第一部特別講演 「デング熱などの昆虫媒介感染症について」

2015/2/20
デング熱などの昆虫媒介性感染症について
節足動物(昆虫etc)媒介性ウイル
節足動物(昆虫etc
)媒介性ウイル
スは、
スは、arthropod
arthropod--borne virus
virusアル
アル
ボウイルスと総称される
アルボウイルスは、節足動物によりヒト
や脊椎動物 ウイ
や脊椎動物にウイルスが伝播するとい
が伝播すると
う疫学的な共通性に基づいた概念であ
り、ウイルス学的な分類上その中には、
フラビウイルス科、トガウイルス科、ブン
ヤウイルス科、レオウイルス科などのウ
イルスが含まれる。
平成26年度兵庫県立生活科学研究所講演会 (2015年2月23日)
高崎智彦 (国立感染症研究所ウイルス第一部)
横浜検疫所検疫衛生課(併任)
横浜検疫所輸入食品・検疫検査センター(併任)
1
デングウイルスの感染環
アルボウイルス一覧
媒介昆虫
カ
病名またはウイルス名
◆黄熱
◆西ナイル熱/脳炎
◆デング熱
◆ロシオ
◆日本脳炎
◆ムレー渓谷脳炎
◆セントルイス脳炎
◆ブエッセエルスブロン
◆西部ウマ脳炎
◆オニョニョン
◆東部ウマ脳炎
◆ロスリバー
◆ベネズエラウマ脳炎
◆シンドビス
◆チクングニア
◆マヤロ熱
◆ブンヤンウェラ
◆タヒナ
◆ブンヤウイルスC群
◆ラ・クロス
◆カリフォルニア脳炎
◆シンブ群*
◆サシチョウバエ熱
ヌカカ
マダニ
フラビウイルス
(フラビウイルス)
トガウイルス
(アルファウイルス)
蚊
吸血中のヒトスジシマカ
ブンヤウイルス
(ブンヤウイルス)
ブンヤウイルス
(フレボウイルス)
◆リフトバレー熱
サシチョウバエ
ウイルス科(属)
ブンヤウイルス
(フレボウイルス)
◆小胞性口内炎
ウイルス
ラブドウイルス
(ペシクロウイルス)
◆オポロウチェ
ネッタイシマカ
ブンヤウイルス
(オロポウチェ)
◆ロシア春夏脳炎
◆オムスク出血熱
◆中央ヨーロッパダニ脳炎
◆キャサヌル森林熱
•デングウイルス;フラビウイルス科
フラビウイルス
(フラビウイルス)
•チクングニアウイルス;トガウイルス科
自然
宿主
◆跳躍病
◆クリミヤーコンゴ出血熱
◆コロラドダニ熱
◆ケメロボ
SFTSV
ブンヤウイルス
(ナイロウイルス)
ヒトスジシマカの飛翔距離は100m程度、
ネッタイシマカはもっと短い!
レオウイルス
(オルビウイルス)
ネッタイシマカ、ヒトスジシマカの発生母地
フラビウイルス属の系統樹
デングウイルス
3 1
2
4
日本脳炎血清型群
WN Kun
黄熱
ダニ媒介性脳炎ウイルス群
MVE JE SLE
1
2015/2/20
日本脳炎ウイルスの生活環
Incidence of DHF/DSS between primary and
secondary infection in children
Primary infection
(1-14y)
Secondary infection
(1-14y)
Dengue hemorragic fever
Dengue shock syndrome
(DHF grade 1, 2)
(DHF grade 3,4)
0.18%
0.007%
2.01%
1.14%
コガタアカイエカ
妊娠ブタが日脳
ウイルスに感染
すると流産・死産
することがあるが、
それ以外に発病
することはない。
ウマ
高雄市(台湾)の雨水マス
Culex tritaeniorhynchus
わたしは、10km
位は飛べるんだよ。
風に乗っかればもっ
と遠くまで移動し
ちゃうよ!
水が流れていないがきれいである(上段)
水が流れている雨水マス(下段)ではネッタ
イシマカは発生しない。
コガタアカイエカは、田んぼや池のような大きなところに産卵する。
デング熱に関する熱心な研究が
日本人によるデングウイルス
世界初分離につながった!
