ロボットを利用した水中遺跡探査法の開発とこれに伴う調査

立命館大学研究部
2015 年 5 月 15 日
2014 年度採択 研究推進プログラム(科研費連動型)研究成果報告書
採択者
研究課題
所属機関・職名:文学部・教授
氏名:矢野健一
ロボットを利用した水中遺跡探査法の開発とこれに伴う調査
Ⅰ.研究計画の概要
平 成 26 年 度 科 学 研 究 費 助 成 事 業 - 科 研 費 - 申 請 時 の 研 究 計 画 に つ い て 、 概 要 を 記 入 し て く だ さ い 。
小型ロボットを利用した水中遺跡探査技術を開発し、これに資する分析・調査を行なうのが本研究目的である。
水深の深い水中遺跡ではダイバーによる調査が困難あるいは不可能となる。潜水艇や大型ロボットを利用すれば、
コスト面からも運用が困難となる。そこで、小型ロボットを利用する手段が効率的である。そのためには、ロボッ
トが(1)水流の影響を受けにくく、
(2)腕を利用して礫や砂泥などを除去し、
(3)鮮明な画像を撮影できる必
要がある。市販の小型ロボットにはこのような機能はないので、琵琶湖底水深 40~70m に存在する水流の激しい
葛籠尾崎湖底遺跡調査を実施しながら、ロボット技術を改良し、世界にさきがけて、小型ロボットを利用した水中
遺跡探査技術を開発する。
この研究は、ロボット技術および画像処理技術を考古学的ニーズに答えながら改良し、水中考古学に有用な小型
ロボットを用いた水中遺跡探査法を開発することにある。同時に、葛籠尾崎湖底遺跡の調査を重ねる中で、湖底に
おける土器の存在を視認し、その画像と GPS データを得て、この遺跡の範囲確認や遺物分布状況を明らかにする
という考古学的成果も当然、期待できる。
Ⅱ.研究成果の概要
研究成果について、概要を記入してください。
2014 年 8 月 26 日・27 日に、滋賀県長浜市葛篭尾崎沖で、葛篭尾崎湖底遺跡調査を実施した。調査者は、川村貞
夫(研究分担者:立命館大学理工学部教授・ロボット工学)
・河角龍典(研究分担者:立命館大学文学部准教授・地
理学)
・矢野健一(研究代表者:立命館大学文学部教授・考古学)ほか大学院生・学生含めて8名。調査目的は、川
村貞夫が開発した小型水中ロボットの水中考古学への応用実験。調査の特色は次の通りである。
(1)小型水中ロボット改良型「有手海」を利用(ハイビジョンステレオカメラ搭載(画像中の対象物の大きさ計測
可能,画像分解能向上、LED ライト搭載、スラスタ 4 台による推進)し、市販 Seabotix ロボットは有手海が動作
しない場合に利用することにした。(2)ロボットに SSBL(音響位置測定システム)搭載。舟の位置と音響位置測定
システムを連動させて、ロボット位置の GPS 情報を取得した。(3)調査に使用する船は、従来の琵琶湖汽船(株)のラ
ンシング(100 人乗り)と異なり、千島丸(船長以外 10 名乗船可能。有限会社レークダイビング)を使用した。乗員
は限られるが、小刻みな停止・移動が可能となった。
1 日目は有手海故障のため、市販 Seabotix ロボットを 4 回投入し、水深 24m の湖底で新しく平安時代の須恵器
と考えられる画像撮影に成功した。2 日目は有手海 3 回投入後、電気系統故障のため、市販 Seabotix ロボットを 6
回投入。水深 45m の湖底で土器らしき物体を発見するが、ケーブルにからまり推進不能となり引き上げる。
2015 年 3 月 1 日に実施予定だったが、天候不良のため、3 月 10 日に延期したものの、10 日も天候不良のため、
2 回目の調査を断念した。そのかわりに、湖上の船で使用可能な防水・防塵パソコンを購入し、GPS 情報受信機の
の記録をパソコン上に同時に記録するよう、試行した。
1