悪性症候群 治療マニュアル - 株式会社オーファンパシフィック

悪性症候群 治療マニュアル
監修:広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 精神神経医科学 教授 山 脇成人
悪性症候群の症状
■ 発熱
■精神症状
37.1∼ 38.0℃の発熱 12.4%
39.0℃以上の高熱 62.3%( 厚生省研究班報告 )
60%に何らかの意識障害がみられる
( 厚生省研究班報告 )
混迷・興奮などを呈することもある
■錐体外路症状
筋強剛、無動・緘黙、振戦など
■ 自律 神 経 症 状
発汗、唾液分泌過多、尿閉、頻脈、血圧変動など
骨格筋壊死による横紋筋融解症がみられることがある
■その 他の 症 状
嚥下困難、脳波の徐波化がみられることがある
病状が進展すると、呼 吸不全、腎不全、心不全などを呈する場合がある
( CPK )
上昇、
ミオグロビン上昇
[血液]白血球数増加、CK
AST
( GOT )
上昇、ALT( GPT )
上昇、LDH上昇
呼 吸性アルカローシス
■ 臨 床 検 査 値の 異 常
[髄液]髄液一般所見の80%は正常
ドパミン、
セロトニン代謝産物異常を示した報告がある
[ 尿 ]ノルアドレナリンおよびその代謝産物異常を示した報告がある
ミオグロビン尿
悪性症候群の治療法
■ 臨床検査値のモニター
● CK
(CPK)
、AST
(GOT)
、ALT
(GPT)
、LDH、血清クレアチニン、血清カリウム、BUN、血球検査
● 水分摂取量、
尿量、尿検査
● 胸部X線検査
■ 対症療法
● 全身冷却
● 適切な輸液による体液電解質のバランスの是正
● 気道確保および酸素吸入
● 合併症予防のための注意深い身体的管理
■ 薬物療法
[ダントリウム ]
(1)経口摂取が困難な患者に対する用法・用量
通常、成人にはダントロレンナトリウム水和物として初回量40mg*を静脈内投与し、症状の
改善が認められない場合には、20mgずつ追加投与する。年齢、症状により適宜増減する
が、1日総投与量は200mgまでとする。通常 7日以内の投与とする。
症状改善に伴い、経口摂取可能となればダントリウムカプセル剤の経口投与に切り替える。
*投与速度については症状によりバラツキがあるが、40mgを30分位で投与する。
その後のダントリウム経口剤の投与
1回25mgまたは50mgを1日3回、2∼3週間投与し、
その
間に精神症状に対する抗精神薬治療を慎重に開始し、
悪 性 症 候 群の症 状 再 燃がないことを確 認して治 療を
終了することが望ましいと考えられる。
(2)経口摂取が可能な患者
(軽症例)
の用法・用量
1 回 2 5 m gまたは5 0 m gを1日3 回 経口投 与 する。なお、
年齢・症状により適宜増減する。
症状改善後は精神症状に対する抗精神薬治療を慎重
に開始し、悪性症候群の症状再燃がないことを確認して
治療を終了することが望ましいと考えられる。
ダントリウムの 長 期 投 与によって肝 機 能 障 害が
生じることがあり、このような場 合は臨 床 症 状を
考慮しながら減量・中止する。
【溶液調製法】
通常、1バイアルに日局注射用水60mL
を加え、振り混ぜ、溶液が澄明になった
ことを確認の後、
使用する。混注を避け、
単独投与すること。
生食
混注
[その他の薬剤]
ブロモクリプチンメシル酸塩
経口投与で、あるいは錠剤を粉砕し、鼻腔栄養などの適当な溶液に混 ぜ、鼻腔から注入する。
7. 5mg/日から開始する。
( 2015年9月現在、
ブロモクリプチンメシル酸塩は悪性症候群の保険適応を取得していない)
効果が期待されるその他の薬剤
塩酸アマンタジン、ベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム等 )
、抗コリン薬などが報告されている。