沖縄では戦前にもデング
熱流行があった。流行地
との人の行ききの頻度が
大きな要因である。
1943年に堀田進博士、木村廉博士らが長崎でデング熱患者か
らデングウイルス1型を分離した。この時の分離ウイルスは患者
さんの名前にちなんでデングウイルス 1 型望月株(Dengue
virus type 1, Mochizuki strain)と名付けられ,世界で最初のデ
ングウイルス分離株として認められている。
2
2015/2/20
1942-45年のデング熱流行にお
ける流行都市別推計患者数
市
長崎・佐世保 大阪・神戸
福岡
デング熱輸入症例都道府県別届出症例数トップ10
(2006-13年、検疫所からの報告を除く1005例)
都道府県
東京
神奈川
大阪
愛知
兵庫
福岡
京都
千葉
静岡
埼玉
上記以外
広島・呉
人口
458,000
4,219,000
306,000
582,000
1942
1943
1944
1945
1946
50 000
50,000
5 000
5,000
No epidemic
No epidemic
20,000
10,000
200
No epidemic
5,000
100,000
100
200
Unknown
3,000
No epidemic
Unknown
No epidemic
No epidemic
No epidemic
No epidemic
届け出症例数
315
90
76
63
43
41
38
37
32
27
243
割合
31.3%
9.0%
7.6%
6.3%
4.3%
4.1%
3.8%
3.7%
3.2%
2.7%
24.2%
Susumu Hotta. Dengue epidemics in Japan, 1942-1945. J. Trop. Med. Hygiene. 56: 83. 1953.
ヒトスジシマカの国内分布と温度条件
2010年の我が国におけるデング熱輸入症例
243名
MIROC(k-1)モデルによる
年平均気温の予測分布図
ヒトスジシマカの分布域
拡⼤(1998-2013)
確認地
未確認地
⼋峰
盛岡(2009〜)
能代
本荘
秋⽥
酒⽥
2010年
宮古(2007)
⼤槌(2011〜)
花巻(2007〜)
気仙沼
横⼿
新庄
⼭形
2000年
⽯巻
会津若松
18
仙台
⽩河
18
軽井沢
〜1950年
確認地
未確認地
11ºC以上の地域
⽇光
100 Km
1/1
3/1
5/10
7/12
9/20
11/29
ヒトスジシマカは年平均気温が11ºC以上の地域に定着し、
気温の上昇に伴い、徐々に分布域を拡⼤している。
ヒトスジシマカの活動期
多くの都市でのヒトスジシマカの分布確認と
年平均気温11℃以上の地域が一致する
(98%以上の一致率)!
2035年には青森県の平地すべてにヒトスジシマカの分布が可能。
2100年には北海道南端から札幌にかけて同蚊が侵入・定着する!
16
世界におけるヒトスジシマカの分布
日本のヒトスジシマカの北限
•1946~’47;栃木県北部(Mosquito Fauna of Japan & Korea.
By Walter J. LaCasse & Satyu Yamaguchi) 米軍による全国
規模での調査で、福島県以北にはヒトスジシマカは確認されな
かった。)
•1970年代;仙台市が太平洋側の北限となった。
•1990年代;仙台から約20km北に位置する古川で確認。山形、
秋田、新庄、一関では確認されなかった(Kurihara et al. 1997)。
東京
ヒトスジシマカの
侵入・定着が確認
された国(1979~)
Albania
1979
Trinidad
1983
USA
1985
Brazil
1986
Mexico
1988
Italy
1990
Nigeria
1991
South Africa 1991
Cuba
1995
Guatemala 1995
Honduras
1995
Bolivia
1997
Argentina
1998
Colombia
1998
Paraguay
1998
France
1999
Cameroon
2000
Panama
2002
Nicaragua
2003
Swiss
2003
Greek
2003
Belgium
2004
Spain
2004
本来の分布地域
新たに侵入定着した地域
防除によって駆除された地域
3
2015/2/20
ヨーロッパにおけるヒトスジシマカの分布
Dengue endemic area
赤:定着
黄:検出
緑:調査済検出せず、灰:調査無
デングウイルス
フラビウイルスの構造について
プラス鎖RNAウイルス(11kb長)
3つの構造蛋白、7つの非構造蛋白、非翻訳領域から構成される
5’ Nontranslated region (NTR)
0
1000
C prM
M
ヒト単核球内で増殖したデングウイルス
2000
E
3000
3’ NTR
4000
5000
NS1 NS2A NS2B
6000
NS3
Structural
proteins
7000
8000
9000
NS4A NS4B
10000
NS5
Nonstructural
proteins
蚊細胞で増殖(C6/36細胞)
デングウイルスは1~4の血清型に分類され、さらに
