により「鍛える学校文化」の醸成に努め、「①」
を追求します。また、「どの子にも、一人ひとりに」基礎的学力を習得させようとす
..
る教員の気概を示すため「学力保障」の用語を使用し、学力の向上を目指します。
・「学力向上委員会」の取組を充実させ、「学力向上ワーキンググループ」の活動を活
発にするなど、授業改善に対する教職員の意識向上に努め、「②・③」を追求します。
・学力保障の取組は、中学校区ごとの連携を重視し、義務教育修了段階の子ども像を共
有することにより、小中一貫教育へとつなぎます。
・子どもの学力は、多くの点で「語彙の量」と「言語の質」に負うところがあります。
そのため、湖南市版音読集「ことばの宝石箱」の活用、「小さな詩人たち事業」、「D
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1だじゃれグランプリ」の諸事業に、継続して取り組みます。
・司書教諭・学校司書・学校図書館ボランティアの連携と活用を強化し、学校図書館を
活用した授業を創造していくとともに、学校での継続的な「朝の読書」、家庭での読
うちど く
書(=家読)、親子読書等の取組により、読書習慣の向上に努めます。
・全国学力・学習状況調査の結果から、湖南市の子どもたちは「学校以外での学習時間
が少ない」ことが示されました。家庭学習の重要性について啓発し、習慣化を図る取
組をPTAや家庭とともに進めます。
(2)こころの教育と体験的活動の充実
・子どもたちの情操を豊かにするため、教材の意味や内容を分析・そしゃくして系統的
に教えること(=「理の教育」)と、言葉ではうまく表せないが「いいなぁ。」と心
揺さぶられあこがれを持つ体験(=「情の教育)をバランスよく取り扱います。
・文部科学省指定の「道徳教育の抜本的改善・充実に係る支援事業」に引き続き取り組
み、その成果を市内各校に広げます。
・地域で功績を残した先人たちの歩みをまとめた『伝えたい故郷の話
~心の教育・郷
土資料集~』を活用し、先人たちの努力や労苦を学ぶことにより、ふるさとへの誇り
や郷土意識及びより良い社会づくりに参画しようとする志を育て、豊かな人間性と地
域を愛する心を育みます。
・子どもたちに心豊かな人間性を育むため、「異年齢遊び」「いろいろな人とのふれあ
い」「働くことの喜び(農業体験など)」を重視した、多様な体験活動を推進します。
(3)いじめ等児童生徒指導上の課題への対応
・「湖南市いじめ問題対策連絡協議会等条例」及び「湖南市いじめ防止対策基本方針」
に基づき、いじめの未然防止・早期発見・早期対応に取り組みます。
・子どもたち自身がいじめについて考える取組「湖南市いじめをなくそうサミット」を
さらに充実させ、子どもたち自身がいじめをなくすための行動を起こせるよう促しま
す。
・スマートフォンなどの携帯端末を持つ子どもが増えたことにより、その取り扱いによ
っては子どもへの危険性が高まるだけでなく、いじめも見えにくくなってきています。
情報機器の正しい使い方を実践できる取組を保護者への啓発と併せて実施し、PT
A・学校・子どもとの連携を通じて、「使用のルール」づくりを進めます。
(4)特別支援教育の推進
・共に学ぶことに配慮しつつ、発達に支援の必要な子どもが力を十分に発揮できるよう、
必要な教育的支援を行おうとするインクルーシブ教育の推進等を通じて、本市の特別
支援教育をさらに充実・発展させるとともに、その成果を広め、教職員の資質向上を
図ります。
・特別支援学級担任と湖南市ことばの教室担当職員との合同研修会を実施することによ
り、特別支援学級担任の資質向上及び関係機関との連携を強化します。
・「湖南市発達支援システム」に基づき、専門家チームにおける検討を反映させた個別
支援や巡回相談を、引き続き充実させます。
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(5)各種教育(キャリア教育・主権者教育・ICT教育等)への取組
・キャリア教育は、人間としての「在り方・生き方教育」であり、中学校での職場体験
にとどまることなく、地域の人々の協力や地元企業との連携も図りつつ、起業も職業
の選択肢として、自ら課題を見つけ、学び、行動する起業家精神を育む小中学生起業
教育、道徳教育・こころの教育とも関連して取り組みます。
・公職選挙法の改正により、選挙権が 18 歳に引き下げられました。高校生になってから
の主権者教育ではなく、
民主国家を築き支える国民としての自覚を育む主権者教育に、
小学校から取り組みます。
・ICT教育については、子どもたちの情報リテラシー(情報活用能力)・メディアリ
テラシー(情報媒体活用能力)を高めつつ、そのメリットとデメリットを吟味し、教
員の指導力アップと関連させて導入の仕方を検討します。
・カルト、薬物、暴力団等、反社会的活動への誘惑に負けない判断力を育てる教育に取
り組みます。
(6)子どもの体力向上への取組
・子どもの体力が全国的に低下していることが明らかになり、本市でも全国平均に達し
ない種目があります。体育の授業においては、スポーツテストの結果などから各校の
