日本国際経済学会・関西支部研究会(於: 阪南大学あべのハルカスキャンパス) 2015 年 5 月 30 日(土) 保護貿易を求める業界団体による有権者への啓蒙活動(ゲーム理論的アプローチ) 岡山大学大学院 社会文化科学研究科(経済学系) ひ さし 澤木 久之 本論文は,(例えば農林水産業などにおける)圧力団体によって保護貿易を求めて行われ る,有権者への広告活動を理論的に分析している.その圧力団体は,自分たちの産業の財 を国内で生産することがどの程度国内に正の外部性をもたらすか(例: 環境への影響な ど)を正確に知っていると仮定される.すると,国政選挙が近づくにつれ,彼らはその外 部性を有権者に伝えようとして,広告活動を活発化させるかもしれない.そうした活動は, 有権者の認識を変え,選挙の結果を変え,究極的には自分たちを保護してくれる政策につ ながるかもしれないからである. この状況をゲーム理論のシグナリング理論によってモデル化すると,そのような広告活 動への支出は, 「真の外部性」の増加かつ下に凸な関数になることが示される.また,その 産業の生産者の人口(農業人口など)が極めて多い状況から人口が少し減った場合には, 生産者 1 人当たりの広告支出は限界的に増えるが,生産者人口がある値以下に減ると,更 なる人口の減は一人当たり広告支出を限界的に減らすことが示される.
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