デングウイルス1型は5つの遺伝子型に分類される
今回の流行株は
デングウイルス1型
遺伝子Ⅰ型
E領域:13株、全遺伝子領域4株
88
95
China/GD-D13202(Guangzhou)(KJ545459)Chaina/13
14-100J(第1例目:代々木)
68
Bali 2010a(JN415489)IndonesiaBali/10
S330/05(
U069595)S gapo e/05
S330/05(EU069595)Singapore/05
84
88 T3352/04(EU069623)Singapore/04
62
D1/Taiwan/806KH1405a/2014
98 02-20(AB178040)Thailand/02
SG(EHI)D1209Y03(FJ469907)Singapore
14-181J(静岡県の症例)
61
39
97 D1/Thailand/0910aTw(JF967888)Thailand
93 D1/Taiwan/511CH0909a(JQ403519)Taiwan
70
My01D144168(AY618211)Myanmar/01
DENV-1/VN/BID-V1862/2008(FJ410220)Vietnam/08
D1/Taiwan/811KH0807a(JQ403517)Taiwan/08
93
100
98
Thailand 2008b(JN415527)Thailand/08
72
DEN1/GZ/OY(FJ176779)China/06
66
DV1 SL 2009c(HQ891315)SriLanka/09
85
SG(EHI)D1/41934Y09(JF960217)Singapore/09
DENV-1/KH/BID-V2002/2006(FJ639686)Cambodia/06
Mochizuki(AB074760)Japan/43 日本の1943年の分離株(マウス脳継代)
P72-1244(AF425622)Malaysia/72
0.005
ウイルス遺伝子解析数(ヒト)
23
Bali 2010a(JN415489)IndonesiaBali/10
14-100J (代々木)
China/GDD13202(Guangzhou)(KJ545459)C...
China/GDD13202(G
D13202(Guangzhou)(KJ545459)C(2)
h )(KJ545459)C(2)
別のウイルスであることが重要!
D1/Thailand/0910aTw(JF967888)Thailand
D1/Taiwan/511CH0909a(JQ403519)Taiwan
14-181J (静岡 県)
E領域塩基配列の相同性(71年前の国内分離株との比較)
%にすればそれ程大きな開きはない。
・ 14-100J vs 14-181J : 98% (1485 塩基中、1461塩基一致)
・ 14-100J vs Mochizuki : 94% (1485 塩基中、 1398塩基一致)
・ 14-181J vs Mochizuki : 94% (1485 塩基中、 1398塩基一致)
ID
推定感染場所
1
代々木
3
代々木
4
代々木
10
代々木
67
新宿中央公園
69
代々木
86
千葉市
105
代々木
115
代々木
129
不明
132
静岡県
144
隅田公園
156
西宮市
24
4
2015/2/20
デング熱の国内感染症例の発生状況
発症日別報告数
Yoyogi story
(発症日不明の4例を除く151例)
報告数
12
代々木公園8/28午後5時
-8/29朝閉鎖
代々木公園またはその周辺のみ
n=122
10
9/4~代々木公園
A地区閉鎖
厚労省第1報
発表(8/27)
6
移
動
ウイルス遺伝子配列は一致する!
新宿中央公園のみ n=8
8
代々木公園のヒトスジシマカの数は半端な数ではない!
移
動
その他・不明 n=21
4
2
0
発症日
9月
8月
【厚生労働省発表(2014年10月6日11時現在)に基づく。】
代々木公園イベント一覧
デング熱の国内感染症例の
居住地別状況(n=162)
6月
7月
•カリブ・ラテンアメリカフェスティバル
•メコンフェスティバル2014
•エコライフ・フェア2014
•ASEANフェスティバル
•カリブ・アフリカ ダンスフェスティバル
•One Love Jamaica Festival
•大江戸骨董市
第3回ワ ルドダンスフ スティ ル
•第3回ワールドダンスフェスティバル
•アースデイ マーケット
全国で
19都道府県
7月
•アース・ガーデン夏
•地球愛祭り2014 in 東京
•オーシャンピープルズ2014
•第9回ブラジルフェスティバル
•アースデイマーケット
•第2回タイフェア― in 東京2014
•大江戸骨董市
8月
•第2回アセアンフェスティバル2014
•アースデイマーケット
•うた会 ~2014夏~
•ユーロフェス2014
•カリブ中南米フェスティバル
カリブ中南米フ ステ バル
•PEDAL DAY 2014
•灼熱!マチャドナミーフェス
•スーパーよさこい2014
•フリーマーケット
•Pipes of piece vol. 31
•大江戸骨董市
公園以外で体育館などでも全日本小中学
生ダンスコンクールなど催し物多数!