課題を分析し、体力向上のための取組が年間を通して実践されるよう工夫します。
・体育の授業だけでなく、始業前・中休み・昼休み・放課後・下校後等、教科外の時間
において継続して運動遊びを行うことにより、子どもたちに運動遊びの習慣を身につ
けさせ、体力の向上を図ります。
(7)外国籍児童・生徒への日本語指導の充実
・湖南市日本語初期指導教室「さくら教室」の利用促進を目指して、「さくら教室」の
開校時刻変更などの検討を行います。
・湖南市国際協会の事業である「南米語学学習教室」との連携を図ります。
(8)特色ある学校づくり
・湖南市独自の予算である「きらめき学校づくり予算」の使途を、「学力向上プロジェ
クトによる学力保障」・「こころの教育の推進による仲間づくり」・「地域との協働
によるふるさと意識の醸成」の三本柱の取組に絞り込み、各学校が工夫して特色ある
学校づくりに努めます。
2
人権教育の推進
~中学校区での連携を重視して~
(1)人権尊重意識の醸成
・すべての人の人権が尊重され、誰もが安心して暮らせる社会を実現するために、同和
問題をはじめ様々な人権課題を自分自身の課題として考えられるよう、積極的な啓発
活動を進めます。
・人権講座、青年集会、人権教育研究大会等を通して、市民や地域をはじめとして、企
業や事業所・各種団体への啓発推進に努めます。
・「出合い・気づき・発見講座」において、様々な観点からの人権課題を取り上げ、人
権尊重の精神を高め、人権啓発に努めます。
(2)連携を重視した、子どもの「育ち」への支援
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・「湖南市学校・園人権教育基底プラン」に基づいた取組を充実・発展させるとともに、
「湖南市人権ネット推進事業」・「自尊感情・学びの礎育成プロジェクト事業」の推
進を通して、中学校区ごとの学校・園・家庭・地域・関係機関の連携を重視しながら、
資料や教材についても開発・研究を進めます。
・学力保障の観点から、学力向上を目指す「授業の湖南市スタイル」や「表現する力・
理解する力を高めるポイント5」を人権・同和教育授業研究会の指導案にも活用し、
①自分の考えを持ち、主体的に学習に取り組む姿勢
3
②学び合う活動を通した、相手
を大切にする態度
③ともに高め合う集団づくり
などについての研究を深めます。
学校と地域の連携
~コミュニティ・スクールから、スクール・コミュニティへ~
(1)地域と共に歩む学校づくりの推進
・「全ての学校がコミュニティ・スクールへ」を合い言葉に、学校支援地域本部を残し
たまま地域運営学校に移行し、地域と共に歩む学校づくりを更に推進します。
・文部科学省の「コミュニティ・スクール推進事業」等を活用しながら、コミュニティ・
スクールの指定を進めます。
・コミュニティ・スクールが、地域と学校が連携して子どもを育てる仕組みであること
から、まちづくり協議会との協働に努め、「スクール・コミュニティ=学校を核とし
たまちづくり」を進めます。
・平和な日常が今後も継続することを願い、戦後70年の節目である昨年度から始まっ
た、「湖南市平和の鐘」の取組が継続するように働きかけを行います。
(2)地元企業との連携の推進
・これまで、地元企業から学校に対して、数多くの支援をいただいています。このよう
な企業等の社会貢献活動に応え、そのさらなる促進と学校教育環境の充実の好循環を
図るため、「学校教育きらめきサポーター制度」の取組を継続して推進します。
・地元企業等の支援により「湖南市きらめき子ども夢・志育て基金(仮称)」を設立し、
子どもたちの夢や志を育てる取組を進めます。
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家庭教育支援の充実
(1)家庭教育支援システム(仮称)の構築
・子どもの将来が生まれ育った環境によって左右されることがないよう、国よりも先取
的な「湖南市発達支援システム」を参考に、教育委員会部局・市長部局・関係機関が
有機的に関連しあう、「湖南市家庭教育支援システム(仮称)」の構築を検討します。
・スクールソーシャルワーカー、社会福祉士と学校との幅広い連携を重視し、発生した
事案に速やかに対応するとともに、関係機関との連携をより密にし、家庭の個別事情
に応じたきめ細かな支援を行います。
・不登校の児童生徒については、学校及びふれあい教育相談室と関係機関との連携を深
めるとともに、特別支援教育の観点からも積極的なアプローチを行います。
(2)就学前教育の充実
・保育園・幼稚園・認定こども園と小学校との接続をスムーズに行うため、今まで以上
に関係部局との連絡調整を進めます。
・就学前教育を、様々な学びの芽を育む「芽生えの教育」と捉え、小学校以降の生活や
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学習の基盤の育成につながるように努めます。
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生涯学習の推進
