複雑系研究への武谷三段階論導入の試み ―原発再稼働問題に

複雑系研究への武谷三段階論導入の試み
A: 災害問題、とくにハードの技術問題、
対策を検討するには事象の物理的解析が必
要である。この際、複雑系である事象、事物
の実態(3 次元的、4 次元的)の単純化、モ
デル化が求められる。人間は神ではないの
で、それを常に適切に行えるわけではない。
物理学的解析に慣れた人々にとっては、と
くに、地質学的実態は非常に理解困難なも
のであるらしい。その例に、東日本大震災発
生に関わる地震と津波の予測の ”想定外”
問題や、若狭湾で起こりうる “津波” の予測
に見られる盲点がある。いずれも、実態論の
軽視、欠如に関わる。この事例を見ると、複
雑系科学の研究に武谷三段階論の導入が有
用、必要であることが理解されるだろう。
B: 複雑系の事象にはバタフライ効果が
ある。だが、偶然的でなく指向性や焦点効果
を持つ振動では、結果は異なるだろう。
複雑系でなくとも、たとえば対数曲線に
志岐常正
変化である。情報が下部構造となり、その中
で、ヘッジファンドによる、物資の売買(実
態経済)無関係な情報の行き交いが、世界金
融経済の 90%(?)を支配するに至ってい
る。
これが、これまでの資本主義経済社会を大
きく支配してきた国際独占資本、アメリカ
の政治家、および軍部(および、それらの裏
で独自の力をもっている CIA)の共同体と
どういう関係にあるのかが問題である。ち
なみに、Windows (8 以後)を使ったすべての
通信は、すべて CIA に通じていると考えら
れる。この実態を研究しないで抽象的に戦
争や人間生存の危機を論じても、見当を誤
り、カオスやカタストロフに陥ることを防
げないのではないだろうか。要するに、戦争
や災害、環境破壊によって当面の利益を得
るものの構成が変わったのかどうかである。
C: 武谷の三段階論においては、
沿って運動が進む場合、その途中で力が働
けば、それがごく小さくとも、時間と距離と
ともに運動の軌道は大きく変わる。たとえ
ば隕石が地球に衝突する軌道にある場合、
できるだけ遠くで力を加えれば、その軌道
を変えて衝突を防ぐ事が出来る。同様な対
策は、複雑系の事象である戦争についても
とれるはずだろう。小さな努力は決して無
意味ではない。戦争発生に至る社会の動き
の実態を科学的に良く把握できていれば、
現象から本質の把握に進む前に、実体(実態)
の把握が必要であることが指摘された。し
かし、現象、実態、本質の把握は、この順序
でなければならないのではない。今日では
多くの現象の本質は既知である。ニュート
ン力学、相対性原理、量子力学が確立、発展
したからである。多くの場合、逆に下の階層
の既知の法則から、実態を探ることがなさ
れている。それでも、単純な実態モデルを想
定して現象の説明に成功したと思っている
それを効果的に行うことができる。
この点で、今注目、解明せねばならないの
は、近年における世界の資本主義の構造の
と大失敗をすることがある。上記、Aの例が
それである。