年齢群及び性別 (n=155)
都道府県名
症例数
東京都
108
14
10
7
3
3
2
2
2
1
1
1
1
2
1
1
1
1
1
162
神奈川県
埼玉県
年齢階級
男性
女性
計
10歳未満
4
1
5
新潟県
10代
14
16
30
茨城県
20代
27
26
53
山梨県
30代
11
7
18
北海道
千葉県
大阪府
静岡県
青森県
40代
12
11
23
50代
11
2
13
秋田県
60代
8
0
8
岡山県
70代
4
1
5
計
91
64
155
推定曝露日別報告数
届出地 (n=162)
岩手県
群馬県
山口県
愛媛県
高知県
兵庫県
計
【厚生労働省発表(2014年52 週暫定】
(2014年8月1日-9月30日)
代々木公園または周辺のみ
(n=70〈122例中、曝露日が1日だけの症例のみ〉)
7
6
9/4代々木公園
A地区閉鎖
5
報 4
告
数 3
2
1
0
新宿中央公園のみ(n=5 〈同8例中〉 )
推定曝露日
4
3
報
告 2
数
1
0
1日
2日
3日
4日
5日
6日
7日
8日
9日
10日
11日
12日
13日
14日
15日
16日
17日
18日
19日
20日
21日
22日
23日
24日
25日
26日
27日
28日
29日
30日
31日
1日
2日
3日
4日
5日
6日
7日
8日
9日
10日
11日
12日
13日
14日
15日
16日
17日
18日
19日
20日
21日
22日
23日
24日
25日
26日
27日
28日
29日
30日
国内流行疫学情報
推定曝露日
計75例のうち、発症日のわかる72症例から算出した潜伏期:中央値6日(範囲2-13日)
【厚生労働省発表(2014年10月6日11時現在)に基づく。】
5
2015/2/20
図1.感染地別診断週別報告数
(2014年第1~52週、n=326*)
50
国外例 n=171
45
Subject: DENGUE VIRUS INFECTION
- GERMANY ex JAPAN From: Greutélaers, Benedikt [mailto:[email protected]] On Behalf Of IHR-Postfach, RKI
Sent: Tuesday, January 07, 2014 5:48 PM
国内例 n=155
Dear colleagues,
we would like to inform you about a case of dengue virus infection in a
German traveler returning from Japan (Honshu). Because a case of
dengue fever imported from Japan was considered very unusual,
confirmation
fi
ti from
f
a second
d serum sample
l was sought
ht and
d finally
fi ll obtained
bt i d
in late 2013. We wanted to await the results of the second serum sample
before informing you. The colleagues from the Bernhard Nocht Institute of
Tropical Medicine, Hamburg, Germany, the National Reference Center for
Tropical Infections, who performed the laboratory tests on the first and
second serum sample, will also post this event to ProMed-Mail.
40
35
報告数
30
25
20
15
10
5
0
1
3
5
7
9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 51
1月
3月
*発症日不明の計14例を除いた
6月
9月
発症週
12月
Contact person is Prof. Klaus Stark at the Robert Koch Institute in Berlin, Germany ([email protected]).
With kind regards
On behalf of the Robert Koch-Institute
Benedikt Greutélaers
感染症発生動向調査(2015年1月6日現在)より
情報提供のメール
日本での感染が疑われたドイツ人デング熱症例
2013年9月発生、2014年1月報告
Case description
A previously healthy 51 year old woman sought
treatment in a hospital in Berlin, Germany, on 09.
September 2013 after returning from a travel to Japan.
Since 03. September 2013 she suffered from fever up
to 40℃ and nausea, followed by a maculopapular
rash. She had returned from a two week round trip
(19. August – 31. August) from Japan:
19.-21. Ueda, Nagano prefecture
21.-24. Fuefuki, Yamanashi prefecture
24.-25. Hiroshima
25.-28. Kyoto
28.-31. Tokyo
51歳女性、生来健康
日
本
国
内
旅
行
*
8/19
day‐15~‐13
8/19~21
上田(長野)
day‐13~‐10
8/21~24
笛吹(山梨)
day‐10~‐9
8/24~25
広島
day‐9~‐6
8/25~28
京都 (欧米人に人気の町屋旅館)
day‐6~‐3
8/28~31
day‐3
8/31
成田発(フランクフルトへの直行便)
9/3
発熱(最高体温40℃)・嘔気→紅斑丘疹性発疹を伴う
9/9
ベルリンの医療機関に入院
IgG (IFA): 1:20,480 (陽性),IgM (IFA): 1:320 (陽性)
NS1 抗原(ELISA): 陽性, RT‐PCR: 陰性
中和試験:デングウイルス2型の感染
発 day 0
症
day 6
後
経
過
症例、旅程
She traveled popular sightseeing places for foreigners
成田着(フランクフルトからの直行便)
day‐15
東京 (新宿御苑を訪れた)
Eurosurveillance, Volume 19, Issue 3, 23 January 2014 (*旅程情報はProMedより)
台湾CDCデング熱に対する対策ガイドライン概要
Guidelines for Dengue Control by Taiwan CDC
第4章 平素からのデング熱媒介蚊対策
一、教育
Taiwan CDC sent their guideline for dengue control in
二、駆除作業
Chinese and we translated it in Japanese.
