2015 年9月号より 古代機織り学習 講義と実演で織りなす“弥生の織り”の世界 「織姫」ら、スキルアップセミナーで意欲アップ 1ヶ月遅れの七夕前日の 8 月 6 日、考古博館内でスキルアップセミナー「弥生時代の紡織」が 催された。同好会「織姫」のメンバーは、東村純子先生(略歴下欄)の輪状式原始機の講義と実 技指導が受けられる、とこの日を楽しみにしていた。当日はボランティアと受講生合わせて 45 人 が参加、女性のみならず、 「古代の木製品を作る会」のメンバーをはじめとする多数の男性も熱心 に受講した。 30 年前、甲斐・学習支援課長の最初の現場が玉津田中遺跡で、その時出土した紡織具の中に凹形 凸形木製品を発見。しかし、その時は使用方法が判らず、 報告書には、直状式紡織具の「布巻具」と記載。当時は まだ原始機は直状式と認識されていたのだ。課長はその 時以来ずーっと「対になっている凹凸形木製品」が頭か らはなれなかったそうだ。昨年、東村先生の著書『考古 学からみた古代日本の紡織』との出合いで、輪状式原始 機の「布送具」とわかり、「これだったのか」と胸のつ かえがスーッと降りたそうだ。 布送具への課長の熱い思いが、この度のスキルアップ セミナーに東村先生と滋賀・下之郷遺跡「弥生織りの会」 代表立石文代さんをお迎えすることへと繋がったので はないだろうか。古代織りを始めようとしていた織姫た ちにとっては、ありがたい企画だった。 午前中は糸紡ぎから布を織るまでの講義。弥生時代の遺跡から出土した機織り具や織物の説明。 糸のつくり方(苧麻、絹)。原始機の直状式と輪状式の違いなど、映像を見ながらの講義だった。 質問コーナーで、黒木さんが「当時の男性は織物に関してどんな役割がありましたか?」と質問、 「男性は苧麻を育て、刈り取ります。そして織り機の道具作りも男性の仕事です」との答え、男 女の役割分担は今も昔も変わりないようです。玉津田中遺跡出土の布送具等を実際に見せていた だき、原始機復元へのいい勉強になった。 午後からは、立石さんも来館され、輪状式原始機の実演と糸の整経。参加者は二手に別れ、 機のそばに集合し、先生の一挙手一投足を注視した。綜絖の糸の取り方も 3 種類教えていただい たが、いつまで覚えていられるか?課長撮影のビデオのお世話になることだろう。最後にカラム シの糸のつくり方と糸の繋ぎ方を教えていただき、内容多き講義は終了となった。私たち織姫は 皆さんのご協力を得ながら、カラムシで糸をつくり、輪状式原始機で布を織りあげたい。 東村純子(ひがしむら・じゅんこ)氏の略歴 1977 年 京都府に生まれる 2009 年 京都大学大学院文学研究科博士 課程修了 博士(文学) 2011 年 日本学術振興会特別研究員 現在 福井大学教育地域科学部人間文化講座講師 *角田文衞古代学奨励賞 第1回受賞者 受賞論文 「輪状式原始機の研究」 *主要著書 『考古学からみた古代日本の紡織』(六一書房 2011 年) (『考古学からみた古代日本の紡織』引用、一部追加) (大場康子 記・写真) 経送具 (足) 巻あや棒 中筒 綜絖 布送具 (腰) 輪状式原始機とは、輪状にそろえた経糸(たてい と)を布送具に挟み、反対側にある経送具を足で 突っ張って、布に織り上げる。布の幅は織手の腰 の幅、長さは織手の足の長さになる。輪状の布が 織り上がる。
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