■ 電気けいれん療法
電気けいれん療法
(ECT )
の有効性はまだ十分に検討されていないが、他の治療によっても改善
しない場合や、興奮などの精神症状が激しい場合は考慮に入れてもよい。
■ ICU のある総合病院への紹介
悪性症候群の死因は腎不全、循環不全、呼吸不全などである。
重症の悪性症候群患者、あるいは適切な治療を行っても改善しない患者は、近くの総合病院 、
可能であれば I CUのある病院に紹介し、
十分な全身管理のもとで治療を行うことが望ましい。
再発防止
脱 水 、低 栄 養 状 態 、身体 疲 労などは再 発 要 因となるため、
これらを改 善 することが
再 発リスクを低 下させることになる。
■ 原因と思われる薬物投与の中止
薬物投与中に原因不明の発熱が生じた場合は、事情が許す限り、薬物の投与を中止し、発熱の
原因が明らかになるまでは投与再開を見合わせるほうが無難である。
ただし、抗パーキンソン病薬を併用している場合は、
その中断による病状悪化を防ぐために、併用
している抗パーキンソン病薬の投与は継続したまま抗精神病薬のみ中止するほうがよい。
■ 患者の全身状態の改善
全身状態が改善されるまでの精神状態の管理は、
ジアゼパムなどのベンゾジアゼピン系薬剤で
できるだけコントロールするほうが安全である。激しい精神症状に対してはECTを考慮する。
■ 投与薬物の選択
発症前と同種の抗精神病薬を使用すると再発する可能性が高い。
基本的には発症前に使用していた 抗精神病薬よりは 抗ドーパミン力価の小さい 薬物あるいは抗
セロトニン作用を併せ持つ非定型抗精神病薬などを少量から開始し、経過をみながら増加する
ことが望ましい。
悪性高熱症治療剤・悪性症候群治療剤
薬価基準収載
(注射用ダントロレンナトリウム水和物)
処方箋医薬品
(注意−医師等の処方箋により使用すること)
【効能・効果】
・麻酔時における悪性高熱症
・悪性症候群
【用法・用量】
・麻酔時における悪性高熱症
通常、
ダントロレンナトリウム水和物として、
初回量1mg/kgを静脈内投与し、
症状の改善
が認められない場合には、
1mg/kgずつ静脈内に追加投与する。
なお、
症状により適宜増減できるが、
投与総量は7mg/kgまでとする。
・悪性症候群
通常、
成人にはダントロレンナトリウム水和物として、
初回量40mgを静脈内投与し、
症状
の改善が認められない場合には、
20mgずつ追加投与する。年齢、
症状により適宜増減
するが、
1日総投与量は200mgまでとする。通常7日以内の投与とする。
<溶液調製法>
通常、
1バイアルに日局注射用水60mLを加え、
振り混ぜ、
溶液が澄明になったことを確認
の後、
使用する。
【使用上の注意】
(抜粋)
1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(1)肺機能障害特に閉塞性肺疾患、
及び心筋疾患による重篤な心機能障害の患者[本剤
の筋弛緩作用により、
症状が悪化するおそれがある。]
(2)
筋無力症状のある患者[本剤の筋弛緩作用により、
症状が悪化するおそれがある。]
(3)
肝疾患のある患者[本剤投与により肝障害を増悪させることがある。]
(4)
高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
(5)
イレウスのある患者[本剤の筋弛緩作用により、
症状が悪化するおそれがある。]
2.重要な基本的注意
(1)悪性症候群患者への投与にあたっては静脈内投与後、
継続投与が必要でかつ経口
投与が可能な場合には、
ダントロレンナトリウム水和物カプセル剤を投与すること。
(2)悪性症候群患者への投与にあたっては過量にならないように注意すること。
(2日目
40mg投与で過量のために呼吸不全を生じたとの報告がある。)
(3)副作用として呼吸不全を生じたとの報告があるので、