○ 媒介蚊に対する対策
Yamanashi
Winery
1、自治体が指定した週一の清掃日に清掃作業を行う。定期的に蚊
と幼虫の発生源をなくす。
2、各自治体(ボランティアなど)で対策の訓練と媒介蚊の駆除指導
を行う
を行う。
3、自治体やボランティアによる住宅などでの駆除対策指導、幼虫の
発生しやすいところを指摘、駆除の指導をする。
4、自治体がデング熱媒介蚊対策のガイドラインを執行する
一、各地域の衛生研究所を通じて毎月媒介蚊と幼虫の駆除作業と
演習を行う。衛生研究所の指導を受ける。衛生研究所は査察も
同時に行う。
二、査察などで媒介蚊の駆除に対する意識を高める。
三、空き地、空き家、地下室などの管理と清掃を強化する。
四、自治体は、蚊の駆除に対する意識を高めるための活動を行う
(behavioral change plan, 参考:WHOのOrganization’s Social Mobilization and Training Team, Communication for Behavioral Impact, COMBI)以下はマスメディア、学校などを活用し、媒介蚊
に対する対策とその意識を高める。
6
2015/2/20
The pipeline was exploded on
31st July 2014: 高雄市(台湾)
デング熱患者報告数(東南アジア中心)
2013
国名
•避難住民が野外生活
•デング熱患者数が急増
避難場所の蚊の卵を調査したと
ころ
ヒトスジシマカ:ネッタイシマカ=
4:1の比率であった。
Total
報告患者数
死者数
As of
報告患者数
死者数
1,762
0
1.1(1,541)
1,514
NA
カンボジア
16,722
53
0.4(40,164)
3,543
21
ラオス
44,171
95
4.4 (9,952)
1,716
0
マレーシア
43,346
83
2.0 (21,900)
108,698
215 399
フィリピン
166,107
528
1.0 (170,693)
104,741
シンガポール
22,194
5
4.8 (4,632)
18,318
ベトナム
60,588
38
0.8 (79,485)
581
0
――
9/3
10,541
7
26.0
9/14
中国
ポリネシア(仏領)
DHF
15,765
139
ソロモン諸島
240
0
タイ
26,067
33
台湾
869
NA
Death
(2012年)
オーストラリア
Dengue fever
Imported cases
2014
前年比
ニューカレドニア
6,591
8
NA
4
17,766
17
45,171
NA
14
NA
15,904
20
7/17
WHO西太平洋地域外
20
3.3
4/30
デングウイルス感染者のウイルスと抗体の関係
PCR(遺伝子検査),
チクングニア熱流行も拡大中
(抗体の出現)
IgM-ELISA(IgM抗体)
ウイルス分離
(ウイルス血症)
非構造蛋白抗原(NS1 Ag)
[回復期]
[発熱期]
発熱
解熱
約11kbの一本鎖(+)RNA
遺伝子構造
非構造蛋白質
5’
構造蛋白質
6K
E3
各ウイルス蛋白質 nsP1
nsP2
nsP3
nsP4
C
E2
粒子形成
C コア
RNA
E2 3’Poly A
エンベロープ
E1
チクングニアウ
ウウイルス感染症
アルファウイルスの構造
E1 7
2015/2/20
チクングニア熱の臨床
Bone scintigraphy
• 以前は不顕性感染がかなりあると考えられていたが、現在の流行
では多くの患者が何らかの症状を呈すると考えられている。
• 潜伏期間は通常 3–7 日間である。教科書的には3~12日間
• 発熱と関節痛が最も多い症状である。
• その他の症状として頭痛、筋肉痛、関節腫張、発疹があげられる。
• チクングニアウイルス感染による死亡率は低いが、症状は重症化
あるいは機能障害(関節の変形など)をきたすことがある。
• 多くの患者は一週間程度で回復するが、関節症状が回復後も数ヶ
月持続する場合がある。
• 新生児や高齢者(≥65 years)、高血圧、糖尿病、心臓疾患を有する
人では, 重症化することが多い。
• 終生免疫と考えられている。
The wrists & hands showing an intense focus, particularly on the left side.
