景観法を活用した町田市の景観まちづくり ◆各地で活用が始まった景観法 平成 16 年6月に「景観法」が成立し、早いも ので既に2年が経過した。この間、数多くの自 治体で景観法を活用したまちづくりの取り組み が伝えられるようになってきた。 ◆町田市での景観まちづくりの進め方は? では町田市で景観法を活用していくためには どのようなにすれば良いであろうか。 現在の町田市には、他の自治体にみられる「景 観マスタープラン」や「景観形成基本計画」の 景観法にはいくつもの活用方法があるが、そ ような景観や風景に関する基礎的な計画が準備 の中心は景観計画に基づく建築物等の規制・誘 されていない。景観法を活用するためには、ま 導である。景観計画とは、県や市区町村が一定 ずは景観計画を定めることが基本となるが、残 の区域を定めて、その区域内の景観の形成に関 念ながらその素材となる計画がないため、その する方針を定めるものであり、その方針に従っ 素材づくりからのスタートとなる。しばらくの て建築物や工作物等を作ってもらうために、届 準備期間が必要だ。 け出を求めて規制・誘導を図る仕組みである。 このことは、早期活用を期待するせっかちな これまでにも景観づくりに意欲的な自治体に 市民にとっては歯がゆいかもしれないが、景観 では、景観条例等によって同様の取り組みがな 法の特徴を十分に生かした施策づくりを目指す されてきたが、それはあくまで自治体独自の取 ためには、かえって好都合とも思える。 り組みとして、どちらかと言えば控えめに扱わ れてきた。しかしこれからは景観法という国の お墨付きに基づく施策として、堂々と積極的に 取り組むことができるようになる。 ◆まずは町田の景観・風景を知ることから 景観計画のための素材づくり。それは現在の 町田市の景観・風景をつぶさに把握し、それが この他にも景観法には、景観協定、景観重要 どのような成り立ちなのかを理解することから 建造物・樹木、景観地区、景観協議会、景観整 始まる。こうした活動を通じて、町田市の景観 備機構などの手法も用意されており、自治体だ 形成上の課題や問題点を見つけだし、 「守りたい けでなく市民による積極的な活用も可能である。 風景、創りたい景観とは何か?」など、町田市 (下図参照) の景観の将来像について議論を重ねることが必 景観法に基づく主な手法の概要 要になろう。その結果として描かれた将来像に 基づいて景観計画を定めていくことになる。 例えば、鶴見川源流の美しい風景をどうやっ て守るのか、小野路宿の道路と町並み整備の調 和のあり方は、町田駅周辺の賑わいと美しい街 並みづくりを両立するには・・・。議論の中味 はいくつもある。 ◆他の自治体を参考にしよう こうした活動を市民参加を交え、きめ細かく 鶴見川源流の美しい風景 進めている自治体に世田谷区がある。世田谷区 では 1999 年3月に「世田谷区風景づくり条例」 を制定し、地域風景資産の選定や国分寺崖線一 帯を「水と緑の風景軸」に位置づけるなど堅実 な風景づくりを進めてきた。そして、地域の風 景資源をマップ化した「風景づくり資源図」を 区全域で作成し、これをもとに本年9月に景観 計画の策定を目指している。 世田谷区の取り組みは町田市にとっても大い に参考になる。こうした先進事例を参考にしつ つ、町田市の特性に合わせて特に重要な項目に 町田駅周辺の賑わい豊かな街並み 焦点を絞って取り組むことも考えられる。 ◆街づくり条例と連携した個性的な景観づくり また景観づくりを自治体の施策づくりとして 捉えれば、他の自治体の事例を参考にすると同 時に、市のこれまでの施策と整合させていくこ とも必要である。 町田市には「町田市住みよい街づくり条例」 がある。街づくり条例は、市民がつくる「地区 街づくりプラン」を支援していく仕組みである が、この制度を活用しながら景観づくりを行う 風景づくり資源図(出典:世田谷区風景計画(案) ) ことも考えられる。仮に市民主体で計画された 「地区街づくりプラン」を景観計画に取り入れ 景観法は、使い手の創意工夫によって活用の る仕組みを構築することができれば、街づくり 幅が広がる制度である。町田市の景観づくりは 条例の積極的な活用と市民主体の景観づくりを これからが本番であり、町田市らしい景観づく 一気に実現できる可能性もある。 りへの期待が膨らむ。 (佐野 雄二) ※この原稿は、東京都町田市のまちづくりグループ「日曜の会」の機関誌(No.22)に寄稿したものです。
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