11.酸と塩基

11.酸と塩基
身の回りの酸と塩基
酸性のもの
ヨーグルト(乳酸)
レモン,梅干し(クエン酸)
酢(酢酸)
炭酸水(炭酸)
特徴: 酸っぱい,金属を溶かす
塩基性(アルカリ性)のもの
石鹸
マジックリン(エタノールアミン)
カビキラー(次亜塩素酸ナトリウム)
特徴: 苦い,たんぱく質を溶かす
旨味,苦味,甘味,酸味,塩味
味細胞の表面
受容体
(レセプター) イオンチャンネル
アルカリ性(alkali, ‫ القالي‬草木灰)
アルカリ金属やアルカリ土類金属の
水酸化物の水溶液が示す性質.
酸と塩基の定義
ラボアジェの定義(1777年)
古くから知られていた酸
H2SO4(硫酸)
HNO3(硝酸)
H3PO4(リン酸)など
酸とは酸素を含むもの
oxygen(酸素)= 酸を生じるもの
当時は,まだHCl(塩酸)が
知られていなかった!
1810年 Davyによる
海酸(現在の塩酸)の発見
Davyは,酸に共通な元素は酸素
ではなく水素であることを示唆した.
アレニウスの定義(1887年)
酸とは,水中で解離して水素イオン(H+)を生じるもの.
HCl(aq)  H+(aq) + Cl ‒(aq)
塩基とは,水中で解離して水酸化物イオン(OH ‒ )を生じるもの.
NaOH(aq)  Na+(aq) + OH ‒(aq)
ブレンステッドの定義(1923年)
酸とは,水素イオン(H+)を相手に与える物質
塩基とは,水素イオン(H+)を相手から受け取る物質
共役 = 共軛
軛:牛車の横木
(対になるもの)
共役
共役酸と共役塩基
共役
ルイスの定義(1933年)
酸とは,電子対の受容体
塩基とは,電子対の供与体
Ag+ + 2 NH3  [ Ag (NH3)2 ]+
pH(ピーエイチ,ペーハー)
水溶液の酸性・塩基性の強さは,
水素イオンの濃度 [ H+ ] で表す.
1×10−14
常用対数をとって,−1をかけると
0 ∼ 14の変化になる.( pH値 )
その値は,1 ∼
mol/l という
広範囲に渡って変化するので,扱い難い.
pH = 5 の希塩酸
10倍に希釈
[ H+ ] = 10−5 が10−6 に
変化するからpH = 6
更に10倍希釈
pH = 7
更に10倍希釈
pH = 8
希塩酸がアルカリ性???
pH = −log [H+]
pH が小さいほど酸性度が高い
水のイオン積
Kw = [H+][OH−]
= 1.008×10−14 (mol/l)2 (25℃)
偶然にも,このようなシンプルな式に
なったので,pH表示法が考案された.
水は,わずかに電離しており
水素イオンが10−7存在している.
10−8+10−7 = 10−6.96
pH = 6.96
温度が変わるとKwも変わる.
10℃では,0.292×10−14なので
10℃では,中性のpH = 7.27
水のイオン積
重水のイオン積
D = 2H
重水素
Kw = [H+][OH−]
Kw = [D+][OD−]
= 1.008×10−14 (mol/l)2 (25℃)
= 0.195×10−14 (mol/l)2 (25℃)
軽水の方が重水よりも,電離度が高い
水素イオン濃度が高い
電気分解をする
とどうなるか?
水の電気分解による重水の濃縮
濃縮過程
水の比重
重水の割合(%)
濃縮された水の量
1
0.998
ー
2310 L
2
0.999
0.5
340 L
3
1.001
2.5
52 L
4
1.007
8
10.15 L
5
1.031
30
2 L
6
1.098
93
420 mL
7
1.104
99
82 mL
pH指示薬
水素イオンの濃度により構造が変化して
違う色になることを利用している.
リトマス試験紙
Lichenという地衣類(苔)
から得られた紫色の色素
O
O
N
N
+
HO
O
O
H
O
青色
赤色
変色域 pH=5∼9
フェノールフタレイン
pH > 12
無色
赤紫色
変色域 pH=8∼10
無色
緩衝溶液
純水に少量の酸や塩基を加えるとpHは大きく変化する.
しかしながら,弱酸とその塩の混合水溶液に酸や塩基を加えても,
pHはほぼ一定.このような溶液を「緩衝溶液」という.
酸性や塩基性の薬品を純水にかして点滴すると,
血液のpHが激変するので危険なので.緩衝溶液に溶かす.
KH2PO4 を含むリン酸緩衝生理食塩水がよく使われる.
CH3COONa  CH3COO− + Na+
CH3COOH
CH3COO− + H+
酸を加える
酢酸イオンと反応して酢酸になるため
溶液中の水素イオンはそれほど増加しない.
酢酸イオンを加えていることで,
平衡が左に大きく片寄っている
塩基を加える
中和してH+が減少するが,
酢酸が電離して,H+が補充され,
それほど変化がない.
外部からのpHを変化させようとする作用を緩和
酸と塩の濃度比が1:1のとき最大の緩衝作用を示す.
酸性食品とアルカリ性食品
梅干しを燃やすと,KOHなどが生成
肉を燃やすと,H3PO4が生成
血液の酸性度は,pH=7.4 になるように常に調整されており,
食品により大きく変動することはない.
血液は,緩衝溶液になっている.
重炭酸イオン
(腎臓の尿細管で作られている)