2005‐‐’06
2005
’06の西インド洋諸国での流行
の西インド洋諸国での流行
カリブ海諸国におけるチクングニア熱の流行
• 2013年12月6日にカリブ海のサン・マルタン
(セント・マーチン)島のフランス領で報告され
た。西半球で初確認された症例であった。
• 2014年6月22日に、成田空港検疫所にてドミ
ニカ国からのチクングニア熱症例(53歳、女
性)を確認した。
• 米国では、夏休みシーズンに入り、カリブ海
諸国への旅行者が増加している。輸入症例
を介したチクングニア熱国内侵入に対して強
い警戒!⇒7月にチクングニア熱がフロリダ
で発生したことを確認した。
ロスリバー熱初輸入症例
• 患者は31歳女性、生来健康で特に既往歴(-)
2013年1月13日からワーキングホリデーを利用して、オーストラリアのメル
ボルンに滞在していました。2月28日から3月6日までタスマニア旅行以外はメ
ルボルンに滞在。
• 3/14の起床時に左足甲の痛み、腫脹、右膝の疼痛を自覚し、歩くのも困難な
ほどでした。翌日には痛みが悪化し関節可動域制限(+)。
• 3/15にGP(家庭医)を受診し採血
/ にGP(家庭医)を受診し採血
血液検査:WBC 4600, Hb 13.9, Plt 180000, ESR 7 mm/hrAST 20, ALT 14, CRP 3mg/L(<10が正常)、その他異常なし、NSAID処方
その後、痛みは徐々に改善も完治せず、3月末には左手母指のつけねにも痛み。
• 4/8に痛みが悪化し、最初の時と同じくらいになる。最初のときのような腫脹
はみられなかったよう。その後も痛みは持続し4/15に整形外科受診、このとき
にウイルスの検査を提出。
• 4/15の採血結果;WBC 3800, Hb 12.3, Plt 180000, ESR 5 mm/hr
杤谷健太郎、清水恒弘、篠原 浩、土戸康弘、モイ メンリン、高崎智彦.オーストラリア渡航中に発症した
ロスリバーウイルス感染症の本邦発報告.感染症学雑誌.88(2):155‐159(2014)
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2015/2/20
臨床経過(2)
ロスリバーウイルス感染症は、
• 5/1頃から徐々に症状改善し、歩行可能となる。
ロスリバー熱の抗体検査が陽性であったことが判明。
(ross river virus serology; IgG antibody; low positive, IgM antibody: positive)
• 5/7頃から再び手指に痛み(+)、可動制限(+)。
• 5/12に帰国し、関西空港検疫所の健康相談室を受診し、京都市立
病院を紹介され
病院を紹介され5/15に当院受診。当院受診時は、発熱なし、その
当院受診。当院受診時 、発熱な 、そ
他バイタルも異常なし
左足関節、足背(関節とは異なる部位)に圧痛、右膝関節に自発痛
(+)、いずれも腫脹熱感可動域制限はなし
その他の関節には関節炎所見(-)、皮疹(-)。
血液検査:白血球 5300,Hb 12.5, Plt 19.3, ESR 4 mm/hr, AST 14, ALT 11, CRP 0.01
 経過中、発熱、皮疹など関節痛以外の症状はなかった。
 経過中、インドメタシン、セレコキシブといった消炎鎮痛薬の内服が
あった。
ロスリバーウイルスIgM抗体
in house and panbio
day of first visit
2 weeks after
IgG absorbed IgM
ELISA (panbio)
index=2.84
positive
Index=2.82
positive
IgM capture ELISA
(in house)
P/N ratio=2
ratio=2.8
8
endpoint titer: 1600x
positive
P/N ratio=2
ratio=2.4
4
Endpoint titer: 400x
positive
ロスリバーウイルス中和抗体
血清1:陽性(抗体価=2560x)
血清2:陽性(抗体価=320x)
ロスリバー熱
Ross River fever;Ross River virus
バーマ森林熱 Barmah Forest fever
Barmah Forest virus
潜伏期間は3日から3週間
類似の病態をおこし、両ウイルスとも
アルファウイルス属のウイルスである。
媒介蚊
A. vigilax
A. camptorhynchus
Culex annulirostris
オーストラリアで
のJEV媒介蚊で
もある。
オーストラリア、パプアニューギニア、ソロモン諸
島にみられる。本感染症は1928年に報告されたが、
ウイルスは1959年、ケアンズの南を流れるロスリ
バー(Ross River)河口のタウンズビルで捕獲され
たハマベヤブカ(Aedes vigilax )から初めて分離さ
れた。1979から1980年にかけて、クック諸島、
ニューカレドニア、フィジー、サモアなど太平洋島嶼
国に流行が拡大し、約50,000人の患者が報告され
た。ほとんどが南半球の夏~秋にあたる1~5月に
かけて発生し、2~4月がピークとなる。
Joints affected by RRV disease
Joint
Frequency of joint involvement (% of cases)
80
81
63
Fingers 50c
Hand 45
Thumb
53 58
Wrist 36 70 80 100 61
Elbow 17
40 44 71
Shoulder
Shoulder 38 47 62
38
47
62
Hip 4 10 27
Knee 39
80 80 100 64
Ankle 50 78 88 97 64
Feet
49 36
Toes 47
Back 14b
36 37 56
Neck 36 12 70
Jaw 10 15
a Percentages taken from a bar graph.