呼吸不全が疑われた場合には
臨床症状及び血液ガス等のデータを参考に、
呼吸管理を実施しながら本剤を投与
すること。
(4)
投与開始後は肝機能検査(AST(GOT)、
ALT(GPT)、
アルカリフォスファターゼ、
総
ビリルビン等)
を定期的に行うこと。
なお、
救命を最優先とすることから、
異常がみられた場合には治療上の有益性が危険
性を上回ると判断される場合にのみ慎重に投与すること。
3.相互作用
併用注意(併用に注意すること) カルシウム拮抗剤(ベラパミル等)、
向精神薬
4.副作用
・悪性高熱症
承認時及び市販後の使用成績調査、
計296例中、
副作用発現症例(臨床検査値異常を
含む)
は35例(11.8%)、
46件であった。 (再審査結果通知:1992年12月)
・悪性症候群
計1,100例(経口剤併用例を含む)
中、
副作用発現
承認時及び市販後の使用成績調査、
症例(臨床検査値異常を含む)
は207例(18.8%)、
340件であった。
(再審査結果通知:2008年2月)
以下の副作用は、
上記の試験・調査あるいは自発報告等で認められたものである。
(1)重大な副作用
1)呼吸不全(0.1∼5%未満)
:呼吸不全があらわれることがあるので、
呼吸不全が疑われ
た場合には臨床症状及び血液ガス等のデータを参考に、
呼吸管理を実施しながら
本剤を投与すること。
2)
ショック、
アナフィラキシー様症状(0.1∼5%未満)
:ショック、
アナフィラキシー様症状(顔
面蒼白、
血圧低下、
呼吸困難等)
があらわれることがあるので、
観察を十分に行い、
異
常が認められた場合には投与を中止し、
適切な処置を行うこと。
3)
イレウス
(0.1∼5%未満)
:イレウスがあらわれることがあるので、
このような場合には投与
を中止し、
適切な処置を行うこと。
(2)
その他の副作用
5%以上
過敏症
肝臓
0.1∼5%未満
0.1%未満
頻度不明
発疹等
肝機能障害(AST
(GOT)
上昇、
ALT(GPT)
上昇、
LDH上昇等)
血液
血小板減少
精神神経系
強直性痙攣、
眠気、
頭痛
消化器
食欲不振、
悪心、
嘔吐、
消化管出血
循環器
静脈炎
血圧低下
発熱、
脱力感
悪寒
呼吸器
その他
胸水貯留
5.高齢者への投与
高齢者では、
患者の状態を観察しながら、
慎重に投与すること。
[一般に高齢者では、
生理機能が低下している。]
6.妊婦、産婦、授乳婦等への投与
(1)妊婦等:妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を
上回ると判断される場合にのみ投与すること。
[妊娠中の投与に関する安全性は確
立していない。]
(2)
授乳婦:授乳中の婦人への投与は避けることが望ましいが、
やむを得ず投与する場合
は授乳を避けさせること。
[母乳中へ移行することが報告されている。]
7.適用上の注意
(1)調製時:本剤の溶解に際しては、
日局注射用水以外を使用しないこと。
また、
本剤使用
に際しては、
混注を避け、
単独投与すること。
(2)
投与時:本剤は、
溶解時pHが高く
(約9.5)
、
血管外に漏出した場合に壊死、
腫張、
発赤
等を起こすおそれがあるので、
静脈内投与に際しては、
溶液が血管外の組織へ漏れ
ないよう厳重に注意すること。
(3)保存時:溶解後の溶液を保存する場合は、
直射日光を避け、
5℃から30℃の温度条件
にて保存し、
6時間以内に使用すること。
■その他の使用上の注意等につきましては、製品添付文書をご参照ください。
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(土・日・祝日・年末年始を除く)
2015 年 10月作成
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