酵母の細胞周期解析

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酵母の細胞周期解析
はじめに
細胞周期の研究において、これまで酵母菌の果たしてきた役割は大きなものがあります。特に細胞周期に異常のある一
連の温度感受性変異株「cdc(cell division cycle)mutant」を用いた分子遺伝学的研究は、細胞周期中に多数見出された
個々の制御点においてかかわっている因子の遺伝子を迅速に単離し、その機能を解明していくという着実に進展する方
法論を提供しました。
酵母を用いた細胞周期の研究は、ヒトをはじめとした哺乳動物の研究の一助として、そのモデル細胞あるいは機能相補ク
ローニングの宿主として酵母を捉える立場とモデル生物として酵母の細胞周期を理解使用とする立場があります。
酵母は、哺乳動物細胞にはない細胞壁を持つため、固定処理時間や細胞壁処理などの検討が必要になることがありま
す。
また、出芽酵母(S.cerevisiae)は、哺乳動物同様 G1 期が長く、分裂酵母(S.pombe)は G2/M期が長い(G1 期が非
常に短い)という特徴があります。
原理
《フローサイトメータによる DNA 量分析》
細胞周期の解析には、化学量論的に DNA に結合す
る蛍光色素を用います(DNA 染色量は細胞中の
DNA 含量に比例します)。
高い DNA 結合親和性のある多くの色素を用いること
ができます。色素が DNA に結合する部位は、用いる
色素の種類によって異なります。
どのような DNA 結合性色素を使用した場合でも、各
細胞ポピュレーションの細胞周期を反映した、特徴的
なパターンがみられます。
出芽酵母の細胞周期
下記の色素は、染色前に細胞膜の透過処理が必要で、主に、有機溶媒(エタノールなど)による固定によって行います。
代表的な蛍光色素の例を下表に示します。
表 1: DNA を染色する蛍光色素
色素名
結合様式
コメント
使用レーザー
(波長)
蛍光
PI
(プロピジウムイオダオド)
DNA2重鎖への
Intercalation
DNA 含量によく相関
(空冷・水冷)
Arレーザー
(488nm)
630nm
7ADD
(7-アミノアクチノマイシンD)
G-C塩基対によく
結合
多重染色に用いられる
(空冷・水冷)
Arレーザー
(488nm)
655nm
DAPI
A-T塩基対によく
結合
蛍光顕微鏡観察によく
水冷Arレーザー
(351~364nm)
460nm
Hoechist33342
(ヘキスト33342)
A-T塩基対によく
結合
生細胞の DNA 染色可
水冷Arレーザー
(351~364nm)
460nm
ChromomycinA3
(クロモマイシンA3)
GC塩基対によく結合
染色時に Mg2+が必要
水冷Arレーザー
(442/457nm)
550nm
TO-PRO-3
DNAに結合
多重染色に用いられる
He-Neレーザー
(633nm)
661nm
用いられる
また、細胞質タンパクと DNA を同時染色をする事で、細胞周期とタンパクの増殖を関係を測定する事も可能です。
参考文献
1. 田島洋一、野島博、花岡文男 編:Bio Science 用語ライブラリー 細胞周期:洋土社(1995)
2. K.J. Hutter et.al:Microbial Determination by Flow Cytometry:Jurnal of General Microbiology(1979), 113, 369375
3. Shelley Sazer and Steven W. Sherwood:Mitochondrial growth and DNA synthesis occur in the absence of
nuclear DNA replication in fission yeast. Jurnal of Cell Science.,97,509-516(1990)
4. Zbigniew Darzynkiewicz, J. Paul Robinson and Harry A. Crissman:Flow Cytometry Second Edition(1995)
5. Gabrielle Costello et.al:Fission yeat enters the stationary phase G0 state from either G1or G2:Curr Genet
11,119-125(1986)
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サンプル調製
Ⅰ.サンプル
Ⅱ. 試薬
PI
RNase
95%エタノール
SIGMA 社
SIGMA 社
Cat# P-4170
Cat# R-4875
Ⅲ. 溶液
z PI 溶液
5.0mg PI(Sigma)を PBS 100mL で溶解。4℃暗所保存。
z PBS 溶液
KCl 0.2g、KH2PO4 0.2g、NaCl 8g、NaH2PO4 1.15g を蒸留水 1L に溶解。 PH7.5 に調整。
Ⅳ. その他
z 40μm ナイロンメッシュ
z エッペンドルフチューブ水道水等
Ⅴ.サンプル調製
1.
細胞の固定
(1) 細胞浮遊液をエッペンドルフチューブに約 1mL 分取。
(2) 16000g で 5 分遠心(室温)。
(3) 4℃に冷却した蒸留水 300μL で再浮遊。
(4) -20ニ冷却した 95%エタノール 700μL を voltex しながら添加。
(5) 4℃で 12 時間以上固定。
2.
Rnase 処理
(1) PBS(または 50mM クエン酸 Na pH7.0)で洗浄。
(2) 0.1mg/mL Rnase A を 1mL 添加。
(3) 37℃で 2 時間インキュベーション。
3.
PI の染色
(1) 最終濃度 2μg/mL になるように PI 溶液を添加します。
(2) 4℃で暗所保存(1 週間保存叶)。
(3) 測定前に 40μm メッシュを必ず通し、フローサイトメーターにて測定。
注:Pnase 処理の前に、Zymolyase、Pepsin の処理を行うこともあります。
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Ⅵ.データ例:
温度感受性変異株 cdc mutant cdc10 の温度依存による細胞周期の変化を測定。
酵母細胞の全 DNA 含有量の約 5~20%が、ミトコンドリア DNA です。ミトコンドリア DNA の約 60~80%が A-T
なので、A-T 特異的色素(Hoechst、DAPI など)は、CV が悪くなります。
Shelly Sazer and Steven W. Sherwood(1990) Mitochondrial growth and DNA systhesis occur
in the absence of nuclear DNA replication in fission yeast. Jurnal of Science., 97, 509-516
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