b Includes back or neck
C Includes fingers and hand
ZIKA Fever
•比較的軽症のデング熱様急性熱性疾患を引き起こすフ
ラビウイルスである。
•2007年にミクロネシアで症流行を引き起こした。
Zika virus in a returning Canadian traveller fromThailand
Zika virus (ZIKV) has been detected in the blood of a 45 year old Canadian woman who
Zika virus (ZIKV) has been detected in the blood of a 45 year old Canadian woman who recently returned from a vacation in southern Thailand. ZIKV is a flavivirus which was first reported from Thailand in 1954. The patient traveled with other family members to Bangkok from 21‐28 Jan [2013], and spent a week there without noticing many mosquito bites. The party went to Phuket Island from 28 Jan‐2 Feb [2013], traveling and spending time at various beaches where the patient noted many more mosquito bites as she was told that it was mosquito season. On her return to Bangkok, on 2 Feb [2013], she changed her hotel to one by the river, where she sustained numerous bites on her exposed skin. Most noticeably her leg became inflamed and itchy, to which she applied cortisone cream and other emollients. She flew back to Canada 3 days later on 5 Feb [2013] and on the flight described feeling restless, irritable, with a headache, chills, and sore back, in addition to the itching and inflammation of the mosquito bitten areas.
9
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Zika熱輸入症例
Zika fever in Pacific Islands
Easter
Island
• フランス領ポリネシアのボラボラ島に2013年
12月に渡航した後、Zika熱(Zika fever) と診断
された輸入症例2例を確認した。
• フランス領ポリネシアでは、2013年11月より、
Zika熱流行が確認されていた。
熱流 が確 され
症例の詳細は、 下記を参照のこと。
S Kutsuna, et al. Two cases of Zika fever imported from French Polynesia
to Japan, December 2013 to January 2014. Eurosurveillance, Volume 19(4)8‐11.
(30 January) 2014.
Bora Bora Islands
New Caledonia
症例1
生来健康な27歳の日本人男性が2013年12月2日から12
月7日まで観光のためにフランス領ポリネシアのボラボラ
島に滞在した。12月9日より頭痛が出現し、数時間後から
38℃台の発熱が出現した。12月10日より関節痛、12日に
咽頭痛と皮疹がそれぞれ出現した。12月13日に当院を受
診した際は、体温37.2℃で、顔面、体幹、四肢に掻痒感を
伴わない紅斑を認めた その他に特記すべき所見を認め
伴わない紅斑を認めた。その他に特記すべき所見を認め
なかった。血液検査では白血球3310/μL、血小板14.9万
/μLと減少を認めた。その他に特記すべき血液検査異常を
認めなかった。デング熱の迅速検査ではNS‐1抗原、IgMお
よびIgG抗体いずれも陰性であった。国立感染症研究所で
行った12月13日の血清のrealtime‐逆転写PCR検査でZika