(1)社会教育における学習事業の充実
・生涯を通して学び合い、自己を高め合うため、まちづくりセンター等での講座の開設
や、市民が企画・運営する講座委託事業の充実を図り、市民全体の生涯学習活動を推
進します。
(2)青少年の健全育成と家庭教育の推進
・青少年自然道場でのリーダー育成、青少年育成大会や成人式での実行委員、各地域で
開かれるふれあい祭り(フェスタ・フェア)等での活動など、青少年が地域や行政と
の関わりを深めながら、リーダーとしての資質を高められるような機会や場づくりを
推進します。また、友好交流都市との子ども交流事業等を通して、青少年リーダーの
育成に努めます。
・生活指導上の課題を持つ少年や無職少年の対策・居場所づくりのため、湖南市少年セ
ンター及び青少年立ち直り支援センター「あすくる湖南」の活動の充実を図ります。
・社会教育委員会議や各校PTA及びPTA連絡協議会での論議を進め、多様な主体の
参画による家庭教育の充実を図り、家庭の教育力(=親力)の向上を推進します。
(3)生涯スポーツの推進
・「湖南市スポーツ推進計画」に基づき、「湖南市ちょいスポクラブ」の運営支援やス
ポーツ推進委員などの人的・物的資源を生かしながら、いつでも・だれでも・どこで
も・いつまでも、スポーツに親しめる環境づくりに努めます。
・障がいがあっても、その程度に応じた方法で自己実現を果たせるよう、関係者の支援
を得ながら、多様な活動の機会の確保・充実を図ります。
(4)歴史・文化の継承・保存と活用
・湖南三山・旧東海道・中世城郭・ウツクシマツ等、多くの貴重な歴史文化遺産の保存
や活用に加えて、地域にある様々な文化を掘り起こし、図書館や歴史民俗資料館での
展示等を通して、歴史・文化の継承と周知を図ります。
(5)市民との協働による芸術・文化の振興
・文化協会や市民との協働による文化祭や美術展・早春コンサート等の実施とともに、
まちづくりセンターでのふれあい祭り(フェスタ・フェア)や文化活動の支援を通し
て、文化芸術活動の振興を図ります。
(6)図書館と子どもの読書活動の充実
・図書館を、「地域を支える情報拠点」と位置づけ、市民の豊かな読書生活と知る自由
を保障する機関として、資料と情報の充実と提供に努めます。
・「湖南市『読書の魅力』種まきプラン」に基づく第2次5カ年計画により、子どもの
読書活動を総合的かつ計画的に推進し、子どもの健やかな成長に努めます。
・学校教育と関係部局との連携を強化し、様々な機会を活用し、幼児期から本と親しむ
機会づくりや図書館司書による学校でのブックトーク等の拡充に努めます。
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教職員の業務改善と資質向上
・各学校において業務の見直しと具体的な業務改善を進め、教員が子どもと向き合う時
間の確保を図ります。
・学力向上ワーキンググループを中核として、「授業の湖南市スタイル」の研究に努め、
その成果を市内各校に広めます。
また、校内研究や教科部会の授業研究会も、学力向上ワーキンググループと連動する
よう、日程調整等の工夫を行い、業務改善と授業改善の双方に資するよう工夫します。
・東京学芸大学と連携した「アドバンス研修」、市内に勤務する教職員を講師にした「教
師力アップセミナー」、教員が学校や校種の枠を超えて気軽に指導方法について相談
できる「きょういく
げんき塾」を継続し、資質向上の機会を確保します。
・全校あげての教育実践の取組成果を左右するのは、学校のチーム力です。そのため、
各学校において「チーム学校力」を高める取組を工夫します。
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安全・安心な教育環境づくり
・通学路の安全対策については、地域の方々の要望等をしっかり踏まえ、「湖南市通学
路安全推進会議」を中心に関係機関や関係部署が綿密に連携を図り、通学路の安全確
保に努めます。
・新しい学校給食センターにおいて、アレルギー対応調理室を設置し、卵の完全除去食
が可能となったことから、他のアレルゲンへの対応調理の方途を探るとともに、食の
安全確保に努めます。
・子どもたちの学習環境を整えるため、学校施設の耐震改築や空調設備整備への取組を
進めます。
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教育委員会機能の強化・充実
・総合教育会議での議論を経て市長が作成した「湖南市教育大綱」に沿って、市長と教
育委員会とが教育政策の方向性を共有し、一致した教育施策の執行と迅速な課題対応
ができるように努めます。
・市民や教育現場の声を教育施策に反映していくことは大変重要なことから、教育委員
が各学校運営協議会に出かける教育懇談会や、学校教職員との意見交換を積極的に進
めます。
・また、社会教育委員・主任児童委員・民生委員児童委員等との懇談会の開催を図りま
す。
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