virus RNAを同定し、同ウイルスによる感染症と診断した。
受診翌日に解熱し、紅斑はその後緩除に消退した。
ZIKA virus
Vector :
Aedes species
Detected :India, Malaysia, Indonesia,
Pakistan, Thailand,
Vietnam, Philippines, Yap
Island (Micronesia)
(Micronesia)., Africa
Symptoms :fever, headache, rash,
conjunctivitis, arthralgia
症例2
33歳の日本人女性が2013年12月14日から12月23日ま
でフランス領ポリネシアのボラボラ島に滞在した。滞在中
は海岸、森林地帯での滞在歴があった。12月23日頃より
37℃台後半の発熱が出現し、12月29日から頭痛、後眼窩
痛が出現した。12月31日から顔面、体幹、四肢に皮疹が
出現した。1月2日発熱、頭痛は消失したが、皮疹の掻痒
感が増強したため1月3日に当院を受診した。体温36.9℃
で 身体所見上 眼球結膜充血 両顎下 鼠径リンパ節腫
で、身体所見上、眼球結膜充血、両顎下・鼠径リンパ節腫
脹および顔面、体幹、四肢に紅斑を認めた。血液検査で
は白血球3470/μL、血小板14.7万/μLと減少を認めた以外
には特記すべき血液検査異常を認めなかった。デング熱
の迅速検査ではNS‐1抗原、IgMおよびIgG抗体いずれも陰
性であった。国立感染症研究所で1月3日の血清と尿を検
査し、realtime‐逆転写PCR検査で尿中からZika virus RNA
を同定し、同ウイルスによる感染症と診断した。その後数
日かけて皮疹は消退傾向となった。患者は経過観察目的
に現在も外来通院中である。
Zika fever; maculopapular rash &
conjunctivitis
The first isolation was made in April 1947 from the serum of a pyrexial rhesus monkey caged in the canopy of Zika Forest in Uganda.
Cross NT indicate that Zika virus is not related to dengue virus, yellow fever virus and JEV.
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2015/2/20
来春は全国規模
全国規模で必ず展開‐幼虫対策‐
ま と め
カントリー(缶取り)大作戦
• ロスリバー熱のIgM抗体捕捉ELISAにより、初
輸入症例が早期診断された。
• Zika virus遺伝子が、ウイルス血症が消失した
後も尿中から検出できた。
• 昨年8月に日本を旅行後デング熱を発病した
ドイツ人旅行者の症例は、日本国内で感染し
た可能性は否定できない。今夏のデング熱輸
入例増加時期に備えて、国内発生に備えた
診断体制を整える必要がある。
ヒトスジシマカ成⾍の潜み場所
え~!
全国規模?
かなんなー!!
ヒトスジシマカ幼⾍の発⽣源
ヒトスジシマカ・アカイエカの発⽣場所
コガタアカイエカ・ハマダラカの発⽣場所
ツツジやアオキ、アジサイのような低⽊の葉裏や茂みの中
ツツジやアオキ アジサイのような低⽊の葉裏や茂みの中
64
ヒトスジシマカは⼩さな⽔域に発⽣する
地⾯を覆うように繁るツタなども、葉裏に成⾍が潜んでいる
来季に向けた蚊対策例
2014年実施した媒介蚊対策総括
・約70年ぶりのデング熱国内発⽣事例に対して,
媒介蚊対策にあたる関係者の知識と技術が⼗分
ではなかった.
・適切に媒介蚊対策を施せば,成⾍密度は下がる
ことは確認された.
・調査・対策を⾏う上で情報共有の徹底が必要で
あった.
今後の課題
1) 感染症媒介昆⾍類に対する知識と理解を深める
・知識(と経験)のある⼈材の養成・配置
・対策担当者への啓発と教育
・住⺠への情報発信
2) 情報ネットワークおよび協⼒体制の構築
3) 媒介蚊調査の基準と⽅法の確⽴
成⾍対策:定点調査の継続
幼⾍対策:幼⾍発⽣源の除去と清掃
11 ⽉
ヒトスジシマカは発⽣しない環境
世界の航空機ルート
成⾍対策:樹⽊の剪定
幼⾍対策:
・⽔の⼊った⾬⽔マスの調査
・放置された⼈⼯容器の除去と清掃
・ゴミ置き場等の清掃
4 ⽉ 幼⾍対策:
幼⾍の発⽣した⾬⽔マスへはIGRを
・幼⾍の発⽣した⾬⽔マスへはIGRを
投与する等の対策を実施
・幼⾍発⽣源の除去と清掃
5 ⽉ 成⾍対策:定点調査(成⾍密度の
モニタリングを開始
7~8 ⽉ 成⾍対策:下草刈り
幼⾍対策:⾃治体主導、住⺠参加による
幼⾍発⽣源の除去と清掃
4) ウイルス分離・検出法の確⽴
5) 殺⾍剤および使⽤⽅法の決定
65
・ 8分間⼈囮法による成⾍密度調査を実施
・リスク評価→適切な媒介蚊対策を実施する
11